市民のための名古屋市会を! Ver.3.0

一人の名古屋市民が「地域委員会制度」「減税日本」に対する疑問をまとめるサイトです。(since 2011/3/3)

名古屋の158日

昨日、河村たかし名古屋市長が緊急記者会見を開いたそうだ。その席上現在進めている「名古屋城天守木造化計画の2022年竣工について、遅延する」と報告したそうだ。

この結論については別に驚くには当たらない、至極当然の事であって、158日前から分かっていた。(理由は後述)

それよりも、いい加減に日本人は政治について成熟しなければならない。マッカーサー終戦直後、日本人を「12歳」と評したようだが、それから日本人は成長するどころか、退化しているように見える。さしずめ現在は、せいぜい「10歳」といったところだろうか。まあ、それでも「やれSLだ、やれお城だ」と、デパートのおもちゃ売り場の前で駄々をこねる9歳児のような、どこかの市長よりは良いかもしれないが。

ポピュリスト*1、いや、もっと実態に即していうならば「煽動家」にとって「政治的課題は解決されない方が良い」

憲法改正を求める国民運動を進める者にとっては、憲法が自分たちの主張のように改正されれば運動は終了する。
原発を全廃する運動を進める者にとっては、全電力会社が原発を全廃してしまえば活動の基盤を失う。
北朝鮮拉致問題を訴える政治家は北朝鮮との国交が困難になればなるほど、よりいっそう圧力を増やし、煽動を強くする。

どうしたことだろう、イソップの説く「北風と太陽」の寓話は、10歳程度なら理解できて当然なのだが、日本の社会は理解できていないようだ。

NHKが本当にぶっつぶれればN国は路頭に迷うだろうし、いつまでも大阪が都にならない限り、大阪維新の会は安泰という事になる。N国はNHK受信料の整合性よりも、単に課題をフレームアップして、問題がこじれてくれること*2を望んでいるように見えるし、大阪都構想も、都構想以外に同じ課題解決の方法はあるようにも見えるのだが、そうした「太陽政策」は取られず、いたずらに圧力を強めて対立を精鋭化させる者の方が人気を博すのだろう。

「煽動家」は「政治課題」を扇動し、支持を得ようとするが、その実、その「政治課題」の解決は望まない。
河村名古屋市長にとっても、名古屋城の木造化が「懸案事項」である限り、木造化を求める市民の支持が得られると喜んでいることだろう。

そもそも名古屋城天守木造化を求めている方々は、いったい自分たちが何を求めているのか分かっているのだろうか。
車いすの人々がエレベータの設置を求め、「バリアフリー」を訴え、差別的待遇の改善を求める際にも「本物の天守閣にはエレベーターはない」などと冷笑的に言っていた人々もいるようだが、では、その「本物の天守閣」なるものが、実はどのようなものか、理解している人は居るのだろうか。*3

いない筈だ。「自分は判っている」というヒトは何か誤解している。理解していると「思い込んでいる」だけに過ぎない。名古屋市民で復元される「木造天守」の実態について知っている者はいない。なぜなら、基本設計が終了した段階で、その資料はほとんどが「非開示」で真っ黒の「黒塗り」状態であるからだ。

名古屋城天守閣整備事業 基本計画書(概要編・資料編・図面編)

つまり、名古屋城天守木造化を求める人々というのは、実際には何ができるのか理解しないまま、盲目的に賛意を表しているに過ぎない。なんともおめでたい話だ。*4

今回は、名古屋城天守木造化に先立って、現天守建物を先行解体するという文化庁への申請が通らなかったわけだが、実は名古屋城を木造復元するという課題に対して、この文化庁のハードルは一番最初の、そしてもっとも容易な関門に過ぎない。法的な問題はこれ以外にもあって、その中には解決不能の課題も横たわっている。つまり、その幾つかある関門のどこかで、この計画はとん挫する。それは目に見えていた。それでいてそうした事前の検討も不十分なまま、すでに数十億円の公費が浪費されている。

なぜ、そんなバカな事が止められなかったのか、止めなかったのか。



さて、さきほど昨日の事態は「158日前から分かっていた」と書いた。158日前というのは今年の3月25日だ。

文化庁は「現天守建物の先行解体」を申請するにあたって、名古屋市に5項目の課題を提示していた。そのうちの3つは「石垣部会の意見を付すこと」とされていた。

現天守閣解体にかかる現状変更許可申請に関する留意事項について

「意見を付すこと」とはいかにもお役所的な言葉遣いだが、簡単に言えば「石垣部会の同意を得ること」であるのは明白だ。石垣部会(有識者)から見ても問題の無い申請であるのか、と聞いているわけだ。この「石垣部会の意見」が3月25日に出された。

内容は「完全否定」だ。

大人の世界で「意見を付すこと」と言われて、「完全否定の意見」が出されたら、「付すこと」ができないので、申請そのものを見合わせるのが当たり前の対応だ。「意見を付す」なんだから、否定意見であれ「意見を付して」申請を進めれば許可される。などと考えるのは、それこそ9歳児以下の知能と言われても仕方がない。鼻の下の青っ洟を拭いた方が良い。

文化庁はさぞかし驚いたことだろう。
名古屋市は先行解体の計画書を提出している。それに対する有識者の意見は完全否定だ。いったいどちらの意見を容れればいいのか。

つまり、昨日。令和元年8月29日の結論は、すでにそれに先駆ける3月25日に確定していたという事であり、名古屋城天守木造化計画はあたら貴重である筈の158日間を足踏みしていたに等しい。つまり、これを見てもわかるでしょう。河村名古屋市長にとって、名古屋城天守の木造化など重要ではない、その一刻も早い実現など微塵も考えてなどいない。この158日の間、はっきりしない結論を市民の前にぶら下げて「がんばっとるでよ、応援してちょうよ」と言っているだけだったのだ。そして、今回のコメントでも「市民の皆様には、一層の応援をお願いいたします」とくる。

市長コメント(令和元年8月29日)

「政治的課題は解決されない方が良い」のだ。

煽動家の口車は、信じる方がバカだし、相手をするだけ無駄なのだ。いい加減これぐらい当然の事を知らなければならない。


しかし、すごい文章だ。相変わらず「謝ったら死んじゃう病」にかかっているのだろうね。一切謝罪もなく、責任を感じている風もない。

そもそも5月の文化審議会に先行解体案の申請を行い、審議会において許可が出なかった段階で、やはり今日の結論は見えていたわけだが、河村市長は「文化庁において、臨時の専門部会を開催して、早急な回答を出す」意向であると市民に説明していた。

けれども実際には「臨時の専門部会」も「早急な回答」も得られていない。

果たして、文化庁名古屋市に「臨時の専門部会」を開催するという虚偽の説明をしたのだろうか。河村名古屋市長は文化庁に騙されたのだろうか。
それとも、河村名古屋市長が文化庁が言いもしていない「臨時の専門部会」やら「早急な回答」なるものを口から出まかせ、騙っていたのだろうか。

名古屋城跡の現状変更申請に係る名古屋市への確認事項に対する回答 令和元年6月19日 名古屋市


名古屋市文化庁の間で行われている意見交換は黒塗りされたままだ。市民に経過が隠されたままとなっている。*5

この6月議会に、17億円あまりの木材購入、契約について、議員より「文化庁の回答が得られるまで、予算執行を止めた方が良いのではないか」という意見が出された、それに対して名古屋市は予定通り実行すると回答した。この予算執行の根拠が「臨時の専門部会」やら「早急な回答」であったとすれば、名古屋市は虚偽によってミスミス17億円程度の予算を無駄に消費した可能性もある。

いったいどういった経緯で「臨時の専門部会」なる話が持ち上がったのか、文化庁名古屋市のやり取りについて公開すべきだし、それなりの説明責任があるのではないだろうか。名古屋市文化庁の間で行われている意見交換の黒塗りを解除し、経緯の公開が必要だ。


そもそもこの名古屋城天守木造化計画は、その当初から嘘が蔓延している。

実は、名古屋城天守木造化計画を誰も「決定」していないし、名古屋市民も推進などしていない。

名古屋城天守木造化計画について、名古屋市民の意見を聞いた具体的な行動とは、いわゆる「2万人アンケート」だが、これは名古屋城天守について、現在の天守建物の改修か木造かを市民に問うたものではない。「アンケート」とは名ばかりで、内容はカラー刷りの豪華な「名古屋城天守木造化案」の提案書と、やはり豪華な完成予想CGを収めたDVDを同封した、「名古屋城木造化計画」の広報だった。

そして挙句の果ては「現天守については耐震改修をしても40年しかもたない」という虚偽の説明だ。

当ブログではすでに幾度も指摘しているが、「耐震改修」とは建物の寿命を長期化させる改修ではない。建物の寿命を長期化させる改修というものは、別にあって、大阪城の平成大改修などで実際に行われている。そして、大阪城天守建物が「40年しかもたない」などという人は居ない。

文化庁文化財の復元に関する基準*6を設けているが、そこでは様々な整備手法の検討を求めているのであって、名古屋市においてこの長寿命化改修について検討していないという事実は、文化庁の基準に違反している。(こんな単純な事を、名古屋城天守閣部会は見落としており、どこが有識者かと呆れかえる)

2.基準
歴史的建造物の復元が適当であるか否かは、具体的な復元の計画・設計の内容が次の各項目に合致するか否かにより、総合的に判断する。
(1)基本的事項
ウ.復元以外の整備手法との比較衡量の結果、国民の当該史跡等の理解・活用にとって適切かつ積極的意味をもつと考えられること。

http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kondankaito/shiseki_working/01/pdf/r1411437_04.pdf

豪華本によって木造化を売り込み、DVDで美麗なCGを訴える。
ここまでして、2万人に木造化を売り込んで、それで市長案に賛成したのは、1553人に過ぎない。

2万人中、市長案に賛成したのは1553人だ。

たった7.7%

この「アンケート」は上記のように虚偽の設問によって回答が歪められている。

なので、集計結果など意味をなさないが、それでも私が注目したいのは、2万人中、回答を返した市民が7224人にとどまったという事実だ。

ichi-nagoyajin.hatenablog.com


つまり、大多数の名古屋市民にとって、名古屋城天守木造化など重要課題ではなく、他に行うべき課題はあるという事なんだ。

また、議会においてもそうだ。議会は名古屋城天守木造化など「決定」していない。

名古屋市会が審議している名古屋城関連の予算等について、その根拠は「特別史跡名古屋城跡保存活用計画」という事になる。
この「保存活用計画」においても、名古屋城天守木造化は決定事項ではない。

保存計画には次のように書かれている。

木造復元は、特別史跡内の建造物として本質的価値の理解を促進するという点において優位性が高く、また、現天守閣が有する価値の保存、継承といった木造復元における様々な課題も、それぞれの方策によって克服することが可能であると考えられるため、今後、現天守閣の価値を超える木造復元の意義を丁寧に説明することを前提として、整備方針は木造復元とし、検討を進める

つまり、この保存計画の中では木造復元の方が優位性があるので、整備方針として木造復元をすえ、検討を進める。とされているわけだ。

結果として、現在進められている設計業務においても、この「検討」のためであるとも言える。

現在名古屋市竹中工務店と結んでいる事業の基本協定は、技術提案交渉方式と呼ばれるものであり、これは実現が困難な事業について、民間事業者の技術を取り入れ、その提案によって実現をはかるという方式であって、名古屋城天守木造化においては、2020年竣工という工期の短さが大きな課題だった。(つまり、すでにこの事業契約の基盤自体無くなっている。工期の条件がなくなったのであれば、まともな競争入札に切り替えるべきだろう)

この技術提案交渉方式では、その提案が正当なものであるか、提案後の評価、審査が重要であるとされている。
なので、本来であれば基本設計が終了した段階で、その設計結果、仕様について広く公開し、提案の正当性を審査すべきであるにもかかわらず、それがなされていない。このような隠ぺいされた状態でこの技術提案交渉方式を進めることは、その制度の趣旨を歪める行為であろう。



さらにすごい問題もある。上記の「保存活用計画」は名古屋城の整備についての基本的な方針であるが、様々な問題がある。

当ブログも、その一部について記述した。

ichi-nagoyajin.hatenablog.com

こうした基本計画については、市民からの意見を反映させるために、パブリックコメントが実施されるが、この結果が隠ぺいされている。

名古屋市オンブズマンが保存していた。

特別史跡名古屋城跡保存活用計画(案)に対する 市民意見の内容及び市の考え方 平成30年5月 名古屋市


全体の意見、227件の内、
特別史跡名古屋城跡の整備に関する意見」が196件あり、その中でも「天守閣木造復元に否定的な意見」は140件。「天守閣木造復元に肯定的な意見」は9件である。「天守閣整備におけるバリアフリーに関する意見」も27件にのぼる。

名古屋市にとって、木造復元を進めたい河村市長にとって「不都合な市民意見は隠ぺいしている」ととられても仕方があるまい。

まことに狡い対応だ。


ここまで隠ぺいや嘘が蔓延していれば、もういいだろう。これでも河村たかし名古屋市長を信じ、名古屋城天守木造化に期待するというのであれば、そのような愚行に対して反論は述べない。

ichi-nagoyajin.hatenablog.com

ichi-nagoyajin.hatenablog.com

ichi-nagoyajin.hatenablog.com


NPO法人フリースクール全国ネットワークなどが、夏休み明け居場所を無くした方たちの場所を提案しています。

cocoaru.org

また、2015年に鎌倉市の図書館が次のようなツイートを掲載しました。

この鎌倉市の図書館だけではなく、すべての図書館は皆さんの為にあります。
ぜひ、困ったら、どんなことでも、お近くの図書館を訪ねてみましょう。

すべての国民は、いつでもその必要とする資料を入手し利用する権利を有する。この権利を社会的に保障することは、すなわち知る自由を保障することである。図書館は、まさにこのことに責任を負う機関である。

図書館の自由に関する宣言

私には悩みは無い、
あるのはただ、解決すべき課題である。


*1:ポピュリストであれば、大衆に迎合する、有権者の意見を容れる姿だが、これは違う、後述のように民意すら意に介していない。私的な欲求を実現させようとするだけなら、ポピュリストでもないし、そこで虚言や隠ぺいを恥じないのであれば単なる煽動家だ

*2:とそれに伴って、YouTUBEの視聴数が伸びること

*3:冷笑するものを冷笑するのは気分がいい。本当に私はヒトが悪いのだ

*4:おめでたい!

*5:何が「民主主義発祥の地、ナゴヤ」だか

*6:「史跡等における歴史的建造物の復元に関する基準」 平成27年3月30日