市民のための名古屋市会を! Ver.3.0

一人の名古屋市民が「地域委員会制度」「減税日本」に対する疑問をまとめるサイトです。(since 2011/3/3)

多選の市長、市議が言い出す「多選自粛」とは

今日の話題は非常にとっ散らかっています。

まず、昨日減税日本が多選自粛を定めた条例案を提出するという話題がSNSに流れてきた。
なんでも名古屋市会で、3選以上の立候補の自粛を求める内容だとか。

すぐに思いつくのが、自分の選挙のおいて「2期8年」までという公約を掲げておきながら、のうのうと多選を繰り返す減税日本ゴヤの現職市議は、一体どういうつもりでこの条例案を提出(賛成)するのだろうか。自らがまず辞職でもして、多選の事実を無くしてから多選の弊害を主張すべきだろう。

田山 宏之(名古屋市会議員:減税日本・北区選出) - 市民のための名古屋市会を! Ver.3.0
大村 光子(名古屋市会議員:減税日本・昭和区選出) - 市民のための名古屋市会を! Ver.3.0
鈴木 孝之 (名古屋市会議員:減税日本・天白区選出) - 市民のための名古屋市会を! Ver.3.0

佐藤 夕子(名古屋市会議員:減税日本・東区選出) - 市民のための名古屋市会を! Ver.3.0
(県議や衆議院議員を含めて十分多選、家業化してるだろう)

河村たかし【公式】オフィシャルサイト 気さくな74歳 | 減税日本代表
(これも、公言無視の多選)

ある方は「減税日本は、市民のために働くのではなく、『市長を助ける』としている」と指摘された。
元々、河村たかし減税日本の議員に有権者の意思、民意を尊重するなどという発想はない。

河村たかしにあるのは、自分の主張、わがままを「民意」に偽装して強弁する詐術だけだ。
例えば、「名古屋城天守の木造化」など、河村が望むような事柄を、市民も支持してくれれば、それだけを民意として受け止める。それが例え一部の市民の声であろうと構わない、それが河村の尊重すべき「民意」である。自分のわがまま勝手を「民意」と誤魔化して主張しているに過ぎない。

この件にしても、上に上げた田山、大村、鈴木などの現職市議は、それぞれの選挙区で当選を果たしてきた。つまり、有権者は彼らの多選を許したということで、名古屋市民の民意は「多選禁止」など望んではいない。この条例案は民意を無視するものだ。

減税日本ゴヤができたばかりの頃にも議論されたが、市会議員、基礎自治体の議会議員は、2年や3年でこなせる仕事ではない。2期(8年)、3期(12年)キャリアを重ねても、なかなかこなしきれていない。議員の在職期数を制限して一番喜ぶのは誰か、職員だ。職員にとってみれば、鼻をつまんで左右に振っても気が付かないようなトンチンカンな素人議員ばかりになってくれれば、議会対策はさぞや楽になる。そして、こうした議会の弱体化は市民のためになどならない。

確かに、期数を重ねても、市民、有権者のためになっていない議員は居る。それは否定しないが、その為に短絡的に多選禁止、自粛を条例化しても意味はない。

では、なぜ昨日唐突にこの条例案の話が出てきたのか。

今朝の中日新聞の紙面を見れば悲しいかな事情が掴める。

8月31日 中日新聞第ニ社会面

第ニ社会面に「市議多選自粛条例提出へ/減税日本名古屋市議会に」と大きな文字でこの話題が取り上げられている。どうせ否決されるに決まっているのに。
そして、その横に小さな文字で「名古屋城差別発言で検証委「聴取不十分」/初会合で状況確認」の文字が。
もし、条例案の話がなければ、この検証委の議論が、このデカいタイトルを付けて紙面構成されていたのかもしれない。河村たかしにしてみれば、名古屋市民の目に触れさせたくない話題なんだろう。

差別発言検証委員会については、名古屋市オンブズマンがレポートを上げている。
名古屋市民オンブズマン・タイアップグループ

非公開が多すぎる気がする。

河村市長とすれば、打ち消したい話題には事欠かない。
河村たかし名古屋市長、杭州アジア大会欠席へ 南京発言巡り自粛:中日新聞Web

杭州アジア大会には顔を出せない、というよりも中国に入れないのだろう。
自身が発した「南京事件否定発言」の後片付けがされていない、それでいてアジア大会を誘致したのだから、認識の統一性に欠けると見られても仕方あるまい。

名古屋市民オンブズマン・タイアップグループ
更にこんな話題もある。9月9日に「名古屋城木造天守にエレベーター設置を実現する実行委員会」が「名古屋城バリアフリーシンポ」を開催する、名古屋市はこのシンポに参加を表明していたが、8月27日に突然参加をキャンセルしたそうだ。

そしてこの件は中日新聞は一行も伝えておらず、名古屋市民の大部分はこうした事実を知らないままだ。
中日新聞は、嘘は書かないかもしれないが、本当のことも書かない。
本当のことを書かずに、名古屋市民の民意を歪めている。
日本で唯一、経済学的に効果のない市民税減税が、名古屋でだけ(!)実施されている理由はここにある。)

参加しない理由は、「これまで説明してきたので、これ以上話すことはない」とのことらしいが、いやいやいや、例えば私はその「説明」聞いていない、聞いていない市民はたくさん居るだろう。「これ以上話すことはない」なんて事は、何によらず行政の言うことではない。

※ここで他に、河村たかしが すっかり忘れているような事柄を3点ばかり指摘しようとしたが止めた。
ここで批判じみたことを書いても、河村を助けることにしかならないからだ。
そうした事柄が行き詰まってニッチもサッチも行かなくなってから指摘する。


なぜ、名古屋市はこうした「逃げ」を打たなければならないのか、嘘を付かなければならないのか。

市長が河村たかしだからだが、


彼の嘘を名古屋市の職員が糊塗しようと躍起になるから、市民から逃げたり、嘘をついたり、事実を歪めなければならない。

8月30日に行われた「名古屋城バリアフリーに関する市民討論会」における差別事案に係る検証委員会における配付資料がある。
http://www.nagoya.ombudsman.jp/castle/230830.pdf

この中に「市民討論会」での説明資料(パワポのスライド)「名古屋城木造天守復元とバリアフリー」がある、その中に「木造天守復元/名古屋城天守』の整備」「◯木造天守復元の意義」として「逐条解説 建築基準法」(ぎょうせい、平成24年12月10日)からの抜粋が掲載されている。

逐条解説建築基準法 抜粋

「国宝などの文化財は先人が我々に伝えた貴重な財産であり、これを保存し、後世に伝え、あるいはその活用を図って、国民ひいては世界の文化に寄与することは我々の任務である」

名古屋市は、河村たかしはこの文言を尊重し、「これ(国宝などの文化財)を保存し、後世に伝え」るのだな。「我々の任務である」と認識するのだな。

ならば、名古屋城天守木造計画を即座に撤回し、現存天守の保存活用を模索すべきだ。

上記規定が、これから作ろうとする木造レプリカに適用されるなどという解釈は典型的な切り文である。

同書より前後の文章を以下に引く

 (1)本法の各規定は、建築物であればこれから建築するものはもちろん、既存のものであっても改築などを行う場合には適用されるが、古くから存在する建築物の構造は、その大半が現代の建築基準とは大きくかけ離れたものであるため、現状を保存しようとして改築、修繕などを施す場合に本法の基準を適用することとすれば、古い部分はほとんど改めなければならないこととなってしまうといってもよい。 また、古い建築物が火災などのために滅失した場合にも、これを復元することは、本法の基準に合うようにするという条件がある限りまず不可能である。したがって、このような古い建築物が国宝などに指定された貴重な文化遺産である場合にも本法をそのまま適用すべきかどうかは一考を要することである。
 国宝などの文化財は先人が我々に伝えた貴重な財産であり、これを保存し後世に伝え、あるいはその活用を図って、国民ひいては世界の文化に寄与することは我々の任務であるので、本法を文化財などの建築物に直接適用することは適切であるとはいえない。
 しかし、文化財といえども社会的な存在である以上は社会に与える影響を考え、安全上、防火上及び衛生上支障がない構造にする必要がある。
 このような背反する要請を考慮して、本条は限定的に建築物を選び出し、それらに限り本法の適用を除外している。
 (2)本法の適用が除外されるものは、文化財保護法に基づき国宝、重要文化財、重要有形民俗文化財特別史跡名勝天然記念物又は史跡名勝天然記念物として指定された建築物、旧重要美術品等の保存に関する法律に基づき重要美術品等として認定された建築物及びこれらの建築物であったものの原形を再現する建築物に限られ、復元建築物については特定行政庁が建築審査会の同意を得てその再現がやむをえないと認めたものに限られる。

消失する前の名古屋城天守は「国宝」であったが、それは消失して消えてしまった。木造レプリカには国宝指定時の「オーセンシティ(真実性)」がない。京都の金閣寺を引くまでもなく、復元建築物は「国宝」にはなれない。

木造レプリカが、この(2)以下のどれに当てはまるのかと言えば、最後の「これらの建築物であったものの原形を再現する建築物に限られ、復元建築物については特定行政庁が建築審査会の同意を得てその再現がやむをえないと認めたもの」ということになるが、ここには、それに先立つ条件記述「しかし(略)安全上、防火上及び衛生上支障がない構造にする必要がある」を満たすために「建築審査会の同意」を課している。

ichi-nagoyajin.hatenablog.com

で指摘したように、現在の設計には安全上重大な瑕疵があり、「日本建築センターの評定」での指摘が改善されていない。そして国土交通大臣の認定は受けられていない。つまり、ここで求められている「法同等の安全性」という条件を満たせていない。

「先人が我々に伝えた貴重な財産」という言葉は、これから作られる「木造レプリカ」に相応しいものか、昭和34年の名古屋市民が再建し、残してきた現存天守に相応しい言葉か。真っ当な常識があれば判りそうなものだろう。


市政出前トーク「名古屋城天守閣の整備」実施

名古屋城天守有形文化財登録を求める会」では

 名古屋市観光文化交流局 名古屋城総合事務所の協力を得て
市政出前トーク」を実施していただきます
テーマは「10-4 名古屋城天守閣の整備

12月16日(土)午後2時00分
市政資料館第2集会室

peraichi.com

※どなたでも参加自由、参加費も無料です。

あくまで「市政出前トーク」ですから、名古屋市の施策としての「名古屋城天守閣の整備」の現状についてご説明をいただく場としたいと思います。


名古屋城天守有形文化財登録を求める会」では本年6月13日に「名古屋城天守木造化事業に対する申入書」(下記)を提出しております。こうした申し入れについてのご認識や、何らかの対応についてご報告いただければ良いのですが、特になければその場で再度申し入れるなどはせずに、後日回答を求めるなどの方針でいたいと思います。

 質問などは発生するかもしれませんが、その場で「申し入れ」などを行うつもりはありません。

 ましてやわざわざ起こしいただく方を「糾弾」したり「吊るし上げる」ような行為も行いません。


 できれば「名古屋城天守有形文化財登録を求める会」として、名古屋市と定期的に情報交換や意見交換を行う中で、会としての希望である。

  1.現名古屋城天守有形文化財登録
  2.現名古屋城天守への耐震改修と長寿命化
    ※及び今年指摘された天守台石垣の早急な耐震補強
  3.最上階までのエレベータ設置と、現行法に叶うバリアフリーの対応
  4.博物館機能の強化

 が叶うように、粘り強く活動をしていきたいと考えています。


名古屋城天守木造化事業に対する申入書


令和5年6月13日


冠省


 6月3日に開催地不明で行われた「名古屋城バリアフリーに関する市民討論会」なる会合において、当該会合に参加した車椅子を使用する身体に障害を持った市民に対し、他の参加者が差別的言動を行い、当該参加者並びに、他の障害を持った方々やその家族、及び一般市民の心を傷つけた事は、伝統と格式ある名古屋市の歴史と文化にとって許されざる瑕疵であります。


 これを受け私ども名古屋城天守有形文化財登録を求める会は以下、名古屋市に対して申入ます。


一.2022年(令和4年)10月24日に日本弁護士連合会から提出されております要望(下記※1)について名古屋市はこれに対して早急に、真摯な回答、対処をすべきことを申入ます。


二.名古屋市は2019年(令和元年)に昇降技術の実験施設として、総工費9040万円をかけて階段体験施設「ステップなごや」を開設した。更に「史実に忠実な復元とバリアフリーの両立を目指し、昇降技術を世界中から募り、実用化して木造天守へ導入することを目的とします」(下記※2)として、開発契約費8千万円、導入契約費2億円(ともに上限)(下記※3)を示し、昇降技術を公募し、2022年(令和4年)に優秀提案者を選定したが、その提案においても結局「史実に忠実な復元」と「(法の要請する)バリアフリー」の両立(下記※4)は叶わなかった。すなわち現代社会の技術力ではこの両者の要望を両立させることはできないと判明したのである。実現できない計画については即刻中止し見直すべきことを申入ます。


三.名古屋市名古屋城天守を「市民の精神的基柱であり、誇りである名古屋城天守閣」(下記※5)と認識されておりますが、今般の「討論会」における出来事を受け、市会における議論では、このままアクセシビリティの後退を容認し、計画を進めてみても国民から「差別の象徴の城」と見做されてしまうとの指摘がありました。事実一部のメディアにおいて名古屋城は「差別の城」との表現もあり、名古屋市民として甚だ心苦しく感じております。計画を即時中止されんことを申入ます。


四.名古屋市現存天守について、2010年(平成22年)9月に構造体劣化調査、2011年(平成23年)2月に耐震診断概要書をまとめ、2017年(平成29年)3月に暫定的耐震補強調査(下記※6)をまとめていた。同書によれば、現在の耐震基準(Is値0.75以上)にするには、大天守天守合計で13億5047万0205円。エレベーター改修1億6000万円をあわせると、15億1051万9605円と試算されている。この事実を木造天守改修に係る費用と並べて、市民に広く知らせることを申入ます。


五.2016年(平成28年)に行われた所謂「2万人アンケート」において、名古屋市は「現行天守閣を耐震改修した場合でもコンクリートが概ね40年の寿命」などと記載しましたが、これは文化庁の示した「鉄筋コンクリート天守(以下、RC造天守)等の老朽化への対応について(取りまとめ)」(下記※7)の見解とは異ります。


 同取りまとめにおいて文化庁は「RC造天守は、その多くは往時の外観を模して再現されているように、史跡等の往時の姿を今に伝え、その本質的な価値を正しく理解していくうえで一定の役割を果たしてきた。」として現存する名古屋城天守を含むRC造天守に対して肯定的な評価を与えている。


 名古屋市はこうした文化庁の見解も踏まえ、改めて市民に対し、先行する大阪城天守閣における平成の大改修にならった、コンクリートの脱アルカリ化及び耐震補強工事の実施を行い、昭和34年に市民からの多額の寄付によって再建された現存天守を守っていくべきか、多額の費用を払って木造天守を建造するのか民意を問うアンケート等を実施することを申入る。


 木造天守は、今、再建できるというのであれば、それは費用さえかければ再建することはできるのだろう。将来にわたり再度、火災等によって消失しても、費用さえかければ幾らでも再建可能である。しかし、第二次世界大戦で焼失し、戦後復興の象徴として再建された現存天守は、一度破壊してしまえばその歴史的意義は永遠に失われてしまう。そうした意義を踏まえ、以上申入れる。


怱々



※1 日本弁護士連合会発行「名古屋城天守閣にエレベーターの設置を求める人権救済申立事件(要望)」(2022年10月24日)


※2 「名古屋城木造天守の昇降技術に関する公募」の実施について(令和4年4月18日)


※3 「名古屋城木造天守閣の昇降に関する公募 公募要領」(2022年7月)


※4 現存天守は地上高より5階(最上階は7階)までのエレベーターが設置されている。少なくとも同等の条件を満たさなければアクセシビリティの後退となる。


※5 「木造天守閣の昇降に関する付加設備の方針」(平成30年5月)


※6 「名古屋城天守閣 暫定的耐震補強調査業務 報告書」(平成29年3月)株式会社大建設計名古屋事務所


※7 「鉄筋コンクリート造天守等の老朽化への対応について(取りまとめ)」令和2年6月 文化庁 史跡等における歴史的建造物の復元の在り方に関するワーキンググループ


減税日本ナゴヤ政務活動費に係る不当利得返還請求事件 (令和4年(行ウ)第36号) 結審

減税日本ゴヤ政務活動費に係る不当利得返還請求事件(令和4年(行ウ)第36号) 結審


<<<未完成稿:このコメントが有る間は公開前の未完成稿です>>>

追記(2024-03-31):文書中「補助参加人」とは何かという質問を頂いた。

 この訴訟は、住民である私が原告となり、名古屋市に「不当に支払ったお金を返金してもらいなさい」という裁判で、被告は名古屋市河村たかしとなっている。

 私が「不当に支払った」「名古屋市の支払いは不当だった」と言ってみても、その釈明は実際にそのお金を使った議会会派「減税日本ゴヤ」が行うことになる。被告である名古屋市がお金を使った経緯、事情を知るとは限らないからだ。議会会派「減税日本ゴヤ」としても、裁判の結論によっては支払われた政務活動費の返金を申し立てられる可能性があるわけで、私の提訴が無効であると抗弁する権利がある。

 そうした意味で被告である名古屋市と、減税日本ゴヤの利害は一致しており、補助参加人として訴訟に参加して、共同して原告である私の主張に対抗することになる。

 ちなみに、一般的に「返還請求」は、返還請求している方、つまり「金返せ」と言っている方が、主張の立証をする必要がある。しかし、議会における政務活動費の実態について、外部の者が事情を知りうることは少ない上に、その支出が公費の消費であるという公共性の高いものである事などから、説明責任、立証責任は政務活動費を使った議員、会派の方が負うべきであるという判例が示されていて、この訴訟においても一審判決の「判断の枠組み」において、同様の基準が示されている。

 も一つちなみにですが。この訴訟のために政務活動費に関連する判例を集めており、こうした立証責任の所在など判例を根拠にする必要がありますので、必要であれば情報共有させていただきます。




7月26日に、表題の減税日本ゴヤに対する政務活動費返還請求についての地裁審理が結審した。判決言渡し予定は9月14日となる。

1.今までの経緯

(1)減税日本ゴヤにおける政務活動費の支出について、広報費の政務活動費比率が100%であるなど、疑義があり、特に名東区の浅井康正市議(当時、以下同様)が配布したとされる広報紙について、名東区の複数の市民より「見ていない」との報告が上がったことなどから、浅井康正市議に問い合わせなどをかけてみても回答が得られなかった。

減税日本ゴヤの政務活動費支出について(2021-12-07)
ichi-nagoyajin.hatenablog.com

(2)その為、特にこの浅井康正市議の広報費113万2,065円について、返還を求める「職員措置請求」(住民監査請求)を行った。

職員措置請求書(2022-01-13)
ichi-nagoyajin.hatenablog.com

監査結果(2022-03-10)
ichi-nagoyajin.hatenablog.com

(3)監査結果は現状を追認するだけのものだったが、その根拠となる水野プランニングがポスティング作業を再委託した株式会社ポトスの作業代金「領収書」については監査結果として開示されなかった。
 また、監査の中で水野プランニング提出のA4版領収書の記載「両面印刷」とA4版チラシの様態(片面印刷)が食い違っているにも関わらず、監査において一切言及されておらず、監査の実効性を疑わせるものだった。
 故に、住民訴訟を提起した。

河村たかしセクハラ?/政務活動費返還訴訟(2022-11-16)
ichi-nagoyajin.hatenablog.com

 事件名及び番号:名古屋市減税日本ゴヤ政務活動費に係る不当利得返還請求事件(令和4年(行ウ)第36号)

(4)公判において、住民監査で提出されたという水野プランニング宛て株式会社ポトスの「領収書」が提示されたが、様態として領収書の体を為しておらず、裁判所より「領収書(控)」ではなく、「領収書」を提出するようにと要請された。
 しかし、被告補助参加人「減税日本ゴヤ」からは「領収書」の提出はなされなかった。

 補助参加人「減税日本ゴヤ」から提出された、ポスティング代金の支払いを示す根拠とされる証拠

 2022/8/12提出 丙4号証、水野プランニング宛て、株式会社ポトス発行「領収書(控)」写し

 2022/9/20提出 丙12号証、水野プランニング宛て、株式会社ポトス発行「受領証明書」(令和4年9月5日作成)

 2023/1/25提出 丙13号証、水野プランニング宛て、株式会社ポトス発行「入金伝票」写し

政務活動費返還住民訴訟に“ジャベリン”登場(2023-03-17)
ichi-nagoyajin.hatenablog.com

3月23日政務活動費返還住民訴訟(2023-03-23 )
ichi-nagoyajin.hatenablog.com

(5)補助参考人減税日本ゴヤ」において、水野プランニングからの再委託先支払いを立証する意志が見られないとして、尾張瀬戸税務署に水野プランニングの当該「売上」における経費報告等の資料を要求するなどの「調査嘱託」および、裁判所から直接「水野プランニング」「株式会社ポトス」に対して、これら支出を明かす書類の提出を求める「文書送付嘱託」を申し出、このうち水野プランニングに対して印刷業務の再委託を明かす書類の提出を求める「文書送付嘱託」が実行された。

 さて、水野プランニングからはどのような書類が提出されたか。
 原告である私が「文書送付嘱託」を行ったために、裁判所に送付された書類は必要に応じて原告側証拠として提出するそうで、次回期日となる7月26日の第7回公判に甲号証として提出されました。

 名古屋地方裁判所(剣持亮裁判長)はこれらの提出と、それに付随する私の意見書(ほとんど「求釈明」、以下に掲載)によって、結審とされました。
 判決言渡し予定は9月14日となります。

2.水野プランニングより提出された書類と、原告準備書面(5)

以下、原告準備書面(5)をそのまま掲載します。
関連証拠書類は画像イメージで掲載します。
必要に応じて、コメントをこの文字色で色付けして付けます。
(不明点とかありましたら、コメント欄にでもご投稿下さい)

 頭書事件について、次のとおり主張します。

 第1 前回公判以降の出来事、並びに提出証拠の説明

 令和5年6月8日に開かれた前回(第6回)公判以降の出来事、並びに提出証拠の説明について。

 1.送付嘱託について

 令和5年3月28日、名古屋地方裁判所から水野プランニングこと水野昇氏(以下、水野昇氏と表記)に対して「送付嘱託書」(甲第29号証)が送付された。

>

甲第29号証_送付嘱託書 令和5年3月28日
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甲第29号証_(別紙)文書の表示
甲第29号証_(一般用)送付書(雛形)
<>
甲第29号証_送付嘱託について

 上記「送付嘱託書」に対する回答として、水野昇氏より令和5年5月1日付 「送付書」及び2020年7月20日付「御見積書 写し」(受注番号 V858006-1)及び2020年7月20日付「請求書 写し」 及び2020年7月26日付「納品書 写し」(甲第30号証)が裁判所に提出された(以下「送付資料1」)。裁判所受付は令和5年5月2日。

甲第30号証_送付書 令和5年5月1日
甲第30号証_2020年7月20日付「御見積書」
<>
甲第30号証_2020年7月20日付「請求書」
<>
甲第30号証_2020年7月26日付「納品書」

 令和5年6月8日の前回公判において、上記「送付資料1」に添付された「御見積書」などはA3版(甲第2号証)について言及されているだけで、A4版(甲第4号証)について言及されていないとの被告代理人等の指摘を受け、裁判所より水野昇氏に対して架電にて確認を行った。

 これに対して令和5年6月13日付「送付書」及び2020年7月29日付「御見積書 写し」(受注番号 V863602-1)及び2020年7月29日付「請求書 写し」及び2020年8月1日付「納品書 写し」(甲第31号証)が裁判所に提出された(以下「送付資料2」)。裁判所受付は6月13日。

甲第31号証_送付書 令和5年6月13日
<>
甲第31号証_2020年7月29日付「御見積書」
<>
甲第31号証_2020年7月29日付「請求書」
<>
甲第31号証_2020年8月1日付「納品書」

 
 その際、水野昇氏より名古屋地方裁判所民事第9部岡村東子裁判所書記官に対して補足説明があり、その要旨は「本日提出した見積書には、支払方法が『NP掛け払い』となっており、これは受注後、請求書を発行し、代金が支払われたことを確認してから納品するものである。
 よって、本件に関する領収書はないが、納品書を発行しているということは、代金が支払われたということを意味するものであるので、補足する」とのことであった。(甲第32号証)

甲第32号証_口頭聴取書 令和5年6月13日

 事実関係は以上であるが、これらの内、いくつか矛盾、疑問点があるので以下、釈明を求める。

第2.求釈明

1.減税日本ゴヤ団長(当時)浅井康正氏は令和4年1月24日付住民監査請求(3監特第45号)に係る調査において、3の質問(2)へ「広報紙の印刷は、領収書に記載されている通り(この部分、黒塗りされており不明)がしております。」と回答している。(甲第16号証-3)

甲16号証-3 減税日本ゴヤ監査委員に対する回答(令和4年1月24日)-01
甲16号証-3 減税日本ゴヤ監査委員に対する回答(令和4年1月24日)-02

 この場合、「領収書」とは「甲第2号証」及び「甲第4号証」の水野プランニング発行、減税日本ゴヤ浅井康正市議(当時)宛のものを指すことは明白で、他に印刷業者を表す表記等はないことから、水野プランニングにおいて印刷が行われたものと解する以外無い。しかし今般、水野プランニングより印刷業務も第三者へ再委託されたとする資料が提出された、この不整合の釈明を求める。

2.補助参加人準備書面(2)の第一、1の(3)において「配布残部380枚は発注者である浅井の元に届けられた」とされていますが、今般の納品書にそのような記載がない理由について釈明を求める。

3.裁判所は送付嘱託書で「同業者(印刷の下請け業者)から受領した領収書及びこれらに類する文書」の送付を明白に求めている(甲第29号証)にも関わらず、領収書を提出しない理由について釈明を求める。

4.水野昇氏は「支払方法が『NP掛け払い』となっており、これは受注後、請求書を発行し、代金が支払われたことを確認してから納品するものである。」(甲第32号証)と説明されていますが、代金支払い後に納品されるのは「前払い」であって「掛け払い」とは言わない。例としてインターネット上で印刷を請け負う株式会社ウェーブによる「NP掛け払い」の説明を「甲第33号証」としてお示ししますが、ここには「NP掛け払いとは、法人・個人事業主のお客様を対象にした後払い(掛売り・請求書払い)の決済サービスです。

株式会社ネットプロテクションズ様の提供する「NP掛け払いサービス」を介して、弊社にて購入いただいた商品のお支払いを、ご利用月の翌月末までにネットプロテクションズ様指定の銀行口座または、コンビニの払込票でお支払いいただきます。」(甲第33号証)と明記されています。説明の齟齬について釈明を求める。

甲第33号証_NP掛け払いサービス-01
甲第33号証_NP掛け払いサービス-02

以下のリンクより引用
https://www.wave-inc.co.jp/guide/pay_np.html

5.また、同説明には「請求書は同梱されずに後日ネットプロテクションズ様より送付されます」(甲第33号証)とされています、決済業者である「ネットプロテクションズ」発行による「請求書」をお示しください。

6.また、 同説明には「領収書について」として「銀行振込の場合は、銀行での振込票(ご利用明細)/通帳の記載を領収証の代わりとしてご利用ください。
コンビニ支払いの場合は、受領書兼領収書(払込票控え)をご利用ください。」(甲第33号証)と記載されています。決済業者であるネットプロテクションズ宛の「銀行での振込票」または「通帳の記載」。コンビニ支払いをされたのであれば受領書兼領収書(払込票控え)をお示しください。

7.これら領収書となる資料を紛失した場合などでも、「NP掛け払い」を運営する「株式会社ネットプロテクションズホールディングス (Net Protections Holdings, Inc.)」のサイトにおける「NP掛け払いFAQ」(甲第34号証)によれば「領収書を紛失または、上記以外の領収書をご希望の場合は、以下のご注意事項をご確認の上、問い合わせフォームからお問い合わせください。
弊社にて着金確認ができている場合に限り、領収書発行を承ります。
当日のお支払いなど、弊社での着金確認ができていない場合、発行予約は対応しておりません。
領収書はPDFファイルをメール送付いたします。(郵送・但し書き変更は不可)」とのことであり、「銀行振込時の振込明細書」または「コンビニエンスストア払込票についている受領書兼領収書」または上記再発行依頼を行い、領収書が発行されるとの説明があります。よって6月13日に水野昇氏が裁判所書記官に口頭によって補足説明した「本件に関する領収書はない」との主張には事実誤認があります。領収書の提出か、事実の釈明を求めます。

甲第34号証_NP掛け払いFAQ-01
甲第34号証_NP掛け払いFAQ-02
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甲第34号証_NP掛け払いFAQ-03
甲第34号証_NP掛け払いFAQ-04

以下のリンクより引用
https://faq.np-kakebarai.com/hc/ja

8.そもそも民法第486条「受取証書の交付請求等」の規定により、「弁済をする者は、弁済と引換えに、弁済を受領する者に対して受取証書の交付を請求することができる。」のであり、領収書が得られない取引などありえない。

9.6月13日の水野昇氏の補足説明「代金が支払われたことを確認してから納品するものである。」との説明が正しいとすると、「納品書」が発行される納品時には代金の支払いは終わっていることとなっている、しかしそうすると「送付資料1」及び「送付資料2」の「納品書」に記載されている「支払方法:NP掛け払い/ご納品後、別途送付される請求書に従ってお支払い下さい。」との記述は水野昇氏の説明とは矛盾する。釈明を求める。

10.「送付資料2」(甲第31号証)に付随する資料について、「送り状品名」が「浅井康正6月号」となっている。釈明を求めます。

11.「ポトスのポスティングサービス」(甲第35号証)によれば、「ポスティングする日」は「ポトス発行の週(隔週の水~土)」であるが、補助参加人提出の「名東区長久手市エリア地区別部数表」(丙第5、6号証)によれば、「A32ツ折り」は8月6日(木曜日)「A4」は8月27日(木曜日)となっており、3週間の間があり、曜日も違う釈明を求める。

甲第35号証_ポトスのポスティングサービス

12.水野プランニングから配布を再委託された株式会社ポトスについては社名を明らかにしているが、印刷を再委託した会社については「送付資料1」「送付資料2」において社名を明らかにしていない。この理由について釈明を求める。

13.「送付資料1」及び「送付資料2」の「御見積書」「請求書」「納品書」の様態を見ると、「請求書」は「御見積書」と同時に発行され、「納品書」はそれから数日後に発行されている。つまり、見積をとり「御見積書」「請求書」発行後に、上記「NP掛け払い」を使い、代金の支払いよりも先に納品を受け、その印刷物の様態についてクレームを入れ、発注をキャンセルし、納品物と同時に送られてきた「納品書」を手元に残し、納品物だけ返品した場合、代金支払いをしなくても、「御見積書」「請求書」「納品書」を受領することができる。よって、これらの資料が代金支払いを証明するとする主張は成立しない。

第3.結語

 以上のように水野プランニングこと水野昇氏に宛てた送付嘱託によって回答を受けた「送付資料1」及び「送付資料2」によって印刷業務の再委託の事実、印刷を行った事実は何ら立証されていない。

 水野プランニングより印刷業務、配布業務の再委託を行ったのであれば、法人税法上( 法人税法150条の2、同施行規則59,60 )保管義務が課せられている、これら業務の再委託を証明する「領収書」を示すだけであるにも関わらず、上記のような事実と異なる「補足説明」まで行い「領収書」の提示を拒む理由について、疑念が湧きます。

 水野プランニングこと水野昇氏において、明らかな事実を提示される意志がなく、発注者である補助参加人「減税日本ゴヤ」に水野昇氏への協力を促す意志が無いとすれば、原告が令和5年2月9日に申立た尾張瀬戸税務署に対する水野プランニングの本件事項に係る売上申告、並びに原価、経費の申告、及びそれらに係る修正申告の全履歴を開示する調査嘱託を実行し、令和5年6月8日の「証拠申出書」に記載した関係者4名の出廷を求め、「本件広報紙の版下作成、印刷、配布の実態」及び「その他被告及び補助参加人主張事実全般」について、事実の追求をされんことを希望いたします。

 以上のように、そもそも本件に係る広報紙について、その印刷の事実、配布の事実が明らかにされない以上、その様態によって議論すべき政務活動費の按分率についての検討は空疎な議論であり、今次準備書面では意見を保留させていただきます。

3.補足

 今回の準備書面(5)において、尾張瀬戸税務署に対する調査嘱託や関係者4名の出廷を求めておりましたが、結審となりました。結局水野プランニングが再委託したとする印刷業務、配布業務について、明確な支払い根拠は示されておりません。また、原告においては印刷、配布が事実と認識できない広報紙の政務活動費按分率について、「今次準備書面では意見を保留」したままで有ることを申し添えておきます。

 地裁審理が結審した。判決言渡し予定は9月14日となります。

付記:上記甲第16号証-3において浅井市議(当時)は「仲介手数料は発生しておらず」と明記している。つまり、これら印刷物の代価についても、水野プランニング請求と同額が記載されているはずで、このように黒塗りにするのは主張の一貫性がない。
また、補助参加人代理人小島敏郎弁護士は主張の中で水野プランニングが利益を上げても問題ないとする主張をされている。これはつまり同書における浅井市議の主張が異なり、水野プランニングが仲介手数料を得ている事を前提とするような主張であるが、この不整合についても釈明を求めたかった。


記事「名古屋城『エレベーター問題』に抜けている視点」に抜けている視点

 ヤフーに「デイリー新潮」からの転載として「名古屋城『エレベーター問題』に抜けている視点/なぜ“木造復元”するのか原点に返るべき」との記事が載っている。
news.yahoo.co.jp

どちらの主張が誤解にもとづいているか

 この記事は明らかな事実誤認(記事の筆者に全ての責任を押し付けるのには忍びない事実誤認)と、「抜けている視点」が2つある。

記事中筆者は

 市民討論会で車いすの男性は、「いままであったものをなくしてしまうというのは、われわれ障害者が排除されているとしか思えない」と発言したのである。


 障害者に最大限の配慮をし、彼らの便宜に供する最善の方法をギリギリまで模索するのは当然で、きわめて重要なことである。ただし、この車いすの男性の発言は、あきらかに誤解にもとづいている。

 と主張される。しかし私には車いすの男性の主張が正しく、記事の筆者こそ「あきらかに誤解にもとづいている」と判断する。

抜けている視点 その1

 記事に「抜けている視点」の1つ目とは、この木造化名古屋城天守が公共建築物であり、建て替えであるという事実を踏まえた視点だ。

 残念ながら記事にはこの視点が見事に欠けている。

 その視点は、日本弁護士連合会の「要望書」(日弁連総第40号 2022年(令和4年)10月24日 )に詳しい。

www.nichibenren.or.jp

 名古屋城天守建物は、現存するのであって、今般の木造化はその建て替えであること。建て替えに伴って現存天守建物で実現されているアクセシビリティを後退させることは、憲法、障害者権利条約、障害者基本法、障害者差別解消法及びバリアフリー新法等によって保護されている障がいのある人の権利利益を侵害する。

 つまり、「いままであったものをなくしてしまうというのは、われわれ障害者が排除されているとしか思えない」との発言は、この日弁連の主張と同等のものであって、法的に正しい。


 記事では車いすの男性の発言が誤解であると断ずる理由を2つ上げる。

 ひとつは史実に忠実に復元する必要があるため。もうひとつは、大型のエレベーターは在来工法による木造建築に適合せず、無理に設置すれば危険をともなうからである。

 この内後者に関して

 エレベーターは揺れてはいけない構造だが、在来工法による木造建築は、地震の際は揺れることで振動エネルギーを吸収する構造になっている。このため、早い段階で名古屋市はエレベーターを設置するという選択肢を見送っていた。

 と述べるが、例えば高層建築における長周期地震動による揺れへの対応など、現代建築は揺れることを前提にしており、そこに使われるエレベーターが「揺れてはいけない構造」とは言えない。またそもそも名古屋市がエレベーターを設置しないとした背景にこうした「揺れ」の問題が大きく取り上げられては居ない。

 名古屋城は各階層が逓減していく四角錐の構造をしているため、各階層を貫く構造物(エレベーター)を設置すれば、柱や梁を抜かなければならない。それは史実に対する再現性を低減させ、構造として脆弱性を増す、故にエレベーターを設置しないとしているはずだ。

 また前者「史実に忠実に復元する必要がある」に対しては、既に名古屋市は構造を強化するため柱や梁を金具で補強することや、耐震性を与えるためのダンパーなどを加えることを明示している。更に、火災検知器やスプリンクラー、防煙設備などを設置する方針でもあるので、すでに史実のままとは言い難い。結果としてどこまで史実通りを実現し、どこから来場者の安全やアクセシビリティの為の設備を設置するのかという恣意的なバランスの問題でしかなく、完全に史実に忠実な再現で建造すれば、それは公共建築ではなく、1/1スケールの木造模型であって、観光客など不特定多数の人々を入場させることはできない。

 名古屋市民が「それでも良い、それでも979億円(最近の公式パンフレットに掲載された再建費用)をかけて再現したい」と言うのであればそうしてもいいだろうが、そういった民意はまだはかられていない。


 記事の筆者には上記日弁連の「要望書」を読まれることをお勧めする。その他にも「掛川城大洲城の再建でエレベータは設置されていないとしても前者は1994年、後者は2004年の設置であり、障害者権利条約の批准も障害者差別解消法の制定もされていなかった時期での再建である。(大意)」とか「姫路城は、国宝に指定されている現存する文化財であるため、改変等に制限があり、エレベーター等の設置が困難であるが、今般の木造化名古屋城にはこの制限はない。(大意)」などの指摘もある。

事実誤認、記事の筆者に全ての責任を押し付けるのには忍びない事実誤認

 記事中次のような記述がある

 幸いなことに、名古屋城天守はその細部にいたるまでが記録にとどめられている(略)名古屋城昭和5年(1939)、名古屋市に下賜され(略)国宝に指定されると、名古屋市土木部建築課はこれらの調査に着手し、文部省の指導のもと、細部にいたるまで計測された。
(略)
 実測図と写真がこれだけそろい、細部にいたるまで史実に忠実に復元できる天守は、名古屋城をおいてほかにない。

 「実測図」と呼ばれていたものは「昭和実測図」であり、「写真」とされているものは「ガラス乾板」のことだろう。

www.nagoyajo.city.nagoya.jp

 名古屋市は繰り返し、これら資料があるので「日本一再現可能な城である」などと主張する。
確かに、資料の豊富さは日本一で、他の城郭に比較すると「日本一再現可能」なのだろうが、では本当に再現可能であるかというと、私はそうは思わない。いや、再現するには資料が不足している。

昭和実測図例

 これら資料は外観、外回りの計測をしたものであって、内部構造を記した図面はない。この例でも示したように、梁と柱の存在は理解できるが、その両者がどのように接合されているかは示されていない。また、壁の中の構造は不明のままだ。
 「昭和実測図」は国宝である建物の記録を取るのであるから、木組みや継ぎ手、仕口などをバラして調べることはできなかった。写真にしてもそうだ。ところどころ壁など壊れている箇所があり、そこから漏れて見える様子から構造を推測しているにすぎない。

 記事でも「使用された木材は、丈夫で耐久性が高いが高価な木曽ヒノキがほとんどで、木材の面から見ても、史上もっとも豪華な天守だった。 」と言っているように、木材も木曽ヒノキであれば、それを組み上げたのも飛騨の匠である(と、推測されている)飛騨の匠の木組みには高度で難解な仕様もある。飛騨の匠の作品中、「千鳥格子」と呼ばれるものは、明治になるまでその構造が不明のままで、明治期に一部を分解して構造が解明された。しかし名古屋城を構成した木組みの実態については、なんら資料も残っておらず、全ては焼失してしまったのである。*1

 記事では

 「焼失したものを復元しても本物ではない(からあまり意味がない)」という意見もあるが、名古屋城天守の場合、わからない部分を想像で補う復元ではない。失われたのと同じ建造物を再現することができるので、後世にいたるまで歴史的空間の正しい理解に寄与するはずである。

 名古屋城天守は「わからない部分を想像で補う復元で」しかない。「失われたのと同じ建造物を再現すること」はできない。現在においてもこうした誤認ははびこっている*2のであり、木造復元天守は「後世にいたるまで歴史的空間の正しい理解に寄与する」と誤って伝えられたら、「日本はすごい!慶長に建てられたお城でも、耐震性を与えるために、柱や梁に補強金具を当て、壁に耐震ダンパーを付けていた!」なんて歴史修正されかねない。そこまでは言い過ぎにしても、構造を伝える資料はないのであって、そこは現代の技術で推測し再現しているだけなのだ。

もう一つの「抜けている視点」

 当ブログでは、昭和5年の名古屋城国宝指定の説明文から読み解ける、名古屋城の本質的価値を探った。

ichi-nagoyajin.hatenablog.com

 この「国宝」指定の説明を要約すると。
徳川家康の指示により築城されたものであること。
・戦国の大大名、前田、毛利、黒田そして加藤清正らの築城したものであること。
・五層楼の壮大な城であること。
・有名なる黄金の鯱をいただいていること。
・保存最も完全であること。
・(陸軍への供用で)今僅かに東御門及び旧奥御殿庭園の一部及び銃眼を有せる土塀等を存ずるに過ぎずといへども、尚城門跡城堀等旧規見るべきもの少なくないこと。


 整理すると、徳川家康の指示により諸大名が建て、その保存が完全である。
そして、五層を重ねた壮大な楼閣を有し、有名な金のシャチホコを載せた天守を含み。古を尋ねるべく「見るもの少なくない」となっている。

 これらのうち、建物そのものについては焼失してしまい保存や真実性は失われてしまった。

 国宝、文化財において「オーセンシティ(真実性)」は最も重要な価値であり、それは建物に関しては第二次世界大戦の空襲で焼失してしまったのである。

 しかし名古屋城の歴史を考えた時、この戦火で焼かれ、焼失してしまったという事すらも歴史的事実ではないのか。そして戦後、昭和34年。戦後復興も間もない頃、名古屋市民がその総工費約6億円のうち、約2億円を寄付し文字通り市民の熱意によって現存天守が再建された、これも歴史的事実である。

 上記国宝指定の説明文に記載されている「五層楼の壮大な城」「有名なる黄金の鯱」は昭和復元天守で再現されている。

 昭和復元天守は「オーセンシティ」を持ち得ない。(復元木造天守にも「オーセンシティ」は無い)しかし、これらの意匠は復元されているのであり、現に今も様々な場面で昭和復元天守の姿は使われている。「本質的価値」が有るのだ。

 昭和復元天守には、名古屋城第二次世界大戦の戦火で焼かれ、それを市民が再建したという歴史的事実を示す「オーセンシティ」がある。

 記事の筆者の言う「なぜ“木造復元”するのか原点に返るべき」とする価値、その価値が「後世に伝えるべき価値」であるとするなら、その歴史を正しく伝え、市民が再建したという息吹を今に伝える昭和復元天守こそを、耐震改修し、最上階までエレベーターを延伸し、令和にふさわしい「みんなの城」にして伝えるべきではないのか。


*1:あるテレビ番組で「名古屋城は築城時の設計図が残っている」と言っていた者がいたが、いやしくも名古屋城徳川幕府の軍事拠点であり、尾張徳川家の要塞であった。そんな図面が残っているわけがない!

*2:その責任は名古屋市にある

人を迎え入れるものが命を奪ってはいけない

 北大西洋に沈んだ「タイタニック号探索ツアー」に使われていた潜水艇「タイタン」が消息を断って4日が過ぎ、乗員5人は絶望視されている。

 この事故について映画「タイタニック」を作成したジェームズ・キャメロン監督がコメントを出している。

www.youtube.com

 詳しい記事はこちら。

jp.reuters.com

 キャメロン監督も調査・観光用の潜水艇を製造するトリトン・サブマリンに出資しており、今回問題となった「タイタン」を所有していたオーシャンゲート・エクスペディションがカーボンファイバーとチタンの複合材を使った深海潜水艇を作っているという話を聞いたとき、懐疑的だったという。

ひどいアイデアだと思った。声を上げればよかったが、その技術を実験したことがなかったので、私より賢い人がいるんだと思い込んだ

 記事によれば、タイタンを巡っては、専門家や元従業員が2018年に安全性に警鐘を鳴らし、オーシャンゲートが認証取得を求めず実験船として運航することを批判していたそうだ。



 なぜ、私がこの件をブログで取り上げる気になったか。

 この潜水艇「タイタン」と、木造化された名古屋城天守は同じ問題を持っている。

ichi-nagoyajin.hatenablog.com

 つい11日前の記事だが、もう一度重要な部分を掲載しておく。

・現在の「木造天守整備基本計画」では、日本建築センター(BCJ)または消防設備安全センターの審査、評定書(どちらによる指摘かは、同基本計画では曖昧で不明)で以下の指摘を受けている。

・内部及び外部への避難ルートが限られている。大天守からの避難経路は、橋台・小天守地階を経由して、地上へと避難する経路1ヶ所のみとなる。

・同基本計画では、上記課題に対して次の対策1~5を講じていると記されているが

・対策1~5には、この「二方向避難路の不在」に対する対策が無い。*1

https://www.nagoyajo.city.nagoya.jp/plan_expert/uploads/5af8f984a5983ae90e210bcacc897d0c.pdf

 つまり、この場所で火災が発生し、ここを使えなくなったら大天守に滞在する来場者(約2500人)は逃げ場を失う。

対策1~5

 今回事故を起こしたオーシャンゲートは潜水艇について、認証取得を求めず実験船として運航していたようだ。名古屋市は日本建築センターの評定は受けたと言っているが、上記のような指摘に対する対策は施されておらず、国交大臣の認定も受けていない。十分な安全性が担保されているとは言い難い。

 現在、名古屋市が計画している木造化名古屋城天守は、二方向避難路が不在であり、災害発生時に多大な人的被害を生み出す恐れがある。人を迎え入れるものが命を奪ってはいけない。



対策1から5に対する詳細検討

対策1 避難安全性の確保
 課題となる「二方向避難路」について記載されるべき項目と思われるが、入場制限や3~4階、4~5階の話題だけで、肝心の大天守出入り口について対策が見られない。

対策2 出火防止・初期消火
 初期消火及び火災の制御と避難路の確保はともに備えるべき必須の条件である。いくら優れた初期消火設備があっても、避難路の不在は代替できない。

対策3 火災被害拡大防止
 これも上記「対策2」同様、どんなに優れた火災被害拡大防止策がとられていても、避難路の不在は代替できない。

対策4 安全な避難経路の確保
 ここでも大天守出入り口の問題に対する対策は言及されていない。大天守内に煙に汚染されていない避難経路が確保されていても、最終的に出入り口が塞がっていて、どのように避難するのだろうか。

対策5
 この文章は全体的に緊張感にかけている。この「対策5」については、表題が抜けている。
 また、上記「ア 防災・避難計画の基本的な考え方」の次の行「復元原案では以下の~」となっているが、正しくは「復元案では」の筈である。「復元原案」とは復元の目標とする消失した名古屋城を指すのであって、復元建築物の建築案は「復元案」である。
 それはさておき、ここでも「(5階から)下階への二方向避難路を確保する」となっているが、大天守出入り口の二方向避難については言及されていない。


www.youtube.com



*1:詳細は下記欄外

「MtF経産省職員トイレ使用裁判」について

再掲に当たって

これはアナキズム実践道場「読書会通信第十六号」(発行:2023年6月)に掲載された原稿を再掲するものです。

 当事件については、6月16日に最高裁で弁論を開き7月11日に最高裁判決が言い渡される予定で、報道によれば「職員側の上告を受け、最高裁はこれまでの判決を変更する際に必要な弁論」とのことで、高裁で出された後退した判断が是正される可能性があります。

最高裁が初めて性的少数者の職場環境に関する裁判で判断を示すことになります。

news.tv-asahi.co.jp

追記(2023/7/11)最高裁判決について

www3.nhk.or.jp
https://archive.md/20230711060959/https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230711/k10014125111000.html

7月11日に最高裁判決が言い渡された(最高裁判所第3小法廷の今崎幸彦裁判長)

「職員は、自認する性別と異なる男性用トイレを使うか、職場から離れた女性用トイレを使わざるを得ず、日常的に相応の不利益を受けている」と指摘しました。

そのうえで、職員が離れた階の女性用トイレを使っていてもトラブルが生じていないことなど今回のケースの個別の事情を踏まえ、「人事院の判断はほかの職員への配慮を過度に重視し、職員の不利益を軽視したもので著しく妥当性を欠いている」としてトイレの使用制限を認めた人事院の対応は違法と判断し、判定を取り消しました。

5人の裁判官全員一致の結論で、判決を受けて、経済産業省もトイレの使用制限の見直しを迫られることになります。

性的マイノリティーの人たちの職場環境に関する訴訟で最高裁が判断を示したのは初めてで、ほかの公的機関や企業の対応などにも影響を与えるとみられます。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/191/092191_hanrei.pdf
www.huffingtonpost.jp


判決本文等、資料は順次補完したいと思います。

「MtF経産省職員トイレ使用裁判」について

 いわゆる「MtF経産省職員トイレ使用裁判」について、本年(令和5年/2023年)4月25日、 最高裁第3小法廷(今崎幸彦裁判長)は、6月16日に弁論を開くと決めた。二審東京高裁判決の判断が見直される可能性がある。(朝日新聞デジタル 2023年4月25日)

 この裁判をめぐり、高裁判決において「MtF職員の敗訴」と受け止められたことから、「MtF者の女性トイレ使用が認められなかった」かのような主張が振りまかれているが、それは誤解である。

 経緯を簡単に説明する。(下記参考文献7を元に一部編集補足した)

・当該者は身体は男性、性自認は女性の国家公務員(経産省職員)であり、専門医から性同一性障害の診断を受けており、(手術による侵襲に耐えられないため)性別適合手術は受けていない。戸籍上は男性だが、平成20年頃より私的な時間はすべて女性として過ごしている。
・平成21年、当該者は所属部署の長に自らが性同一性障害であることを伝え、女性職員として勤務したい旨の要望を申し入れた。経産省は当該者との面談等を経て、(性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律との関係で必要な性別適合手術を受ける関係での、希望する性別での実生活経験の必要性を踏まえ)自認する性のトイレ(女性用トイレ)の使用は認めるが、他の職員への配慮の観点から、一定の制限(所属部署所在階とその±1階の女性用トイレの使用は認めないとの制限)の下、使用すること等を伝え、当該者も了解した。
・平成25年当該者は、トイレの利用や異動、性的プライバシーの尊重等に関し、人事院国家公務員法第86条に基づく措置要求を行った。人事院は措置要求を「トイレ利用に関しては当該者に職場の女性用トイレを自由に使用させる要求」と整理した上で、いずれも認められないと判定した。(本件判定、この裁判は経産省の処遇ではなく、人事院のこの判定を争点としている)
・当該者は国を相手に本件判定の取消と、女性用トイレの使用制限を受けている事に関し経産省の職員らがその職務上尽くすべき注意義務を怠ったとして国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求め、訴訟を提起した。
・第一審判決(東京地裁判決令和元年・12・12労判1223号52頁、事件番号は下記参照)は請求を一部容認、一部棄却(本件トイレに係る処遇及び、経産省職員等の様々な言動のうち、所属部署の長による「なかなか手術を受けないんだったら、もう男に戻ってはどうか」との旨の発言のみを国家賠償法上違法と判断し、また本件判定のうちトイレ利用関連の事項のみ取り消し)した。双方控訴。

 控訴判決は、国の控訴に基づき原判決を一部変更。当該者の控訴等は棄却された。

 一審判決において当該者の主張が認められたが、高裁判決において当該者の控訴が棄却され、国の主張を容れて原判決が一部変更された事を受け、「MtF職員の敗訴である」と受け止められたことから、「MtF者の女性トイレ使用が認められなかった」かのような主張が振りまかれているが、それは誤解である。

 「『性自認に基づいた性別で社会生活を送る』利益は人格的生存に関わるものであり、憲法13条に基づき保障される重要な利益の一つと考えられている」(下記参考文献5)

 しかし「性別適合手術を受けていないトランスジェンダー(MtF)が女性用トイレを利用する際に生じる懸念として、まず挙げられるのは、トイレを利用する女性の安全の確保である。トランスジェンダーと異なる女装家との区別が一見して困難な場合もあり、性的暴力や盗撮等の可能性等について、たとえその可能性が低いとしても、女性の感じる不安や恐怖に配慮する必要がある。
 もっとも、本件ではこの点は問題とされていない。
 (中略)
 本判決(高裁判決)の見解によれば、使用者が当事者や他の労働者の利益を考慮して判断したのであれば、その内容が著しく不合理なものでない限り、トイレ利用の制限について不法行為責任を問うことは難しい。他方で、使用者が当事者の利益を全く考慮せず、漫然と性自認の利益を侵害していると言える場合には、不法行為責任(及び安全配慮義務)の責任が生じうる」(下記参考文献2)との意見もある。

 現在いわゆる「LGBT法」の制定を巡って議論が行われる中で、同法の制定を阻止しようとする人たちから、「性自認によって女性用トイレの利用を認めることは、そう主張すれば、誰でも女性用トイレに入れることになってしまう」などとする主張が振りまかれているが、これは極端な解釈である。また、入浴施設に関しては、元々入浴場所を性別で分ける法律は存在せず、各県の条例でそれを定めている。その為に湯治場などでは今でも混浴が残っている。施設管理者の判断に任されているのであり、現在も「入浴着」を着用しての入浴が許容されていることなどから、社会における理解と配慮が必要と思われる。

 この件について筆者がLGBT当事者と議論した範囲では、その当事者の見解では、やはり周囲の理解を得るには当事者のコミュニケーション能力に負うところが多く、周囲からの無理解に対する個々人の対応が求められている、現在の日本社会では性自認の困難について、理解は広がっていないという印象を得た。

 ここで筆者は「性嫌悪」または「性器嫌悪」について配慮する必要を補足したい。「性嫌悪」または「性嫌悪症」はDSM-IV-TR(アメリカ精神医学界の定めた「精神障害の診断と統計の手引」)にも記載されている精神疾患ではあるが、これも個性として尊重されるべきものと考える。この症状には勃起した男性器に対する恐怖「Phallophobia」や女性器に対する恐怖「Eurotophobia」が認められている。しかし「性器嫌悪」は精神疾患として特殊な個人的傾向とは片付けられない。日本社会において、公衆の面前で全裸になる行為は刑法(175条)によって禁じられており、この法律が守る法益は「公衆の性的感情」である(現在、一般に言われている「健全な性風俗」という概念には問題がある)。
この「公衆の性的感情」が守られるべき法益であるとすると、現在、巷間議論されている「男性器のあるMtF自認者による女性用公衆浴場の利用」という問題に一定の解決への道を模索することができるのではと思われる。つまり公衆浴場において「入浴着」の着用が自然なものと社会が認知すれば、公衆浴場は他の公共空間と変わることはないのであって、誰もが気兼ねなく行き来できる場所となるだろう。トイレなど排泄のために性器を露出しなけばならない場合には、個室化されれば良く。既に女性用トイレではおおむね個室化されており、男性用についてもそうした配慮が行われるかもしれない。公衆浴場においても洗体のために性器を露出しなかればならない場面で個室化が図られれば問題の解決につながるものと考えられる。

 ここで特に強調しておきたいことは、MtF者の男性器忌避やFtM者の女性器忌避に着目すべきであると言うことだ。彼ら/彼女らは自らに備わった性器に対しても忌避感を持つという事例があるのだ。こうした傾向には理解や配慮が必要であると思われる。また特に現在、MtF者が男性用トイレを使用する場合には、男性用トイレでは共用空間において性器の露出が行われるため、男性器忌避感を持つMtF者は苦痛を感じることとなる。これは一定程度配慮すべき事柄だろう。

 安富歩東大教授(本人も女装家としてLGBT当事者である)は「LGBTなどという存在は居ない、あるのはLGBT差別である」と主張されている。そもそも「正常な性自認」も「正常な性指向」も定義は不可能である。特に性指向に関しては「生殖のためだけの必要最小限の行為を行う」というものが「正常」とみなすとすれば、それも甚だ奇異に感じられる。元々何をもって「正常」といえるかわからないものを恣意的に「特異」として居るだけであり、他者に害が及ばない限り、または公共の福祉に反しない限り、個々人の自由に委ねるのが現代社会の原則であり、憲法13条が保証する日本社会が個々人に保証した幸福追求権である。そうであるなら、当人の「性自認に基づいた性別で社会生活を送る」自由は何も難しい議論を必要としないだろう。他者の性自認を特異とみなし、自身の性自認を正常とみなすかのような狭量で、前近代的差別意識を社会が乗り越えなければならないだけだ。


【参考文献】
1.季刊労働法279号(通巻297号)2022/12/15 193
井川志郎 季刊労働法(労働開発研究)
トランス女性の性自認に基づくトイレ使用に対する制限等の違法性 国・人事院経産省職員)事件・東京高判 令和3年5月27日 労判1254号5頁【判例研究】

2.法律時報94巻6号(通巻1177号)2022/6/1 120
島田裕子 法律時報日本評論社
トランスジェンダー職員に対するトイレ利用制限等の可否 国・人事院経産省職員)事件(労働判例研究)

3.法学セミナー増刊 速報判例解説 Vol.30 新・判例解説Watch 2022/4/25 11
岡田高嘉 新・判例解説Watch日本評論社/TKC
トランスジェンダーの自認する性別に係るトイレの使用について

4.令和3年度重要判例解説 2022/4/10 184
内藤 忍 判例百選電子版(有斐閣
性同一性障害である国家公務員に対するトイレ使用制限等の違法性ー国・人事院経産省職員)事件

5.ジュリスト2022年4月号(No.1569) 2022/4/1 130
石崎由希子 ジュリスト電子版(有斐閣
労働判例研究]◇性自認に基づくトイレ利用の制限と違法性ー経済産業省事件

6.法律時報93巻12号(通巻1170号) 2021/11/1 4
岡田正則 法律時報日本評論社
職場での性的自認の尊重と人事院・裁判所の責任 東京高裁2021(令和3)年5月27日判決(判例時評)

7.ジュリスト2021年9月号(No.1562) 2021/9/1
竹内(奥野) 寿 ジュリスト電子版(有斐閣
労働判例速報]性同一性障害である国家公務員の性自認に基づくトイレ利用の制限と国家賠償責任ー国・人事院経済産業省職員)事件

【一審判決】
判決日:令和1年12月12日
判決:東京地方裁判所
事件番号:平成27年(行ウ)第667号
     平成27年(行ウ)第32189号
事件名:行政措置要求判定取消請求事件(第1事件)
    国家賠償請求事件(第2事件)

【二審判決】
判決日:令和3年5月27日
判決:東京高等裁判所
事件番号:令和2年(行コ)第45号
事件名:行政措置要求判定取消、国家賠償請求控訴事件
著名事件名:経済産業省職員(性同一障害)事件


河村城は嘘の塊なので、問題はバリアフリーだけではない

 私は名古屋城木造化は実現不可能であると思っている。財政的な問題も解決着いていないし、石垣の構造の問題や耐震性能の保証も課題だ。

名古屋城木造化979億円

 そもそも設計段階で不特定多数の入場者を迎え入れる法的安全性の担保がない。
 名古屋市は「日本建築センターの評定を受けています」と説明しているようだが、その中身は黒塗りで不明だ。

http://www.nagoya.ombudsman.jp/castle/200318-2.pdf

 こうある「(略)本委員会は、下記について提出された防災計画書(資料別添)に基づき、申し込みの範疇において「新・建築防災計画指針」に照らし、火災時の避難安全性能に関する検討を行った結果、下記7に示す前提の下に妥当なものと判断します。」とある。

 そして、「7.評定の前提」はあちこち黒塗りに成っているが。
1-1 在館者密度の制限
1-2 安全な避難経路の確保(特に、③と④は重要と思われるが黒塗り)

2-2 歩行困難者、逃げ遅れ者対策

 どうにも不穏なものを感じずには居られない。

 そもそもこの「日本建築センターの評定」というのは、この後に国土交通大臣の認定を受けてはじめて「法同等の安全性がある」と言えるらしく、名古屋市はこの大臣の認定は受けないとしている。

 今日特に取り上げたいのは2月17日に行われた名古屋市有識者会議、「天守閣部会(第27回)」会合の議論だ。

表題

https://www.nagoyajo.city.nagoya.jp/plan_expert/uploads/5af8f984a5983ae90e210bcacc897d0c.pdf

基本計画(目次)

 この中に「木造天守整備基本計画(目次)[案]及び進捗管理表」というページが有る。私が名古屋市と裁判をやった際に「名古屋市は基本設計で作成するはずの基本計画ができておらず、基本設計業務は完了していない、完了していない業務に代金を支払ったのは違法である」と訴えた、基本設計で作成すべき「基本計画」なんだが、今に至ってもまだできていない。これを見ると、私達が裁判に負けた理由がわからない。

 まあ、それは良いとして。

 「⑤バリアフリー」は「次回以降」ということに成っていて、これがこの15日に話し合われる予定だったものが、流れたわけだ。

 ここに「新規」として「③防災・避難計画」がある。「23/2/17」で取り上げる予定なのだろう。

 対象となるドキュメントはPDFでいうと14ページになる。欄外の番号でいうと「8-7」となっている。

日本建築センター

 ここに「既に第三者機関である一般財団法人日本建築センター(BCJ)及び消防設備安全センタ-の審査を受け、評定書が発行された防災・避難計画の概要を以下に示す。」とある。

 上の日本建築センターの評定書では黒塗りばかりだったが、こちらで概要は掴めるかもしれない。

 と、早速恐ろしいことが書かれている。

避難路

「大天守からの避難経路は、橋台・小天守地階を経由して、地上へと避難する経路1ヶ所のみとなる。」

建築基準法施工令12条で求められている「二方向避難路」が確保されていないと明記されている。

日本建築センターの評定によると「二方向避難路」が確保されていないと指摘されているのだ。

これでは危険極まりない、名古屋市の基本計画では「上記課題に対し次の対策1~5を講じ、対策の効果を避難計算等により検証し、観覧者が安全に避難できることを確認した。」と二方向避難路の問題に対策を行ったと言っている。

では、順に見ていこう。

■対策1 避難安全性の確保
・入場する人数に上限を設ける
・3階から4階の間に階段を1ヶ所付加する
・入場制限を行い避難可能人数を超えないようにする
・小天守も入場制限

・・・「二方向避難路」の対応は無いねぇ

■対策2 出火防止・初期消火
・大・小天守各所に煙感知器等を配して火災の早期発見に努める
・開館時間には、適所に係員と消火器・屋内消火栓を配置
・夜間や休業日には監視カメラによる遠隔からの監視
スプリンクラーや屋内消火栓等を付加

・・・「二方向避難路」の対応は無いねぇ、ちなみに「スプリンクラー」については消防から「そんなもので火が消えるなと思うな(大意)」と指摘を受けている。

■対策3 火災被害拡大防止
スプリンクラーが作動しても、発生する煙が避難や救助に支障を及ぼす

・蓄煙や自然排煙を行う

・・・え~っと「二方向避難路」への対応は?

■対策4 安全な避難経路の確保
・板壁や板戸もしくは感知器連動で自動閉鎖
・煙に汚染されない避難経路を確保

・・・あの~「二方向避難路」への対応は?

■対策5
・5階に救助袋式避難ハッチ設置

・・・5まで見ても「二方向避難路」への対応は何もない!

対策1から5

指摘されていたのは「大天守からの避難経路は、橋台・小天守地階を経由して、地上へと避難する経路1ヶ所のみとなる」から「上記課題に対し次の対策1~5を講じ」るんじゃなかったんですか?

河村市政にありがちなんですが、最初に言っていることと、最後のオチが異なる。
気を付けていないとこの詐術にハマってごまかされる。

名古屋城天守木造化の基本計画においては「二方向避難路」の問題は何も対策されておらず、建築基準法施工令12条違反である。

 これは単なる法令違反という問題ではない。

 度々起こるレジャービルや、マンガ喫茶などの多数の死傷者を発生させる火災や、まだ記憶に生々しい「京都アニメーション」における放火事件。被害の広範な火災が起きる時、この「二方向避難路」の問題が存在する。レジャービルや、マンガ喫茶などにおいて無責任な経営者が違法な改造を行い、結果として避難路を失った客や従業員が煙に巻かれて亡くなる。そんな事例はいくらも見聞きする。こうした無責任な経営者と、名古屋市が同じレベルとは呆れる。

 名古屋城天守が燃えれば、滞留来場者は2500人程度見込まれる。

 名古屋市の職員は、バカな市長がいえば、こんな危険な計画を前に進めようとするのか?

 来場者の命をどう思っているのだろう。

 名古屋市の消防長は、こんな危険な建物に同意を行えるのだろうか。
 この避難路で命を落とすのが、自分の部下かもしれないのに?

 それは無垢の観光客、来場者のための犠牲ではない、あの無責任でバカな市長の為の犠牲なんだ。

 それだけは止めよう。

 なんとか事業を止めるか、河村を辞めさせよう。

追記:12日の有識者会議に提出された「地上からのスロープ」について、有識者は了承したそうだが、そのスロープが「二方向避難路」により一層の困難を突きつけている。果たして本当に解決は付くのだろうか。

名古屋市はどこまで人命を軽視するつもりなのだろうか。


 さて、6月13日には

www.dpi-japan.org

差別は許さない!名古屋市役所前緊急抗議集会(主催:名古屋城木造天守に EV設置を実現する実行委員会)が午前10時から名古屋市役所前で行われます。


名古屋市議会においても
名古屋市:委員会の開会日程(予定)(市会情報)

6月14日(水曜日) 午後1時から、総務環境委員会で「本市における人権に対する認識等について」

6月15日(木曜日) 午前9時30分から、財政福祉委員会で「障害者差別に関係する法令等の基本的な考え方について」
及び、午後3時30分から、経済水道委員会で「名古屋城バリアフリーに関する市民討論会での市民の発言に対する当局の対応について」が議題とされています。

また、名古屋城天守有形文化財登録を求める会としても「名古屋城天守木造化事業に対する申入書」を提出する予定です。内容については、後日。