市民のための名古屋市会を! Ver.3.0

一人の名古屋市民が「地域委員会制度」「減税日本」に対する疑問をまとめるサイトです。(since 2011/3/3)

10月9日配布予定資料

この文書は10月9日(水)に行われる名古屋城天守木造化訴訟の第4回公判(名古屋地方裁判所、第1102法廷 午後2時開廷(1時45分頃より傍聴整理券配布予定))の公判後に、ご希望の方に配布するために書かれています。



 名古屋市が進めようとしている名古屋城天守の木造化事業は何が問題か。そこからお話しいたします。まず、名古屋市が言うように「名古屋市民の6割が名古屋城天守の木造化を希望している」というのは本当でしょうか? 皆さんの周りでは如何でしょうか。お友達やご近所の方に聞かれて、名古屋城天守の木造化を希望する方々がそんなに多いですか?

1.実はそんなに望まれていない名古屋城木造化

 名古屋市が「6割の市民が希望している」と言っている根拠は、平成28年に行った「2万人アンケート」の有効回答の中で木造化に賛成する回答が6割あったというものですが。そもそも2万人アンケートの回答率は36.1%しかありません。このアンケートは「名古屋城天守木造化」の売込みパンフレットのような物で、カラー刷りの「木造化提案書」と、完成予想のCGを収めたDVDまで同封された豪華なものでした。

f:id:ichi-nagoyajin:20191004013345j:plain
アンケート資料

2万人アンケート説明資料.pdf - Google ドライブ

 こうした「売込みパンフレット」に添付されたアンケートにも関わらず、市長提案に賛成した市民は、2万人中、1553人しかいなかったのです。

 更に問題なのは、このアンケートでは当時の全体整備計画で定められた「現鉄筋鉄骨コンクリート天守の耐震補強案」について、正確な説明がなされていませんでした。「現天守と木造化とどちらが良いか」という聞き方はしていません。アンケートの「問9」に次のような記述があります。

「耐震改修した場合でもコンクリートが概ね40年の寿命」

f:id:ichi-nagoyajin:20191004013503j:plain
アンケート

2万人アンケート(見本).pdf - Google ドライブ

「耐震改修」とは建物の耐震性を高める工事であって、建物の寿命を伸ばすというものではありません。コンクリート製の建物については、「アルカリ回復工事」などの長寿命化のための改修手段があって、名古屋城天守よりも古い大阪城天守閣ではこの整備を行いました。

 しかし、名古屋市はこの「アルカリ回復工事」について検討していません。検討もしないまま「概ね40年の寿命」と市民に説明するのは、明らかに誤りです(文化庁の基準にも反しています)。また、こうした文章のあとに「この度 ~ 木造復元の ~ 優秀提案が選定された ~ 今後どのようにしたら良いと思いますか」という問いかけが続きました。これはあからさまな誘導です。こうしたアンケート結果が「6割」の根拠となっているのです。

 現在裁判になっている「木造化のための基本設計予算」は名古屋市の議会で承認されています。「議会も木造化に賛成している」と主張する人もいますが、これも嘘です。
 議会は同予算を承認するときに「附帯決議」という条件を付けていました。次の3つです。

  1.収支シミュレーション(独立採算を守る) 
  2.国や県から理解を得て補助金を得る
  3.工費の圧縮

 工費の圧縮については、圧縮どころか工期が延長され「名古屋城調査研究センター」なるものまで新設し(このセンター維持費は当初予算とは別!)金利負担も考えると1000億円程度になるとも言われています。国や県からの補助金など出ないし、理解もされていない。そして収支シミュレーション。これが大問題です。

 名古屋市が公表している収支シミュレーションでは、入場者推計が平成83年(2071年)まで算出されていますが、その入場者推計の根拠とする人口動向については「国立社会保障・人口問題研究所」のデータを根拠にしています。しかしそのデータは平成77年(2065年)までしか推計値を出していない。また、これも当たり前のことですが、同推計では日本の人口が減少すると示しています。にもかかわらず収支シミュレーションでは来場者推移が変わらない。


f:id:ichi-nagoyajin:20180626003711j:plain

 平成27(2015)年に 12,709万人だった人口は、平成77(2065)年には 8,808万人と減少する。
 総人口において69%が減少するにもかかわらず、来場者はそれほど減らないとすると、実質では144%の来場者増が期待されなければならない。

f:id:ichi-nagoyajin:20191004013700j:plain
収支シミュレーション

名古屋城についての事実確認と現状の推測(4) - 市民のための名古屋市会を! Ver.3.0

 更に、この「収支シミュレーション」では、木造建築物であれば必ず必要となる、毎年の改修費や定期的に行われなければならない大改修(姫路城などの例を引くと、20年程度に20~30億円程度)の費用は考慮に入っていません。採算性は疑問です。

 この名古屋城木造化事業には幾つも幾つも事実とは異なる事が重なって、本当の実像を掴むのは大変です。「基本設計が完成した」と名古屋市は言っていますが、名古屋市民の中で木造天守の真の姿を知っているひとはいません。なぜそんな事が言えるのかといえば、基本設計の文書は、その大部分が黒塗りの非公開情報だからです。名古屋城天守建物は名古屋市のシンボルであって、日本の国の宝です。その改修計画の資料が情報公開されていないというのは、はなはだ異常なことだと考えます。

f:id:ichi-nagoyajin:20191004013819j:plain
黒塗り設計書

名古屋城天守閣整備事業 基本計画書(概要編・資料編・図面編)


 民主主義の基本は、情報の公開と、公平で開かれた議論でしょう。しかし名古屋市が行っていることは、情報の隠蔽と、市民の疑問の無視、当たり前の議論への拒否です。文化庁や石垣部会と意見が衝突するのも当然の結果です。そして、そうした非民主的な運営を行っているために、結果として事務手続きに齟齬を来して、今回私達が指摘したような違法行為が生まれるという事態に至っています。

f:id:ichi-nagoyajin:20191004013910j:plain
主な過去ログ

河村城騒動についての主な過去ログ - 市民のための名古屋市会を! Ver.3.0

2.最も簡単な名古屋城住民訴訟の内容

• 平成30年3月30日に完成し、納品されたとする名古屋城天守閣木造化事業の基本設計は完成していない。
• 完成していない業務に代金を支払ったことは違法である。
(地方自治法第232条の4第2項、名古屋市会計規則 第71条、名古屋市契約規則第53条違反)
名古屋市長はこの違法な基本設計代金の支払いを行った者に賠償を求める義務がある。
• 基本設計が成立していないとすれば、それを根拠に行うとしている実施設計も行えない、当該契約は無効である。
• 基本設計が成立しておらず、実施設計も無効であるとすれば漫然と事業を継続することによって市の公費が浪費される。
• これは地方自治法第2条14項の規定に反しているので本件事業(名古屋城天守閣木造化事業)自体を中止せよ。

 ここでこの事業の構造を整理しておきましょう。名古屋市名古屋城を木造化するということで、その業務内容の定義をしました。こんな建物をこのように造ってくださいよという決まりですね。一般的には「仕様書」ですが今回は「要求水準」(裁判資料の甲1号証:裁判資料は下にある会のHPからリンクがあります)としました。
 この中に「木造復元に際し、実施設計に着手する前の基本設計の段階において、文化庁における『復元検討委員会』の審査を受け、文化審議会にかけられる」という文言があります。公知の事実ですが、この事業は上記審査も審議会にもかけられていません。

 次に業務委託仕様書(甲6号証)の「第23条」に「建築基本設計」という項目があり、「建築基本設計は、以下の項目について行う」と書かれています。ここに挙げられたのは「(1)基本計画書(2)透視図」の2つです。基本計画書の下に(a)~(t)までの細目があります。
 建築基本設計=基本計画書+透視図 という関係は分かりやすいですよね。

f:id:ichi-nagoyajin:20191004014249j:plain
天守閣部会の配布資料(甲21号証)

甲第21号証 特別史跡名古屋城跡全体整備検討会議天守閣部会(第9回)配布資料(部分).pdf - Google ドライブ


 さてさて、ここで平成30年3月28日に行われた天守閣部会の配布資料(甲21号証)を見てみましょう。ずっと見ていくと「基本計画の策定」というページが出てきます。ここに「基本計画(まとめ)」は「7月(未定)」とあります。つまり、平成30年7月に基本計画がまとまる予定だが、まだ未定であるということですよね。
 しかし、待ってください。名古屋市が基本設計を受け取ったとしているのは何時だったでしょうか。平成30年3月30日なんですね。その納品日の2日前に、名古屋市は「基本計画」が未策定であると天守閣部会に説明しているのです。

 裁判で名古屋市代理人はこの「基本計画」というのは「文化庁基本計画」の事だというような説明をしていますが、名古屋市と竹中の他の契約書にそんな言葉はありません。

 その他にも例えば8月13日の名古屋市代理人の次のような答弁について、皆さんならどう思われますか?(簡便にするために、一部省略しました、省略箇所には ”~” のマークを付けます。また、個人名は “K” とします)

「ア  一日で検査・確認を終えることができたことに合理性が認められること

 原告は、成果品による検査を訴外竹中工務店から提出された平成30年3月30日に検査及び確認を行っており、 一日で行ったとされるのは疑義があることから、正当な検査及び確認が行われておらず、違法であると主張する(~)。

当該検査及び確認は、~検査員による検査の前に仮納品を受けた上で、担当監督員による業務委託概要書に基づく成果品についての内容の点検・修正を行い、続いて同室主査(建築)である主任監督員による監督員の検査と同様の点検・修正を経て、精査の上納品されたものに対して平成30年3月30日に、Kが検査・確認を行っているものである(~)。

このような検査・確認の手続は、契約約款(甲第8号証)第8条第2項第1号において、成果品を完成させるための監督員による受注者に対する業務に関する指示を定めていること、第33条第1項において、第31条第4項による引き渡し前であっても成果品を発注者が使用できると定めていることから、基本設計業務委託契約として当然に予定されているものである。

また、検査員による検査に当たっては、~効率的な検査を実施したものである。

したがって、1日で検査確認を終えることができたことに合理性が認められる。」

 さて、いかがでしょう。契約約款8条に監督員の定義があるのは間違い有りませんが、監督員が「引渡し」についての権限を有するとは書いてありません。検査・引渡しについて取り決めているのは同約款の31条ですが、ここに監督員の記述はありません。「業務の完了を確認するための検査を完了し」となっています。そして業務の完了によって成果品の引渡しが行われ。続く32条が規定するように成果品の引渡しによって初めて代金の支払いが受けられます。

 また33条が規定する部分使用は成果品の引渡しを意味していません。

 その他にも様々論点はありますが、今後とも当訴訟の動向にご注目ください。

令和元年10月4日  名古屋城天守有形文化財登録を求める会


名古屋城天守復元60周年祭」

 日時 : 10月21日 (月)  午後6時より
 場所 : KKRホテル名古屋  4階  菊の間
 
   (中区三の丸1丁目5-1 電話:052-201-3326)

 会費 : 無料(カンパは大歓迎です)
 参加資格:名古屋城天守の60周年を祝いたい心

 内容は、名古屋城天守の歴史や、現在の木造化事業についてのお話や、ご参加いただいた方々のフリースピーチになる予定ですが、何よりきれいに名古屋城天守が見られる部屋から、その威容に触れ、60年の感謝を捧げたいと思います。お気軽にご参加ください。


月に一回程度、北区にある「北生涯学習センター」で「名古屋城有形文化財登録を求める会」の月例勉強会を開きます。

10月4日(金) 18:30~20:30 第1集会室
11月11日(月)18:30~20:30 第1集会室

※どなたでもご参加いただけます、参加費無料。



名古屋城天守閣木造化事業基本設計代金支払い住民訴訟

次回、第四回公判は10月9日(水)午後2時より
名古屋地方裁判所 第1102法廷 です。
(傍聴希望の方は、15分前に整理券が配られ、抽選となる場合があります。お早めにお越しください)