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怒りと逆上ならば僅か半時間で引き倒す。」
 エドマンド・バーク

大飯原発再稼動問題について

 昨日(4月14日)、谷岡郁子氏の講演会に参加させていただいた。お伺いした話も興味深いものだったが、家に帰ってきてからあれこれ確認した中で、非常に気になる話があったので予定を変更してその記事を書きます。

 参照:
(注意!このリンクを開くと音が鳴ります)
 http://www.dpj-genpatsu-pt.com/members.html

 今、問題となっている大飯原発の再稼動についての情報です。
 東京新聞中日新聞の東京発行版)が4月12日報道で次のように報じています。

民主PT同調 藤村氏は「口撃」一転 大阪府市の「8条件」2012年4月12日 朝刊

 関西電力大飯原発3、4号機の再稼働の阻止に向け、大阪府市統合本部が打ち出した再稼働八条件に、政府が頭を抱えている。
 当初は、橋下徹大阪市長の単独プレーと冷ややかに見る向きもあったが、民主党原発事故収束対策プロジェクトチームもこれに同調するような提言をまとめたことで、政府も無視できなくなってきた。(以下略)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2012041202000127.html

 ここで、民主党原発事故収束対策プロジェクトチーム(収束対策PT)が大阪の「8条件に同調するような提言」をまとめたというのは誤解を招きかねない表現だ。

"原発再稼動問題に関する緊急提言 原発事故収束対策PT 2012年4月10日"

 この緊急提言については以下のような 収束対策PTの議論の積み重ねから出たものである。 "過去のデータや会議資料の一覧"

 また、昨日配られた3月27日「収束対策PT第二次報告」にも準じた提言である。
 つまり大阪の8条件を受けて、後追いで出されたようなものではなく、その意見には議論の積み重ねがあるのだ。

 再稼動に向かって前のめりになっている政府をよそに、民主党の党内では実に充実した議論が交わされているのがわかる。*1

 そして、大阪の8条件と収束対策PTの5条件を比べれば、その性質の違いも判る。

大阪の8条件
A)原子力規制庁の設立
B)安全基準の根本的作り直し
C)完全なストレステストの実施
D)防災計画と危機管理体制の構築
E)100キロ圏内の住民同意、自治体との安全協定
F)使用済み核燃料の最終処理体制の確立と、その実現が見通せること
G)電力供給の徹底的な検証
H)事故収束と損害賠償など原発事故で生じる倒産リスクの最小化

収束対策PTの5条件
a)国会や政府の事故調査委員会の事故原因の究明・解析
b)原子力規制庁の設立
c)改正原子力災害対策特別措置法施行に基づく地域防災計画の策定

d)免震重要棟の早急な設置
e)ベント管あるいは放射性物質を除去するためのフィルターの設置

 この収束対策PTの5条件の内、前3つは外形的な条件といえるが、(d)と(e)に関しては非常に具体的だ。
 そもそも大飯には福島にもあった免震重要棟が無いそうである。
 最悪の事態を考えると、800人からの作業員が居るとの事だが、放射線防護できるような建物は107平米程度しか確保できていないという。これで再稼動させるのは異常だろう。というか、今までそれで通ってきたのが凄い。
 また、放射線防護服も10着程度しか置いていないそうである。

 それにベントにフィルターが無い。
 これらはつまり、事故は起きないという前提で作られていたからだろう。

 収束対策PTはまず、現実的な対策を求めている。民主党の収束対策PTの中には推進派だけではなく全炉停止を求めている人も居るようだ。原発そのものの是非は、もっと大きな枠組みで議論すべきだという態度とも取れる、非常に納得のいく話だと思う。

 それに比べると大阪の8条件は外形的な話が多く、というかそればかりで、そして「そもそも論」が多い。大飯原発の実態がどうのという議論ではなく、外形的な「あるべき論」に終止している。「安全基準」「完全なストレステスト」「防災計画と危機管理体制」「使用済み核燃料の最終処理体制」「電力供給の徹底的な検証」「倒産リスク」
 どれももっともな要求に思えるが、それができるようなら問題は無いというような話ばかりではないだろうか。
 橋下市長は事ある毎に「学者は机上の空論を振り回す」「現実の行政を知らない評論家の発言」というような批判を繰広げるが、この8条件こそそれになっていないだろうか。
 そもそも「完全なストレステスト」の定義ってなんだろう?

 また、「100キロ圏内の住民同意、自治体との安全協定」というのは、今の東電の事例を受けての提言だろうが、そもそも100キロ圏内に影響を及ぼすような事自体が問題ではないだろうか。
 それよりは「ベントフィルターの設置」など、事故が起きた場合に、拡散させない方策を取るようにすべきなのではないのか。



追記(4月19日):
国会における「東京電力福島原子力発電所事故調査委員会」がコメントを出した。
naiic.jp
コメントの評価はさておいて、ここで求められている事柄が。

東京電力福島第一原子力発電所事故の対応で重要な役割を果たしたとされる免震重要棟の設置は「中長期的課題」とされている。
②欧州の多くの国で採用されているフィルタ効果のあるベント設備の設置も「中長期的課題」とされている。
③住民の安全確保にとって非常に重要な住民避難計画等の防災は、判断基準の基礎となっている「技術的知見」において、検討の範囲外と位置付けられている。



*1:これは本当にどうでもいいことだけど。意味も判らず質問主意書を出して、いたずらに住民の不安を煽る元民主党議員も居れば(2011年8月8日記事を参照)こうやって実効的な行動を積み重ねる民主党議員も居る。