市民のための名古屋市会を! Ver.3.0

一人の名古屋市民が「地域委員会制度」「減税日本」に対する疑問をまとめるサイトです。(since 2011/3/3)

客観的に見た名古屋城裁判

本日のブログは、まず苦情から入ります。

減税日本は市民に説明責任を果たさない集団か

令和2年6月2日に、私は減税日本ゴヤに公開質問状を送りました。
その回答を6月30日に受け取りました。

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減税日本ゴヤ 令和2年6月30日 回答

そこには

現在、名古屋市会内におきまして、今般の一連の経緯につきまして、公開質問状によるやり取りの最中であり、その過程の中で詳細な経緯が公表され次第、その経緯を精査の上、対応について随時検討させて頂く予定です。したがいまして、今回は個別のご質問に対する回答は差し控えさせて頂ます。よろしくお願いいたします。

となっている。
では、「詳細な経緯の公表」や、その精査の上の対応はどうなっているのか。公開質問として問い合わせていることに対して、なんら回答も公表もない。主権者たる市民に一切の説明を行っていない。

どうなっているのだろうか。

ichi-nagoyajin.hatenablog.com

昨年末に公表したとおり、「次の課題」を突きつけているのだから、先入れ先出し、まずこの課題(令和2年6月)について、回答をもらうなり、減税日本ゴヤは説明責任を果たさないと断じるなりさせていただこう。

三者から見た名古屋城裁判

判例調査をしている中で、TKC法律情報に私たちの提訴した住民訴訟である「名古屋城裁判」の一審判決が掲載されている事を確認した。

「文献番号:25568018」

三者的に見た場合、私たちの裁判とはどういったものであるのかが判るので、引用させていただきたい。

TKCからみた「事案の概要」は次のとおりだ。(改行等を入れた、また “<>” で括った内部は引用者が付したものであり、必要最小限の引用とするため、適宜省略を施した部分には ”<略>” の表記を置いた、また一部太字表示しているものは引用者の判断である)

名古屋市の住民である原告が、


(1)本件基本設計契約の履行が完了していないにもかかわらずT工務店に対して前記業務委託料の支出がされ、これにより名古屋市に前記業務委託料相当額の損害が生じたとして、名古屋市の執行機関である被告 <名古屋市河村たかし> を相手に、地方自治法243条の2の2に基づき、


<略>


賠償を命ずるよう求めるとともに、


(2)名古屋市長であるBには、本件支出命令につき指揮監督上の義務違反があり、この義務違反(不法行為)により名古屋市に前記業務委託料相当額の損害が生じたとして、名古屋市の執行機関である被告を相手に、地方自治法242条の2第1項4号に基づき、Bに対し、D、E及びCと連帯して、損害賠償を請求するよう求め、さらに、


(3)同項1号に基づき、本件事業に関する一切の財務会計上の行為の差止めを求めた住民訴訟で、


工務店が本件基本設計契約に基づいてその責任において本件事業に付き復元検討委員会の審査を受けて文化審議会の諮問を経る義務を負うということはできないから、<T工務店の履行責任>


本件基本設計契約についてT工務店にその義務の未履行があったということはできないから、本件基本設計契約についてT工務店にその義務の未履行があったということはできないなどとし、


また、本件事業が違法であるということはできないとして、本件訴えの中、義務の負担の差止めを求める訴えのうち一部を不適法却下し、原告のその余の訴えに係る請求をいずれも棄却した事例。

一審判決を客観的に要約するとこういう事になるだろう。まったくそのとおりだと思う。判決の要約はこの通りだ、なので、私は違和感を感じる。

そもそも、本件事業の基本となる、「名古屋城天守閣整備事業に関する基本協定書」(甲第3号証)の

「名古屋城天守閣整備事業に関する基本協定書」(甲第3号証)

第2条には「当事者の義務」が定められていて、発注者(名古屋市)が「文化庁等関係機関の調整及び手続き等を行い、文化財保護法(略)による許可(略)を申請する。優先交渉権者(竹中工務店)は、発注者が実施する諸手続きに必要な資料を作成する。とされていて、もとより、判決に示されている「本件基本設計契約に基づいてその責任において本件事業に付き復元検討委員会の審査を受けて文化審議会の諮問を経る義務」は竹中工務店にはない、その責任は名古屋市にある。では、発注者である名古屋市は、この義務が果たされなかった場合、それをうっちゃったまま「基本設計業務が完了した」と言って良いのだろうか。名古屋市は発注者、施主という立場にはいるが、主権は市民にあるのであり、その代理たる議会に対して、上記の基本協定書を示し、文化庁に対する手続きの履行義務は名古屋市にあることを明示して予算要求しているのであるから、その義務が果たされていなければ、名古屋市の履行責任は完了しておらず、基本設計業務は完成していない。

竹中工務店に履行責任がないから、基本設計が完成しているとする現判決は転倒した論理を主張している。

そもそも原告(私たち)は、竹中工務店の責任など一切論点としていない。

竹中工務店に責任があろうと、名古屋市に責任があろうと、はたまた全く私たちが預かり知らぬ誰かに責任があろうと、本件事業に対して、現状変更許可は愚か、復元検討委員会にも諮問されていないのであって、責任の所在はさておき、基本設計業務完了の要件が満たされていないことは明白ではないか。

もう一度いう。論点は基本設計業務が完了しているか否かであり、その条件は、「復元検討委員会の審査を受け、文化審議会にかけられる」ことなのであって、基本設計業務完了としている時点で、復元検討委員会にかけられていなかった本件事業は、明らかに基本設計業務未完である。それよりも、令和4年の今に至るも、文化庁に「現状変更許可申請」を受け取ってもらえない本件事業には重大な瑕疵があり、その起点は明らかに、この基本設計業務における事実誤認にある。

次に、TKCからみた判決の「要旨」が3つある。

1.名古屋城天守閣の木造復元工事に係る基本設計等の業務委託を受けた者に、基本設計契約上の義務違反は認められない。

上記で述べたとおり、「業務委託を受けた者」の「基本設計契約上の義務違反」を論点としていないにも関わらず、それが判決の「要旨」となっているので、完全な誤審であるとみなせる。

2.基本設計契約の成果品について、事前に仮納品及び下検査を完了した上で、監督官による必要な点検及び修正が実施された等の事情の下では、大量の成果品について、監督官が1日で検査を完了したことをもって、適正な検査が実施されなかったということはできない。

さあ、大変だ。こんな判例が残ってしまうと、今後全ての公共事業で検査員による検査を行わずに、事業の完了が決定でき、支払いを行っても良いということになる。(「監督官が1日で検査」は誤記であると解釈するが)

これは、会計法を無視し、名古屋においては契約規則に定められた検査員の業務を超えて、監督によって代替してよいという判例となる。

名古屋市契約規則

また、本件事業における「名古屋城天守閣整備事業基本設計その他業務委託 業務委託仕様書」(甲第6号証)では、

「名古屋城天守閣整備事業基本設計その他業務委託 業務委託仕様書」(甲第6号証)

第16条で「指定部分完了検査」が定められており、「業務の完成に先立って引き渡しを受ける」部分についての規定が定められているが、「事前に仮納品及び下検査」などという規定はない。ましてや監督員による「検査」などという規定もない。規定もない業務の進め方は文字通り、規定からの逸脱である。

3.名古屋城天守閣の木造復元工事は、耐震改修工事と比較して、名古屋城跡の本質的価値の理解を促進するという点で優位性がある上、文化的観光面における魅力の向上があり、現天守閣が解体されることによる課題についても対応可能であること、施工方法上の課題はあるものの、いずれも対応可能であること等に照らせば、名古屋市が木造復元工事により天守閣整備事業を行うとした判断は、重要な事実の基礎を欠き、又は、その内容が社会通念に照らして著しく妥当性を欠き、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるものとはいえない。

さあ、この判決要旨はショッキングだ。確かに現判決にはこのような表現がある。私個人はこんな部分は当初から論点にする気はなかった。木造復元が良いか、現天守の保存が良いのか、こんな価値観の比較は優れて主観的な判断であり、全く無効である。私個人は現天守の保存が、文化的にも観光事業としても優れていると思う。それは大阪城や熊本城の在り方から見ても明らかだ。あんな所に木造レプリカを作ろうなとどという馬鹿者はいない。今ある物を大切に思える心こそが、重要であると私個人は感じるが、それを他者に押し付けようとは思わない。主観に属する価値判断を行政や、司法が行うなどというのは全くの失当だ。主権者は国民であり、価値判断は国民が個々に持てば良い。
実際に、裁判の途中名古屋市側の主張に対して、2万人アンケートにおける欺瞞性や、保存活用計画に対するパブリックコメントの結果の隠蔽なども訴えたが、司法の主観的判断を押し付けるかのような、不当判決が出されてしまった。まったく、客観性を喪失し、説得力の無い判決と言わざるを得ない。

特にこの部分「名古屋市が木造復元工事により天守閣整備事業を行うとした判断は、重要な事実の基礎を欠き、又は、その内容が社会通念に照らして著しく妥当性を欠き、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるものとはいえない。」

まったく顔から火が出るほど恥ずかしい文章である。

今般の木造復元事業は「社会通念に照らして著しく妥当性を欠き、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用」である事は明白である。上記の2万人アンケートにおける欺瞞や、パブリックコメントの隠蔽もそうであれば、50年に渡り年間300万人が来場するという収支計画も「重要な事実の基礎を欠き」全くメチャクチャである。バリアフリーに対する違法性も明らかな中、更に「ステップナゴヤ」なる施設を作り、「新たなバリアフリーの手法を模索する」などとは、嘘に嘘を重ねた幼稚な言い訳に過ぎない。そんな物があるのであれば、苦労はしない。

そうした事例がまた一つ、明らかとなった。

名古屋城木造復元「消防設備システム評価」専門委員会「5階窓からはしご車への移動は恐怖で動けないのではないか」指摘

最近、木造天守における「消防設備システム評価」の情報が公開された、地盤から大天守5階床までは高さ37.683m(12階建てビルに相当)ある。

火災時に大天守5階に75人(算定基準による)、417人(避難計算上の想定)がいると想定されているが、その避難通路は、救助袋を使ったり、避難はしごを使い「屋根を伝って」はしご車のバスケットで避難する、という計画になっている。

更に、この資料を読んで衝撃を受けるのは、5階に上がる人数を制限するために、5階入場者は「スリッパ」に履き替える事にするそうなのだ。

つまり、火災が発生した際には、避難者は「スリッパ」で、窓から瓦屋根に出て、瓦屋根(相当の角度がついている)を伝ってはしご車のバスケットまで歩き、バスケットで順次、地上に避難することと成っている。

75人全員を避難させるのに、どの程度の時間が必要なのだろう。

通常のビルとは異なり、避難バルコニーはないし、窓に直接はしご車のバスケットを横付けする事もできない。材質が木材であれば煙は現代建築よりも大量に発生するだろう。火の粉も舞うだろう。その中を、瓦屋根をスリッパを履いて歩かせる。こんな計画に対して、判決は「その内容が社会通念に照らして著しく妥当性を欠き、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるものとはいえない」と判断したわけだ。

私から見れば、社会通念に反し、著しく裁量権を逸脱し、濫用などという言葉では生ぬるい、キチガイ沙汰と言ってもいい避難計画が話し合われている。それが名古屋城天守木造化なのだ。名古屋市は最近までこの情報を黒塗りで隠蔽し、名古屋市民はこの事実を全く知らされていない。地元メディアも報じない。

更に、こうした中、近々名古屋城木造化の市民説明会が開かれるそうだ。

www.nagoyajo.city.nagoya.jp

令和4(2022)年1月20日(木曜日)、名古屋市公会堂 大ホール、講演内容は「写真でみる幕末の名古屋城-尾張徳川家14代慶勝の写真術-」

火災時にスリッパで地上38mの瓦屋根を歩かせるというキチガイ地味た計画については説明せず、「写真でみる幕末の名古屋城」の講演をなさるそうだ。これが社会通念であり、裁量権の範囲であるなら、この社会は狂っている。


名古屋城天守有形文化財登録を求める会」では、
一月に一回程度、
北区にある「北生涯学習センター」で月例勉強会を開きます。

  令和 4年  1月25日 (火)
        午後18時30分~
        第3集会室 

         2月22日 (火)
        午後18時30分~
        第3集会室 

 2月22日(火)は、特別企画として。
  建築士が読み解く!
  名古屋市が作成した「幻」の名古屋城天守耐震改修案

  として、建築士 の 渡邉正之 様に
  現天守の耐震改修について、お話を伺います。

※どなたでもご参加いただけます、参加費無料。