市民のための名古屋市会を! Ver.3.0

一人の名古屋市民が「地域委員会制度」「減税日本」に対する疑問をまとめるサイトです。(since 2011/3/3)

名古屋市長選挙2021後の名古屋城問題

私は名古屋城の木造計画に係る基本設計代金の支払い問題で、名古屋市を相手に裁判を行っている。

peraichi.com

裁判資料

裁判の争点は主に3つで、
1.契約に謳っている基本設計時に行われるべき事柄が行われていない、故に基本設計は未完成であり、その代金支払いは違法だ。
2.段ボール5箱に及ぶ大量の基本設計図書を、たった1日で検査したとするのは無理があり、検査しないままの代金支払いは違法だ。
3.契約書に記載されている物件が納入されておらず、基本設計契約は完了していない。

詳しくは、裁判資料を御覧いただきたいが、名古屋市代理人はあの北口雅章弁護士で、所々面白い主張も散見される。

上記のように契約書面に記載されていることが実行されていないにも関わらず、一審では名古屋市側の主張を全面的に受け入れて、私は敗訴した。もし、行政の主張はそれが根拠もなく、矛盾を孕んでいても受け入れ、住民の主張は論理的で実証的であっても受け入れないとするのであれば、司法など要らないだろう。行政は常に勝手なことをして、司法は疑問も持たずにその主張をなぞるだけなら、住民は司法になど判断を求めない。行政の公平公正も期待しない。司法など要らない。

この一審判決で呆れたのは、私達原告が主張などしていない竹中工務店の責任について検討し、ソレがないから原告敗訴って、私らが言ってもいないことで勝手に判断されている。アホちゃうかと思ってしまった。

名古屋市の河村市長が進めている「名古屋城木造化事業」の基本設計代金が違法であるとする私達の主張、その主な論点のうち、上記の1について、ちょっと具体的にお示しするので、私達の主張が間違っているか、一審判決や名古屋市の主張がおかしいのか、皆さんに判断してもらいたい。

なるべく簡単に述べます。

名古屋城天守の木造化事業というのは、竹中工務店と「技術提案交渉方式」という形式で進められている。設計から施工までを一貫して竹中に発注する形となっていて、その全体の契約は基本協定というものに謳われている。これが全体の事業に係る契約だ。

その基本協定の第3条にこうある「第3条 本事業は、以下に準拠する。」その「三 発注者が本公募手続きにおいて配布した資料」「2 発注者が本公募手続きにおいて配布した資料とは、平成27年12年2日付けの公募型プロポーザル実施公告、実施説明書、業務要求水準書」

つまり、木造化事業の準拠資料に「業務要求水準書」が含まれている。

いわゆる天守木造化に505億円かかるというのは、この事業全体を言うのだが、名古屋市は竹中にこの事業を、基本設計、実施設計、施工という3段階(3業務)に分けて発注を行う。名古屋市は現在、基本設計業務は終了し、実施設計業務の段階に入っていると説明している。基本設計については終了しているので、名古屋市竹中工務店に基本設計代金(約8億4千万円)を支払っている。

基本設計については、基本設計業務として個別に契約を交わしているが、例えばその「名古屋城天守閣整備事業基本設計その他業務委託 業務委託概要書」には次のような記載がある。「(5)施工技術検討業務 イ 要求水準の確認 業務要求水準書の内容が確実に設計に反映されていることを確認する(略)」

つまり、木造事業の基本設計業務においても、「業務要求水準書」の内容は、確実に設計に反映されるべき業務要件であることがわかる。

つまり、小難しい事を言わなくても「基本設計業務を行う場合には、色々な契約書に書かれたことを守るのだけれど、その中に『業務要求水準書』が含まれていて、ここに書かれていることを守らなければなりませんよ」ということで、小学生程度でも理解できることだろう。

ではというので、その「業務要求水準書」の一節に何が書かれているのかというと。

「第2章 第4節 1.(6)特別史跡における条件」という項目があって、「その他、下記事項②」として

「木造復元に際し、実施設計に着手する前の基本設計の段階において、文化庁における『復元検討委員会』の審査を受け、文化審議会にかけられる」と書かれている。

「基本設計の段階において、文化庁における『復元検討委員会』の審査を受け」と書かれている。審査をパスしろとは書かれてはいないから、受けるだけでもいいと解釈できて、私達原告(市民)も、そう理解しているが、さて、名古屋城天守木造化事業は、文化庁における「復元検討委員会」の審査を受けているのでしょうか?

これは周知の通り、「門前払い」を受けている。全く受け付けてもらえていない。

そうであるなら、基本設計は完成していると言っていいですか?それとも完成していないと考えるべきですか?

名古屋市は竹中にこの基本設計の完成代金を支払っているのですけど、これって適切ですか?不適切じゃないですか?

というのが、私達が起こしている裁判で、皆さんの判断はどうでしょうか?

  上記、論証と原告側証拠書類の対応:
    甲第1号証 業務要求水準書
    甲第3号証 基本協定書
    甲第5号証 業務委託概要書

私の私見だが、名古屋城天守の木造化事業が頓挫しかけている(事実上、頓挫している)のは、基本設計の、その大切な条件である文化庁における「復元検討委員会」の審査を軽視して、それをクリアもしていない内から、実施設計だの木材買付だのしてしまっているからだろうと思われる。文化庁からは基本構造である「跳ね出し架構」を否定され、強度計算の基礎中の基礎であるケーソンのボーリングも否定されている。まったく、文字通り「砂上の楼閣」なのだ。

では名古屋市は、なぜ「基本設計は完成している」などと言ってしまったのか。簡単だ。河村市長が「2020年7月のオリンピックまでに名古屋城を木造化させて、観光の目玉にする」と言っていたために、基本設計が全く進んでいないなんて言えなくなってしまったんですよ。2020年っていつですか?去年でしたよね!確か!

市長の絶大な権力、行政の裁量権、司法の権威をもってすれば、芥子粒のような市民がいくら訴えても、そんな訴えははねつけることができる。あたかも名古屋城木造化が可能であるかのように言うことはできる。しかし、現実はもっと冷酷だ。

絶対にできない。

砂上どころか、空中に浮かす以外に名古屋城の木造復元なんぞできやしない。(ラピュタの飛行石でも探しておいで)


これを読んでいる方々の中でも、名古屋城木造化を希望される方がいるかも知れない。河村市長に対しては否定的でも、名古屋城木造化には期待しているひとも多いようだ。

そうした方々の頭から冷水をかぶせるようで申し訳ないけれども、「あなた方は一体何を期待しているのですか?」

名古屋城天守の木造化については、基本設計ができていない。その姿を正確に知るものは誰ひとりいない。(竹中工務店の技術者だって、まだどんな姿になるのか知らない。なぜなら、文化庁「復元検討委員会」の審査によって、建築の仕様を確定させなければ、その基本構造はどのようになるのか、最上階の階段はどうなるのか、そしてそこにひとの立ち入りは許されるのか。まだ確定していないのだ。どんな物ができるのか判りもしないものに対して期待するというのは、幻想だ。

河村たかし中日新聞が煽った幻想を真に受けているってだけだ。

そもそも河村たかしは「本丸御殿」の建設に反対していた。初期市長選挙の公約にある4大事業の「ストップアンドシンキング」の対象の一つが「本丸御殿」だった。ところが、完成してみるとまるで自分が作ったかのように喜んだ。コスプレまでしてみせてね。職員のこの「薬」が効きすぎて、初期市長選挙の公約になど無かった「名古屋城天守の木造復元」なんて戯言を実行することになってしまった。

「本丸御殿」はひとの出入りする居住施設だ。贅を尽くした建築となっている。しかし、天守というものは櫓であって、基本的に人は立ち入らない。尾張藩の当主の中でも、年に一回程度、見回りの際に中に入ったとされる程度で、中身はガラガラだ。

金城温古録
CiNii 図書 - 金城温古録

昭和実測図
昭和実測図 閲覧サービス

ガラス乾板(保存活用計画資料編)
保存活用計画資料編

ガラス乾板には壁の羽目板が外れたまま放置されていた様子も写されている。また、河村たかしは「図面が残されているから復元できる」と言っているが、残されている図面は外から見た図面だけで、内部構造については残っていない。当たり前で、江戸時代には徳川家の軍事施設であって、その内部構造図が残されているわけがない、明治以後は皇室財産であったり「国宝」であり、それを壊してまで内部構造を調査などしていない。つまり、内部構造については現代の技術で推測するしかない。

犬山城松本城、姫路城などに行くと、その手斧の切り込み一つに、当時の職人の息遣いが残り心に響くが、現代技術で再現されたものは、レプリカであって、そうした文化遺構ではない。

河村たかし名古屋城天守の木造復元を言い始めた頃。ある方がこう告げた。

「河村が、今ある名古屋城をぶっ壊して木造で建て直すというのなら、やらせてみればいい。どうせあの男にまともな仕事ができるわけがない。地域委員会も、減税政策も、やはりいい加減で失敗でしか無かったが、こうした失敗は市民の目には見えない。職員も必死で誤魔化せば大部分の市民は知らないままだ。けれども、今回は違う。名古屋市民が愛してやまない今の名古屋城天守。それを壊して作り直すのだ。立派な物ができて当たり前、あの男のようないい加減な者が造る、中途半端な代物であったなら、その時名古屋市民はやっと気がつくだろう。自分たちはなんて事をしてしまったんだ、なんて奴を市長に選んでいたんだってな」

私もこの意見に賛成だった。確かに名古屋城天守が失われるのは残念な気持ちになったが、それでも河村たかしの虚偽性が、名古屋市民の前に可視化される機会かもしれないと黙っていた。当ブログの過去ログを見ていただければ、私が最初から名古屋城木造化に反対していたわけではないことがご理解いただけると思う。

しかし、名古屋城木造化が具体的になり、そうした勉強会や市民集会に参加していくと、本当に名古屋城に対して愛着を持つ人々がいることがわかる。現在の名古屋城天守が取り壊されると聞いて、涙を流す人までいる。その姿を見ると、こうした政局から名古屋城を壊してしまって良いのかと思うようになった。

letus-protect-the-castle-of-th.jimdofree.com

幸い、河村たかしの虚偽性は、あいトリとそれに伴う知事リコール、及び署名偽造事件で「可視化」されたのだから、心おきなく現名古屋城天守の保存、保護を訴えていきたい。

さて、そうした観点から今回の名古屋市長選挙を眺めてみる。(ここから、本論だ)

候補のうち、太田候補と尾形けいこ候補は現在の名古屋城天守保存に賛成されている。

横井候補は事業の見直しを行われるようだ。確かに現在のような進め方では何年かかるか判らない。特に国や県からの補助金助成金なども仰いで、収支見通しについても、現実的な再検討を行うだろう。

ichi-nagoyajin.hatenablog.com

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そうした現実的な見直しに対して、私はここで2つ進言したい。

1.真水で500億円出す事業を止め、国や県から予算を獲得する呼び水500億円とすべき

名古屋城天守木造化は完全に名古屋市単独の持ち出し、さらに、それに伴って研究施設だとか様々なポストまで用意させられて、付帯費用等を勘案したら国などに「たかられ放題」の事業となっている。(こうした姿も、河村たかしの無能を表す)
それよりは、この500億円を残して、国や県のすすめる事業と共同歩調を取れば、補助金が同額付いたとして1000億円の公共事業を展開できることになる。逆を言えば、1000億円の公共事業を諦めて、名古屋城の木造化をすすめるのか?という選択になる。

2.ランニングコストの低い事業にシフトすべき

リチャード・クーさんも言っている。

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デフレ期には公共事業、公共投資を膨らせるべきだが、その際気をつけるのはランニングコストのかからない事業を選択すべきだ。ランニングコストの過大な事業は、将来的に予算の硬直化を招き、行政の自由度を奪う。そもそも各種建築物が、木造から鉄筋コンクリートに移行したのは、こうしたランニングコストの軽減からで、そうした意味からもここで金食い虫の木造建築を新造するなどというのは愚の骨頂と言える。
呆れたことに、名古屋市が作った木造化における収支計画には、このランニングコストが全く含まれていない。バカが集ってでっち上げたとしか思えない収支報告であって、こんな代物をありがたがる中日新聞には「提灯もタイガイにしろ」と言いたい。

つまり、木造が良いとか悪いなんて議論をしているレベルではない。その事業としての正当性や、経済的な選好を見ても、ここは一時的にでも現天守の耐震改修を行い、有形文化財登録を行って、コロナ後の観光行政を適正化し、全体整備や木造化については、もっと腰を据えた議論を行うべきだ。

そして、天守閣部会は解散、研究センターも廃止、ステップ名古屋は ・・・ぜひ「河村市政記念館(プレハブ)」として残していただきたい。展示品は私が提案したい。(まず、「民主主義発祥の地」とかいう、勝手に作って使えなかった恥ずかしい垂れ幕なんか展示すべきだろうね。偽造署名簿なんかも、個人情報に配慮して展示したいね)

さて、河村たかしが市長となった場合、この名古屋城木造化事業はどうなるのだろう。

多分、何も変わらない。残り4年では前に進まない。来年には竹中工務店との協定期限が訪れる。その際、事業遅延をひき起こしているのは、文化庁との交渉責任のある名古屋市であって、事業実現の見込もないまま、実施設計代金の実費支払いを求められるかもしれない。陽子線がん治療設備の工事遅延については、遅延させてなお一億円儲かったと子ども騙しの強弁で誤魔化しているが、この場合はどんな嘘を付くのだろうか。今から楽しみだ。

たぶん、木材もダラダラと買い続けるだろう。そうした支出、市民の負担など顧みない上に、そうした事で少しでも事業が進んでいるように見せたいからだろう。(そして、どこか地方で、御神木でも買い取って、中日新聞の記者に取材させ、記事にさせるのだろう。なんの批評性もなく)職員も心ある有識者も、辛抱強くお相手を続けるだろう。(それは河村たかしを尊重するからではなく、それを選んだ市民の選択を尊重するからだ)それでも何も進まない。

市長の絶大な権力をふるえば、高齢化した町内会、自治会への政策が何も無いことなど職員はごまかす、地元紙も書かない。市長の絶大な権力をふるえば、経済学シミュレーションが「効果なし」と断じた減税政策でも、あたかも何か、効果があるように見せることはできるかもしれない。地元紙も1128億円の経済効果と書いてしまっているのだから。しかし、市長の絶大な権力をもってしても、空中に楼閣を浮かべることはできない。

現実は誤魔化しが効かず、
時間は冷酷である。

現在のような進め方をすれば、一年、一月、一日と事業の矛盾が顕になり、河村たかしの嘘が明らかとなる。そして、いたずらに市民の血税が浪費されていくだけだ。