市民のための名古屋市会を! Ver.3.0

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「名古屋城天守木造化事業差止訴訟」について

いよいよ明日(11月5日)私たちが進めてきた「名古屋城天守木造化事業差止訴訟」の判決が言い渡されます。

正式名称及び事件番号:「名古屋城天守閣整備事業における基本設計代金の支払いに対する返還請求及び同事業の差止請求事件(平成30年 行ウ 第124号)」 

裁判について、簡単にご報告を申し上げます。

原資料はどこにあるか

 裁判に付いての資料(訴状や答弁書、及び証拠資料)は全て会のホームページから参照することができます。

http://bit.do/Ncastle

bit.do


 第6回公判において、裁判所から「原告の主張の要旨」と被告、名古屋市に対する「次回までの宿題」という文章が示され、双方の主張、争点が明確化されております。

 この要旨、宿題に対して、名古屋市側より、「準備書面(4)」「準備書面(5)」が示され、それに対して私たちより「原告(市民)側:準備書面(3)」が示され最終弁論となりました。

 その後、名古屋市側より最終弁論の機会があるにも関わらず、弁論は示されず、結審となっています。

 今までの経緯などをご存じの方は、上記文書に当たられるのが、当裁判について最も手軽に確認する方法であると考えます。

住民監査からの振り返り

 私たち「名古屋城天守有形文化財登録を求める会」は、平成30年9月21日に名古屋市監査委員に対して住民監査の請求を行いました。

9.21住民監査請求について - 市民のための名古屋市会を! Ver.3.0
名古屋城木造化事業住民監査請求陳述原稿 - 市民のための名古屋市会を! Ver.3.0


 もちろん、現在の名古屋城天守を破壊すること、木造によって建て替えることの是非も重要な論点ではありますが、そうした「価値観の相違」を争点とした監査は成立しません。しかし、具体的な「基本設計業務の代金支払い」について、違法性を示すことができれば、事業自体を止める事ができると考えて監査を行ったものです。
 当初、名古屋城天守木造化についての基本設計業務は、平成30年2月28日に完成予定でした。しかし、基本設計完成のために必要な建築審査会の審査や、エレベータの設置、未設置の決定も行われておらず、文化庁からの許可も得られていませんでした。名古屋市も契約を改定し、基本設計の完成期限を一月遅らせたのですが、実際の完成はそれ以上に遅れるだろうとみられていました。

 ところが、この改定された完成期日である3月30日に市の職員が「基本設計図書が竹中工務店より納品された」とマスコミに伝え、「段ボール5箱なので今後検査をしなければならないが、基本設計は完成した」と宣言したのでした。
 私たちは、表向き「基本設計は完成したこと」にはするが、実際にはその後に続く「実施設計」までエレベータ設置の問題や文化庁との折衝は続くものと考えておりました。
 そうしたところ、名古屋市オンブズマンが情報公開を求めた資料の中に基本設計代金の支払い命令書が有り、その「支出命令年月日」及び「検査・確認年月日」が平成30年3月30日であることを知り、上記の発言との食い違いに注目しました。3月30日には「今後検査をしなければならない」と発言していたからです。(後述しますが地方自治法第234条の2第1項より検査完了していない支出命令は違法です)

 論点の1:3月30日に収められた「段ボール5箱」の基本設計図書は、その日の内に「検査・確認」がされて「支出命令書」が発行されたのか?
 当時、事業の遅れが危惧されていた「名古屋城天守木造化事業」について、あたかも事業が順調に進んでいるかのように見せるために、基本設計が完了し、実施設計の段階に進んだと表向きみせているだけで、こうした無理にはどこかに矛盾が有るものと勉強会で様々な資料、契約書の読み込みを進めました。

 そうしたところ、本件事業の事業者募集のための「業務要求水準書」(甲1号証)に次の記載があることを発見したのです。

「木造復元に際し、実施設計に着手する前の基本設計の段階において、文化庁における「復元検討委員会」の審査を受け、文化審議会にかけられる」(p.8)

 3月30日にはまだ木造復元に関して、文化庁の具体的な審査は行われておらず、正式な許可も審査もされていないことは明白でしたから、この「業務要求水準書」の記載が守られていない事は明白です。

 論点の2:「業務要求水準書」に書かれている「文化庁復元検討委員会の審査」は基本設計完成の条件か。

 こうした論点から、住民監査が行われました。住民監査は名古屋市長の選任する3人の監査委員の合議によって行われます。名古屋市の、それも市長の推進する事業について、市長の選任する監査委員による審査なのですから、それに異議を唱える私たちには「不利」に決まっていますが、珍しいことに「却下や棄却」とはならず「合議に至らず」という結果となりました。3人の監査委員の内の一人が「1日で検査したとする説明には無理がある」と私たちの主張を認めた形となったのです。

 しかし、住民監査で結論が得られませんでしたので、平成30年12月17日に名古屋地方裁判所住民訴訟を提訴いたしました。

 住民訴訟に移行する際、更に資料等の読み込みを進めて、私たちは「平成30年3月28日天守閣部会議事録」に市の職員が「基本計画の完成は平成30年7月になる」と報告していることを見つけました。(甲20号証 p.10 及び甲21号証 P.4)

 この「基本計画書」は、基本設計委託仕様書(甲6号証 第23条)の中に納品物として明記してある書類で、これが7月にしかできないのであれば、3月30日の納品物には欠落があるということになります。

 論点の3:3月28日の「基本計画の完成は7月になる」との市職員の発言は、3月30日に納品されたとする基本設計の中で基本計画書が欠落していることを示しているのではないか。
 基本設計図書納品時に収められた「成果品目録」(甲10号証)にもこの「基本計画書」は欠落しています。

主な論点と名古屋市側の反証

主な論点を再度確認してみましょう。

論点の1:3月30日に収められた「段ボール5箱」の基本設計図書は、その日の内に「検査・確認」がされて「支出命令書」が発行されたのか?

論点の2:「業務要求水準書」に書かれている「文化庁復元検討委員会の審査」は基本設計完成の条件か。

論点の3:3月28日の「基本計画の完成は7月になる」との市職員の発言は、3月30日に納品されたとする基本設計の中で基本計画書が欠落していることを示しているのではないか。
(「成果品目録」にもこの「基本計画書」は欠落している、後述)

 「論点の1」について名古屋市答弁書で次のように反論している。(答弁書 第4ー2ー(2)財務会計上の行為の適法性ーイ 監督)

 「法第234条の2第1項において,職員は,契約の適正な履行を確保するため又はその受ける給付の完了の確認(略)をするため必要な 監督をしなければならないとされている」と、「監督」によって検査が行われたように主張しているが、同法(地方自治法)の同条にある記述は「必要な監督⼜は検査をしなければならない」とされているのであり、会計法では第29条の11第2項で「その受ける給付の完了の確認(略)をするために必要な検査をしなければならない」となっている。(甲28号証 新版逐条地方自治法

 名古屋市契約規則(甲29号証)第53条においては「⼯事その他の請負及び物件の買⼊れにかかる契約の契約代⾦の⽀払は、当該契約の目的物についての検査を完了(略)したのちでなければすることができない」とされているのであり、監督のみによって検査を代⾏する⾏為は違法、規則違反である。

 また「論点の2」に対して名古屋市は(答弁書 第3ー2ー(3)、準備書面(2) 第1ー1)等で「業務要求水準書」(甲1号証)は名古屋市竹中工務店を規律する「契約書」ではないような主張を行い、特に第1章、2章の記述には義務がないというような主張が行われている。

 しかし両者が締結した「基本協定書」(名古屋城天守閣整備事業に関する基本協定書(甲3号証))には第3条に「本事業は、以下に準拠する」とあり「三 発注者が本公募手続きにおいて配布した資料」と明記されている、この2項には「発注者が本公募手続きにおいて配布した資料とは(略)業務要求水準書(略)様式集及び参考資料集のことである」と念押しされている。

 「業務要求水準書」は「本事業」を「準拠する」文章であることは明白であり、「業務要求水準書」に記載されたことは、業務条件である。

 「論点の3」については、もっと傑作で裁判所より、「基本計画書」が収められているというのであれば、黒塗り資料のどこがそれに当たるのか示してほしい。と促され、名古屋市は「準備書面(2) 第2」において「基本計画書」の内容は「基本設計説明書」に合本されていると詳細に説明したのであるが、そのような説明が受け入れられないことはもはや常識的に判断すれば明白である。そもそも「委託概要書」(甲5号証)の「5.成果物」には「(ア)総合(意匠)」として「基本設計説明書」が⽰されており、「名古屋城天守閣整備事業 基本計画書(A3 版 10部)基本設計書の内容を含む」は「(ク)その他」と別に項目が設けられている全く別の文書である。

 よしんば、「被告が主張するように『⼀つの標目にまとめて納品することが効率的な場合』があったとしても、事前に契約に謳った『成果品標目』の契約変更をするか、または、例えば『成果品目録』に『基本設計説明書(基本計画書を含む)』などと、まとめて納品されていることを明記しなければ、それがまとめて納品されたものであるか、⽋品であるかの判断がつかない。被告におけるこの説明は到底受け⼊れることのできない、被告独⾃の主張である」(原告 準備書面(3) 1.4.1)

真っ当な議論を

 以上のような論争の末、11月5日には判決の言い渡しが行われます。

 最後に、数点述べさせていただきたいと思います。

1.本件事業が文化庁の定める「史跡等における歴史的建造物の復元に関する基準」(平成27年3月30日)に反している事を、名古屋市会並びに、有識者会議・天守閣部会は再検討すべきである。

 本件訴訟「令和元年5月24日 事務連絡に対する回答書 別紙」(令和元年6月24日 原告)で詳述したように文化庁において「史跡等における歴史的建造物の復元に関する基準」が定められており、名古屋市も業務要求水準書(甲1号証)の6ページ以降に引用するように「(6)特別史跡における条件」として認識している。

 同基準には「2.基本的事項」に「ウ.復元以外の整備手法との比較衡量の結果、国民の当該史跡等の理解・活用にとって適切かつ積極的意味をもつと考えられること」との条件が謳われている。

 名古屋城は昭和34年に鉄骨鉄筋コンクリート構造により復元されたわけであるが、その以前、昭和6年に同様の鉄骨鉄筋コンクリート構造によって⼤阪城天守閣は復元されている。そして平成7年から平成9年にかけて、「⼤阪城・平成の⼤改修」が⾏われた。
 この際、耐震性を⾼める改修とともに、鉄骨鉄筋の腐⾷を防⽌するコンクリート内部のアルカリ回復⼯事も⾏われ、コンクリートの耐久性を確保している。

 名古屋城においてはコンクリート内部のアルカリ回復⼯事について、効果費⽤等検討は⾏われていない。(上記「回答書別紙」)

 名古屋市会並びに、天守閣部会は、この文化庁の基準、及び先行事例である「⼤阪城・平成の⼤改修」を重視し、名古屋市に対して現天守建物のアルカリ回復⼯事について、効果及び費用の検討を求め、市民に公開し、木造復元事業との比較衡量の機会を確保すべきであると指摘する。

2.名古屋市会は本件事業に対する賛否について再検討すべきである

 平成31年3月29日に「近世城郭の最高峰 名古屋城」という書籍が出版されている。発行者は「名古屋城検定実行委員会」であり監修を天守閣部会の構成員であり日本における城郭建築の権威、三浦正幸広島大学名誉教授(名古屋出身)が務められている。同書の最後167ページには「平成29年(2017)3月、天守閣を木造で復元することが、市議会で決定した」との記載がある。
 確かに名古屋市会は平成29年3月23日に本件事業の基本設計等予算に可決の判断を与えているが、その際に付帯決議がつけられておりその概要は。

 1)独立採算による収支相償の財源フレームを堅持
 2)国や県よりの補助金を確保
 3)事業費、工期の圧縮及び進捗状況の報告

 であったはずだが、(1)についての見直しが必要なのは明白であり、(2)については全く守られていない。さらに(3)については工期の圧縮どころか、現在に至って竣工時期の見通しすら立たない状態であり、進捗状況の報告どころか、文化庁との交渉内容すら情報公開されておらず、何が進捗の障害であるかさえ明確ではない。つまり、名古屋市会における上記可決決定に付帯された条件は守られておらず、可決決定自体見直しされるべきである。

 実現性すら疑問視されている事業に対し、すでに木材購入費が31億5千万円、基本設計費用約8億5千万円、実施設計費(一部)約5億9千万円が支出済みであり、木材購入予算は全体で約94億円まで購入が進められる予定であり、さらにこうした木材の保管に年間1億円がかかるとされている。これらをいたずらに費消するのではなく、一旦立ち止まって再検討をすべきである。

 このまま進めば、現在のように頓挫し、多大な被害を生み出しかねない名古屋城天守閣木造復元事業について、歴史的には名古屋市会の議決によって推進されたと認識されることの重みを再考されんことを願うものである。

3.本件の責任はすべて名古屋市河村たかしにあること

 今般、法的な制約から被告として名古屋市職員を個別具体的に指摘してしまったわけではありますが、原告としては個々の職員に責任があるものとは思っておりません。人事権、予算権限をもち、地方自治体の長として絶大な権力を持つ市長が、特に重要と掲げる政策に、個々の職員が異を唱える限界は、同じように「宮仕え」をした身であれば、容易に想像がつきます。
「指示書」(甲19号証)として示したように、「本件の全責任は私が取るので、各員全力で取り組まれたい」と明記して示した以上、本件の全責任、すべての負債、債務は名古屋市長たる被告河村たかしにあるのであり、被告準備書面(1) 第3の2(2)にあるように、その責任を回避し、職員に責任を負わせようとする態度は、不当であり、甚だしく責任感に欠けるものであると、特に指摘したい。

4.本当に木造化は必要なのか

 名古屋城天守木造化事業は、平成26年6月27日名古屋市会における次のような河村市長の発言が起点となっています。

 「天守閣につきましても、よく文化庁に問い合わせされましたけど、これはショッキングな話で、鉄筋コンクリートによるもう一回再建は認めないということを文化庁がはっきり言っております。したがいまして、あと何年もつか知りませんけど、30年なのか、50年なのか、100年なのかわかりませんが、もう朽ちたときにはあれは壊さないけません。
 そうすると、何にもなしになってしまうのか、それとも、木造再建をするかということで(略)」

 しかし文化庁において本年(令和2年)6月に「史跡等における歴史的建造物の復元の在り方に関するワーキンググループ-鉄筋コンクリート天守等の老朽化への対応について(取りまとめ)」が示されております。

 「RC造建物の耐用年数は約50年とされており(※財務省減価償却資産の耐用年数等に関する省令別表第一による)、史跡等に所在する既存のRC造天守はいずれも建築後50年を超過しているところである。

 耐震診断等により耐震強度が不足していること等も踏まえ、築後50年を超過したこれらのRC造天守のうち、いくつかの天守においては、従来果たしてきたその機能などに鑑みつつ、コンクリート部分の再アルカリ化、構造補強等の長寿命化のための措置が行われた。

 その他のRC造天守等においても同様に、財務省令上は耐用年数を超える一方、従来果たしてきたその機能などに鑑みて、今後も、老朽化対策の検討に及ぶことが想定される」

 「RC造天守は、その多くは往時の外観を模して再現されているように、史跡等の往時の姿を今に伝え、その本質的な価値を正しく理解していくうえで一定の役割を果たしてきた」

 これらの文書からは乱暴に「 鉄筋コンクリートによるもう一回再建は認めないということを文化庁がはっきり言っております」との結論は導けない。大阪城や熊本城のように、耐震化、長寿命化等の措置を考慮し「本質的な価値を正しく理解していくうえで一定の役割を果たし」得る「RC造天守」の価値、名古屋市民が再建した昭和の戦後復興の象徴としての「RC造名古屋城天守」の今後のあり方を議論し直すべきであろう。

5.このような状況で事業を進めてよいのだろうか

 上記のように名古屋城天守木造化事業において基本設計は完了しておりません。

 よしんば、本件訴訟が原告敗訴となったとしても、それは本法廷における判断というだけで、本来名古屋市が事業開始時に定めた特別史跡名古屋城跡を侵襲しない立替計画の策定や、バリアフリーの実現については定まっておりません。

 名古屋市は今頃になって基本構造部分の「跳ね出し工法」を見直すとしておりますが、基本構造の見直しが行われるにも関わらず基本設計業務が完成したとするには、あまりに齟齬が有るのではないでしょうか。

 また、バリアフリー対策についても、わざわざ「ステップ名古屋」なる施設まで作って「国際的なコンペ」を行うとしておりますが、見通しは立っておりません。

 そうした中、この9月25日にも「特別史跡名古屋城跡全体整備検討会議」第33回会合が行われており、その席上、名古屋市職員は委員からの問いかけに「基本設計は完了している」と明言しております。

 その際「足りないところは」との問いかけに「現天守の評価、木造復元の意義が弱い」と答えています。

 文化庁が本年6月にまとめた上記「鉄筋コンクリート天守等の老朽化への対応について(取りまとめ)」に沿って同全体整備検討会議でも再検討をすべきではないのでしょうか。

 議論が虚しく空転しています。
 一旦、立ち止まり市民を含め、広範な議論を行うべきであろうと考えます。
以上
名古屋城天守有形文化財登録を求める会