市民のための名古屋市会を! Ver.3.0

一人の名古屋市民が「地域委員会制度」「減税日本」に対する疑問をまとめるサイトです。(since 2011/3/3)

「知らん顔」をしているのは誰か

本日の中日新聞市民版「内堀外堀」に「接戦の理由」と題した名古屋市市長選挙の総括記事が載っていた。署名記述者は池内琢記者、市政担当記者である。

少々引っかかる内容だったが、正直何が引っかかるのか判らなかった。しかしその後に社説として掲載されている「『知らん顔』の果てに」を読んだ後、暫く考えていると、何が違和感かが判り、我慢ならずにこの文章を書いている。

まず、「接戦の理由」からかかろう。

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「内堀外堀」/「接戦の理由」

最初に「選挙活動は街頭演説が頼り」という出だし。池内記者は一般論として、選挙活動における街頭演説をそれほど重視しているのかと思っていたが、違った。これは多分この一文の前に「河村たかし名古屋市長の現職市長再選への選挙運動を総括してみると」というような文章が付いていたのだろう。囲みコラムという字数制限に合わせて、こうした省略は致し方がないだろう。

確かに河村市長の選挙活動は、あのヘンテコな名古屋弁によるいい加減な(実際に、事実誤認も多い、つまり嘘も多い)政治漫談的な街頭演説以外には何もないといって良い。これは昨日今日始まったことではない。

池内記者もそうした街頭演説頼りの選挙活動だけで「本当に票が取れるだろうか」と「半信半疑だった」ようだ。

この一文は不思議だ。河村候補にネガティブな事情として、「主な政党は軒並み相手候補の支援に回った」「大村知事のリコール運動と、その後の署名偽造問題も問題視する人は多かった」「新型コロナが猛威を振るう中、なぜリコール運動を続け、感染対策に全力を傾けないのか」などを掲げている。それであるなら考察するべきは「それでも再選の理由」ではないのだろうか。これほどネガティブな条件の中で、それでも「四万八千票差の接戦」となった「接戦の理由」・・・・正直、この一文を読んでも、その題名に掲げた「理由」が私には読み取れなかった。

そこでハタと気がついた。

そうか、池内記者は「とりあえず、無条件で河村市長再選が当然と思っていて、それが『これほど接戦になった理由』にこれらのネガティブな条件が重なった」と理解しているのだ。

つまり、こうしたネガティブな条件がなければ、①多選禁止を自ら主張していたのに、②国会議員年金について自ら受け取らないと公言しつつ、実は受け取っているにも関わらず、③日立訴訟において、手続き無視の事業停止で名古屋市が日立から訴えられ、侵害賠償を支払うこととなったにもかかわらず、④それも5年前のADRを受け入れていれば1億5千万円の支払いで済んでいたものが、グズグズと3億8千万円に支払額が膨らんでしまったにもかかわらず、⑤またその損失を誤魔化すように1億円儲かったなどと、またまた名古屋市民を惑わすような「嘘」を口にし、⑥それだけに飽き足らずその日立に優位的な立場を利用して寄付金を強要するという下請け企業の経営をやったことが有るものであればとても容認できないようなアンフェアな行為を行った事まで発覚し、⑦更に名古屋城の事業はぜんぜん進まず、⑧SL再建にしてもやりっぱなし、⑨そして名古屋市の最大の課題であろうリニア新幹線の受け入れ問題もまったく進まず、さらにさらに、⑩現下のコロナ禍についても、県市の連携が取れずに居るけれども、選挙戦で(実は、岩城副市長などが提案して形にした)教育改革を掲げた河村市政の継続が選ばれる、と思っていたということなんだろう。

つまり、①~⑩までなど、名古屋市民はほとんど問題ともしないと思われていたのだ。

そりゃそうだ。あなた方が禄に書かなかったから、名古屋市民は知りもしなければ、意識もしなかったのだろう。

市長選挙を政策議論の場ではなく、単なる有名人人気投票に堕落させているのは誰なのだろうか。

「民間企業は、何かあれば一気に傾く」そうだが、結構なことだ。「市長」という人気商売は、その人気は、ネガティブな事実を報じる者がいない限り傾かない。

しかし、私が理解するところ、確か「中日新聞」というのは「民間企業」だったのではないのかな?池内記者に告げたい。他人に「適時適切な判断に心を砕いて欲しい」なんて言っている暇があるのであれば、自分たちの報道が、「適時適切な判断に」叶っているか再考して欲しい。そうでなければ中日新聞といえども、「一気に傾く」のかもしれないね。

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社説「知らん顔」の果てに

そうしたところで、社説にかかろう。社説のタイトルは「『知らん顔』の果てに」最初に「法が終わるところ、暴政が始まる」とジョン・ロックの「統治二論」の言葉を引いている。これは検察庁法を恣意的な判断で変えようとした安倍前政権に対する松尾邦弘元検察総長らの意見書にも引かれた言葉であり、安倍前首相に成蹊大学において法学を教え、後に「首相と取り巻きは、憲法は既にないものとの認識ではないか」「ずるい政治家です」と批判している加藤節名誉教授の訳でもある。

【意見書全文】首相は「朕は国家」のルイ14世を彷彿 [検察庁法改正案]:朝日新聞デジタル

確かに、安倍前政権における法律の恣意的運用には目を覆うものがあった。私は内閣人事局が力を持ちすぎ、内閣法制局が弱体化した、首相官邸の権力が暴走している現状に危惧を持つ。行政権と立法権首相官邸においてアンバランスに集中してしまい、司法権が損なわれ、三権の分立が崩れ去っているのが今の日本の社会に見える。

しかしこうした手の届かないような大きな話ではなく、手の届く範囲、目の前に、全く同じ問題が横たわり、そうした手の届く問題も解決できないのであれば、国や社会全体の問題など議論したところで虚しい。


「暴政とは、人が、その手中に握る権力を、その権力の下にある人々の善のためではなく、自分自身の私的で単独の利益のために利用することである」


・県民の1%程度しか賛同しない知事リコールを提唱し、そうした結果が出たにもかかわらず、その県民の民意を聞かず知事に謝罪もしない権力者。


・2万人にDVDまで同封するという高価な「アンケート」を行ったにも関わらず、市長の意見に賛同する市民はたった7%であったにも関わらず、あたかも市民全体の民意であるかのように、不要不急の名古屋城木造化をすすめる私利私欲。


・そして、そうした市長の「暴政」を、伝える力を持っているにも関わらず、市長室から漏れてくる「特ダネ」にありつくために、市長批判を行わない中日新聞の市政記者たち。

人が、その手中に握る権力を自分自身の利益に使いたがるのは自然な事かもしれない、しかし、そうした視野狭窄が社会を毀損していく。

メディアは常に権力を監視し、相互に緊張感を維持しなければ腐敗する。

社説では、最後に半藤一利さんの言葉を引いている。

この言葉を私は、河村市長の再選が当然であると捉える、中日新聞の記者にこそ噛み締めて欲しい。

「戦争は、ある日突然に天から降ってくるものではなく、長い長いわれわれの『知らん顔』の道程の果てに起こるものなのです」

戦争とは、政治を担う者が、文明的な政治という仕組みを投げ捨てる行為だ。そして、それは、政治を担う者、権力者が、自らの権力のために、「権力の下にある人々」を蔑ろにする行為である。権力者が有権者を侮り、蔑ろにするところに文明は破壊され、戦争も起きる。そして民意を無視した「暴政」が大手を振って歩いていくのだ。

市政記者の君たちが「知らん顔」をしていれば、そうした乖離は起きる。

そして、現に起きている。ある人は市長が県知事にリコールを突きつける行為は、これが国家間であれば開戦と同じではないかと語った、実際に一昔前のヨーロッパや中国の歴史に見る国家間戦争など、こうした開戦理由は散見される。

民意を無視し、権力者の虚栄心のためだけに行われる戦争。
構図として全く同じではないのか。

事実、法、民意を無視した権力者に適切な批判をメディアが行わなければ、権力者はどこまでも暴走する。なぜ名古屋でだけ大多数の市民には利益にもならない「河村流減税政策」が続けられ、28%もの有権者がこんな政策を支持しているのだろうか。君たち「中日新聞の市政記者」が、こうした事実に「知らん顔」しているからではないのか。

百歩譲って、減税はいい、名古屋城やSLもいいだろう。しかし、仄聞するところ、名古屋市内における高齢者に対するワクチン接種の予約について、年齢などで区切って案内状を送るなどすべきところ、全対象者、61万人に一気に案内を送り大混乱を引き起こした。その理由は、河村市長が、市長選挙の間に「名古屋市長・河村たかし」名で案内状を送付したかったために、現場の意見を無視して案内状を送ったからであるという話が流れている。

コロナ禍対策まで、こうした自らの選挙利用を行うとしたら。こうした事実無視、民意無視の施策が続けられたとしたら、どれほどの人々が困惑し、実害が生まれるだろうか。

法を無視し、手続きを無視し、そして権力の下にある人々のためを無視する市長など要らない。そして、それを伝えないメディアも要らない。

「知らん顔」をしているのは誰か。



追記:
本文に入り切らなかったが、ツイッター上で、有る方が指摘していた「早速」の河村市長公約破り、市政記者諸氏に志が有るのであれば、記事に書けとは言わない、せめて河村市長に直接聞いて欲しい。「どういうつもりだ」と。

1.河村*1は公約で「市長自ら毎日在庫、接種状況を確認」と明記している。

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河村公約(部分)

2.河村は5月6日までまともな公務がない。

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市長の1日(5月1日~6日)

3.毎日新聞の候補者アンケートにも「休みはにゃあがや」と答えている。

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毎日新聞の候補者アンケート

1で市民に約束した在庫、及び摂取状況の確認を怠ったのであれば、その怠業を詫びよ。



追記:
中日新聞は、こうした嘘が蔓延ることをどう思っているのだろうか。

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安藤のぶあき 「南京大虐殺の大嘘」

日本において南京事件を否定するものは、約束をしておいて、その利益だけ享受し、責任については後出しジャンケンのように、逃れようとする卑怯者であると思っている。

卑怯者

なぜなら、日本はサンフランシスコ講和条約第十一条において、「日本国は、極東国際軍事裁判所並びに日本国内及び国外の他の連合国戦争犯罪法廷の裁判を受諾し」と明言しており、この条件によって主権回復を果たしたからだ。

ichi-nagoyajin.hatenablog.com

また、よく知りもしないくせに「大嘘」と決めつけるバカには、偕行社の方々の苦渋や責任、人としての在り方を問い続けた誠意など理解できない、誠意なき者たちなのだろう。つまり、(自粛)だ。

減税日本がこの度、名古屋市会議員南区補選に候補として選択した者は、この卑怯者で、(自粛)の類だ。そして、そんな文化を名古屋市に根付かせようとしているのは、河村たかしとそれを肯定し続ける中日新聞だ。


*1:市民に嘘をつく公職者には敬称を付けない