市民のための名古屋市会を! Ver.3.0

一人の名古屋市民が「地域委員会制度」「減税日本」に対する疑問をまとめるサイトです。(since 2011/3/3)

減税日本ナゴヤ政務活動費に係る不当利得返還請求事件 (令和4年(行ウ)第36号) 判決

 9月14日に「減税日本ゴヤ政務活動費に係る不当利得返還請求事件 (令和4年(行ウ)第36号) 」の判決言渡しが有った。

 まあ、予想されていたことではあったが、私の敗訴となった。(勝訴していれば、それこそ新聞に載ります)行政に対する訴訟で住民側が勝つことは、よほどのことがない限りなくて、なおかつこちらは弁護士も立てずに住民が本人訴訟しているのだから、本当にこれで勝てたら、新聞ダネになるでしょう。

 下の方に判決文のPDFリンクを張っておきますので、お好きな方は読んでみてください。全体でも16ページですが、ポイントとなるのは p.7 の「第3 裁判所の判断」からとなります。(第1が「請求」の内容、第2が「事案の概要」で、1「関係法令の定め」2「前提事実」は争点となっていない事実が記載され、3「争点及びこれに関する当事者の主張」となっている、この(1)原告の主張には漏れが見られる ※1)

 その漏れの中でも、今般の文書送付嘱託で水野プランニングこと水野昇氏の説明が事実とは異なる矛盾については触れていない上に、判決文では更にそれを誤読している。

 もう一回言う、判決文は自身発出した文書送付嘱託書を誤読しており、ヘンテコな事を書いている。

 その前に、順番通り、「第3 裁判所の判断」「1 判断枠組みについて」の(2)において検討されている立証責任の所在について確認しておこう。

 住民が執行機関(市長など)に不当利得返還請求権の行使を怠っているとする場合、「住民である原告において、本件政務活動費に係る不当利得返還請求権が存すること」の「主張立証責任を負うものと解される」(p.9 4行目から10行目)

 しかし「住民が(略)収支報告書等に記載された内容を超えて支出の具体的な必要性やその原因となった行為等を把握することは困難」(11行目から14行目)であるので、

 「原告において(略)一般的、外形的事実を主張立証した場合には、被告又は補助参加人において、条例所定経費に該当する支出であることや社会通念上相当な範囲内の支出額であること相応の根拠や資料に基づき主張立証する必要があり、被告又は補助参加人がかかる主張立証を尽くさない場合には、条例所定経費に該当しない支出であることや社会通念上相当な範囲を超える支出であることが事実上推認されるというべきである。」(16行目から24行目、一部文字を太くしているのは引用者による)

 とされている。
 立証責任の所在は被告又は補助参加人にある。
 この判断は過去の判例にも沿ったものと言え、私も異論はない。

 逆に、こう判断され、原告における「一般的、外形的事実の主張立証」を否定していないことから、本件訴訟で補助参加人が主張していた、「原告における一般的、外形的事実の主張立証の不成立」はないものと認定されたと言える。

 補助参加人の「戦線設定」は誤っていた。


 では「第3 裁判所の判断」「2 本件各広報紙の印刷、配布の有無について」を検討していく。

 その(2)、ここで判決文は「本件各領収書(甲2,4)について、これに対応する印刷業者及びポスティング業者作成の見積書、請求書、納品書又は領収書控え、受領証明書、入金伝票(甲30,31,丙4~6、10~13)が存在し、これらの各文書の体裁や記載内容に特に不思議な点はなく、品名や摘要等に浅井議員分の発注である旨の記載があると認められ、これによれば浅井議員のために本件各広報紙が印刷され、配布された事が認められるというべきである。」(p10 20行目から26行目、一部文字を太くしているのは引用者による)

 「特に不思議な点はなく」? はぁ?

 こんな説明が、例えば税務署で通用するのだろうか?

 業務委託を立証する「証憑書類」と呼ばれるものは「領収書」であって、見積書でも請求書でも納品書でも領収書(控え)でも受領証明書でも入金伝票でも無い!逆に、そうした法的位置付けもあやふやな、性質もはっきりしていない書類を、多量に提出することの方が、却って「あやしい」とは思わないのか?

 特に「受領証明書」に至っては、発行日は「2022年9月5日」であり、提出日が9月20日であって、裁判に合わせて「作られて」いる。そんなものをわざわざ作成しなくても、法人税法上7年間の保管義務が課せられている(法人税法150条の2、同施行規則59,60)「領収書」を提出すれば済む話なのに、それを行わないということは、領収書が無いということを示しているのであり、それはすなわち支払いの事実がない、業務委託の事実がないという事なのではないのか???

 次に「第3 裁判所の判断」「2 本件各広報紙の印刷、配布の有無について」の(3)について見ていこう。ここで判決文はヘンテコな事を書いている。

 「水野プランニングから領収書が提出されていない点についても、印刷代の支払いは振込を証する文書をもって領収書に代えるとされており(甲32~34)、領収書は存在せず、振込みを証する文書についても送付嘱託書の対象文書に含まれていないと考え、送付しなかったにすぎないと考えられる*1から、原告の主張する点は、いずれも上記見積書等の信用性を減殺し、印刷、配布に係る契約の締結及び履行がなかったことを推認させる事実ということはできない。」(p.11 19行目から26行目)

 まず、大きな間違いとして、裁判所は上記「第3 裁判所の判断」「1 判断枠組みについて」において、「被告又は補助参加人において(略)根拠や資料に基づき主張立証する必要があ」るとしている。しかしここでは「原告」の「契約の締結及び履行がなかったことを推認させる事実」について、否定しているだけで、「被告又は補助参加人における履行の事実」を立証できているのか

 公金の支出であり、「推認」では済まされまい。

 そもそも「送付嘱託書」の記載は次のようなものである。
 「令和2年8月6日に減税日本ゴヤ市議団浅井康正市議から水野プランニングこと水野昇が受領したとされる広報紙印刷代金に係る、広報紙の納品書(控え)、印刷の下請け業者に対する発注書、同業者から受領した領収書及びこれらに類する文書(電磁的記録を含む)以上」(甲第29号証_(別紙)文書の表示)

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 であり、対象文書として「領収書及びこれらに類する文書」と明記されており、当方の提示した「NP掛け払い」についての説明(甲33)では「領収書について」として、
「・銀行振込の場合は、銀行での振込票(ご利用明細)/通帳の記載を領収書の代わりとしてご利用ください」となっており、もしも銀行による電子決済であっても上記、裁判所からの文書にある「電磁的記録を含む」で対応可能であることを示しているのであって、領収を証す文書を提出できないとはならない。また、
「・コンビニ支払いの場合は、受領書兼領収書(払込票控え)をご利用ください。」とあり、この場合でも、「領収書及びこれらに類する文書」は提出可能である。

 また、甲34号証において、領収書発行を求める方法が明記されている。

 追記:配布業務について、株式会社ポトスに対して、裁判提起以降「受け取り証明書」の発行を行わせた補助参加人が、なぜ印刷業務の「NP掛け払い」については、この甲34号証に定められた領収書の発行を求めなかったのか。矛盾がある。

 そもそも民法第486条「受取証書の交付請求等」の規定により、「弁済をする者は、弁済と引換えに、弁済を受領する者に対して受取証書の交付を請求することができる。」のであり、領収書が得られない取引などありえない。(原告準備書面(5) p.3)

 判決のいう「原告の主張する(略)印刷、配布に係る契約の締結及び履行がなかったことを推認させる事実ということはできない。」との主張は、根拠のない「推認の否定」であるが、ここで言える事実は、水野プランニングこと水野昇氏が、裁判所からの文書送付嘱託を無視し、印刷を再委託したとする業者に、その代金の支払いを行ったという「領収書及びこれらに類する文書*2」を提出しなかったという一点である。

 さらに、水野昇氏が6月13日に裁判所に「支払い方法が『NP掛け払い』となっており、これは受注後、請求書を発行し、代金が支払われたことを確認してから納品するものである」などとする虚偽説明を行った事実である。


 判決文では、この虚偽説明についても触れておらず、まったくの失当である。

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甲第32号証_口頭聴取書 令和5年6月13日


 面白いことがある。水野氏はこの 口頭聴取書に記載されたように、支払い様態について明らかな虚偽を述べている。

 補助参加人「減税日本ゴヤ」団長(当時)の浅井康正氏は、令和4年1月24日の名古屋市監査委員への回答(甲16号-3)において、印刷は水野プランニングにおいて行われたと説明し、今般、水野プランニングこと水野氏は、印刷を再委託したとする資料を提出している。つまり、両者は相矛盾する主張を行っているのである。

 これら矛盾する主張を裁判所はどう判断し、何を事実として認定したのか、そしてその「事実と認定した根拠」は何か。

 私は、7月18日に「準備書面(5)」として13点の疑問点を列挙しているが、これら疑問点についても、不明のままなものが多すぎる。とてもこの判決が事実を根拠としたものとは考えられず、事実に立脚しない、推測に基づく判決など受け入れることはできない。

7月18日 原告 準備書面(5)
mega.nz


令和4年(行ウ)第36号 不当利得返還請求事件(住民訴訟
令和5年9月14日 一審判決
mega.nz

追記(1):
 この判決が確定すると、市会議員は「友達A」に「領収書」を書いてもらえば、政務活動費は使い放題となる。その「友達A」は、当該業務を再委託したとすれば良く、再委託された「友達B」の氏名も住所も裁判所は気にしない。「そう言っている」というだけで、公金である政務活動費は使い放題、還流もさせ放題ということになる。

 浅井元市議、水野昇氏が還流させているとは言っていない。

 ただ、令和2年8月というのは減税日本河村たかし代表が「知事リコール」を行っており、水野昇氏はその署名収集に連日活動されていたと仄聞するだけである。

追記(2):
 按分率の議論は個別に行っていない。
 それは「配布されたと実証されていない広報紙について、その按分率を論じても意味がない」と考えたからで、配布されたと実証されていないのだから、その按分率については論じていなかった。
 しかし判決では按分率100%の判断がなされたわけで、これも今までの判例等からすると踏み込んだ判断だろう。上記「追記(1)」で還流する際に、手間が省ける。

 ところで判決では政務活動費の支出として適合している要素をるる述べて、100%按分が正しいとしているが、問題は「政務活動費の支出として適合していない要素」はないかと言うことであって、例えば具体的に「政務活動費の使途に関する基本指針」に挙げられている「選挙に関わる内容」が微塵もないと言えるのだろうか。それがあるならば100%按分は当たらない。



※1・・・3「争点及びこれに関する当事者の主張」(1)「原告の主張」における漏れ

ichi-nagoyajin.hatenablog.com

 に記載した13点の疑問点にていてはほとんど触れられていない。

 特に、住民監査において浅井元市議が主張された「広報紙の印刷は、領収書に記載されている通り●●がしております」(令和4年1月24日 減税日本ゴヤによる監査委員に対する回答(甲16号証-3)、文中の黒丸は、「領収書に記載されている」業者名が「水野プランニング」のみであることから、同所であることは明白である)と主張されているにも関わらず、今般の文書送付嘱託で水野プランニングは印刷を他の業者に再委託したとして説明している矛盾であるとか、その文書を提出した際に水野昇氏の主張した「NP掛け払い」の説明が事実とは異なる矛盾については触れていない。

おまけ:

政務活動費の不当利得返還請求における立証責任の問題に関する判例
政務活動費の按分率に関する判例

mega.nz


*1:被告又は補助参加人が「誤認」によって、自らの立証責任のある事項を立証しなかった場合、なぜ裁判所がその事情を「推測」して補完する必要があるのか?

*2:銀行での振込票(ご利用明細)/通帳の記載(電磁的記録を含む)/受領書兼領収書(払込票控え)

体現帝国 第十一回公演『奴婢訓』

「体現帝国」の無謀な挑戦

 名古屋市を拠点に活動している劇団に「体現帝国」という劇団がある。

 主宰の渡部剛己は「演劇実験室◎万有引力」に所属していた経歴を持ち、昨年行われた名古屋市大須七ツ寺共同スタジオ50周年記念公演である「夢の肉弾三勇士」でも演出を務め、その独特な世界観が好評を博した。

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 私と「体現帝国」との関わりは、「あいちトリエンナーレ2019」に「体現帝国」がパブロ・ピカソ作の「しっぽをつかまれた欲望 ―気狂いの気狂いによる気狂いのための気狂い演劇。」を出品し、そこに知人が出演したことがきっかけとなっている。

natalie.mu

 残念ながらこの公演はチケットが手に入らなかったために見ることができなかった(渡部主宰の配慮で、ロビーでモニターを見ることはできたが、とても観劇と呼べるものではなかった)
その後、コロナの蔓延で演劇公演は行えなかったが、「奈落の鍵」「無限劇の扉」という企画に数度参加し、その世界観や演劇に対する考え方に共感し活動を追っている。

 特に渡部主宰が名古屋で活動する理由、というものには期待するところが大きい。

 なんと、その概要は、横井利明市議(南区選出・自民党)がご本人のユーチューブ・チャンネルに渡部主宰をゲストに招いて聞き出している。

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 演劇をやるのであれば、東京に出なければキャリアを積めなかった。しかし、何のツテもなく、経済的な基盤のない若者が、生活コストの高い東京で生活を維持しながら演劇活動を続けるのは無理がある。(昔から、若い演劇人は貧乏と決まっていた)大阪には独特の文化があり、演劇を追求する基盤が弱い。

 名古屋には、上記のように50年という歴史のあるスタジオもあり、公共施設や環境も整っている。この名古屋でスキルを高め、高度なパフォーマンスを作り上げれば全国、世界にも通用する。渡部主宰はその土壌に名古屋は最適であると考えているようだ。

 こうした若い、ある意味向こう見ずな夢に理解を示してくれる市会議員が居るというのは、やはり名古屋の文化的重層性を感じる。

 この「体現帝国」が現在(9月1日から24日まで)七ツ寺スタジオで長期公演を行っている。「小劇場演劇」で一ヶ月の長期公演は珍しい。本日(9月13日)が10ステージ目となり、本日も合わせると、残り9ステージ、ちょうど中間点に差し掛かった。

taigenteikoku.com

 今日はこの「奴婢訓」について少々書き記したい。

「奴婢訓」とは

 つまり、ここから先、この演劇の「ネタバレ」を含む。しかし渡部主宰は「演劇がストーリーだけなら、脚本でも配れば良い、舞台ではそれとは違うものを体験していただく」と言う通り、あらすじを知っていても作品の鑑賞は妨げない。

 また、ここに書き記す私の解釈はノイズでしか無いので、そうした雑音を嫌い、作品を楽しみたい方は、以下を読まずに劇場に足を運ばれることをお勧めする。以下の解釈は現在の「体現帝国」による「奴婢訓」本公演と、8日に行われた「爆音上映会」の内「天井桟敷」による第一回の公演(ワークショップ)の模様、及び「寺山修司作品集第3巻」に収録された戯曲、および今公演の周辺企画として8月26日に行われた「解体新書 #0」を参考にしている。

 「奴婢訓」の「原作」はジョナサン・スイフト(あの「ガリバー旅行記」の)が1731年に書いた「召使への訓示」という一風変わった小説/随筆となる。これは「召使いへの訓示」の姿を借りた、その召使いたちを使う、当時の支配階級を揶揄した風刺であった。

 寺山修司はこの枠組みを使って、主人が不在となった館の中で、下男下女が交代で主人の役を演じるという戯曲を組み上げた。

 ここに2つほど余計なことを書くとするなら、(1)この「主人の不在」というのは、「現人神を亡くした戦後日本のエポケー」とも言えるし、「集団責任体制=集団無責任体制」を形成し、「権力の渦の中心を探れば、その中心は実は何もない」という古来神道にも通じる日本社会の根源的問題ともいえるだろう。

 また、(2)劇中下男下女が主人を決める示として「靴」を奪い合うが、これは現実社会においても「支配/被支配」の関係を決めるのは「お金=おあし」であるとも読み取れる・・・当たっているかどうかは知らない。

 寺山の作品集に収められている戯曲では、13のスキットに分けられていたが、渡部主宰が今回上演する台本は、「演劇実験室◎万有引力」の台本を元にしており、そこに現代的な要素も加味したもので、「解体新書 #0」で開示された台本を覗き見たところ、寺山の戯曲では「13.最後の晩餐」とされていたものが「16.最後の晩餐」となっており、それ以降「17.その前夜」「18.南十字星を撃て」「19.不在」とされていた。つまり、「最後の晩餐」(今回の公演でも好評のスキット、そのルックは最高の演出となっている)までに3つのスキットが挟まっており、最後の晩餐以降にもこうした要素が加味されている。

体現帝国「奴婢訓」台本

体現帝国「奴婢訓」のスキットより

 ここから、各スキットについても書きたい。寺山の戯曲で言うと「2.月食譚」や「8.少年礼儀作法読本」「10.米俵の叛乱」など、題名からでもイマジネーションが膨らむスキットが満載だが、3つのスキットだけご紹介する。


 「3.犬の戴冠」主人の靴を履いたクーボ―(麓貴志)が現れ、主人として下女(トメ子/田上まみ)たちを使役するが、退屈を感じる。控えている下男たち(下手より、オッペル/安倍火韻、シグナル/佐合陽裕、ホモイ/池田豊、ゴーシュ/中居晃一)に骨を投げる。すると下男たちは犬となり、その骨を咥えて主人役のクーボ―に持っていく。やがてこの骨の遊びにも飽きた主人/クーボ―は、自らを主人とする「靴」を投げ入れ、犬と化した全員がこの靴を奪い合う。

 ・・・もちろん、これは完全に現代社会、というか「権力」というものが存在し始めた以降の人間社会の縮図だ。
 そして、この「靴」の奪い合いは「退屈」とはならないのだろうか。


 「9.誰が殺した駒鳥を」寺山は、スイフトの原作に宮沢賢治の作品から、登場人物名や舞台設定などを被せて見せた、さらにここではマザーグースの「誰が殺した駒鳥を」を引いている。勿論このコンテンツは、萩尾望都の「ポーの一族・小鳥の巣」にも引用され、その影響で魔夜峰央が「パタリロ」の中に「だれが殺した? クック・ロビン」という台詞として再引用され、アニメでは「クック・ロビン音頭」にまで展開されている。

 元々、寺山の作った戯曲「奴婢訓」においてもJ・A・シーザーが劇伴を作っていたが、今回は「体現帝国」の赤木萌絵(かま猫)が作曲を行い、自ら歌っている。また彼女はこの公演直前に右足を骨折してしまい、出演も危ぶまれたがギブスを嵌めたまま演技を行っている。このスキットにおける歌唱も素晴らしいが、足を使えないという事を逆手に取って、途中、佐合陽裕にリフトされ、飛び上がるように移動する演出は両者の素晴らしいパフォーマンスとなっており、ハンデを踏まえて新しい世界観を現出させている。こうした表現の模索も素晴らしい事だと感じる。


 (スキット名不明)(その後の会話で「17.その前夜」であることが判りました)体現帝国の看板女優、田口佳菜子(ダリア)が舞台中央に現れる。艶めかしく妖艶に階段を降り、舞台中央に置かれた「包帯」を手にし、しばしそれと戯れる。その内、舞台に頭を包帯でぐるぐる巻きにした男たちが現れる、頭を包帯で巻かれ、視覚も失った蠢く男たち、ダリアはその間を踊るようにさまよい、それぞれの包帯の端を手にする、やがて、舞台の低い位置で蠢く男たち、ダリアは舞台の中央、高い位置に居て踊るように男たちの包帯を巻き取っていく。男たちは包帯を巻き取られながらダリアの足元で蠢く。

 ・・・これも「愛欲」に焦がれる男たちと、それを手玉に取る女の姿だろう。現代社会の縮図だ。
 注目すべきはこの時、ダリアは最初に手にした「包帯」をどうしたのか、だ。

「体現帝国」は何を「体」で「現す」のか

 「体現帝国」は何を「体」で「現す」のか、その検討の前に我々は「体」を巡る人類の文明史的斗争について整理しておかなければならない。おおよそ二千年以上にわたって刷り込まれ、混乱している認識に整理をつけておかなければならない。
 ご承知のように西洋文明においては、人は神の似姿である(創世記1章26節)とされ、それ以前のギリシア・ローマ時代においても、その認識は共通しており、人々は人に似せ神像を作り、人の肉体の中に神を求めた。人の姿の中に真・善・美はあり、それをより追求することが、神に近づくことであるかのように捉えられてきた。西洋において人の「体」は祝福されたものであり、真であり、善であり、美であった。

追記:これが「ルッキズム」に通じる。

 ところが東洋には肉体を「壊れやすく」「腐りかけた肉」(スッタニパータ)とまで説いて、そこ(肉体)からの離脱(解脱)こそが目的であるなどとする考え方もある。ゴーダマ・シッタールダ、ブッタの説くところだ。東洋文明の深い根幹には、肉体に対する懐疑がある。
 とは言っても、インドの伝統宗教には、やはり神を人に似せて描く文化もあり、日本にたどり着いた仏教概念は、中国で道教やら、儒教やら、マニ教イスラムイワシの頭、様々なモノが混ざりあって、肉体に対する真・善・美の追求、またはそれへの懐疑は、いささか焦点がボケている。
 西洋における肉体に神を見、美を追求する姿勢は、肉体を軸に形、動き、装飾を重ね、構築的な美の創出を促した。翻って日本における肉体への懐疑は、様々な装飾性を奪い去る表出へ道を開いた。枯山水などに見られる「存在しないことに依る美」「夾雑物を奪い取ることによって成立する美」は、能や「おわら風の盆」に見られるような簡易な形、緩やかな動き、そこに存在する「人」よりも、空間が生み出す美を鑑賞者に気付かせる。

 西洋において発達した構築的な美、これを舞台の上で表現したのが数多の演劇であり、オペラであり、バレエだったのだろう。光が、音楽がそれらの姿を装飾し、美を構築していく。舞台の上で演者がじっと見つめる眼差しは真であり、すっと背筋を伸ばしてバランスを保ち立つ姿は善であり、あやしく揺らめき動く様は美であるだろう。そこに時として神がたち現れる。

 こうした構築的な美は、心を溶かし、うっとりと観客を舞台へと引きずり込む。
 ・・・まるでぬるま湯のように。

 しかし、観客を解体し、その心を打ち砕くのは、こうした構築的な美ではない。
 観客が逃れたく思い、しかし逃れられない、舞台上の演者とともに、観客自身も再解体される。

追記:渡部剛己の演出では、役者は独特の化粧(メイキャップ)を要求される。それは表面的な「美」の否定であり、解体であるのかもしれない。

 それは「壊れやすく」「腐りかけた肉」によって再構成され、構成される端から崩れ落ちる、刹那の姿だ。
 その危ういバランスの上に構築された形、影、動き、蠢き。

 それは真でも善でも美でもない。それこそがまさに「生」なのだ。

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「奴婢訓」補完作業/余計なお世話

その1)
オープニングのナレーション、
ウカウカとしていると聞き逃してしまう。
しかしこの台詞は、パンフレットの裏に書かれている言葉となっている。

「聖主人の骨組みに関する覚書

その剃毛された頭の内部に吊られた卵。
内臓の中の寺院の影。財産目録の手錠。放火。
猫を閉じ込めた書架の戸を、煙という名の下男があける。

一 主人は米でできている
ニ 主人はその土地と肉との和解である
三 主人はかぎりなく縄梯子をのぼる
四 主人は犯された姉の包帯を麦畑にさらす
五 主人は納屋で目隠しされた支那の少女の見張り番である
六 主人は裸形のいななき男である
七 主人は水に沈めた不具の鳥である
八 主人は大工地獄の劫火である

裸形の卵男は、かつらを与えられ、義歯を口にはめられ、髭をつけられて
一つの人格の影としての聖なる主人となる。」

奴婢訓 パンフレット(裏面)
キャスト対応表(一部)

その2)
最後のスキット、暗闇の中で下男下女がマッチを擦って台詞を叫ぶ。
BGMの音に台詞が聞き取れないという意見を聞く。
寺山版では以下のようになっている。
(演者の数も違うのでこれとも異なるそうだ)

1  蝋燭の煤で天井に書きつけろ!
   「ここが地獄だ!ここで跳べ」
2  ご主人様の寝室も、床板一枚めくりゃ、下は田んぼだ!
3  天に狼、地に下男、竃じゃ劫火が燃えあがる!
4  とくにナイフは磨いとけ!
   主人の喉を裂くために!
5  皿を割れ! 地ひびきたてろ!
   春がくる!
6  叛乱するのに思想はいらぬ、マッチ一本あればよい!
7  下男穴掘りゃ鴉がさわぐ、次はおまえの死ぬ番だ!
8  夜食に肉がおのぞみなら、あたしの体でいかがです?
9  納屋の麦藁、逃亡千里。おれは自分の馬になる!
10 地平線にはつむじ風、女中部屋には高笑い!
11 出刃包丁で瞼を裂いて、真っ赤な鳥のとぶを見た!
12 ツバはこうして吐くものさ!
   ごらん、女中の婚礼だ!
13 猫が跳ねたらランプをまもれ、おれは主人に欲情したぜ!
14 さあ、花吹雪だ! 道をあけろ!


名古屋城ー木造化ー差別発言

名古屋城木造復元についての記者会見の趣旨_障害者の自立と政治参加を進めるネットワーク_2023_7_25
名古屋城バリアフリーに関する市民討論会における差別事案に係る検証委員会について_名古屋市_2023_8_18(1of2)
名古屋城バリアフリーに関する市民討論会における差別事案に係る検証委員会について_名古屋市_2023_8_18(2of2)
誰ひとり取り残さない、世界に誇れる、名古屋城天守閣整備のために連帯を込めた声援書_障害者の自立と政治参加を進めるネットワーク_2023_8_21
わっぱの会要望書_20230830(1of2)
わっぱの会要望書_20230830(2of2)
差別は許さない!名古屋城木造天守復元事業レジメ_名古屋城木造天守にエレベータ―設置を実現する実行委員会_2023_9_9

mega.nz


多選の市長、市議が言い出す「多選自粛」とは

今日の話題は非常にとっ散らかっています。

まず、昨日減税日本が多選自粛を定めた条例案を提出するという話題がSNSに流れてきた。
なんでも名古屋市会で、3選以上の立候補の自粛を求める内容だとか。

すぐに思いつくのが、自分の選挙のおいて「2期8年」までという公約を掲げておきながら、のうのうと多選を繰り返す減税日本ゴヤの現職市議は、一体どういうつもりでこの条例案を提出(賛成)するのだろうか。自らがまず辞職でもして、多選の事実を無くしてから多選の弊害を主張すべきだろう。

田山 宏之(名古屋市会議員:減税日本・北区選出) - 市民のための名古屋市会を! Ver.3.0
大村 光子(名古屋市会議員:減税日本・昭和区選出) - 市民のための名古屋市会を! Ver.3.0
鈴木 孝之 (名古屋市会議員:減税日本・天白区選出) - 市民のための名古屋市会を! Ver.3.0

佐藤 夕子(名古屋市会議員:減税日本・東区選出) - 市民のための名古屋市会を! Ver.3.0
(県議や衆議院議員を含めて十分多選、家業化してるだろう)

河村たかし【公式】オフィシャルサイト 気さくな74歳 | 減税日本代表
(これも、公言無視の多選)

ある方は「減税日本は、市民のために働くのではなく、『市長を助ける』としている」と指摘された。
元々、河村たかし減税日本の議員に有権者の意思、民意を尊重するなどという発想はない。

河村たかしにあるのは、自分の主張、わがままを「民意」に偽装して強弁する詐術だけだ。
例えば、「名古屋城天守の木造化」など、河村が望むような事柄を、市民も支持してくれれば、それだけを民意として受け止める。それが例え一部の市民の声であろうと構わない、それが河村の尊重すべき「民意」である。自分のわがまま勝手を「民意」と誤魔化して主張しているに過ぎない。

この件にしても、上に上げた田山、大村、鈴木などの現職市議は、それぞれの選挙区で当選を果たしてきた。つまり、有権者は彼らの多選を許したということで、名古屋市民の民意は「多選禁止」など望んではいない。この条例案は民意を無視するものだ。

減税日本ゴヤができたばかりの頃にも議論されたが、市会議員、基礎自治体の議会議員は、2年や3年でこなせる仕事ではない。2期(8年)、3期(12年)キャリアを重ねても、なかなかこなしきれていない。議員の在職期数を制限して一番喜ぶのは誰か、職員だ。職員にとってみれば、鼻をつまんで左右に振っても気が付かないようなトンチンカンな素人議員ばかりになってくれれば、議会対策はさぞや楽になる。そして、こうした議会の弱体化は市民のためになどならない。

確かに、期数を重ねても、市民、有権者のためになっていない議員は居る。それは否定しないが、その為に短絡的に多選禁止、自粛を条例化しても意味はない。

では、なぜ昨日唐突にこの条例案の話が出てきたのか。

今朝の中日新聞の紙面を見れば悲しいかな事情が掴める。

8月31日 中日新聞第ニ社会面

第ニ社会面に「市議多選自粛条例提出へ/減税日本名古屋市議会に」と大きな文字でこの話題が取り上げられている。どうせ否決されるに決まっているのに。
そして、その横に小さな文字で「名古屋城差別発言で検証委「聴取不十分」/初会合で状況確認」の文字が。
もし、条例案の話がなければ、この検証委の議論が、このデカいタイトルを付けて紙面構成されていたのかもしれない。河村たかしにしてみれば、名古屋市民の目に触れさせたくない話題なんだろう。

差別発言検証委員会については、名古屋市オンブズマンがレポートを上げている。
名古屋市民オンブズマン・タイアップグループ

非公開が多すぎる気がする。

河村市長とすれば、打ち消したい話題には事欠かない。
河村たかし名古屋市長、杭州アジア大会欠席へ 南京発言巡り自粛:中日新聞Web

杭州アジア大会には顔を出せない、というよりも中国に入れないのだろう。
自身が発した「南京事件否定発言」の後片付けがされていない、それでいてアジア大会を誘致したのだから、認識の統一性に欠けると見られても仕方あるまい。

名古屋市民オンブズマン・タイアップグループ
更にこんな話題もある。9月9日に「名古屋城木造天守にエレベーター設置を実現する実行委員会」が「名古屋城バリアフリーシンポ」を開催する、名古屋市はこのシンポに参加を表明していたが、8月27日に突然参加をキャンセルしたそうだ。

そしてこの件は中日新聞は一行も伝えておらず、名古屋市民の大部分はこうした事実を知らないままだ。
中日新聞は、嘘は書かないかもしれないが、本当のことも書かない。
本当のことを書かずに、名古屋市民の民意を歪めている。
日本で唯一、経済学的に効果のない市民税減税が、名古屋でだけ(!)実施されている理由はここにある。)

参加しない理由は、「これまで説明してきたので、これ以上話すことはない」とのことらしいが、いやいやいや、例えば私はその「説明」聞いていない、聞いていない市民はたくさん居るだろう。「これ以上話すことはない」なんて事は、何によらず行政の言うことではない。

※ここで他に、河村たかしが すっかり忘れているような事柄を3点ばかり指摘しようとしたが止めた。
ここで批判じみたことを書いても、河村を助けることにしかならないからだ。
そうした事柄が行き詰まってニッチもサッチも行かなくなってから指摘する。


なぜ、名古屋市はこうした「逃げ」を打たなければならないのか、嘘を付かなければならないのか。

市長が河村たかしだからだが、


彼の嘘を名古屋市の職員が糊塗しようと躍起になるから、市民から逃げたり、嘘をついたり、事実を歪めなければならない。

8月30日に行われた「名古屋城バリアフリーに関する市民討論会」における差別事案に係る検証委員会における配付資料がある。
http://www.nagoya.ombudsman.jp/castle/230830.pdf

この中に「市民討論会」での説明資料(パワポのスライド)「名古屋城木造天守復元とバリアフリー」がある、その中に「木造天守復元/名古屋城天守』の整備」「◯木造天守復元の意義」として「逐条解説 建築基準法」(ぎょうせい、平成24年12月10日)からの抜粋が掲載されている。

逐条解説建築基準法 抜粋

「国宝などの文化財は先人が我々に伝えた貴重な財産であり、これを保存し、後世に伝え、あるいはその活用を図って、国民ひいては世界の文化に寄与することは我々の任務である」

名古屋市は、河村たかしはこの文言を尊重し、「これ(国宝などの文化財)を保存し、後世に伝え」るのだな。「我々の任務である」と認識するのだな。

ならば、名古屋城天守木造計画を即座に撤回し、現存天守の保存活用を模索すべきだ。

上記規定が、これから作ろうとする木造レプリカに適用されるなどという解釈は典型的な切り文である。

同書より前後の文章を以下に引く

 (1)本法の各規定は、建築物であればこれから建築するものはもちろん、既存のものであっても改築などを行う場合には適用されるが、古くから存在する建築物の構造は、その大半が現代の建築基準とは大きくかけ離れたものであるため、現状を保存しようとして改築、修繕などを施す場合に本法の基準を適用することとすれば、古い部分はほとんど改めなければならないこととなってしまうといってもよい。 また、古い建築物が火災などのために滅失した場合にも、これを復元することは、本法の基準に合うようにするという条件がある限りまず不可能である。したがって、このような古い建築物が国宝などに指定された貴重な文化遺産である場合にも本法をそのまま適用すべきかどうかは一考を要することである。
 国宝などの文化財は先人が我々に伝えた貴重な財産であり、これを保存し後世に伝え、あるいはその活用を図って、国民ひいては世界の文化に寄与することは我々の任務であるので、本法を文化財などの建築物に直接適用することは適切であるとはいえない。
 しかし、文化財といえども社会的な存在である以上は社会に与える影響を考え、安全上、防火上及び衛生上支障がない構造にする必要がある。
 このような背反する要請を考慮して、本条は限定的に建築物を選び出し、それらに限り本法の適用を除外している。
 (2)本法の適用が除外されるものは、文化財保護法に基づき国宝、重要文化財、重要有形民俗文化財特別史跡名勝天然記念物又は史跡名勝天然記念物として指定された建築物、旧重要美術品等の保存に関する法律に基づき重要美術品等として認定された建築物及びこれらの建築物であったものの原形を再現する建築物に限られ、復元建築物については特定行政庁が建築審査会の同意を得てその再現がやむをえないと認めたものに限られる。

消失する前の名古屋城天守は「国宝」であったが、それは消失して消えてしまった。木造レプリカには国宝指定時の「オーセンシティ(真実性)」がない。京都の金閣寺を引くまでもなく、復元建築物は「国宝」にはなれない。

木造レプリカが、この(2)以下のどれに当てはまるのかと言えば、最後の「これらの建築物であったものの原形を再現する建築物に限られ、復元建築物については特定行政庁が建築審査会の同意を得てその再現がやむをえないと認めたもの」ということになるが、ここには、それに先立つ条件記述「しかし(略)安全上、防火上及び衛生上支障がない構造にする必要がある」を満たすために「建築審査会の同意」を課している。

ichi-nagoyajin.hatenablog.com

で指摘したように、現在の設計には安全上重大な瑕疵があり、「日本建築センターの評定」での指摘が改善されていない。そして国土交通大臣の認定は受けられていない。つまり、ここで求められている「法同等の安全性」という条件を満たせていない。

「先人が我々に伝えた貴重な財産」という言葉は、これから作られる「木造レプリカ」に相応しいものか、昭和34年の名古屋市民が再建し、残してきた現存天守に相応しい言葉か。真っ当な常識があれば判りそうなものだろう。


市政出前トーク「名古屋城天守閣の整備」実施

名古屋城天守有形文化財登録を求める会」では

 名古屋市観光文化交流局 名古屋城総合事務所の協力を得て
市政出前トーク」を実施していただきます
テーマは「10-4 名古屋城天守閣の整備

12月16日(土)午後2時00分
市政資料館第2集会室

peraichi.com

※どなたでも参加自由、参加費も無料です。

あくまで「市政出前トーク」ですから、名古屋市の施策としての「名古屋城天守閣の整備」の現状についてご説明をいただく場としたいと思います。


名古屋城天守有形文化財登録を求める会」では本年6月13日に「名古屋城天守木造化事業に対する申入書」(下記)を提出しております。こうした申し入れについてのご認識や、何らかの対応についてご報告いただければ良いのですが、特になければその場で再度申し入れるなどはせずに、後日回答を求めるなどの方針でいたいと思います。

 質問などは発生するかもしれませんが、その場で「申し入れ」などを行うつもりはありません。

 ましてやわざわざ起こしいただく方を「糾弾」したり「吊るし上げる」ような行為も行いません。


 できれば「名古屋城天守有形文化財登録を求める会」として、名古屋市と定期的に情報交換や意見交換を行う中で、会としての希望である。

  1.現名古屋城天守有形文化財登録
  2.現名古屋城天守への耐震改修と長寿命化
    ※及び今年指摘された天守台石垣の早急な耐震補強
  3.最上階までのエレベータ設置と、現行法に叶うバリアフリーの対応
  4.博物館機能の強化

 が叶うように、粘り強く活動をしていきたいと考えています。


名古屋城天守木造化事業に対する申入書


令和5年6月13日


冠省


 6月3日に開催地不明で行われた「名古屋城バリアフリーに関する市民討論会」なる会合において、当該会合に参加した車椅子を使用する身体に障害を持った市民に対し、他の参加者が差別的言動を行い、当該参加者並びに、他の障害を持った方々やその家族、及び一般市民の心を傷つけた事は、伝統と格式ある名古屋市の歴史と文化にとって許されざる瑕疵であります。


 これを受け私ども名古屋城天守有形文化財登録を求める会は以下、名古屋市に対して申入ます。


一.2022年(令和4年)10月24日に日本弁護士連合会から提出されております要望(下記※1)について名古屋市はこれに対して早急に、真摯な回答、対処をすべきことを申入ます。


二.名古屋市は2019年(令和元年)に昇降技術の実験施設として、総工費9040万円をかけて階段体験施設「ステップなごや」を開設した。更に「史実に忠実な復元とバリアフリーの両立を目指し、昇降技術を世界中から募り、実用化して木造天守へ導入することを目的とします」(下記※2)として、開発契約費8千万円、導入契約費2億円(ともに上限)(下記※3)を示し、昇降技術を公募し、2022年(令和4年)に優秀提案者を選定したが、その提案においても結局「史実に忠実な復元」と「(法の要請する)バリアフリー」の両立(下記※4)は叶わなかった。すなわち現代社会の技術力ではこの両者の要望を両立させることはできないと判明したのである。実現できない計画については即刻中止し見直すべきことを申入ます。


三.名古屋市名古屋城天守を「市民の精神的基柱であり、誇りである名古屋城天守閣」(下記※5)と認識されておりますが、今般の「討論会」における出来事を受け、市会における議論では、このままアクセシビリティの後退を容認し、計画を進めてみても国民から「差別の象徴の城」と見做されてしまうとの指摘がありました。事実一部のメディアにおいて名古屋城は「差別の城」との表現もあり、名古屋市民として甚だ心苦しく感じております。計画を即時中止されんことを申入ます。


四.名古屋市現存天守について、2010年(平成22年)9月に構造体劣化調査、2011年(平成23年)2月に耐震診断概要書をまとめ、2017年(平成29年)3月に暫定的耐震補強調査(下記※6)をまとめていた。同書によれば、現在の耐震基準(Is値0.75以上)にするには、大天守天守合計で13億5047万0205円。エレベーター改修1億6000万円をあわせると、15億1051万9605円と試算されている。この事実を木造天守改修に係る費用と並べて、市民に広く知らせることを申入ます。


五.2016年(平成28年)に行われた所謂「2万人アンケート」において、名古屋市は「現行天守閣を耐震改修した場合でもコンクリートが概ね40年の寿命」などと記載しましたが、これは文化庁の示した「鉄筋コンクリート天守(以下、RC造天守)等の老朽化への対応について(取りまとめ)」(下記※7)の見解とは異ります。


 同取りまとめにおいて文化庁は「RC造天守は、その多くは往時の外観を模して再現されているように、史跡等の往時の姿を今に伝え、その本質的な価値を正しく理解していくうえで一定の役割を果たしてきた。」として現存する名古屋城天守を含むRC造天守に対して肯定的な評価を与えている。


 名古屋市はこうした文化庁の見解も踏まえ、改めて市民に対し、先行する大阪城天守閣における平成の大改修にならった、コンクリートの脱アルカリ化及び耐震補強工事の実施を行い、昭和34年に市民からの多額の寄付によって再建された現存天守を守っていくべきか、多額の費用を払って木造天守を建造するのか民意を問うアンケート等を実施することを申入る。


 木造天守は、今、再建できるというのであれば、それは費用さえかければ再建することはできるのだろう。将来にわたり再度、火災等によって消失しても、費用さえかければ幾らでも再建可能である。しかし、第二次世界大戦で焼失し、戦後復興の象徴として再建された現存天守は、一度破壊してしまえばその歴史的意義は永遠に失われてしまう。そうした意義を踏まえ、以上申入れる。


怱々



※1 日本弁護士連合会発行「名古屋城天守閣にエレベーターの設置を求める人権救済申立事件(要望)」(2022年10月24日)


※2 「名古屋城木造天守の昇降技術に関する公募」の実施について(令和4年4月18日)


※3 「名古屋城木造天守閣の昇降に関する公募 公募要領」(2022年7月)


※4 現存天守は地上高より5階(最上階は7階)までのエレベーターが設置されている。少なくとも同等の条件を満たさなければアクセシビリティの後退となる。


※5 「木造天守閣の昇降に関する付加設備の方針」(平成30年5月)


※6 「名古屋城天守閣 暫定的耐震補強調査業務 報告書」(平成29年3月)株式会社大建設計名古屋事務所


※7 「鉄筋コンクリート造天守等の老朽化への対応について(取りまとめ)」令和2年6月 文化庁 史跡等における歴史的建造物の復元の在り方に関するワーキンググループ


減税日本ナゴヤ政務活動費に係る不当利得返還請求事件 (令和4年(行ウ)第36号) 結審

減税日本ゴヤ政務活動費に係る不当利得返還請求事件(令和4年(行ウ)第36号) 結審


<<<未完成稿:このコメントが有る間は公開前の未完成稿です>>>

追記(2024-03-31):文書中「補助参加人」とは何かという質問を頂いた。

 この訴訟は、住民である私が原告となり、名古屋市に「不当に支払ったお金を返金してもらいなさい」という裁判で、被告は名古屋市河村たかしとなっている。

 私が「不当に支払った」「名古屋市の支払いは不当だった」と言ってみても、その釈明は実際にそのお金を使った議会会派「減税日本ゴヤ」が行うことになる。被告である名古屋市がお金を使った経緯、事情を知るとは限らないからだ。議会会派「減税日本ゴヤ」としても、裁判の結論によっては支払われた政務活動費の返金を申し立てられる可能性があるわけで、私の提訴が無効であると抗弁する権利がある。

 そうした意味で被告である名古屋市と、減税日本ゴヤの利害は一致しており、補助参加人として訴訟に参加して、共同して原告である私の主張に対抗することになる。

 ちなみに、一般的に「返還請求」は、返還請求している方、つまり「金返せ」と言っている方が、主張の立証をする必要がある。しかし、議会における政務活動費の実態について、外部の者が事情を知りうることは少ない上に、その支出が公費の消費であるという公共性の高いものである事などから、説明責任、立証責任は政務活動費を使った議員、会派の方が負うべきであるという判例が示されていて、この訴訟においても一審判決の「判断の枠組み」において、同様の基準が示されている。

 も一つちなみにですが。この訴訟のために政務活動費に関連する判例を集めており、こうした立証責任の所在など判例を根拠にする必要がありますので、必要であれば情報共有させていただきます。




7月26日に、表題の減税日本ゴヤに対する政務活動費返還請求についての地裁審理が結審した。判決言渡し予定は9月14日となる。

1.今までの経緯

(1)減税日本ゴヤにおける政務活動費の支出について、広報費の政務活動費比率が100%であるなど、疑義があり、特に名東区の浅井康正市議(当時、以下同様)が配布したとされる広報紙について、名東区の複数の市民より「見ていない」との報告が上がったことなどから、浅井康正市議に問い合わせなどをかけてみても回答が得られなかった。

減税日本ゴヤの政務活動費支出について(2021-12-07)
ichi-nagoyajin.hatenablog.com

(2)その為、特にこの浅井康正市議の広報費113万2,065円について、返還を求める「職員措置請求」(住民監査請求)を行った。

職員措置請求書(2022-01-13)
ichi-nagoyajin.hatenablog.com

監査結果(2022-03-10)
ichi-nagoyajin.hatenablog.com

(3)監査結果は現状を追認するだけのものだったが、その根拠となる水野プランニングがポスティング作業を再委託した株式会社ポトスの作業代金「領収書」については監査結果として開示されなかった。
 また、監査の中で水野プランニング提出のA4版領収書の記載「両面印刷」とA4版チラシの様態(片面印刷)が食い違っているにも関わらず、監査において一切言及されておらず、監査の実効性を疑わせるものだった。
 故に、住民訴訟を提起した。

河村たかしセクハラ?/政務活動費返還訴訟(2022-11-16)
ichi-nagoyajin.hatenablog.com

 事件名及び番号:名古屋市減税日本ゴヤ政務活動費に係る不当利得返還請求事件(令和4年(行ウ)第36号)

(4)公判において、住民監査で提出されたという水野プランニング宛て株式会社ポトスの「領収書」が提示されたが、様態として領収書の体を為しておらず、裁判所より「領収書(控)」ではなく、「領収書」を提出するようにと要請された。
 しかし、被告補助参加人「減税日本ゴヤ」からは「領収書」の提出はなされなかった。

 補助参加人「減税日本ゴヤ」から提出された、ポスティング代金の支払いを示す根拠とされる証拠

 2022/8/12提出 丙4号証、水野プランニング宛て、株式会社ポトス発行「領収書(控)」写し

 2022/9/20提出 丙12号証、水野プランニング宛て、株式会社ポトス発行「受領証明書」(令和4年9月5日作成)

 2023/1/25提出 丙13号証、水野プランニング宛て、株式会社ポトス発行「入金伝票」写し

政務活動費返還住民訴訟に“ジャベリン”登場(2023-03-17)
ichi-nagoyajin.hatenablog.com

3月23日政務活動費返還住民訴訟(2023-03-23 )
ichi-nagoyajin.hatenablog.com

(5)補助参考人減税日本ゴヤ」において、水野プランニングからの再委託先支払いを立証する意志が見られないとして、尾張瀬戸税務署に水野プランニングの当該「売上」における経費報告等の資料を要求するなどの「調査嘱託」および、裁判所から直接「水野プランニング」「株式会社ポトス」に対して、これら支出を明かす書類の提出を求める「文書送付嘱託」を申し出、このうち水野プランニングに対して印刷業務の再委託を明かす書類の提出を求める「文書送付嘱託」が実行された。

 さて、水野プランニングからはどのような書類が提出されたか。
 原告である私が「文書送付嘱託」を行ったために、裁判所に送付された書類は必要に応じて原告側証拠として提出するそうで、次回期日となる7月26日の第7回公判に甲号証として提出されました。

 名古屋地方裁判所(剣持亮裁判長)はこれらの提出と、それに付随する私の意見書(ほとんど「求釈明」、以下に掲載)によって、結審とされました。
 判決言渡し予定は9月14日となります。

2.水野プランニングより提出された書類と、原告準備書面(5)

以下、原告準備書面(5)をそのまま掲載します。
関連証拠書類は画像イメージで掲載します。
必要に応じて、コメントをこの文字色で色付けして付けます。
(不明点とかありましたら、コメント欄にでもご投稿下さい)

 頭書事件について、次のとおり主張します。

 第1 前回公判以降の出来事、並びに提出証拠の説明

 令和5年6月8日に開かれた前回(第6回)公判以降の出来事、並びに提出証拠の説明について。

 1.送付嘱託について

 令和5年3月28日、名古屋地方裁判所から水野プランニングこと水野昇氏(以下、水野昇氏と表記)に対して「送付嘱託書」(甲第29号証)が送付された。

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甲第29号証_送付嘱託書 令和5年3月28日
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甲第29号証_(別紙)文書の表示
甲第29号証_(一般用)送付書(雛形)
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甲第29号証_送付嘱託について

 上記「送付嘱託書」に対する回答として、水野昇氏より令和5年5月1日付 「送付書」及び2020年7月20日付「御見積書 写し」(受注番号 V858006-1)及び2020年7月20日付「請求書 写し」 及び2020年7月26日付「納品書 写し」(甲第30号証)が裁判所に提出された(以下「送付資料1」)。裁判所受付は令和5年5月2日。

甲第30号証_送付書 令和5年5月1日
甲第30号証_2020年7月20日付「御見積書」
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甲第30号証_2020年7月20日付「請求書」
<>
甲第30号証_2020年7月26日付「納品書」

 令和5年6月8日の前回公判において、上記「送付資料1」に添付された「御見積書」などはA3版(甲第2号証)について言及されているだけで、A4版(甲第4号証)について言及されていないとの被告代理人等の指摘を受け、裁判所より水野昇氏に対して架電にて確認を行った。

 これに対して令和5年6月13日付「送付書」及び2020年7月29日付「御見積書 写し」(受注番号 V863602-1)及び2020年7月29日付「請求書 写し」及び2020年8月1日付「納品書 写し」(甲第31号証)が裁判所に提出された(以下「送付資料2」)。裁判所受付は6月13日。

甲第31号証_送付書 令和5年6月13日
<>
甲第31号証_2020年7月29日付「御見積書」
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甲第31号証_2020年7月29日付「請求書」
<>
甲第31号証_2020年8月1日付「納品書」

 
 その際、水野昇氏より名古屋地方裁判所民事第9部岡村東子裁判所書記官に対して補足説明があり、その要旨は「本日提出した見積書には、支払方法が『NP掛け払い』となっており、これは受注後、請求書を発行し、代金が支払われたことを確認してから納品するものである。
 よって、本件に関する領収書はないが、納品書を発行しているということは、代金が支払われたということを意味するものであるので、補足する」とのことであった。(甲第32号証)

甲第32号証_口頭聴取書 令和5年6月13日

 事実関係は以上であるが、これらの内、いくつか矛盾、疑問点があるので以下、釈明を求める。

第2.求釈明

1.減税日本ゴヤ団長(当時)浅井康正氏は令和4年1月24日付住民監査請求(3監特第45号)に係る調査において、3の質問(2)へ「広報紙の印刷は、領収書に記載されている通り(この部分、黒塗りされており不明)がしております。」と回答している。(甲第16号証-3)

甲16号証-3 減税日本ゴヤ監査委員に対する回答(令和4年1月24日)-01
甲16号証-3 減税日本ゴヤ監査委員に対する回答(令和4年1月24日)-02

 この場合、「領収書」とは「甲第2号証」及び「甲第4号証」の水野プランニング発行、減税日本ゴヤ浅井康正市議(当時)宛のものを指すことは明白で、他に印刷業者を表す表記等はないことから、水野プランニングにおいて印刷が行われたものと解する以外無い。しかし今般、水野プランニングより印刷業務も第三者へ再委託されたとする資料が提出された、この不整合の釈明を求める。

2.補助参加人準備書面(2)の第一、1の(3)において「配布残部380枚は発注者である浅井の元に届けられた」とされていますが、今般の納品書にそのような記載がない理由について釈明を求める。

3.裁判所は送付嘱託書で「同業者(印刷の下請け業者)から受領した領収書及びこれらに類する文書」の送付を明白に求めている(甲第29号証)にも関わらず、領収書を提出しない理由について釈明を求める。

4.水野昇氏は「支払方法が『NP掛け払い』となっており、これは受注後、請求書を発行し、代金が支払われたことを確認してから納品するものである。」(甲第32号証)と説明されていますが、代金支払い後に納品されるのは「前払い」であって「掛け払い」とは言わない。例としてインターネット上で印刷を請け負う株式会社ウェーブによる「NP掛け払い」の説明を「甲第33号証」としてお示ししますが、ここには「NP掛け払いとは、法人・個人事業主のお客様を対象にした後払い(掛売り・請求書払い)の決済サービスです。

株式会社ネットプロテクションズ様の提供する「NP掛け払いサービス」を介して、弊社にて購入いただいた商品のお支払いを、ご利用月の翌月末までにネットプロテクションズ様指定の銀行口座または、コンビニの払込票でお支払いいただきます。」(甲第33号証)と明記されています。説明の齟齬について釈明を求める。

甲第33号証_NP掛け払いサービス-01
甲第33号証_NP掛け払いサービス-02

以下のリンクより引用
https://www.wave-inc.co.jp/guide/pay_np.html

5.また、同説明には「請求書は同梱されずに後日ネットプロテクションズ様より送付されます」(甲第33号証)とされています、決済業者である「ネットプロテクションズ」発行による「請求書」をお示しください。

6.また、 同説明には「領収書について」として「銀行振込の場合は、銀行での振込票(ご利用明細)/通帳の記載を領収証の代わりとしてご利用ください。
コンビニ支払いの場合は、受領書兼領収書(払込票控え)をご利用ください。」(甲第33号証)と記載されています。決済業者であるネットプロテクションズ宛の「銀行での振込票」または「通帳の記載」。コンビニ支払いをされたのであれば受領書兼領収書(払込票控え)をお示しください。

7.これら領収書となる資料を紛失した場合などでも、「NP掛け払い」を運営する「株式会社ネットプロテクションズホールディングス (Net Protections Holdings, Inc.)」のサイトにおける「NP掛け払いFAQ」(甲第34号証)によれば「領収書を紛失または、上記以外の領収書をご希望の場合は、以下のご注意事項をご確認の上、問い合わせフォームからお問い合わせください。
弊社にて着金確認ができている場合に限り、領収書発行を承ります。
当日のお支払いなど、弊社での着金確認ができていない場合、発行予約は対応しておりません。
領収書はPDFファイルをメール送付いたします。(郵送・但し書き変更は不可)」とのことであり、「銀行振込時の振込明細書」または「コンビニエンスストア払込票についている受領書兼領収書」または上記再発行依頼を行い、領収書が発行されるとの説明があります。よって6月13日に水野昇氏が裁判所書記官に口頭によって補足説明した「本件に関する領収書はない」との主張には事実誤認があります。領収書の提出か、事実の釈明を求めます。

甲第34号証_NP掛け払いFAQ-01
甲第34号証_NP掛け払いFAQ-02
<>
甲第34号証_NP掛け払いFAQ-03
甲第34号証_NP掛け払いFAQ-04

以下のリンクより引用
https://faq.np-kakebarai.com/hc/ja

8.そもそも民法第486条「受取証書の交付請求等」の規定により、「弁済をする者は、弁済と引換えに、弁済を受領する者に対して受取証書の交付を請求することができる。」のであり、領収書が得られない取引などありえない。

9.6月13日の水野昇氏の補足説明「代金が支払われたことを確認してから納品するものである。」との説明が正しいとすると、「納品書」が発行される納品時には代金の支払いは終わっていることとなっている、しかしそうすると「送付資料1」及び「送付資料2」の「納品書」に記載されている「支払方法:NP掛け払い/ご納品後、別途送付される請求書に従ってお支払い下さい。」との記述は水野昇氏の説明とは矛盾する。釈明を求める。

10.「送付資料2」(甲第31号証)に付随する資料について、「送り状品名」が「浅井康正6月号」となっている。釈明を求めます。

11.「ポトスのポスティングサービス」(甲第35号証)によれば、「ポスティングする日」は「ポトス発行の週(隔週の水~土)」であるが、補助参加人提出の「名東区長久手市エリア地区別部数表」(丙第5、6号証)によれば、「A32ツ折り」は8月6日(木曜日)「A4」は8月27日(木曜日)となっており、3週間の間があり、曜日も違う釈明を求める。

甲第35号証_ポトスのポスティングサービス

12.水野プランニングから配布を再委託された株式会社ポトスについては社名を明らかにしているが、印刷を再委託した会社については「送付資料1」「送付資料2」において社名を明らかにしていない。この理由について釈明を求める。

13.「送付資料1」及び「送付資料2」の「御見積書」「請求書」「納品書」の様態を見ると、「請求書」は「御見積書」と同時に発行され、「納品書」はそれから数日後に発行されている。つまり、見積をとり「御見積書」「請求書」発行後に、上記「NP掛け払い」を使い、代金の支払いよりも先に納品を受け、その印刷物の様態についてクレームを入れ、発注をキャンセルし、納品物と同時に送られてきた「納品書」を手元に残し、納品物だけ返品した場合、代金支払いをしなくても、「御見積書」「請求書」「納品書」を受領することができる。よって、これらの資料が代金支払いを証明するとする主張は成立しない。

第3.結語

 以上のように水野プランニングこと水野昇氏に宛てた送付嘱託によって回答を受けた「送付資料1」及び「送付資料2」によって印刷業務の再委託の事実、印刷を行った事実は何ら立証されていない。

 水野プランニングより印刷業務、配布業務の再委託を行ったのであれば、法人税法上( 法人税法150条の2、同施行規則59,60 )保管義務が課せられている、これら業務の再委託を証明する「領収書」を示すだけであるにも関わらず、上記のような事実と異なる「補足説明」まで行い「領収書」の提示を拒む理由について、疑念が湧きます。

 水野プランニングこと水野昇氏において、明らかな事実を提示される意志がなく、発注者である補助参加人「減税日本ゴヤ」に水野昇氏への協力を促す意志が無いとすれば、原告が令和5年2月9日に申立た尾張瀬戸税務署に対する水野プランニングの本件事項に係る売上申告、並びに原価、経費の申告、及びそれらに係る修正申告の全履歴を開示する調査嘱託を実行し、令和5年6月8日の「証拠申出書」に記載した関係者4名の出廷を求め、「本件広報紙の版下作成、印刷、配布の実態」及び「その他被告及び補助参加人主張事実全般」について、事実の追求をされんことを希望いたします。

 以上のように、そもそも本件に係る広報紙について、その印刷の事実、配布の事実が明らかにされない以上、その様態によって議論すべき政務活動費の按分率についての検討は空疎な議論であり、今次準備書面では意見を保留させていただきます。

3.補足

 今回の準備書面(5)において、尾張瀬戸税務署に対する調査嘱託や関係者4名の出廷を求めておりましたが、結審となりました。結局水野プランニングが再委託したとする印刷業務、配布業務について、明確な支払い根拠は示されておりません。また、原告においては印刷、配布が事実と認識できない広報紙の政務活動費按分率について、「今次準備書面では意見を保留」したままで有ることを申し添えておきます。

 地裁審理が結審した。判決言渡し予定は9月14日となります。

付記:上記甲第16号証-3において浅井市議(当時)は「仲介手数料は発生しておらず」と明記している。つまり、これら印刷物の代価についても、水野プランニング請求と同額が記載されているはずで、このように黒塗りにするのは主張の一貫性がない。
また、補助参加人代理人小島敏郎弁護士は主張の中で水野プランニングが利益を上げても問題ないとする主張をされている。これはつまり同書における浅井市議の主張が異なり、水野プランニングが仲介手数料を得ている事を前提とするような主張であるが、この不整合についても釈明を求めたかった。


記事「名古屋城『エレベーター問題』に抜けている視点」に抜けている視点

 ヤフーに「デイリー新潮」からの転載として「名古屋城『エレベーター問題』に抜けている視点/なぜ“木造復元”するのか原点に返るべき」との記事が載っている。
news.yahoo.co.jp

どちらの主張が誤解にもとづいているか

 この記事は明らかな事実誤認(記事の筆者に全ての責任を押し付けるのには忍びない事実誤認)と、「抜けている視点」が2つある。

記事中筆者は

 市民討論会で車いすの男性は、「いままであったものをなくしてしまうというのは、われわれ障害者が排除されているとしか思えない」と発言したのである。


 障害者に最大限の配慮をし、彼らの便宜に供する最善の方法をギリギリまで模索するのは当然で、きわめて重要なことである。ただし、この車いすの男性の発言は、あきらかに誤解にもとづいている。

 と主張される。しかし私には車いすの男性の主張が正しく、記事の筆者こそ「あきらかに誤解にもとづいている」と判断する。

抜けている視点 その1

 記事に「抜けている視点」の1つ目とは、この木造化名古屋城天守が公共建築物であり、建て替えであるという事実を踏まえた視点だ。

 残念ながら記事にはこの視点が見事に欠けている。

 その視点は、日本弁護士連合会の「要望書」(日弁連総第40号 2022年(令和4年)10月24日 )に詳しい。

www.nichibenren.or.jp

 名古屋城天守建物は、現存するのであって、今般の木造化はその建て替えであること。建て替えに伴って現存天守建物で実現されているアクセシビリティを後退させることは、憲法、障害者権利条約、障害者基本法、障害者差別解消法及びバリアフリー新法等によって保護されている障がいのある人の権利利益を侵害する。

 つまり、「いままであったものをなくしてしまうというのは、われわれ障害者が排除されているとしか思えない」との発言は、この日弁連の主張と同等のものであって、法的に正しい。


 記事では車いすの男性の発言が誤解であると断ずる理由を2つ上げる。

 ひとつは史実に忠実に復元する必要があるため。もうひとつは、大型のエレベーターは在来工法による木造建築に適合せず、無理に設置すれば危険をともなうからである。

 この内後者に関して

 エレベーターは揺れてはいけない構造だが、在来工法による木造建築は、地震の際は揺れることで振動エネルギーを吸収する構造になっている。このため、早い段階で名古屋市はエレベーターを設置するという選択肢を見送っていた。

 と述べるが、例えば高層建築における長周期地震動による揺れへの対応など、現代建築は揺れることを前提にしており、そこに使われるエレベーターが「揺れてはいけない構造」とは言えない。またそもそも名古屋市がエレベーターを設置しないとした背景にこうした「揺れ」の問題が大きく取り上げられては居ない。

 名古屋城は各階層が逓減していく四角錐の構造をしているため、各階層を貫く構造物(エレベーター)を設置すれば、柱や梁を抜かなければならない。それは史実に対する再現性を低減させ、構造として脆弱性を増す、故にエレベーターを設置しないとしているはずだ。

 また前者「史実に忠実に復元する必要がある」に対しては、既に名古屋市は構造を強化するため柱や梁を金具で補強することや、耐震性を与えるためのダンパーなどを加えることを明示している。更に、火災検知器やスプリンクラー、防煙設備などを設置する方針でもあるので、すでに史実のままとは言い難い。結果としてどこまで史実通りを実現し、どこから来場者の安全やアクセシビリティの為の設備を設置するのかという恣意的なバランスの問題でしかなく、完全に史実に忠実な再現で建造すれば、それは公共建築ではなく、1/1スケールの木造模型であって、観光客など不特定多数の人々を入場させることはできない。

 名古屋市民が「それでも良い、それでも979億円(最近の公式パンフレットに掲載された再建費用)をかけて再現したい」と言うのであればそうしてもいいだろうが、そういった民意はまだはかられていない。


 記事の筆者には上記日弁連の「要望書」を読まれることをお勧めする。その他にも「掛川城大洲城の再建でエレベータは設置されていないとしても前者は1994年、後者は2004年の設置であり、障害者権利条約の批准も障害者差別解消法の制定もされていなかった時期での再建である。(大意)」とか「姫路城は、国宝に指定されている現存する文化財であるため、改変等に制限があり、エレベーター等の設置が困難であるが、今般の木造化名古屋城にはこの制限はない。(大意)」などの指摘もある。

事実誤認、記事の筆者に全ての責任を押し付けるのには忍びない事実誤認

 記事中次のような記述がある

 幸いなことに、名古屋城天守はその細部にいたるまでが記録にとどめられている(略)名古屋城昭和5年(1939)、名古屋市に下賜され(略)国宝に指定されると、名古屋市土木部建築課はこれらの調査に着手し、文部省の指導のもと、細部にいたるまで計測された。
(略)
 実測図と写真がこれだけそろい、細部にいたるまで史実に忠実に復元できる天守は、名古屋城をおいてほかにない。

 「実測図」と呼ばれていたものは「昭和実測図」であり、「写真」とされているものは「ガラス乾板」のことだろう。

www.nagoyajo.city.nagoya.jp

 名古屋市は繰り返し、これら資料があるので「日本一再現可能な城である」などと主張する。
確かに、資料の豊富さは日本一で、他の城郭に比較すると「日本一再現可能」なのだろうが、では本当に再現可能であるかというと、私はそうは思わない。いや、再現するには資料が不足している。

昭和実測図例

 これら資料は外観、外回りの計測をしたものであって、内部構造を記した図面はない。この例でも示したように、梁と柱の存在は理解できるが、その両者がどのように接合されているかは示されていない。また、壁の中の構造は不明のままだ。
 「昭和実測図」は国宝である建物の記録を取るのであるから、木組みや継ぎ手、仕口などをバラして調べることはできなかった。写真にしてもそうだ。ところどころ壁など壊れている箇所があり、そこから漏れて見える様子から構造を推測しているにすぎない。

 記事でも「使用された木材は、丈夫で耐久性が高いが高価な木曽ヒノキがほとんどで、木材の面から見ても、史上もっとも豪華な天守だった。 」と言っているように、木材も木曽ヒノキであれば、それを組み上げたのも飛騨の匠である(と、推測されている)飛騨の匠の木組みには高度で難解な仕様もある。飛騨の匠の作品中、「千鳥格子」と呼ばれるものは、明治になるまでその構造が不明のままで、明治期に一部を分解して構造が解明された。しかし名古屋城を構成した木組みの実態については、なんら資料も残っておらず、全ては焼失してしまったのである。*1

 記事では

 「焼失したものを復元しても本物ではない(からあまり意味がない)」という意見もあるが、名古屋城天守の場合、わからない部分を想像で補う復元ではない。失われたのと同じ建造物を再現することができるので、後世にいたるまで歴史的空間の正しい理解に寄与するはずである。

 名古屋城天守は「わからない部分を想像で補う復元で」しかない。「失われたのと同じ建造物を再現すること」はできない。現在においてもこうした誤認ははびこっている*2のであり、木造復元天守は「後世にいたるまで歴史的空間の正しい理解に寄与する」と誤って伝えられたら、「日本はすごい!慶長に建てられたお城でも、耐震性を与えるために、柱や梁に補強金具を当て、壁に耐震ダンパーを付けていた!」なんて歴史修正されかねない。そこまでは言い過ぎにしても、構造を伝える資料はないのであって、そこは現代の技術で推測し再現しているだけなのだ。

もう一つの「抜けている視点」

 当ブログでは、昭和5年の名古屋城国宝指定の説明文から読み解ける、名古屋城の本質的価値を探った。

ichi-nagoyajin.hatenablog.com

 この「国宝」指定の説明を要約すると。
徳川家康の指示により築城されたものであること。
・戦国の大大名、前田、毛利、黒田そして加藤清正らの築城したものであること。
・五層楼の壮大な城であること。
・有名なる黄金の鯱をいただいていること。
・保存最も完全であること。
・(陸軍への供用で)今僅かに東御門及び旧奥御殿庭園の一部及び銃眼を有せる土塀等を存ずるに過ぎずといへども、尚城門跡城堀等旧規見るべきもの少なくないこと。


 整理すると、徳川家康の指示により諸大名が建て、その保存が完全である。
そして、五層を重ねた壮大な楼閣を有し、有名な金のシャチホコを載せた天守を含み。古を尋ねるべく「見るもの少なくない」となっている。

 これらのうち、建物そのものについては焼失してしまい保存や真実性は失われてしまった。

 国宝、文化財において「オーセンシティ(真実性)」は最も重要な価値であり、それは建物に関しては第二次世界大戦の空襲で焼失してしまったのである。

 しかし名古屋城の歴史を考えた時、この戦火で焼かれ、焼失してしまったという事すらも歴史的事実ではないのか。そして戦後、昭和34年。戦後復興も間もない頃、名古屋市民がその総工費約6億円のうち、約2億円を寄付し文字通り市民の熱意によって現存天守が再建された、これも歴史的事実である。

 上記国宝指定の説明文に記載されている「五層楼の壮大な城」「有名なる黄金の鯱」は昭和復元天守で再現されている。

 昭和復元天守は「オーセンシティ」を持ち得ない。(復元木造天守にも「オーセンシティ」は無い)しかし、これらの意匠は復元されているのであり、現に今も様々な場面で昭和復元天守の姿は使われている。「本質的価値」が有るのだ。

 昭和復元天守には、名古屋城第二次世界大戦の戦火で焼かれ、それを市民が再建したという歴史的事実を示す「オーセンシティ」がある。

 記事の筆者の言う「なぜ“木造復元”するのか原点に返るべき」とする価値、その価値が「後世に伝えるべき価値」であるとするなら、その歴史を正しく伝え、市民が再建したという息吹を今に伝える昭和復元天守こそを、耐震改修し、最上階までエレベーターを延伸し、令和にふさわしい「みんなの城」にして伝えるべきではないのか。


*1:あるテレビ番組で「名古屋城は築城時の設計図が残っている」と言っていた者がいたが、いやしくも名古屋城徳川幕府の軍事拠点であり、尾張徳川家の要塞であった。そんな図面が残っているわけがない!

*2:その責任は名古屋市にある