市民のための名古屋市会を! Ver.3.0

一人の名古屋市民が「地域委員会制度」「減税日本」に対する疑問をまとめるサイトです。(since 2011/3/3)

リコール署名偽造問題  ー1.0

 中日新聞が、「イチから知りたい~リコール署名偽造問題~」として、あいちトリエンナーレを発端として、各記事のリンク集を作っている。

www.chunichi.co.jp

 これはこれで良いのかもしれないけれども、ではなぜ、そもそも知事リコール署名が始まったのか、その前提状況を理解しないと、この問題は理解しにくい。裁判において、弁護側は「虚偽にリコールを成立させる考えは持っていなかった」*1と主張しているが、では佐賀県まで行って偽造作業を行い、名古屋市内における指印作業の手間をかけ、巨額の費用を投じてまで行った偽造の意図はどこにあったのか。それを理解するには少なくとも、大村秀章愛知県知事の誕生までは話を遡る必要がある。

 大村知事は昭和35年(1960年)生まれの63歳。河村たかしが昭和23年(1948年)生まれの74歳なので、大村知事は11歳河村の年下ということになる。
 東大法学部から農水省に入り、地元政界の要請で衆議院に転身する。家族や係累にも政界の者はおらず、徒手空拳の政界転身となった。初の衆議院選挙では選挙区敗退し、比例復活で議席を獲得した。自民党小渕派に所属する。

 衆議院議員時代の抑えておきたいエピソードとして、名古屋市藤前干潟埋め立て問題がある。名古屋市のゴミ最終処分を藤前干潟の埋め立てで行おうとしたことに反対運動が起こり、大村は名古屋市議会自民党からの批判を受けながらも埋め立てに反対する。

 もう一つは、この頃からだったと思うが、河村たかしが準レギュラーとなっていたテレビ番組「TVタックル」に自民党議員として出演するようになる。それ以降、大村の得票数は伸び、タレント議員としての人気を獲得する。これは河村の紹介によるものとされ、これを期に河村と大村は政党をまたいで協力関係が作られていく。

 河村にとって「TVタックル」は大きな意味を持っていた。原口一博なども、河村の紹介で出演するようになったとされ、河村が名古屋市長となった際、減税政策について総務大臣の印が必要となり、民主党政権総務大臣を行っていた原口が印をついたと言われている。

 こうしたメディア露出も手伝って、地元では確固たる地位を築きつつあった大村だが、永田町の中では思うような活躍の場は得られなかった。そうしたところ2011年の愛知県知事選挙への出馬を河村から持ちかけられた。この知事選挙は名古屋市では市議会リコールの署名成立から行われる住民投票*2と同時期に行われる事となっていた。河村は自身が市長を辞職することで市長選挙住民投票の解散票獲得を目論んでおり、そこに知事選において、自派の候補(大村)を立てることで、名古屋市内だけにとどまっていた河村人気を愛知県全県に広げようとしていた。
 こうして、愛知県知事選挙、名古屋市長選挙、市議会解散住民投票のトリプル選挙が行われることとなったが、河村の思惑はズバリ的中し、大村知事が誕生、議会解散は成立し、自身の名古屋市長選挙では前代未聞の66万票の獲得という大勝利を遂げた。*3

 大村知事は自民党愛知県連と袂を分かつこととなり、「日本一愛知の会」を立ち上げた。河村としては当然大村知事は「減税日本」に入るものと期待していたが、大村はここから距離を取り始める。

 大村知事と河村市長の対立は、大村知事誕生の際の構想として提示していた「中京都構想」への河村の無理解が上げられるだろう。その頃、行政改革、行政の効率化という観点から、いわゆる県と市の二重行政批判が高まり、各地で道州制などの議論が起こっていた。大阪維新の会などは、大阪府大阪市を一体化する「大阪都構想」を掲げていたものを、大村知事は愛知県を「中京都」として一体化する構想を述べていたが、「名古屋市は名古屋という名前がなくなるのか?」などの批判が高まり、河村は「尾張名古屋共和国構想」などと口からでまかせで誤魔化して「中京都構想」の協議を止め、議論を逃げ回っていた。大村知事が河村に対し不信感を抱いた最大のきっかけはこれだろう。

 河村は「住民税の10%減税」を謳っており、名古屋市の住民税は課税対象額の6%から5.4%へ「10%の減税」が行われていた。次に河村は愛知県においても、この「10%減税」を実施するように求めたが、元々経済学的に地域経済の減速を引き起こす*4住民税減税には大村は乗ることはできず、これを固辞する。これに対し河村は「公約違反だ」などと怒ったものの、その後(平成29年度から)愛知県より名古屋市に義務教育教職員の給与を名古屋市が負担する制度の整理が行われ、その費用負担として住民税を2%愛知県から名古屋市に付け替える措置が取られた。なので名古屋市においては所得割の税率は8%となった。

 この税率8%に対して、「減税5%」が適応されて7.7%となっている(?)

名古屋市:個人の市民税の減税について(暮らしの情報)

 ここから話がややこしい、そもそも河村の公約は「減税5%」に後退している。この2%移管以前の減税比率が0.3%であり、税率6%であったものが5.7%になっていた。そこに2%の移管が行われ、どういう理屈か不明だが、この2%については「減税5%」の枠外という扱いになったために、「税率は8%が7.7%で、市民税減税5%実現」となっているのである。*5

 「中京都構想/尾張名古屋共和国構想」や「住民税減税10%」などの河村の空約束のために名古屋市と愛知県、河村市長と大村知事の亀裂は大きくなっていった。

 そこに持ち上がったのが「国際展示場問題」だ。まず押さえておきたいのは、愛知県には国際展示場はない。トヨタの地元でありながら、国際的なモーターショーが開けるような大規模展示場を愛知県は持っていなかった。・・・河村市政の以前には。

 名古屋の金城ふ頭に国際展示場がある。これは名古屋市の施設だ。老朽化がすすみ国際的に展示場が巨大化する流れの中で、建て替えが求められていた。

 河村市政の以前には、こうした巨大コンベンションセンターの展開は、宿泊や飲食、交通の利便性などを考慮すると、現在の金城ふ頭においては不可能と判断されたようで、別の場所に移転し、金城ふ頭は誘致するレゴランドなどを軸に別のベクトルで開発を進める腹積もりだったようだ。レゴランドを誘致しておいて、そのまま金城ふ頭で国際展示場を展開するというのは矛盾だ。

 さて、こうした要請から河村市長はおっとり刀で国際展示場の設置場所を探し始めた。もう、この段階で素人以下の政治家とはっきり判る。いまさら場所を探すなんて付け焼き刃の話で国際展示場ができるわけはない。ところが河村市長は無理強いをして、あろうことか「ヤクザの事務所に特別秘書が飛び込みをかけて名刺を置いてくる」という不始末を引き起こしたそうで、その名刺を一般職員がそのヤクザの事務所を訪ねて頭を下げまくって冷や汗をかきながら回収したそうだ。

 名古屋市がこうして国際展示場の建て替えで迷走している間に、2019年愛知県は中部国際空港島に愛知県国際展示場を開設した。結局、河村市長は「県と市の二重行政の解消」と主張しておきながら、国際展示場については愛知県と名古屋市が二重で持つという事になってしまった。

 元々政令指定都市とそれを含む中間自治体としての県は利害対立が激しい。

 この国際展示場問題など明白な名古屋市の敗北で、こんな事はそうそう起きるものではない。如何に無能かという証明だが、地元メディアではあまり取り上げないから、住民も意識していないだろう。

 こうした中で、無理が明白となった河村の名古屋城木造化などにも、大村知事の方からからかい半分のチャチャが入るような事もあった。*6

 そうした大村知事に対する、幼稚な私怨が河村の中に溜まっていたのは間違いがない。

 幼稚だろう、中京都構想にしても、減税政策にしても、国際展示場問題にしても、河村が大人で、一端の政治家ならどうとでも対応は取れただろうし*7、今のような状況にはなっていなかっただろう。この見事なまでの惨状。何もできていない。

 すべて河村自身の無能と、それを認めず打開策を模索しなかった幼稚で空疎な自尊心が為せるものだ。

 こうした中で起きたのが「あいちトリエンナーレ問題」だ。

 これも、元徴用工による日本企業への賠償を認める韓国大法院判決と、それに対する日本と韓国政府間の政治課題が影を落としている。ここではこの判決の是非は議論しないが、そのために韓国における反日グループと、日本における嫌韓グループがお互いを批判し合うという情景が深刻化した。そのような中で韓国の市民団体が国際的に展開している「少女像/慰安婦像」に対する批判が高まり、それを「あいトリ」の展示として置くことを耳にした松井大阪市長(当時)が河村に電話をかけて、それに呼応して河村が座り込みなどをした事がきっかけで。ここでも「あいトリ*8」の在り方や「表現の自由」はさておいて「大村知事の責任」が口にされている。*9

 つまりは河村の行動は、国民*10から批判のある「少女像/慰安婦像」の展示を愛知県知事たる大村知事が主体となって行っていることを、国民にアピールすれば、大村知事は支持を失うだろうという思い込みに起因するもので、「少女像/慰安婦像」の展示に対してネガティブな感情を持つ国民というのは、当時の安倍政権下で韓国に対しての政府プロパガンダに乗せられた、いわゆる「嫌韓」といった政治的に歪んだブームの上の話であって、芸術表現としてあるものに、そうした政治的プロパガンダを対峙させる行為自体がはしたない。さらに、それを知事の責任と追求する行為は無理がある。上でも述べたように、会長としての知事が批判されるのであれば、会長代行の河村本人の責任はどこにあるのか。

 結局、あの「あいちトリエンナーレ」における河村の行動は政治的意図や戦略があるわけではなく、大村知事に対する幼稚な私怨と「鞘当」でしかない。その為にいざ本当に知事リコールを始めたところで、大村知事に解職を求めるだけの説得力のある理由、大義名分が立てられていない。

ichi-nagoyajin.hatenablog.com

 「愛知県知事大村秀章解職請求の要旨」の詳細は上記記事を。

 こんないい加減な「解職請求」が説得力をもって県民に受け入れられるわけがない。

 そこで署名収集直後の大村知事の会見でこのような発言がなされる。


知事のページ:知事の記者会見

 関係者等々からは、あまり集まっていないというふうに聞いておりましたので、(約43万筆の署名数というのは:引用者補足)何か変な感じはするなということは、先週申し上げたとおりであります。何があったのかなと。要は、実質的な署名活動や戸別訪問はほとんど行われていなかったと。そりゃ、そういう活動から分かりますのでね。ほとんどなかったということの一方で、こういう署名の数だというの何か書類を出されたということでありますけれども、一体どうなのかということはですね、是非それはですね、問いたいなというふうにも思います。


 いずれにしてもですね、中にはかなり少ないのではないかという、有効なものは、ということを言う人もいますけれども、その点は、今後どうなるかはよく分かりませんけれども、現段階ではそれ以上のコメントはですね、できかねるということではないかなというふうに思います。


(略)


 河村氏は応援団ではなく、河村氏が首謀者だと思ってます。というふうに聞いています。河村氏が高須氏に頼んで、頼んでやってもらったというふうに聞いてます。もうとにかく全ての中心は河村氏だというふうに聞いております。
 ということでありますので、その間の言動、これまでの言動も含めて言えばですね、一体どういうことなのかな。というか、かつて9月議会にね、河村氏が議会まで来て、いろいろやじも飛ばしておられたのを見てですね、私は、悲しい哀れな人だなということを申し上げましたが、その思いは変わっておりません。


(略)


 地方自治法等の法律に則(のっと)った制度でありますので、法令に基づいてですね、これは法律、ルールを守ってやっていただかなければいけないですね、ということと、


 二つ目、事実でないことを言い募るというのは、誹謗(ひぼう)中傷、名誉棄損になるので、その点は注視していかなければならないということ


(略)


 これはあくまでも、私は常識的なことを申し上げていると思いますが、そうした点に照らしてどうだったか、ということは問われるのではないかというふうに思います。その実際の活動自体が問われるのではないかということ。それからまた、公園、それから道路等々のところでですね、やはりルールを守らずにやられておられたということについても、それは各方面から指摘をされているということだと思います。

 こうした指摘に河村は11月16日、公開質問状で反論を寄せる。

(公開質問状 令和2年11月16日)

公開質問状 令和2年11月16日 1of3
公開質問状 令和2年11月16日 2of3
公開質問状 令和2年11月16日 3of3

 しかし、実際には43万筆の署名は、その大部分が偽造であることが明白となっている。
それでいてこの公開質問状は撤回も訂正も、謝罪もされていない。「悲しい、哀れな人だな」と呼ばれるべき者は誰か、あまりにも明白ではないか。

 さらに3で述べている負担金については、現在最高裁まで持ち込まれているが、勝てる見込みはとてもなく、国はすでに負担金を県に支払っている。誰も河村に支持、同意できるものはいないのである。*11

 また5で触れられているドイツ、ベルリン市ミッテ区における「少女像/慰安婦像」の設置については「あいちトリエンナーレ」の展示とは別に行われていたものであって、その設置も1年間の限定であったものが、河村などの行動が災いして「永年設置」に変更になっているそうだ。

www.sanseito.jp

 お仲間の「参政党」が報告している。

 さて、ここで最初の問に戻ろう。

 「虚偽にリコールを成立させる考えは持っていなかった」が、巨額の費用と、佐賀県まで出向いて秘密裏に偽造署名を大量に作成しなければならなかった理由。

 高須克弥会長は政治には素人なので*12本当に86万筆の署名が集まると考えていたかもしれないが、それが7万筆だからと偽造を行おうとするだろうか。

 高須会長は自分が県知事に成りたかったと言われている。直接高須会長に「知事になるおつもりですか」と聞いたヒトは言下に否定されたので「高須会長は自身で知事になるつもりなど無い」と主張していますが。知事リコール運動開始の際、武田邦彦百田尚樹、有元香、竹田某などを集めた席上、百田が高須会長に同じように知事になるつもりか水を向けると、高須会長が否定した、それを受けて武田邦彦が「じゃあ、僕が知事になろうかな」と口走り、その場は冗談めかして和やかに進んでいったが、それ以降武田邦彦は呼ばれなくなった。この一事をもってしても明白で。他にもリコールの会周辺では次の知事候補の腹案が全く浮上しなかった。逆に禁句でさえ有った背景には、次期知事候補は高須会長で、それを邪魔すれば会からオミットされるという空気が出来上がっていたからと言われている。

 なので、解職請求が成立しない以上、7万筆でも43万筆でも高須会長にとっては同じことだろう。

 43万筆を揃えて、それは「リコールを成立させる考えは持っていなかった」が、「虚偽に」よって、「約43万名もの愛知県民が貴職の解職請求に賛同し署名された(略)約43万名もの愛知県民から貴職が『ノー』を突きつけられたことは、貴職にとっては重大な汚点であり、貴職の方こそが『悲しい、哀れな人だな』と思う」と「鞘当」を返したいと思っていたのは誰か。



ところで、これはなんなのだろう。
正気を疑うのだが。

6月ごろに政治資金パーティ開いたそうだが、
解散は無いし、解散が有っても選挙に出ないとなれば金は余ってきているから制作費は出るんだろうか。
その上、今は減税日本の市会議員、県会議員から1人頭一月10万円、
一ヶ月で160万円入ってきますからね。笑いが止まりませんわなぁ。


*1:2023.10.14 中日新聞

*2:ここで解散賛成が過半数を取れば市議会は解散される

*3:対立候補2人の得票を足して倍にしても66万票には届かない

*4:通貨発行権の無い地方自治体が行う減税政策は国の減税政策とは異なる

*5:ゆるゆる、いい加減は河村品質、減税日本スタンダード

*6:今、大問題になっている木造化名古屋城におけるバリアフリーについては、国の法律ではなく、県の条例が問題となる。法的に見ると知事の承認がなければバリアフリーの条件はクリアできない

*7:というか、それが取れるものが政治家と呼ばれるべきだ

*8:美術展

*9:あいちトリエンナーレ実行委員会 会長は大村知事だが、会長代行は河村たかし本人で、それまで準備会議に参加していなかった怠慢や、松井の電話以前に少女像の展示について聞いていながら何もしてこなかった不作為については、河村と地元メディアは不問と来る

*10:いわゆる「ふつうの日本人」

*11:一部、特殊な政治的傾向を持つ人々は除くが

*12:さらに、アレなので