市民のための名古屋市会を! Ver.3.0

一人の名古屋市民が「地域委員会制度」「減税日本」に対する疑問をまとめるサイトです。(since 2011/3/3)

「なぜ日本の金利が低いのか」に真面目に答えてみる(後編)

(前編)
国債は借金ではない
「なぜ日本の金利が低いのか」に真面目に答えてみる
「河村流減税」を否定する4つの傍証
理屈と膏薬はどこにでもくっつく
流動性の罠

(中編)
IS−LM
貨幣が求められる割合
貨幣バブル
河村流減税の矛盾

(後編)
経済を収縮させる河村流減税
自らの墓穴を掘る主張
「市民税をお返しして」
国際的に「正しい経済理論」と思われるものの発言

経済を収縮させる河村流減税

 河村流減税は「歳出削減によって減税財源を賄う」としていますよね。

 歳出を縮小させるのが「河村流減税」の特徴です。

 「減税政策」自体は確かに色々とあります。*1あちこちで行われています。

 しかし、その減税を景気刺激の為に「歳出削減」で行おう*2というのは河村さんが多分、ケインズ以来の文明国では初めてでしょう。(「乗数効果」が低い事が明白ですから。減税が財政出動よりも「乗数効果」が低い証明はすでに行っています。

 「正しい経済学」が導く減税の意味(補足:後編)の補足 - 市長のための市会ではなく、市民のための名古屋市会を! Ver.2.0

 「正しい経済学」が導く減税の意味(前編) - 市長のための市会ではなく、市民のための名古屋市会を! Ver.2.0 )

 ここで「三面等価の原則」について考えて見ましょう。これは河村さんもご存知のようで時々言及されます。「三面等価の原則」とは、「生産(または付加価値)」「所得(または分配)」それと「支出」は常に等しいというマクロ経済学の基本原則ですね。細かい事を言えば若干成り立たない部分*3もありますが、原則としては成立します。そして基本原則です。

 「河村流減税」においては「歳出」が削減されるわけです。

 つまりこの三面で言う「支出」が削減されるわけです。

 名古屋市が行う歳出、つまり「支出」は、それを受取る人々がいた筈です。現実的に「河村流減税」によって歳出削減された公園管理の業者(そして、その作業を実際に行うパートのおじさん、おばさん)や民間委託された窓口業務などがあるわけです。(これらは、同じ業務をしながら、民間委託によって賃金が下がっていると言う事になります)

 こういった行為はすべて「経済を収縮させます

自らの墓穴を掘る主張

 公務員給与が民間企業の給与よりも高いという主張があります。これ自体、データの取り方にアンフェアな部分*4があるようですが、このデータから「公務員給与の引下げ」を訴えた人間には経済を語る資格はないし、社会制度を語る資格もない。こういった格差が実在したとしたら、訴えるべきは「民間給与の上昇」であるべきでしょう。

 公務員の給与を下げても民間給与は上がらない。

 公務員の給与を下げれば、逆に民間の給与はもっと下がる。

 経済が収縮するばかりです。

 実際に、こういった声に押されて公務員給与は下げられています。この10月から(あれほど、災害派遣で国民から感謝と尊敬の声が送られた)自衛官の給料も下がったそうです。尉官クラスですと10%ほど下がるようです。守山の駐屯地周辺にはここに勤務する自衛官が呑みに出る飲食店があるわけですが、そういったところの経営者から「常連の自衛官から今後は呑みに出られないと言われた」という事例も聞いています。
 つまり、自衛官の給料を下げれば、その自衛官の消費が減速します。その消費に依存していた民間の事業も縮小を余儀なくされるということです。

 公務員をバンバン削減していけば、その公務員たちが消費していたであろう車、衣料、食品が売れなくなります。公務員を削減して、その代わりに民間の事業者を指定管理業者として入れて、この業者が一時雇用でこの業務を肩代わりしたとしましょう。それまでは公務員の身分で雇用されていたであろう人々が、一時雇用の立場になります。
 公務員であれば叶ったかもしれない持ち家を持つという「消費」「住宅ローンの成立」が、一時雇用では叶わないかもしれない。

 つまり、こういった「収縮の主張」「合成の誤謬」または「引下げデモクラシー」と言われる誤謬の最も悲惨で、最も許しがたい部分は、このように社会を広く見ようとせず、目先の事柄に左右されて、結局、自衛官の仕事の後の一杯を奪ってみたり。人々の新しい車や流行の衣料、おいしい食品を買うといったささやかな楽しみを奪うということや、真面目にコツコツ仕事をして、持ち家をもって家族を守ると言う夢を打ち壊すという残虐性です。

 そして更に、こうした経済の収縮の為に、自分自身の立場をも悪くするという、自業自得という馬鹿馬鹿しさ。浅はかさです。*5

 まさに自らの墓穴を掘る主張と言う以外にない。

「市民税をお返しして」

 先に「こういった『交換』が『経済』であり、お金を溜め込むだけで『交換』をしなければ『経済』に参加しているとはいえません」と述べました。

 「『経済』とは『交換』であります。『経済が活性化する』とは、この『交換が活発に行われる』ということです」とも述べました。

 そもそも「河村流減税」の間違いは、この「歳出削減」によって経済交換を削減する事にありますが、そのうえ河村さんの言葉には嘘があります。

 「市民税をお返しして」

 市民税は「お返し」されません。
 徴収されないだけです。つまり、お金は動かないのです。

 税金自体には、所得の高い人から「税」と言う形でお金を分けていただいて、所得の低い人、または所得が得られない人に与えると言う、「所得再分配」の機能があります。こうやって強制的にお金を動かすので、交換が活発になり、経済が活性化するのです。

 「河村流減税」の対象者の様に、市民税をシッカリ払っているような方々の元にいくら札束が積まれようとも、それで経済が活性化したとは言えないのです。

 「民の竈を温める」とは、こういった富裕層の元に札束を積み上げる事ではありません。社会全体の交換が活発に行われ、経済が活発に回転することが「民の竈を温める」ことに繋がるのです。そして、こうやって活発になった経済が、また富裕層にも寄与するのです。ですから、「河村流減税」は「民の竈を温める」ことにつながりません。逆に経済を減速させます。

 さて、「なぜ金利が低いのか」という河村さんが投げかけた質問に応えてみる為に、河村さんも話しに出される「IS−LMモデル」を使って考えて見ました。様々な議論があるようですが、ケインズが予想した「流動性の罠」は現実に発生するようで、現に日本はこの「罠」に嵌っているようです。この状態では人々は「流動性選好が事実上絶対的」とみなし、貨幣そのものを持とうとする「貨幣のバブル」*6が起きています。
 こういった経済局面で「歳出削減」や「公務員給与のカット」「公務員の定数削減」等を行うことは、どんどん経済を収縮させて状況を悪化させるばかりです。

(こういった言論 金を回せば経済はよくなるというサギ が堂々とまかり通るのですから仕方が無い。この論考の下に様々な意見が寄せられています。それもあわせてお読みください。)

国際的に「正しい経済理論」と思われるものの発言

 P. Krugman "Japan's Trap" Japanese

 これはポール・クルーグマン氏の1998年5月の論考、「日本がはまった罠 ("Japan's Trap")」 の日本語訳です。(山形氏は「流動性の罠」を「流動性トラップ」と訳している。他にもこの訳には色々と言いたい事はあるけれども、怖いので言わない。)

 ポール・クルーグマン氏についても毀誉褒貶はありますが、2008年にノーベル経済学賞*7を受賞しているぐらいですから、一般的に言えば、彼の論考は、先に述べた「国際的に『正しい経済理論』と思われるもの」と言えるでしょう。*8

 イントロから5章までは、この「流動性の罠」が実在するか否かの議論が延々と続く。(また、クルーグマン氏はインフレ期待を引き起こす「恒久的な(と市場に思わせることができる」通貨流通量の拡大を肯定している。これは、上で述べた「紐では押せない」という理屈とは異なるように見えるが、実は通低している。しかし、その議論に足を踏み入れると論点があまりにずれるので今回は見合わせる。それでなくても予定の倍以上になっている)

 今回は6章に注目していただきたい。

6. ではどうしよう。

 日本はほぼまちがいなく、その生産キャパシティ*9のかなり下で動いてる経済だ――つまり、日本が直面してる目下の問題は、需要の問題であって供給の問題じゃない。そしてあらゆる面からみて流動性トラップにはまってるらしい――つまり、従来型の金融政策をとことんまでやってみても、経済はまだ不景気のまま。
(略)
財政政策:流動性トラップに対する古典的なケインズ流の見方はもちろん、金融政策はある状況では無力だから、唯一の答は財政的にポンプをまわして公共事業することだ
(略)
財政拡大でもうまくいくかもしれないことは示している。もちろんこのモデルはリカードの中立命*10にしばられているので、減税はなんの効果もない

P. Krugman "Japan's Trap" Japanese

 財政の拡大を行っても「減税はなんの効果もない」と切り捨てられている。

 「河村流減税」はこの上、歳出削減(財政の縮小)をしようというのだから、クルーグマン氏から言わせれば「正気の沙汰とは思えない」とでもいうことなんだろう。

 実は、名古屋市の行った減税のシミュレーション
 http://www.city.nagoya.jp/kurashi/category/25-15-0-0-0-0-0-0-0-0.html

 について、前市議の冨田かつぞう氏がシミュレーションを実施した「三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社」の担当者にご足労戴いて勉強会が開かれた。
 錆付いた唯一の武器 - 市長のための市会ではなく、市民のための名古屋市会を! Ver.2.0

 あの場所で「ケインズの45度分析」という言葉についても聞いていたが、「リカードの中立命題」という言葉も出ていた気がする。*11

 現在、名古屋市内において、経済界はほとんど河村市長にそっぽを向いている。そりゃあそうだろう。名古屋市の経済界のお歴々と言うものは、それなりに皆さん、ちゃんとした経済学の素養があってその椅子に座っていらっしゃる。
 河村流減税の無効性や、「正しい経済理論」からすれば、全くでたらめで「なんの効果もない」という事は明白で、歳出の削減額によっては逆に経済を減速させると理解されていたのだろう。

 本日(11月4日)のNHK日曜討論に「14党党首インタビュー」として減税日本の河村代表もNHKテレビに出ていたわけだが、相も変わらず「減税政策…正しい経済理論…国も他の政治家も間違っている…なぜ、この減税理論が広まらないか」などと言っていました。

 そりゃあ、広まらないわけです。間違った理論だから。*12

 そして、その間違った理屈を押し付けるかのように言い立てるから、周りから人が去って行くんですよ。

 河村氏のもとに残るのは、この間違いに何時までも気が付かない、そもそも経済学が全くわからないか、判ろうともしない人々。それとも、経済学が判っていて、この経済政策の社会全体に対する悪影響(経済収縮効果)も知りつつ、「河村たかし」という名前を利用して何等かの利益を上げてやろうという「さもしい」考えを持ったような人々ばかりです。*13

国政政党化「減税日本」早くもかげり

 河村たかし名古屋市長(63)が代表を務める「減税日本」が10月31日に国政政党化したが、さっそく結束にかげりが見えている。小林興起代表代行(68)は石原新党への関心を隠さず、東京本部の事務局長は河村氏に反発し辞任してしまった。
(略)
 日本維新の会代表の橋下徹大阪市長(43)も減税日本との連携について「難しい」と語った。こんな状況で、選挙まで持つのか。

国政政党化「減税日本」早くもかげり

 (最後に東スポの引用で締められるなんて、おしゃれで良いね)




 http://minshu2012.jp/

<愛知> 11月11日(日)13:00〜 TKP名古屋駅前カンファレンスセンター



※開催当日の様子は、当サイトにて中継映像をご覧いただけます。



公益財団法人みちのく未来基金 | 震災遺児に進学の夢を!

(略)
私たちカゴメ株式会社、カルビー株式会社、ロート製薬株式会社は、
真にこの復興の礎となるべき子どもたちが、
その夢や希望を諦めずに成長し、故郷の復興のために役立ってほしいとの願いを込めて、
進学支援のための奨学基金「公益財団法人みちのく未来基金」を設立いたしました。
(略)

http://michinoku-mirai.org/greeting/

企業情報サイト|カゴメ株式会社
カルビー株式会社
ロート製薬株式会社|公式企業サイト

 ここに名古屋の企業が入ってくれていることが誇らしく、救いです。



佐藤ゆうこ国政ミーティングのお知らせ

第25回(西区)
日時 : 平成24年11月10日(土)午前10時〜
場所 : 西生涯学習センター 第1集会室

 名古屋市西区浄心1-1-45 052-532-1551
*地下鉄鶴舞線浄心」駅下車→6番出口 徒歩約1分

第26回(北区)
日時 : 平成24年11月10日(土)午後2時〜
場所 : 北生涯学習センター 美術室 052-981-3636

*地下鉄「黒川」駅下車→4番出口 黒川交差点北へ50メートル(東側)

佐藤ゆうこより国会の現状を報告します。是非お越し下さい。

お知らせ | 佐藤ゆうこ

 はい!はい!


*1:国際的、歴史的に

*2:推敲の為の読み直しをしています。「景気刺激の為に歳出削減を行う」の部分に今「景気刺激の為に」という言葉を入れてみたのですが、これ入れるといよいよ変な感じですね。「景気刺激の為に歳出削減を行う」凄い言葉だ。

*3:生産物が期限切れで廃棄されるというような場合、事故や災害で毀損される場合

*4:公務員は事実上、高学歴で公務員採用試験合格者である反面、比較される民間給与の対象者にはこのような条件が無い等

*5:「あさい」で思い出しましたが、減税日本にも土建屋さんをやっていて立ち行かなくなって、結局会社を潰しただか、潰れそうな事例があるわけで、あれもこういった経済の収縮の結果なんですよ。自分の会社を潰すような経済政策を支援するというのは悲喜劇としか言いようがない。

*6:物価の下落は、貨幣の価値上昇を表す

*7:あ!そうか。このノーベル経済学賞自体が「正しいか」って議論はあるか。

*8:この「正しい経済理論」を時の政治家が選択するかどうかは確かに別だ。それはその時々の政治家や民意が「正しい経済政策」として判断すればいい。

*9:引用者補足:「生産余力」

*10:国債発行による減税政策を行っても発行と償還が同一世代内で行われたならマクロ経済学的効果はない

*11:すいませんね、そもそも私の経済学に対する理解はこんなものですよ。

*12:何度でも真面目に問いかける「本当に、私に見落としはありませんか?誰か一人ぐらい、河村流減税を肯定する経済学者は居ませんか?誰か指摘してください」

*13:その内の一人はさっさと逃げ出しましたが。