市民のための名古屋市会を! Ver.3.0

一人の名古屋市民が「地域委員会制度」「減税日本」に対する疑問をまとめるサイトです。(since 2011/3/3)

減税日本ナゴヤ政務活動費に係る不当利得返還請求事件 (令和4年(行ウ)第36号) 判決

 9月14日に「減税日本ゴヤ政務活動費に係る不当利得返還請求事件 (令和4年(行ウ)第36号) 」の判決言渡しが有った。

 まあ、予想されていたことではあったが、私の敗訴となった。(勝訴していれば、それこそ新聞に載ります)行政に対する訴訟で住民側が勝つことは、よほどのことがない限りなくて、なおかつこちらは弁護士も立てずに住民が本人訴訟しているのだから、本当にこれで勝てたら、新聞ダネになるでしょう。

 下の方に判決文のPDFリンクを張っておきますので、お好きな方は読んでみてください。全体でも16ページですが、ポイントとなるのは p.7 の「第3 裁判所の判断」からとなります。(第1が「請求」の内容、第2が「事案の概要」で、1「関係法令の定め」2「前提事実」は争点となっていない事実が記載され、3「争点及びこれに関する当事者の主張」となっている、この(1)原告の主張には漏れが見られる ※1)

 その漏れの中でも、今般の文書送付嘱託で水野プランニングこと水野昇氏の説明が事実とは異なる矛盾については触れていない上に、判決文では更にそれを誤読している。

 もう一回言う、判決文は自身発出した文書送付嘱託書を誤読しており、ヘンテコな事を書いている。

 その前に、順番通り、「第3 裁判所の判断」「1 判断枠組みについて」の(2)において検討されている立証責任の所在について確認しておこう。

 住民が執行機関(市長など)に不当利得返還請求権の行使を怠っているとする場合、「住民である原告において、本件政務活動費に係る不当利得返還請求権が存すること」の「主張立証責任を負うものと解される」(p.9 4行目から10行目)

 しかし「住民が(略)収支報告書等に記載された内容を超えて支出の具体的な必要性やその原因となった行為等を把握することは困難」(11行目から14行目)であるので、

 「原告において(略)一般的、外形的事実を主張立証した場合には、被告又は補助参加人において、条例所定経費に該当する支出であることや社会通念上相当な範囲内の支出額であること相応の根拠や資料に基づき主張立証する必要があり、被告又は補助参加人がかかる主張立証を尽くさない場合には、条例所定経費に該当しない支出であることや社会通念上相当な範囲を超える支出であることが事実上推認されるというべきである。」(16行目から24行目、一部文字を太くしているのは引用者による)

 とされている。
 立証責任の所在は被告又は補助参加人にある。
 この判断は過去の判例にも沿ったものと言え、私も異論はない。

 逆に、こう判断され、原告における「一般的、外形的事実の主張立証」を否定していないことから、本件訴訟で補助参加人が主張していた、「原告における一般的、外形的事実の主張立証の不成立」はないものと認定されたと言える。

 補助参加人の「戦線設定」は誤っていた。


 では「第3 裁判所の判断」「2 本件各広報紙の印刷、配布の有無について」を検討していく。

 その(2)、ここで判決文は「本件各領収書(甲2,4)について、これに対応する印刷業者及びポスティング業者作成の見積書、請求書、納品書又は領収書控え、受領証明書、入金伝票(甲30,31,丙4~6、10~13)が存在し、これらの各文書の体裁や記載内容に特に不思議な点はなく、品名や摘要等に浅井議員分の発注である旨の記載があると認められ、これによれば浅井議員のために本件各広報紙が印刷され、配布された事が認められるというべきである。」(p10 20行目から26行目、一部文字を太くしているのは引用者による)

 「特に不思議な点はなく」? はぁ?

 こんな説明が、例えば税務署で通用するのだろうか?

 業務委託を立証する「証憑書類」と呼ばれるものは「領収書」であって、見積書でも請求書でも納品書でも領収書(控え)でも受領証明書でも入金伝票でも無い!逆に、そうした法的位置付けもあやふやな、性質もはっきりしていない書類を、多量に提出することの方が、却って「あやしい」とは思わないのか?

 特に「受領証明書」に至っては、発行日は「2022年9月5日」であり、提出日が9月20日であって、裁判に合わせて「作られて」いる。そんなものをわざわざ作成しなくても、法人税法上7年間の保管義務が課せられている(法人税法150条の2、同施行規則59,60)「領収書」を提出すれば済む話なのに、それを行わないということは、領収書が無いということを示しているのであり、それはすなわち支払いの事実がない、業務委託の事実がないという事なのではないのか???

 次に「第3 裁判所の判断」「2 本件各広報紙の印刷、配布の有無について」の(3)について見ていこう。ここで判決文はヘンテコな事を書いている。

 「水野プランニングから領収書が提出されていない点についても、印刷代の支払いは振込を証する文書をもって領収書に代えるとされており(甲32~34)、領収書は存在せず、振込みを証する文書についても送付嘱託書の対象文書に含まれていないと考え、送付しなかったにすぎないと考えられる*1から、原告の主張する点は、いずれも上記見積書等の信用性を減殺し、印刷、配布に係る契約の締結及び履行がなかったことを推認させる事実ということはできない。」(p.11 19行目から26行目)

 まず、大きな間違いとして、裁判所は上記「第3 裁判所の判断」「1 判断枠組みについて」において、「被告又は補助参加人において(略)根拠や資料に基づき主張立証する必要があ」るとしている。しかしここでは「原告」の「契約の締結及び履行がなかったことを推認させる事実」について、否定しているだけで、「被告又は補助参加人における履行の事実」を立証できているのか

 公金の支出であり、「推認」では済まされまい。

 そもそも「送付嘱託書」の記載は次のようなものである。
 「令和2年8月6日に減税日本ゴヤ市議団浅井康正市議から水野プランニングこと水野昇が受領したとされる広報紙印刷代金に係る、広報紙の納品書(控え)、印刷の下請け業者に対する発注書、同業者から受領した領収書及びこれらに類する文書(電磁的記録を含む)以上」(甲第29号証_(別紙)文書の表示)

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/i/ichi-nagoyajin/20230805/20230805162233.jpg

 であり、対象文書として「領収書及びこれらに類する文書」と明記されており、当方の提示した「NP掛け払い」についての説明(甲33)では「領収書について」として、
「・銀行振込の場合は、銀行での振込票(ご利用明細)/通帳の記載を領収書の代わりとしてご利用ください」となっており、もしも銀行による電子決済であっても上記、裁判所からの文書にある「電磁的記録を含む」で対応可能であることを示しているのであって、領収を証す文書を提出できないとはならない。また、
「・コンビニ支払いの場合は、受領書兼領収書(払込票控え)をご利用ください。」とあり、この場合でも、「領収書及びこれらに類する文書」は提出可能である。

 また、甲34号証において、領収書発行を求める方法が明記されている。

 追記:配布業務について、株式会社ポトスに対して、裁判提起以降「受け取り証明書」の発行を行わせた補助参加人が、なぜ印刷業務の「NP掛け払い」については、この甲34号証に定められた領収書の発行を求めなかったのか。矛盾がある。

 そもそも民法第486条「受取証書の交付請求等」の規定により、「弁済をする者は、弁済と引換えに、弁済を受領する者に対して受取証書の交付を請求することができる。」のであり、領収書が得られない取引などありえない。(原告準備書面(5) p.3)

 判決のいう「原告の主張する(略)印刷、配布に係る契約の締結及び履行がなかったことを推認させる事実ということはできない。」との主張は、根拠のない「推認の否定」であるが、ここで言える事実は、水野プランニングこと水野昇氏が、裁判所からの文書送付嘱託を無視し、印刷を再委託したとする業者に、その代金の支払いを行ったという「領収書及びこれらに類する文書*2」を提出しなかったという一点である。

 さらに、水野昇氏が6月13日に裁判所に「支払い方法が『NP掛け払い』となっており、これは受注後、請求書を発行し、代金が支払われたことを確認してから納品するものである」などとする虚偽説明を行った事実である。


 判決文では、この虚偽説明についても触れておらず、まったくの失当である。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/i/ichi-nagoyajin/20230805/20230805162854.jpg

甲第32号証_口頭聴取書 令和5年6月13日


 面白いことがある。水野氏はこの 口頭聴取書に記載されたように、支払い様態について明らかな虚偽を述べている。

 補助参加人「減税日本ゴヤ」団長(当時)の浅井康正氏は、令和4年1月24日の名古屋市監査委員への回答(甲16号-3)において、印刷は水野プランニングにおいて行われたと説明し、今般、水野プランニングこと水野氏は、印刷を再委託したとする資料を提出している。つまり、両者は相矛盾する主張を行っているのである。

 これら矛盾する主張を裁判所はどう判断し、何を事実として認定したのか、そしてその「事実と認定した根拠」は何か。

 私は、7月18日に「準備書面(5)」として13点の疑問点を列挙しているが、これら疑問点についても、不明のままなものが多すぎる。とてもこの判決が事実を根拠としたものとは考えられず、事実に立脚しない、推測に基づく判決など受け入れることはできない。

7月18日 原告 準備書面(5)
mega.nz


令和4年(行ウ)第36号 不当利得返還請求事件(住民訴訟
令和5年9月14日 一審判決
mega.nz

追記(1):
 この判決が確定すると、市会議員は「友達A」に「領収書」を書いてもらえば、政務活動費は使い放題となる。その「友達A」は、当該業務を再委託したとすれば良く、再委託された「友達B」の氏名も住所も裁判所は気にしない。「そう言っている」というだけで、公金である政務活動費は使い放題、還流もさせ放題ということになる。

 浅井元市議、水野昇氏が還流させているとは言っていない。

 ただ、令和2年8月というのは減税日本河村たかし代表が「知事リコール」を行っており、水野昇氏はその署名収集に連日活動されていたと仄聞するだけである。

追記(2):
 按分率の議論は個別に行っていない。
 それは「配布されたと実証されていない広報紙について、その按分率を論じても意味がない」と考えたからで、配布されたと実証されていないのだから、その按分率については論じていなかった。
 しかし判決では按分率100%の判断がなされたわけで、これも今までの判例等からすると踏み込んだ判断だろう。上記「追記(1)」で還流する際に、手間が省ける。

 ところで判決では政務活動費の支出として適合している要素をるる述べて、100%按分が正しいとしているが、問題は「政務活動費の支出として適合していない要素」はないかと言うことであって、例えば具体的に「政務活動費の使途に関する基本指針」に挙げられている「選挙に関わる内容」が微塵もないと言えるのだろうか。それがあるならば100%按分は当たらない。



※1・・・3「争点及びこれに関する当事者の主張」(1)「原告の主張」における漏れ

ichi-nagoyajin.hatenablog.com

 に記載した13点の疑問点にていてはほとんど触れられていない。

 特に、住民監査において浅井元市議が主張された「広報紙の印刷は、領収書に記載されている通り●●がしております」(令和4年1月24日 減税日本ゴヤによる監査委員に対する回答(甲16号証-3)、文中の黒丸は、「領収書に記載されている」業者名が「水野プランニング」のみであることから、同所であることは明白である)と主張されているにも関わらず、今般の文書送付嘱託で水野プランニングは印刷を他の業者に再委託したとして説明している矛盾であるとか、その文書を提出した際に水野昇氏の主張した「NP掛け払い」の説明が事実とは異なる矛盾については触れていない。

おまけ:

政務活動費の不当利得返還請求における立証責任の問題に関する判例
政務活動費の按分率に関する判例

mega.nz


*1:被告又は補助参加人が「誤認」によって、自らの立証責任のある事項を立証しなかった場合、なぜ裁判所がその事情を「推測」して補完する必要があるのか?

*2:銀行での振込票(ご利用明細)/通帳の記載(電磁的記録を含む)/受領書兼領収書(払込票控え)