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あいトリ 知事ー市長意見交換(問2)

<<920河村質問>>
<<115知事回答>>
<<118河村見解>>

<<920河村質問>>


2.「作品」のもつ反社会性・害悪性の評価と、「芸術性」の評価とは、別次元の問題ではないか。


【問2】ある特定の作品、例えば「肖像画・焼損映像」のもつ「芸術的な価値」の有無・程度の評価と、その反社会性ないし「害悪」性(むしろ、「反芸術的」ともいうべき性質)の有無・程度の評価とは、全く別次元の問題であり、後者の評価については、「県立美術館の安心・安全な管理運営」上の必要性の観点、又は、公共団体が実施主体となる公共事業の性質からくる表現の内在的制約の観点から、「芸術」的評価とは別異に法律判断が可能*1であり、本件企画展の主催者代表である貴職の責任において行うべき性格の「法的」判断*2ではないか。


【質問の趣旨】憲法21条1項が保障する「表現の自由」については、「公共の福祉」(憲法12条、同13条参照)の制約が及ぶか否かについては、異論のあることは承知しているが、「公共の福祉」による制約を認めない見解においても、表現の自由も無制限のものではなく、「内在的な制約」があることは異論のないところであると思料される*3。そして、本件企画展の場合、「肖像画・焼損映像」のような健全な良識をもった日本国民の「心」「魂」、あるいは一部には「(戦後の)皇族に対する畏敬の念」、「自尊心」が深いところで傷つけられ、それ故にこそ、愛知県及び愛知芸術文化センターに抗議が殺到することが「事前に」当然に予想され、県立美術館における「平穏で静寂な館内環境」を保持できないことが当然に想定される作品については、「県立美術館の安心・安全な管理運営」の面から規制することは貴殿の当然の職責であり、現に、貴職は、問題が顕在化した後になって、(芸術監督と相談の上)貴職の責任において本件企画展を独断で中止させている*4。貴職は、「公人が特定の作品の芸術的な価値について当否を判断すること」は、厳に慎むべきであるとの立場であり、当名古屋市長も、全く同様の立場であるが、このような「県立美術館の安心・安全な管理運営」の見地からの「作品評価」、当該作品の表現内容に内在する「暴力性」、「反社会性」等の害悪の面に向けられた「作品評価」は、当該作品の「芸術性」評価と全く関係のない別次元の評価であり、公的な立場からも十分に評価できる「法律上の判断」であると考えるが、いかがか。

<<115知事回答>>


【問2について】


「作品の表現内容に内在する『暴力性』、『反社会性』等の害悪」を客観的に評価することは非常に困難です。さらには、『芸術性』の評価だけに止まらず、思想、信条、良心に立ち入っての評価に直結する危険性を有しています。


トリエンナーレの安心・安全な運営を脅かす者が出現した場合、その責任は脅かした者にあることは明白です。あまねく一般に開放されたイベントにおいて、安心・安全を確保するための措置は、過去の経験等に沿って講じていましたが、想定を遥かに超える故意の脅迫的行為が行われれば、どのようなイベントでも中止・中断に至る場合があることは止むを得ないものと考えられます。

<<118河村見解>>


【問2】 に対する回答について


【問2】は、不自由展の展示作品、例えば、天皇焼損映像*5のもつ反社会性・害悪性は、法的評価にかかわる問題*6であって、当該作品の芸術評価とは別次元の問題であるから、公共事業の主催者として、公金支出の責任者として、公共事業の展示作品としての適否について積極的に判断をくだすべきではないか、という趣旨の質問でした。


これに対する貴職の回答は、「作品の表現内容に内在する『暴力性』、『反社会性』等の害悪を客観的に評価することは非常に困難です。さらには、『芸術性』の評価だけにとどまらず、思想、信条、良心に立ち入っての評価に直結する危険性を有しています」と回答されています。


率直に申しあげて、私は、貴職の「二枚舌」に、大変驚きました。貴職は、先般、10月27日、一民間団体*7が、愛知県の管理する施設で、「日本人のための芸術祭あいちトリカエナハーレ2019『表現の自由展』」(以下「特定表現自由展」という。)が企画・実施された際、その中の展示物に、在日韓国・朝鮮人の方々に対する民族的偏見から、その人々の心を深く傷つける作品や、貴職を揶揄する作品が展示されていたことについて、激昂して、「明確にヘイトにあたる」、「(展示内容が)分かった時点で、中止を指示すべきであった。」などと記者会見で公言されています。


しかしながら、そのような貴職のコメントは、「作品の表現内容に内在する『暴力性』、『反社会性』等の害悪を客観的に評価することは非常に困難」であるといった貴職の前記見解と正面から矛盾しますし、「『芸術性』の評価だけにとどまらず、思想、信条、良心に立ち入っての評価に直結する危険性を有しています」という貴職ご自身の前記ご見解がそのまま妥当することになるのではないでしょうか。*8


私自身も、公共施設での如上のヘイト表現については、これを許容すべきではないという考えですが、名古屋市長の公開質問状【問2】に対する貴職の回答では、少なくとも論理的には、如上の「明確にヘイトにあたる」展示物を含む特定表現自由展を野放しにするに等しく、公共施設の管理責任者でもある、地方自治体の長のコメントとして、著しく不適切かつ無責任なものと考えます。

「一元的内在制約説」について

「(表現の自由に)「内在的な制約」があることは異論のないところである」ということもない。
現在のスタンダードな解釈は宮沢俊義教授により主張された「一元的内在制約説」ということになる。

「①公共の福祉とは人権相互の矛盾・衝突を調整するための実質的公平の原理である。
②この意味での公共の福祉は、憲法規定にかかわらずすべての人権に論理必然的に内在している。
③この原理は、自由権を各人に公平に保障するための制約を根拠づける場合には、必要最小限度の規制のみを認め(自由国家的公共の福祉)、社会権を実質的に保障するために自由権の規制を根拠づける場合には、必要な限度の規制を認めるもの(社会国家的公共の福祉)としてはたらく。」

しかしこういった「一元的内在制約説」に対しても

「人権の具体的限界についての判断基準として、「必要最小限度」ないしは「必要な限度」という抽象的な原則しか示されず、人権を制約する立法の合憲性を具体的にどのように判定していくのか、必ずしも明らかではない」

「具体的な基準は何かという基本的課題に対する解答を判例の集積に委ねてしまうのでは、内在的制約の意味が明確を欠くだけに、実質的には、外在的制約説と大差のない結果となるおそれも生じる。」

という批判がある。

ところで、河村市長の立論はこの「一元的内在制約説」つまり、憲法における表現の自由の制限について議論していない。

彼が主張しているのは「『県立美術館の安心・安全な管理運営』の面から規制」すべきであり、こうした危惧は

「当該作品の表現内容に内在する『暴力性』、『反社会性』等の害悪の面に向けられた『作品評価』は、当該作品の『芸術性』評価と全く関係のない別次元の評価であ」ると議論を展開している。

つまり、作品に「暴力性」「反社会性」があるために、作品に対する批判が巻き起こり、ひいては「県立美術館の安心・安全な管理運営」が脅かされると主張しているようだが、これでは作品の展示に対して「ガソリンを携行してお邪魔します」と業務妨害の脅しを行った行為まで「人権相互の矛盾・衝突を調整するための実質的公平の原理」で勘案すべきと言っているに等しい。

「表現内容に内在する『暴力性』、『反社会性』等の害悪」という表現を使っているが、ひょっとすると、表現の自由に対する「一元的内在制約説」の「内在」という言葉の意味を誤って理解しているのだろうか。


表現の自由を制限する「公共の福祉」とは憲法規定にかかわらずすべての人権に論理必然的に内在しており、人権相互の矛盾・衝突を調整するための実質的公平の原理を実現するための制限である。

ということであって、この場合当然のこととして表現行為者である大浦さんの表現の自由という人権と矛盾・衝突するのは、
その肖像を焼かれたという「昭和天皇」ということになるが。(そもそも、絵を焼いたのは美術館と富山県議会である)

法的には天皇には肖像権が認められていない。(というか、人権が認められていない)
更に言うと、大浦さん自身「昭和天皇」の肖像を焼いたわけではない。

中止に至った経緯における「嘘」とは

ここではあたかも、この肖像消失映像が、展示会を中止に追い込んだ理由であるかのように語っているが、これは欺瞞である。

中止直前に、河村市長は表現の不自由展会場に足を踏み入れているが、その際問題としたのは、いわゆる「少女像」であって、その展示を問題としていたに過ぎない。

大浦さんの作品については、会場入口に有ったわけだが、そこを完全にスルーし、通り過ぎていた。

河村市長はこの際、大浦さんの作品については一瞥も与えていない。


あいトリ 知事ー市長意見交換(はしがき)
あいトリ 知事ー市長意見交換(問1)
あいトリ 知事ー市長意見交換(問2)
あいトリ 知事ー市長意見交換(問2における表現の自由とヘイトスピーチの誤解)
あいトリ 知事ー市長意見交換(問3)
あいトリ 知事ー市長意見交換(問4)
あいトリ 知事ー市長意見交換(問5)
あいトリ 知事ー市長意見交換(問5) <補足> 阪口論文
あいトリ 知事ー市長意見交換(問5) <補足> 奥平論文
あいトリ 知事ー市長意見交換(問6)
あいトリ 知事ー市長意見交換(問7)


*1:適用条文を示さないまま「法的判断」を求めている

*2:「法的判断」という言葉を覚えたばかりの小学生が口喧嘩をしているようにしか見えない

*3:「一元的内在制約説」について下記詳述

*4:ここには嘘がある。下記詳述

*5:定義した用語を守るべき

*6:触法条文が示されていない

*7:日本第一党、あの在特会代表であった桜井誠の政党

*8:ならない、これについては別項で説明する