市民のための名古屋市会を! Ver.3.0

一人の名古屋市民が「地域委員会制度」「減税日本」に対する疑問をまとめるサイトです。(since 2011/3/3)

名古屋市内の各メディアは、今こそ「貸し」を返してくれ

追記:6月1日の名古屋市会 経済水道委員会において、2万人アンケートの回答数が示されたので、それぞれの値をアップデートします。
源資料は名古屋市オンブズマンがネット上に掲載しています
 こちら


「真実を伝えることは難しい、いや、たぶん無理がある。
ならば、せめてバランスの取れた報道を」
「バランス?そんな誰の目にも映らず、計測もできない事を」

真実を伝えるという事も、バランスをとるという事も、
結局、自己満足に過ぎないのかもしれない。



昨日、30日の朝日新聞夕刊に、「名古屋城天守閣木造化2万人アンケート」の結果が報じられた。読売新聞は今朝の朝刊で朝日と同様の内容を報じている。

これらの報道によれば、2万人アンケートに対して、回答率が約3割(36.12%)だと言われている。
そして、期限を設けない木造復元に対して賛成の者が4割(40.6%)をしめ、最多の意見であるという。
次に多いのが木造復元ではなく、耐震改修に留めよというもので、3割(26.3%)になる。
もっとも少数の意見が市長提案の2020年までの木造復元であり、2割に留まったとされる。

つまり、この結果を素直に受け止めれば、市長提案の2020年までの木造化復元は2割の支持しか得ることができず、アンケートの結果名古屋市民に否決されたと言える。

ところが。

河村市長は、期限の定めのない木造化復元に賛成の市民が4割、自身提案の2020年案への賛成が2割で、合計6割の市民が名古屋城天守閣木造化に賛成をしている。

と捉え、それならば早期に天守閣を木造化すべき。と、2020年案を進める意向であるという。

今回のアンケート結果から「6割の市民が名古屋城天守閣木造化に賛成している」という結論を得ることは、ウソではないように見えるが、「まやかし」だ。


名古屋市政の数々の歪みは、こういった河村市長の「まやかし」を放置したからだ。


まず、落ち着いて数字を再検討してみよう。

2万人のアンケートに対して、回答率は3割強であるという。
つまりその総数は 約7000通 という事になるだろう。

母集団 7000 における各意見への賛同者を割り出してみる。
期限なし木造化 : 4割 = 2800通(2933)
耐震改修 : 3割 = 2100通(1900)
市長案 : 2割 = 1400通(1553)

これら3つの意見に対する回答者総数は 6300通(6386) 残りの 700通、約1割の人は「その他」や無効回答という事になるだろう。

では、市長提案に賛成をした人というのは本当に「2割」だろうか。
「6割の市民が名古屋城天守閣木造化に賛成している」という言葉は事実だろうか。

有効回答者である 7000人(7224)を母集団にするのは誤りだ。
母集団は2万人であるべきだ。

2万人の市民の内、圧倒的多数の1万3000人は回答を返さなかった。
これらの人々にとっては「名古屋城などどうでもいい」のだろう。
または、「天守閣の木造復元にも興味がない」のであり、「市政として議論すべき課題ではない」と判断しているのだろう。

これは実感にも準じている。

名古屋市内の大多数の住民にとっては、このようなアンケートに答える材料も持っていないし、興味もない。なんなら「熊本地震で熊本城があのような事態になっている時に、何を名古屋城の木造化をアンケートしているのか」という人だっているかもしれない。

しかし、圧倒的多数、サイレント・マジョリティは「名古屋城などどうでもいい」または「市政として議論すべき課題ではない」と思っているのであり、それが1万3000人。全体の7割近くをしめるのだ。

これを忘れてはいけない。

アンケートを実施した2万人すべてが名古屋市民であり、回答なしも含めて民意である。

2万人を母集団とした場合、河村市長提案に賛成した 1400人はすなわち全体の 7% である。(これは重要だから強調しておく、あそこまでやって市長提案に賛成した市民は 7% に留まっている)

また「木造化に賛成している6割の民意」なるものは、(2800+1400)/20000=0.21=21%でしかない。( (2933+1553) / 20000 = 0.2243 = 22.43% )

2万人にアンケートをした、その民意を正確に汲み取る時、「木造化に賛成している6割の民意」なる言葉はウソになる。

名古屋城天守閣木造化に賛成した名古屋市民は 21%(22.43%) しかいないのである。

79% に上る市民は、名古屋城天守閣木造化に反対している。または、どうでも良い、(市政として議論すべき課題ではない)と思っているのだ。

今後、河村市長は「アンケートの結果、6割の市民が木造化に賛成した」と言い募るだろう。名古屋市民はまたまた、ミスリードされることになる。

今必要なのは、こうした正確な情報、または様々な視点からの意見だ。

ところが。


30日の夕刊で朝日新聞が「抜いた」このアンケート結果。
読売新聞は朝刊で追従した、しかし、中日新聞の本日の朝刊には一切記事が載っていないのだ。
(昨日のエントリーで私が書いた「恐ろしいものを見た」というのはこれだ。何もない事を見たのだ。)

中日新聞はこういった事で他紙に「抜かれ」ると、まったくその事柄が無かったかのような顔をする。続報を含めて記事を載せないのだ。中日新聞が書かなければ名古屋市民はその問題を意識しない。(なんせ、占有率が9割に近いのだから、中日新聞の紙面に載らない事は、名古屋市では無かった事になってしまう)名古屋市民の意識に上らない事なら、他紙に「抜かれ」ても「抜かれ」た事実すら無かったこととなってしまう。

さて、このアンケート結果について、朝日新聞が「抜いた」
中日新聞は詳細に報道するだろうか。

6月1日には名古屋市会経済水道委員会に結果の報告があるようだ。
中日新聞の報道が、朝日新聞のスッパ抜きを受けて、腰の引けたものにならないか。

このアンケートの結果は市長からすれば不利な結果だ。

しかし、内容を歪曲して伝えれば自身に有利なように「6割の市民が木造化に賛成した」という事もできる。朝日新聞に情報をリークして、中日新聞の報道量を抑えようとした意思があった。などと考えるのは陰謀論に近いだろうが、そういった利己的な思惑を超えて、各報道には堂々とした事実の提示を願いたい。

間違っても、「6割の市民が木造化に賛成した」などというリードを打って欲しくはない。

真実を伝えられるなどという態度はマスコミの思い上がりだ。
ましてやバランスを取るなどと言うのも単なる自己満足に過ぎない。

こうした数字に対して、何を汲み取るべきか。

ましてや、名古屋市内の各メディアには「貸し」がある。

たった6%の住民税、市税を、5.7%に下げているのが「河村流5%減税」である。

河村市長が当初言っていた「10%減税」も実は「0.6%減税」に過ぎない。

あの頃、河村市長の口車に乗って「10%減税」などというまやかしを報じることなく、「0.6%減税」であるという実態を報道していたなら、今の名古屋の姿は変わっていたかもしれない。

そして、今また。単に 21%(22.43%) が賛成しただけの木造化、それも、2020年の市長提案には 7% しか賛成しなかった。

そうした実態を伝えず、「6割の市民が木造化に賛成した」などと報道することは、ミスリードであり、市民に対してウソをつくことになるのではないのか。

今こそ、名古屋市内の各メディアには、減税政策を報じたころの「貸し」を返して頂きたいものだ。



追記:
某所で全体を母集団とするようなアンケートの解釈はナンセンスと指摘された。

全体の人々の嗜好を調査するようなサンプリング調査であれば、
有効回答を母集団とする事は有効だ。

しかしこのようなアンケートの場合、
特定の施策を支持する人は、必ず回答を寄せることが期待できる。
つまり、市長案に賛成の者は、必ずそのように回答する。

とすると、2万人の母集団の内、市長案を支持する者は高い確率でその実数が出る。
2万人の内、1500人程度市長案を支持する者が居る

≒ 名古屋市民の内、市長案支持者の比率は 7.8% である。

と推測するのが、真っ当な論理的推論である。


この図はサクッと両者を作表してみた図だ。

左が市の作ったものと同じ。有効回答を母集団とした場合、赤い部分が市長案。
それと、緑の部分も含めて「6割」となる。

すべての名古屋市民が、こんなに高い比率で名古屋城の事を意識しているだろうか?

右が私の言う「2万人を母集団とした場合のグラフ」
大多数(薄い青)が「名古屋城などどうでも良い」と考えているとする。

最小限の予算で維持する案である「耐震改修」に近いだろうと推測したので
近い色にしてみた。

市長案に賛成の市民は全体の 7.8% 十人に一人程度。
これは、私が今まで色々な人と話してきた感触ともマッチする。



追記(蛇足):
某ブログのコメント欄で「非科学的」と言われたのには我慢ならん。

選挙において「投票率が低いから民意を反映していない」という議論と
この調査の結果を解釈する前提が異なっていることを理解していないバカな理論だ。

ふざけるな、バ〜カ

この人物は「科学的である」とは何かすら分かっていないだろう。
「科学的」に言える事は少ない。

今回の調査から「科学的」に言えることは、
「2万人の名古屋市民に聞いて、市長案に賛成したものは 1553人であった」という事実だけだ。

(ここで有効回答数 7224人の中で。という事自体、事実ではあっても正確に語っているとは言えない。
2万人の中で有効回答数が 7224人になったという事情(バイアス)が語られていないからだ)

私は無回答の全てが否定論だからそれが民意だとは言っていない。

言う必要もない。

なぜなら、現状を変えようとするとき、変えようとするものが立証責任を持つのであって、それに反対する者が反対の立証責任は持たないからだ。


今、木造化を、それも2020年までに進めるのであれば、
それが市民の民意であるというのであれば、
それはこの調査からは導き出せない。

否定的であるという事実があるだけだ。

その逆を「非科学的」「議論をかき乱すもの」とみなす
没論理的思考には恐れ入る。