市民のための名古屋市会を! Ver.3.0

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「河村たかし『不正署名』疑惑に答える」という疑惑(文藝春秋2021年7月号より)

 文藝春秋 2021年7月号 に河村たかしが寄稿している。大村知事が5月号に「私は河村たかし市長の嘘を許さない」と題して掲載した文章に対する反論であろう。文藝春秋菊池寛が創刊した頃より、こうした両論併記を文化としており、私も立花隆NHKを潰さずに、出演する方の)などが行った各種の論争を楽しく追ったものです。

・・・しかしこれはまた。

 中日新聞は6月10日付け社会面でこの寄稿を「大村知事寄稿に河村市長が反論 月刊誌で応酬」と伝え「全面的に反論」「詳細に反論している」と表現しているが、全面的になど反論できていない(例示:大村知事が「『庶民のための減税』の嘘」とした、減税政策の誤りについて触れられていない。「『名古屋城計画』の障害者差別」と指摘した問題についても一言も触れられていない。「第三者委員会で嘘が次々に露見」と示したあいちトリエンナーレに係る愛知県検証委員会の指摘事項にも答えていない)中日新聞の記者は、河村たかしが「全面的に反論」などと言ったレクを鵜呑みにでもしたのだろうか。
 また、「詳細に反論している」としているが、ほとんど市長選挙までに明らかになった既知の事柄(そして、大村知事などがその矛盾を指摘した事柄)を繰り返しているにすぎず、正当な表現とは言い難い。もし、中日新聞の記者がこの掲載文のゲラを読んでなお「詳細に反論している」と理解したのなら、今後、文章を書いて活計を立てるにあたっては、再考を促す。

 それでは、「河村たかし『不正署名』疑惑に答える」と題された文章(文藝春秋 2021年7月号 p.334~341)について、詳細に見てみよう、8ページの文章は聞き取りと言うよりも、寄稿の形を取っており、44のセンテンスに分かれている。

 その全体像を見てみよう。

1~6 大村知事の文章に対する反論
7~11 「公金による反日作品の展示」というあいトリへの河村主張の繰り返し。
12~17 「大村知事の”独断”」と題された、上記の続き。
18~22 「契約違反なら展示を中止すべき」と題した続き。
23~26 「リコール発案についての誤解」として、リコール運動の発案を扱った責任回避。
27~33 「田中氏から高須氏を紹介された」と題した続き。
34~40 「田中事務局長の思惑」と題された続き。
41~44 「独自調査で責任を果たす」とする責任回避宣言と締め。

 まず面白いのが相変わらず「43万筆の批判を受けた哀れな人」とした発言についての撤回はなく、偽造によって氏名を使われた愛知県民に対する謝罪もない。よしんば、河村たかし本人が偽造に関わっていなかったとしても、自ら唱導した運動において主権侵害が有ったのだから、それを謝罪するぐらいは当然だと思うのだが、相変わらず「頭が高い」

 上記の構成を見れば明白だが、論点はほぼリコール。特に、誰がリコールを言い出したかという発案、責任問題か、それとも署名偽造問題に終始しており、中日新聞が報じたような「全面的に反論」などという代物ではない。

 そして、その主たる主張は、「河村さんには責任はない」となる。

 この8ページ44センテンスの文章は、この11文字が全てだ。


 さて、そんな文章だが、個々に詳細を検討していこう。

 まず、3センテンス目「大村知事は『おそらく彼(河村)が企画・立案し、全面的に支援した、私に対するリコール運動の「署名偽造事件」』と述べていて、『不正署名の黒幕』があたかも私であるかのように印象づけています」と書いているが、大村知事は「署名偽造」の主体が河村たかしなどとは断じて居ない。河村が企画・立案、支援したのは、リコール運動の方であり、「署名偽造事件」にかかる言葉は、切文されている「一つ嘘をつくと百の嘘をつかなければならなくなる」(文藝春秋 5月号 p.122)だろう。

 意地の悪い私などにかかると、この一つの嘘がこの河村たかしの文章の中に有って、それが43万の嘘になったのだろうかと思えても来る。意地悪なゲスの勘ぐりだけどね。

 p.340、第44センテンスで河村は次のように書いている。

自分自身の経験から、家族が他の家族の名前を、中小企業の社長が社員の名前を勝手に書いたりする程度はあり得ても

 代筆の規定については地方自治法に規定(第74条の8及び9)があり、それを守らない代筆は違法だ。一の嘘が43万に成った?


 次、第5センテンスにおいて国会議員年金の問題について「釈明」している。
 大事な部分なのでセンテンス全て引用しておく。

国会議員互助年金は、一〇年以上努めた国会議員に対して退職時に自動的に発生するものです。当時、衆議院事務局に問い合わせると、「権利発生後、公職にある者が、互助年金を請求しないことで時効に係らしめた場合、国への寄付とみなされ、公職選挙法第一九九条の二(公職の候補者等の寄付の禁止)に抵触する可能性を排除できない」と指摘されました。そこで私は、一時金自体が優遇されているので議員年金一時金については受領せず、議員特権を享受しない唯一の方法として、年金を積み立てて、公職退職後に寄付する方法を選択し、積立額をネット上で公開しています。

以下の疑問が湧く。今現にこの問題について調査追求している。
(追記:国会が6月16日に閉会するに伴って、すでに質問主意書の受付締切が行われているそうで、回答の形は異なるかもしれない)

1.国会議員互助年金の権利発生とは何を指すか。
2.権利発生に特段の手続きが必要ない場合、その権利を放棄した場合、上記にいう「公職の候補者等の寄付の禁止」に抵触するか。その他の法律に違反するか。
3.権利を発生させるために、手続きが要るとしたら、その手続を行わないことで、権利そのものを発生させなかった場合、上記にいう「公職の候補者等の寄付の禁止」に抵触するか。その他の法律に違反するか。
4.権利を発生させた後に、権利を放棄する手続きは無いのか、こうした放棄をした場合、上記にいう「公職の候補者等の寄付の禁止」に抵触するか。その他の法律に違反するか。

5.衆議院事務局が上記にいう「権利発生後、公職にある者が、互助年金を請求しないことで時効に係らしめた場合、国への寄付とみなされ、公職選挙法第一九九条の二(公職の候補者等の寄付の禁止)に抵触する可能性を排除できない」とする見解を表明したことは有るのか。

6.国会議員互助年金について、一時金方式と、年金方式とでは、受取額はどのように異なるのか。上に言うように「一時金自体が優遇されている」という事実は有るか。

7.公職の候補者が選挙の期間中、「年金を積み立てて、公職退職後に寄付する」と公言する行為は、公職選挙法第二百二十一条(買収及び利害誘導罪)の一にいう「当選を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもつて選挙人又は選挙運動者に対し金銭、物品その他の財産上の利益若しくは公私の職務の供与、その供与の申込み若しくは約束をしまたは供応接待、その申込み若しくは約束をしたとき」に抵触すると思慮されるが如何か。

8.公職退職後に寄付するとしているが、その寄付後に支給される年金については、どのように処分されるのか。

そして最後に、

9.積立額をネット上で公開としているが、

河村たかしオフィシャルサイト
takashi-kawamura.com


減税日本HP
genzeinippon.com

には公開されていない。

ツイッター上で情報提供いただきましたが、2020年4月28日(一年以上前)のこの情報以外無いようです。

ちなみに、受け取りを拒否し、積み立ててた後に寄付するとしていた名古屋市会における費用弁償について、不適切な扱いをした減税日本名古屋元団長の則竹元市議は、市議を辞職しています。

ichi-nagoyajin.hatenablog.com

文藝春秋に記載し、公言したような事がなされていないのであれば、市長を辞するべきだ。

 次に12センテンス いわゆる「少女像/慰安婦像」の存在を当日まで知らなかったと言っていたが、開会前日のレセプションで当時の名古屋市会議長が「慰安婦像が展示されているそうだ」と耳打ちをした。という事実が市長選挙の際に暴露されていた。それについて、触れている。そもそもあいちトリエンナーレ副会長で名古屋市長の河村たかしはその情報を知らず、市会議長は知っているというこの情報感度の悪さも大問題だが、この事実を隠し、「当日まで知らなかった」と言い続けていた。河村たかしの嘘は明白だろう。
 それはさておき、議長から耳打ちされても問題と捉えず「その場は『燃えよドラゴンズ』を歌って、いったんは忘れてしまいました(笑)」って、笑い事だろうかね。無能だろう。

 次の日に大阪の松井一郎市長から電話があり、問題を認識し、現場に向かったとしている。この様子を大村知事は「会長である私には事前に何も言わず、記者たちを呼び寄せて一大パフォーマンスに仕掛けたのです」と批判しており、それに対し河村はこの文章で、県側に伝えた、大村知事にも電話をかけたが留守番電話になってしまった。と釈明しているが、大村知事の批判しているのは「記者を連れての一大パフォーマンス」であって、あのタイミングで既にバカ者共の「電凸」に県および、芸術祭事務局は対応に追われていたのであって、そうした状況を煽る行為が公職者として相応しいものかという批判であった。

 河村たかしのパフォーマンスのために、騒ぎが大きくなり、それによって警備費用等も拡大したとすれば、無駄な公費支出を強いたのは誰かということになる。しかし、バカはこうした自分の引き起こした問題について自覚がないようだ。

 呆れたことに続く14センテンスでは「慰安婦像がこうした公的イベントで展示されれば、県民・市民から抗議が殺到することは、火を見るよりも明らかです」などと言うわけだ。酔っ払って「燃えよドラゴンズ」歌って忘れてしまったくせにね。県の検証委員会でも明らかなように、大村知事は問題を認識しており、津田氏に「パネル展示にできないか」等と交渉している。この市会議長も問題を認識していたから事前に、河村に耳打ちしたというのに、その本人は酔っ払って「燃えよドラゴンズ」歌って忘れてしまったわけだ。それでいて、大騒ぎに成ってから、野次馬よろしくマスコミを引き連れて現場に乗り込み、「日本人の心を踏みにじるものだ」と煽ったわけだね。その事実を聞いた時には酔っ払って「燃えよドラゴンズ・・・」くどいか。


さてさて、この辺りからは、大村知事への反論でもなく、単に自己正当化、責任回避の主張しか続かない。

25センテンス目に次のようにある。

二〇二〇年五月二三日に「僕は決心しました。大村知事をリコールします。リコールのやり方を教えて下さい」とツイッターに投稿して、リコールを最初に言い出したのは、高須院長です。

しかし、その直前の第20センテンスには次の記述がある。

市を訴えてきたのです。事ここに至って、全てを”独断”で進める独裁者・大村知事のリコールもやむなしと判断せざるを得ないくなりました。

ちなみに、愛知県が名古屋市を訴えたのは、「二〇二〇年五月二一日」です。

追記:この部分判らないと質問をいただいた。つまり、河村と高須は「どちらがリコールを言い出したのか」をお互いに押し付けあっている状態にある。河村が5月23日の高須のツイートを引用して「リコールを最初に言い出した」と言っているわけだが、その直前に自分がリコールの実施を判断している事を「自白」しているわけで、それで「最初に言い出した」のが高須であるとするには説得力が無さすぎるだろう。


28センテンスには 二〇二〇年六月一日に河村から高須に架電し、次のように話したとある。

「大村知事が芸術祭の負担金の支払いで名古屋市を提訴した。信じられん!高須さん、リコール運動をしないのかね!」

こんな形で発言したのであれば、その前の24センテンスにある。

リコール活動を始めた経緯について高須院長は、「リコールをしようと言い出したのは河村さんなのに、私が言い出したと嘘をついたことは許せない。今日をもって友達をやめて、絶交します」と述べていますが、これは事実とは違います。これに同調する田中孝博事務局長(引用者中略)の発言も事実に反します。

とする河村の主張には無理があるだろう。

追記(6月11日):ここの記述では、河村は田中事務局長から高須代表の電話番号を聞いて、6月1日に初めて架電したかのように読み取れる。そうであるなら高須代表の次のツイートは何を意味するのだろうか?

文芸春秋の記述は嘘か、大負けに負けてミスリードである
中日新聞はこうした記載内容について「詳細に反論している」と報じたのであるから、内容について責任がある。裏を取ったのだろうか。裏を取らないのなら掲載するな。「詳細に反論している」と主観的評価を下すからには、その報道には責任を取るべきである。こうした誤認がいくつも確認される寄稿については、「いくつか事実誤認の見られるあやふやな反論を掲載している」などと報じるべきだろう。
・上記、高須代表のツイートに関してはツイッター上で河村たかしの行動やリコール運動の問題、署名偽造問題に対して関心を持つ市民の方の指摘による。本当にこの12年間、一人で「一名古屋人」として河村市政の欺瞞を指摘してきたが、こう言っては失礼かもしれないが、「二名古屋人」「三名古屋人」として、多数の方々が河村たかしの虚偽を暴いている。有権者に噓をつき続けている河村たかしや、そうした虚言を無批判に垂れ流す中日新聞は、これまでの12年間と、ここからの4年間では様相が異なると理解すべきだ。もっと緊張感を持たなければ、誤魔化しは通用しないと覚悟せよ。


続く31センテンス目の記述は興味深い。

高須氏自身が「今回、リコール運動を行ううえで知恵を貸してくださったのは、河村市長です。河村市長にはリコールを成功させた実績があります。その日、河村市長が私の家に来ることになり、三時間、いろいろとアドバイスをいただきながら、計画を立てました」(『Hanada』二〇二〇年八月号)と述べられている通りです。

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結構ノウハウがいるんですよ

 「中小企業の社長が社員の名前を勝手に書いたりする程度はあり得る」ってノウハウなんでしょうかね。

 34センテンス目には

確かに私は、田中氏とは二〇年以上にわたる知人ではありますが、「(落選続きで職がない)田中氏を事務所の秘書として雇ってほしい」という知人からの申し出は断っています。もちろん理由があります。

 として、田中事務局長が県議時代に金銭トラブルを起こしたことが書かれている。「秘書として雇うほどには田中氏を信用していなかった」と距離感を演出しているが、田中氏が金銭トラブルを起こしたのは2016年頃のことで、その後2019年には、名東区の県議候補として減税日本から公認を出している。

追記:
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 42センテンスで「田中事務局長に対する監督責任などありません」と言っているし、43センテンスでは「田中氏はことさら私のことを警戒していたようです」と言っている。11月に入るまで田中事務局長は河村に焼き肉などを奢っている事は、SNS上の投稿や、リコール事務局の収支報告等で明白なのに?


というように、特に目新しい事実の指摘もない。

 37センテンス目のこの発言は面白い

田中氏は、私の知人にも「事務局長を務められるのは、宝くじに当たったようなものだ」と話しています。

 確か、田中事務局長の「宝くじ発言」を私がキャッチしたのが9月ぐらいでしたか?
 ちょっと文脈は異なりますが、ありがたいことに裏を取っていただきましたね。

 しかし、文藝春秋の紙上論争としては、大村知事に対する全面的な反論にも成っていない。責任回避のための言い訳集といった趣でつまりませんな。

 そういえば、文藝春秋から武田砂鉄が面白い本出してたな。

books.bunshun.jp

 文藝春秋社も、この投稿の耳にこの本の広告でも入れれば面白かったのに。

 締めとして河村の「最後の指摘」を引用しておこう。

それより私が最後に指摘しておきたいのは、
「関係者の話として署名はあまり集まっていないとお聞きしている」
「署名は本人の自著でやられたのか」という二〇二〇年一一月四日の記者会見での大村知事の発言についてです。署名の数は、田中氏はじめ、ごく限られた者しか把握しておらず、選管の調査も行われていなかったこの時点で、なぜ軽々しくこんなことを口にできるのか、大いに疑問を感じます。

・・・そうですか、Jアノン的陰謀論にでも着地させる気なんでしょうかね。
頑張っていただきたいですね。

bunshun.jp
文藝春秋は10日発売・トランジスタ技術も10日発売」

追記:
リコール事務局は県内の全戸に受任者募集のハガキをポスティングすると言っていた。
そのためのハガキを350万枚印刷したとしていた。
確か、収支報告書にもこの350万枚は載っていたと思う。
ここで問題なんだが、実際にあの署名収集期間、そんなハガキがポスティングされていただろうか。

350万枚のハガキは、どこへ行ったんだろう。

追記:
中島岳志が「陰謀論」について述べている。
非常に示唆に富む。
www.tokyo-np.co.jp