市民のための名古屋市会を! Ver.3.0

一人の名古屋市民が「地域委員会制度」「減税日本」に対する疑問をまとめるサイトです。(since 2011/3/3)

名古屋市政に残る迷演説

 さて、では名古屋市政に残るであろう迷演説を料理していきましょう。
 昨年の11月定例会における「市民税減税7%原案」修正案の提案理由説明の演説がそれです。

演説の背景

 昨年(平成23年)の11月30日。河村市長は突然、自らが主張してきた「市民税10%減税」を「7%減税」に圧縮すると言い出した。すでに市議会には「10%減税案」が上程され、議論も進めているところに、この主張が報じられて議会は驚いた。(議会だけでなく、市政に注目していた人間は殆ど全員ズッコケるような驚きを覚えた)
 2日(金曜日)に議会は河村市長を参考人に迎え、この発言の真意を正したところ、今度は「自分は7%にする気はない」と否定してまたまた議会や市政に注目していた人々はズッコケた。
 河村市長に言わせると、自分は7%に圧縮するような気持ちはないけれども、市議団が修正案を提案するかもしれない。という事であった。
 11月定例会は12月7日が本会議による採決である。
 この土壇場に来ての河村市長の泥縄的な政策の転換と、その提案者を市議団にするという「判り辛い」政策の進め方に鼻白んだ。

 3、4日は土日である。開けて5日(月曜日)には修正案が提示されるものと思っていたが、ここでも提示はされなかった。5日から減税日本ゴヤの市議団が「7%修正案」を策定する事になったそうだ。
 そして、6日の朝に「7%修正案」はやっと提示され、委員会審議に付された。

 ところが、このようにして作られた「7%修正案」は滅茶苦茶な代物で、それまで減税政策に乗り気であった公明党も、討議の結果乗れないという結論を出さざるを得なかった。一部の人々は、ここで減税幅を圧縮したのは、公明党からの条件提示であろうと推測していた。河村市長も「仏様」発言*1で暗に公明党の影響を認めていたが、その公明党が乗れないのだから如何に滅茶苦茶か。

 委員会でこの「7%修正案」が否決された姿を、私は当時「議会制民主主義の力!」と評したほどです。

 国会においては衆参のねじれによって政権運営が不安定なままで、力強い政治の姿が見えません。これに国民は失望をしているのだと思います。だからといって、既存政党を捨てて正体不明の地域政党を選んでみても変わりはしません。問題がそこに無いからです。大阪都とか、中京都とか。中身もない幻想に騙されても仕方がありません。
 本当に必要なのは現実の問題を掘り起こし、事実に即した議論を行い、政治的信条、価値観と、政策的論理性を提示しつつ実証的に議論していくという地道な作業です。
 今日の議論にはそれがあります。

議会制民主主義の力! - 市長のための市会ではなく、市民のための名古屋市会を! Ver.2.0

 今に至るもこの考え方にいささかも揺らぎはありません。

 さて、そのような委員会審議を経て、最後のチャンスでもあった翌日の本会議。この「7%修正案」の提案理由が述べられます。
 これが委員会討議を踏まえて、批判された部分を見直したものであれば、一発逆転「修正案」の採択と言う事になりましょう。ところが提案理由説明は、より説得力をなくした演説になってしまっています。つまり、6日の委員会討議で、なぜ他会派が丸々否決に回ったか、その反省が生かされていない、単に自分の言いたいことを言うだけの。つまりは、他者に対して説明し、説得しようと言う意志のない、単なる空虚な言葉の羅列になっているのです。
 さて、では以下にその演説を逐次検討していきましょう。

名古屋市政に残る迷演説

平成23年 11月 定例会 − 12月07日−28号

(山田まな君) それでは、第108号議案「名古屋市市民税減税条例の制定について」に対する修正の動議につきまして、提案の趣旨を御説明申し上げます。

 第108号議案、いわゆる10%恒久減税案でございますが、過去2回の市長選及び市議選にて公約に掲げ、市民の皆様にお選びいただきましたこと、さらに、減税財源は既に確保されており、10%恒久減税が実現可能でありますことから、10%減税が最上のものと考えております。

 確認事項:2回にわたる市長選挙。そして市議選においても公約は「市民税10%減税」であった。7%でも、ましてや5%でもない。
 10%であった筈だ。この段階でもそう言っているが、今の段階で見るとどうだろうか?河村市長は「5%減税」であたかも市民税減税についての公約を果たしたようなつもりになっていないだろうか?
 彼の公約は10%減税であるのだから、今のような5%恒久化に満足するのではなく、10%恒久化できるような、新たな行財政改革の提案をすべきなのではないだろうか?
 ところが、そのような議論は聞こえてこない。聞こえてくるのは「尾張名古屋共和国」という子どもの「秘密基地」じみた幼稚な話しばかりで、更にこれには行政の負担が増えそうな話題が多いのである。
 完全に、公約と逆転している。

 また、ここでも触れられている様に、河村市長は9月の段階から「減税財源は確保してある」と強弁していた。「お金はあるんです」と言ってきたわけで、その「ある」筈の減税財源を使って、公約である「10%減税」を「7%」に圧縮する理由が判らない。
 河村市長の発言によると、お金はあるのだから。

 さあ、この演説はこの疑問に応えてくれるだろうか。

 しかし、過去2年半にわたる財源や市民サービスの低下などの議論の経緯を踏まえるとともに、限られた税制度の範囲内において法的整合性を勘案した中で、最大限庶民のための減税になるよう、以下大きく2点の修正を加えました。

 ここで「財源や市民サービスの低下などの議論」と言っている。つまり「財源の議論」の経緯を踏まえるの?
 もう一度言う。9月定例会で河村市長は「減税財源は確保してある」と強弁していたのだ。そして、その発言は訂正も撤回もしていない。
 なぜ、「財源の議論」など踏まえなければならないの?

 そんなもの踏まえずに、9月定例会で河村市長が強弁した発言の根拠、つまり具体的な財源さえ示せばいいのではないか。それがなぜできないのか。
 つまり、9月の強弁が嘘だったからに他ならない。(参照

 まず、税率を一律10%から7%に下げること。次に、個人市民税の均等割のみの納税者の税額を3,000円から1,000円に減免することであります。

 「10%減税であっても税財源は確保されている」筈であるのに、なぜ「税率を一律10%から7%に下げる」ことが必要なのか。

 更に減免に触れていますが。
 上で「最大限庶民のための減税になるよう」と言っています。そして、勿論この2点の修正で利益を得るのは「納税者層」です。納税義務を負わない低所得者や事由がある人々には利益は与えられていません。いったい減税日本ゴヤにとって「庶民」とはどのような人々なのでしょうか。

 今般の経済情勢をかんがみると、今まさに民のかまどを温める経済政策の実施が喫緊の課題であります。福祉に膨大な予算が要ります。多種多様な住民ニーズがあります。ですが、その福祉予算のための税金も経済が回っていなければ税収減の一方です。国の議論では、社会福祉のため増税に向かっています。民のかまどは冷えるばかりです。

 ここで、国の流れにまず名古屋は踏みとどまって、まず行政のあり方を行革によって刷新していき、現行の制度を21世紀に適合した形に変えていくべきであります。

 住民ニーズや社会福祉に資金が必要であり、その資金を賄うためには増税ではなく、「経済政策」が必要であると説いています。
 所々、雑な議論がありますが、それは置いておきましょう。経済自体を刺激して、拡大する公的資金を賄う必要があるとの認識です。
 さて、その考え方が「7%減税」とどのように接続するのか。

 私がこの演説で最も問題であり、この考え違いの為に減税日本の市議や県議、そして名古屋市民も苦しめられてきたというポイントが次のセンテンスです。

 また、減税によって企業を誘致し、雇用を創出し、経済の底上げをし、民間に資金を回す。このように、この不景気だからこそ民間活力向上のために行政が財政出動を行って民間経済を回さなければなりません。

 このセンテンスは本当に酷いが、その一番酷いところの前にこちらを指摘しておきましょう。「減税によって企業を誘致し、雇用を創出」と言いますが。名古屋に誘致された企業は、それまで何処にあったのですか?
 名古屋周辺の他の地域なのではないですか?

 それは「雇用の創出」とは言いません。単に名古屋が、他の地域から「雇用を奪った」だけなのではないですか?
 河村流減税で河村氏が語る、こういった名古屋だけ繁栄しようとする議論に対する批判は耳に入らないのだろうか。

 さて、いよいよメインイベントです。その言葉はこれです。
 「 この不景気だからこそ民間活力向上のために行政が財政出動を行って民間経済を回さなければなりません

 もう一度言いましょうか。
 「この不景気だからこそ民間活力向上のために行政が財政出動を行って民間経済を回さなければなりません」私はこれを聞いた時に我が耳を疑いました。

 「行政が財政出動を行って」って。
 減税日本ゴヤの市議たちは「財政出動」の意味が判っているのか?

 判っていません。

 これが判っていないようなレベルなので、河村市長の振り回す、訳の判らない「正しい経済理論」とやらにも頷けてしまうのです。

 財政出動とは何か。
 「税金や公債などの財政資金を、公共事業などに投資することによって、公的需要・総需要を増加させ、総生産や民間消費などの増加促進を図る。不況期の景気刺激策として用いられる政策」です。

 ところが、河村流減税は、減税額を全て行政改革で賄うとしています。
 つまりは財政資金の投資を抑制し、歳出を削減するのが河村流減税です。

 名古屋はこの3年以上、河村市政になってから「財政出動」らしい政策は何もしていません。逆に減税に向かって各歳出にシーリングをかけて、公共事業を減らしてきているのです。
 公共セクタの歳出が減るという事は、そういった公共事業を受注する民間企業の売上げが減るという事です。

 河村流減税の為に「財政削減」をして、名古屋の市中にある有効需要を抑制し、名古屋の景気に悪影響を与え続けた人々*2が、それに気が付きもせずにここで財政出動を言うか?

 この無責任と無知に吐き気を覚えます。

 減税が一つの有効な起爆剤となって経済を回していけば、税収が伸び、最終的には市全体が潤って、めぐりめぐって福祉施策の拡充につながります。

 つながりません!
 完全に間違っています。
 詳しい論証はこちらで為されていますが。(参照
G:歳出、 T:税、 c:消費性向 とした場合。
歳出を削減して減税するとは G=T であり。

   \frac{1}{(1-c)} G > \frac{c}{(1-c)} T (0

 したがって、各会派、一つ一つ施策に対する考え方の違いがありますけれど、経済減税か福祉減税かでなく、その根幹にある魂は、名古屋市民、ひいては国民の幸せであり、全会派同じであると考えております。

 今回の修正案は、二つの減税の考え方を税制度の法的範囲内の中で最大限相互に歩み寄らせ、完成させた庶民減税である、そのものだと考えております。

 どうか議会と市長の対立ではなく、一緒になって協議を重ねまして、各会派の皆様、柔軟な対応をお願いいたしまして、何とぞこの修正案に御賛同賜りますようお願い申し上げます。

 「経済減税」だの「福祉減税」だのという議論もこの演説の中には述べられていない。ただ、勝手に「庶民のため」と言いつつ、やはり非課税階層に対する対策が無いだけであるし、経済政策としては決定的に間違っている。

 例えばこのブログで指摘したような経済理論について真っ当に反論もできない。

 批判には耳を貸さずに、自分たちの仲間だけでお互いを誉めあう?
 そんな人々が何が名古屋市民や国民の幸せですか。これほど空しい言葉もない。

名古屋市会の議事録に永遠に残せ

 如何でしょうか。
 私が歴史に残る迷演説という理由はご理解いただけるでしょうか。

 河村市長と減税日本ゴヤ、そしてその支援団体であるナゴヤ庶民連は全く同じ病理に侵されています。
 それは「批判を受入れられない」という病理です。

 しかし、そのような知的怠惰な態度は、個人においては愚行権の行使と笑って見ていれば良いのでしょうが、市政を預ける相手としては甚だ遺憾です。

 そして、反省の無い彼らはこの姿を拡大していきます。

 はっきり言いましょう。この演説は発言者である山田まな市議が書いている筈です。
 他の減税日本ゴヤの市議たちには、内容の説明すら6日の朝までなかったと言われています。そして6日には減税日本ゴヤの中からすら制度的欠陥を指摘されていたのです。
 それでも、強行して議会に上程されました。

 山田まな市議が、批判に耳を貸さないのでしょう。
 そして、その山田まな市議が今年度、減税日本ゴヤの政審会長に就きます。

 減税日本ゴヤからは、今後も様々な迷演説が飛び出してくる事でしょう。

 名古屋市政の歴史に、しっかりとそれらの発言と名前を刻んで、永遠に顕彰していって欲しいものだと思います。(演説部分



追記:本日(4月18日)名古屋市会の理事会が開かれたそうだ。各会派の幹事長などが集まる会議なのだが。ここに参加したのが、減税日本ゴヤの新幹事長である余語さやか市議。まだ若い女性ということで、危惧されているが、早速・・・。

 理事会の席上、金城氏の名前が出た。出した理事は別に深い意味も無かったようだが、余語幹事長は「金城に記者会見をさせます」と勝手に約束してしまった。
 他会派は何も求めていないし、その金城市議はチェルノブイリに行っていて、記者会見を開くという余語市議の勝手な決定を受入れられるのかどうか不明だ。
 他会派の理事の方が内心「そんな事勝手に約束していいのか?」と思っていたそうだ。

 また「団に戻ったら『他会派から金城さんの記者会見を強く求められた』とか、ひとのせいにするんじゃないだろうな」と疑られているらしい。
 その理事は「団の中だろうと、そんな二枚舌使ってもすぐ漏れてくるけどね」だって。


*1:追記:正確には「仏様」発言は後の「5%」の時のものだった。書き間違えだが、修正せずにおきます。結局、単独過半数を押さえていない河村市長が他党に賛同を得るため、条件を提示して同意を模索していたのは間違いが無いため。

*2:河村市長、リコールを主導した者たち、減税日本の市議、県議。そしてそれらに提灯を付けた中日新聞、 NHKなどのマスコミも含む。