北大西洋に沈んだ「タイタニック号探索ツアー」に使われていた潜水艇「タイタン」が消息を断って4日が過ぎ、乗員5人は絶望視されている。
この事故について映画「タイタニック」を作成したジェームズ・キャメロン監督がコメントを出している。
詳しい記事はこちら。
キャメロン監督も調査・観光用の潜水艇を製造するトリトン・サブマリンに出資しており、今回問題となった「タイタン」を所有していたオーシャンゲート・エクスペディションがカーボンファイバーとチタンの複合材を使った深海潜水艇を作っているという話を聞いたとき、懐疑的だったという。
ひどいアイデアだと思った。声を上げればよかったが、その技術を実験したことがなかったので、私より賢い人がいるんだと思い込んだ
記事によれば、タイタンを巡っては、専門家や元従業員が2018年に安全性に警鐘を鳴らし、オーシャンゲートが認証取得を求めず実験船として運航することを批判していたそうだ。
なぜ、私がこの件をブログで取り上げる気になったか。
この潜水艇「タイタン」と、木造化された名古屋城天守は同じ問題を持っている。
つい11日前の記事だが、もう一度重要な部分を掲載しておく。
・現在の「木造天守整備基本計画」では、日本建築センター(BCJ)または消防設備安全センターの審査、評定書(どちらによる指摘かは、同基本計画では曖昧で不明)で以下の指摘を受けている。
・内部及び外部への避難ルートが限られている。大天守からの避難経路は、橋台・小天守地階を経由して、地上へと避難する経路1ヶ所のみとなる。
・同基本計画では、上記課題に対して次の対策1~5を講じていると記されているが
・対策1~5には、この「二方向避難路の不在」に対する対策が無い。*1
https://www.nagoyajo.city.nagoya.jp/plan_expert/uploads/5af8f984a5983ae90e210bcacc897d0c.pdf
つまり、この場所で火災が発生し、ここを使えなくなったら大天守に滞在する来場者(約2500人)は逃げ場を失う。
今回事故を起こしたオーシャンゲートは潜水艇について、認証取得を求めず実験船として運航していたようだ。名古屋市は日本建築センターの評定は受けたと言っているが、上記のような指摘に対する対策は施されておらず、国交大臣の認定も受けていない。十分な安全性が担保されているとは言い難い。
現在、名古屋市が計画している木造化名古屋城天守は、二方向避難路が不在であり、災害発生時に多大な人的被害を生み出す恐れがある。人を迎え入れるものが命を奪ってはいけない。
対策1から5に対する詳細検討
対策1 避難安全性の確保
課題となる「二方向避難路」について記載されるべき項目と思われるが、入場制限や3~4階、4~5階の話題だけで、肝心の大天守出入り口について対策が見られない。
対策2 出火防止・初期消火
初期消火及び火災の制御と避難路の確保はともに備えるべき必須の条件である。いくら優れた初期消火設備があっても、避難路の不在は代替できない。
対策3 火災被害拡大防止
これも上記「対策2」同様、どんなに優れた火災被害拡大防止策がとられていても、避難路の不在は代替できない。
対策4 安全な避難経路の確保
ここでも大天守出入り口の問題に対する対策は言及されていない。大天守内に煙に汚染されていない避難経路が確保されていても、最終的に出入り口が塞がっていて、どのように避難するのだろうか。
対策5
この文章は全体的に緊張感にかけている。この「対策5」については、表題が抜けている。
また、上記「ア 防災・避難計画の基本的な考え方」の次の行「復元原案では以下の~」となっているが、正しくは「復元案では」の筈である。「復元原案」とは復元の目標とする消失した名古屋城を指すのであって、復元建築物の建築案は「復元案」である。
それはさておき、ここでも「(5階から)下階への二方向避難路を確保する」となっているが、大天守出入り口の二方向避難については言及されていない。
*1:詳細は下記欄外