市民のための名古屋市会を! Ver.3.0

一人の名古屋市民が「地域委員会制度」「減税日本」に対する疑問をまとめるサイトです。(since 2011/3/3)

雇用など要らない

追記:
COVID-19 感染拡大に伴い、失業、休業に追い込まれた場合など
家賃が払えない人への支援として「住宅確保給付金」があります。

www3.nhk.or.jp

名古屋市内の窓口はこちら

名古屋市:名古屋市仕事・暮らし自立サポートセンター(暮らしの情報)

住宅確保給付金のご案内(PDF)

3.雇用など要らない

前々回、「アマゾン・エフェクト」やAIの進展で、COVID-19 の感染拡大がなくても雇用は減少していただろうと書いた。

例えば、映画「サロゲート」などで描かれたような社会は、すでに実現の一歩手前まで来ている。あそこまで精巧なロボットでなくて良いのなら、ロボットを代わり身として社会生活を送らせる試みはすでに存在している。

unit.aist.go.jp

ここでちょっと思考実験をしてみたい。衣食住、ヒトに必要な物品をすべてロボットが賄う社会。ロボットが石膏やら木、鉄から建材を作り、運び、住居を作る。化学製品や天然素材から様々な機能や意匠を持った衣料を構成し、消費者の手元に運ぶ。もちろん商品の選択は Amazon やら ZOZOTOWN で行い、配送は自動運転車(ロボット)となる。更に、食料品についても栽培、収穫、加工、調理、配送までこうした自動機械が業務を賄う。

ここで極端な事を考えてみよう。こうした住居や衣料、食料を買う代金は全て政府から配布される。その代金は各事業における収益を国が再配分する。

さて、果たしてこの社会は成立するか。

私は成立するとみる。なぜなら、この流通路に「雇用」があるだけで、経済の循環自体は現在の社会と本質的には同じであるからだ。

経済活動とは、つまるところ一次産品の分配である。その際、一次産品を加工したり、所在を変えることが、この一次産品に付加価値をつけることになる。大豆が畑にあるだけでは価値は生まれない、それが収穫され、加工されることで食料となり、経済的価値を持つ。そしてそれが豆腐になるのか、味噌になるのか、はたまた豆のまま調理されるのか、様々な付加価値の付け方がある。この付加価値が事業者の利益であり、雇用者の人件費の原資となっている。ならば、雇用と賃金などすっ飛ばして、自動機械による提供と、結果としての収益を第三者、国が召し上げて、消費者に再配分する。こうして付加価値を付けられた一次産品の再配分ができれば、経済は回る。もちろん、消費者/国民の生活は成立する。

ここに雇用など要らない。消費の原資となるお金さえあれば経済は回る。

ここまで考えると、通貨とは一次産品(または商品)の分配を仲立ちする装置でしかない。一次産品により高い付加価値を付けられたものは、この分配(通貨)をより多く得られる。同じシャツを作るにしても、単なるシャツとして販売するよりも、そこに価値の高い(と、思われている)デザインを付加することで、同じ一次産品からより高額なシャツを生み出すことができる。いわゆる「ブランド」はこのように付加価値を付けて収益を上げる。または、一次産品を収穫された場所で消費するのではなく、遠く離れた都市部まで運び販売する。こうして場所や時間という付加価値を付けることでより通貨(次の消費の原資、または次の活動の原資)を得ることができる。

通貨発行によるシニョリッジ(通貨発行益)がハイパーインフレを呼ぶと言われる。一国の中で通貨供給量を増やしても、物品の供給が安定的ならば(または、現下の日本のように、供給が過剰であれば)インフレは起こらない。分配すべき一次産品(や商品)を国外から調達する場合にはシニョリッジと言えるのかしれないが、この議論はまた後に続く。

ここでこのぶっ飛んだ思考実験をもう一段ぶっ飛ばしてみよう。

実は映画「マトリクス」はSFとして設定を間違えている。(まさか、「ネタバレ」とか言われないよな)

映画「マトリクス」では、人間と機械が争いを起こし、人間が機械の攻撃を止めようとして、発電施設を無効化するために、太陽光を遮った。その為に機械は人間を「電池」代わりに捕え栽培して、その生体電気でシステムを稼働させている。と、説明されている。

しかし、この説明は成立し得ない。その生体電気を生み出すエネルギーはどこから来ているのか。科学的には矛盾する。

人間の体内で生み出される電気、生体電気なるものはアデノシン三リン酸(ATP)におけるリン酸の切断によってエネルギーを生み出すのだが、このエネルギーの由来は太陽光がもたらしている。太陽光が植物の中で蓄積させたエネルギーを、哺乳類が摂食して(または、摂食した生物を再摂食することで)ATPを得ている(またはATPを構成するエネルギーを得ている)のであって、もし、地球に太陽光が降り注いでこないのなら、生体電気は生まれない。

実は、気になる台詞がある。「マトリクス」のシステムは、この人間の「生体電池」と「核融合発電」で賄われているという台詞が有って、であるならば、実は「マトリクス」のシステムも、そこで「飼われている」人間も皆、その核融合発電のエネルギーを由来とし、依存している事になる。

人間を、実際には活動させないまま、その感覚だけを操作して、仮想的な空間で活かし、物理的な生体はポッドの中に置く。これは最も消費エネルギーを少なく、効率的に人間を維持させる方法だ。冷凍睡眠で長期間の惑星旅行でもするような場合にも有効な手段であると思える。生物の種は一定以上の数を「栽培」しなければ絶滅してしまう。種の中の遺伝的多様性が得られないと生物種は絶滅を回避できない。一定以上の数を維持しつつ、最小限のエネルギー消費で種を維持し続けるのが「マトリクス」というシステムであるとするならば、ひょっとするとあのシステムは人間を「生体電池」にして縛り付けてしまうような代物ではなく、その創設者が人類の種の存亡をかけて設置した、ノアの方舟なのかもしれない。

まあ、私は「マトリクス」の1を見た時に、それがシリーズ化される中で、こうした種明かしでもあるのかと思っていたんですが、なんだかそっちには話が流れなかった上に、色々なコンテンツが生まれて、1で語られた「生体電池」の話が本当であるように扱われていて、熱力学の法則というのはどこへ行ってしまったんだと思いましたがね。

まあ、それはさておき。

「マトリクス」という在り方は、この一次産品(核融合発電で作られたアデノシン三リン酸)を分配する、最も効率的な姿で、あまりに効率的だから完全に人間性をスポイルされたように見え、究極のディストピア観があるのでしょう。

しかし、その在り方は全くのおとぎ話ではなく、やろうと思えば実現可能な話なわけだ。確か、光瀬龍火星年代記やら、「百億の昼と千億の夜」でも似たような社会構造は描かれる。

SFの話。ではないだろう。というか、今、目の前で展開されている話自体が、SFそのものだろう。

コロナ禍は半年や一年で終息するだろう。これはそんなに恐れてはいない。しかし、それ以降の経済状態はどのようになっていくだろうか。今、世界は「G0」の社会だったという言葉を聞いた。つまり、G7やらG20と仰々しくお歴々は並んではいるものの、その実リーダーは存在しない。今までのように米国がリーダーとするならば、これほど恐ろしいこともないだろう。(あの、トランプに人類の行末を託す、なんて、COVID-19 の致死率が跳ね上がる以上に背筋が凍る)

何故かわからないけれども、20世紀の後半。日本ではバブル崩壊後、ヨーロッパなどでもEU統合からだろうか。行政の効率化、行政を企業活動と混同して見る見方が支配的となっていた(端緒はサッチャリズムだ)。たぶん、マネージメントという意味では近しげに見えたのだろう。しかし、収益を上げる企業活動と、生存可能性/持続可能性を模索し、その中で社会的リソースの最適配分を模索する行政の仕事では、その求めるところは異なり、評価軸も異なる。(企業なら、収益、収益率と単純だろうが、行政にはそんな単純な評価軸はない。単純な評価軸がないので、政治的に、民主的にそれを定めることになっている)

効率性を求めれば、今般のような非常時には対応ができなくなる。確かに、非常時に対応できるような高スペックの社会は高コストになる。
収益/収益率を求める企業にとって「高コスト」は悪であり、コストを削減することは良いことだろう。しかし行政や社会にとって「高コスト」は常に悪いことと言えるだろうか。一つの企業にとってコストをカットするということは、収益を他に渡さず、自社内に留めるということだ。しかし、社会や行政において「収益(歳入)」を他者に渡さないとは、単に社会全体の経済活動を縮小するに過ぎない。行政における「高コスト」とは、そこに「ヒト・モノ・カネ」を注ぎ込むことだ。それを賄う民間事業者の売上であり、雇用であり、設備投資であり、消費であり、経済の回転、拡大だ。

阪神淡路大震災以降、耐震基準が高まり、様々な建築物が「高コスト」となった「ヒト・モノ・カネ」を注ぎ込む必要が生まれた。しかし、それで社会は減退したのだろうか。それとは逆に、小泉・竹中構造改革は行政におけるコスト(人件費)を削減し、民間委託、派遣要員の導入を計った。こちらは行政を強化したのだろうか?

ここまでの議論は、小泉・竹中構造改革などにおける効率的な行政や流動的でコスト負担の低い雇用を論点としているので、実はそうした視点は誤っており、行政や企業がもっと「高コスト」で雇用集約的な構造を作るべきだった。そのようにして雇用を生み出すことが、同時に消費を生み出すことであって、生産性を高め(つまり、消費者が高い付加価値の消費財を買う社会を生み出し)少子化にも歯止めがかかった社会だったんだろう。企業や行政が効率を追求するあまり、雇用が不安定となって、そこで働く労働者も、生活に効率を追求せざるを得なくなる。そうなると、生活のコスト負担を求める「結婚」や「出産」を忌避するようになって、現在のような単身者社会、少子社会が生まれたのではないのか。現在のような消費不況は結局、小泉・竹中構造改革による不況であり、「パソナ不況」と名付けてもいいと思う。

しかし、ここからは話がガラリと変わる。

「アマゾン・エフェクト」や産業におけるAIの導入などで、今後も雇用は失われる。どんどんヒトが行わなければならない業務は無くなり、そうした仕事に携わってきたヒトの雇用は奪われる。けれども、それは悲劇的な出来事だろうか。チャールズ・チャップリンが映画「モダン・タイムズ」で描いたように、ヒトが産業の歯車となり、人間性を奪われて労働に拘束されることは、やはり人間性の収奪である。コモデティ化された労働力(例:パソナ登録の派遣社員)など、人間性の喪失であり、そうした喪失によって付加価値が下げられれば社会全体の生産性も下げられる。個々人がより創造的な職業に挑戦し、付加価値を上げることで経済は拡大する。

社会や行政が高コストになるということは、社会全体から見れば高い生産性を維持していると言える。霞が関の官僚よりも、ジュネーブの国際機関の職員の方が労働生産性が高い理由は、スイスのほうが社会的に高コスト体質になっていて、日本が異常に低コストであるからではないのだろうか。霞が関の官僚とジュネーブの機関職員の間に能力的差は感じない(いや、少し負けているか)

先の非現実的な思考実験でも、一次産品をベースに付加価値を付けたのは、加工や適時な消費提供、運輸配達である。つまり、付加価値を生むのは、人間の嗜好/思考と、加工や輸送を賄うエネルギーと言う事になる。

大切な2つの要素

1.人間が欲すること、
2.その欲望に応えられる加工や輸送の力

が、付加価値を産み、生産性を生む。

また、前々回のエントリーでも述べたように、人口とGDPの伸展は比例しない。GDP(これも結局は付加価値の総体)を拡大させるものは、産業のイノベーションである。20世紀の後半、ちょうどコンピュータが身近になった頃から、産業のイノベーションが止まったと言われている。私はここに大いなる誤解が社会を席巻してしまったせいであると見ている。というのは、コンピュータにおいては「ムーアの法則」という経験則があり、おおよそ18ヶ月毎に集積回路の集積度が倍になるという傾向が有った。これはつまり、18ヶ月毎に集積回路の性能が倍になる、または、同じ性能の集積回路なら価格が半額になるという傾向であって、このおかげでコンピュータに関連したものは、「どんどん安くなる」と見られていたように思う。酷いのはこうしたハードウェアの傾向を、ソフトウエアや運営にも反映させる誤解で、人的経費までも圧縮させる傾向を生んできたのは、完全に誤った判断だ。(これを「生産性」と勘違いしている経営者も居るのだから頭が痛い、そんな経営者は(自粛))

まあ、それはともかく。確かに、産業においてここのところ、大きなイノベーションが起きていないように思える。けれどもそれももはや終了だろう。産業の成長曲線における踊り場はここで終了させなければならない。2つの種がある。

karapaia.com
Induced pluripotency and spontaneous reversal of cellular aging in supercentenarian donor cells - ScienceDirect

iPS細胞を始めとする「ティシュエンジニアリング」や蛋白合成技術は、ここに見るような医療や美容に新たなニーズを生み出すだろう。さらにこの産業の射程は新たな素材革命や食料の創出も可能とする。(今回、COVID-19 対応のためにワクチン開発が急がれるが、一般的にワクチン開発では鶏の卵にウイルス株を埋め込んでウイルスを培養する。この培地を生命科学の技術で効率よく作る研究が進んでいる)また、蛋白質は柔軟で可能性に満ちた素材でもある。

追記(4月21日):
www.youtube.com


これらが、上で述べた重要な要素の「1.人間が欲すること」の対象だ。若返りや広範な産業の可能性、これを欲しない人間が居るのだろうか。この産業(群)は、近々爆発を起こすだろう。

そして、
2020.03.29 SUN 19:00
wired.jp


2020.03.28 SAT 19:00
wired.jp


「2.その欲望に応えられる加工や輸送の力」を賄う技術は、核融合以外にない。*1核融合」と言う言葉にアレルギーを感じるのであれば「プラズマ発電」でもいい。

1.人間が欲すること、
2.その欲望に応えられる加工や輸送の力

この2つは膨大なニーズと、それを賄い得る莫大なエネルギーを、それも持続可能な形で、人類にもたらす。

確かに、その科学技術も、開かれた議論、万全なチェックや暴走を止める仕組みを必要とするだろう。(そして、いつか、どこかで事故も起きるだろう)けれども、人類は可能性を求めて、常に歩を進めなければならない。

一次産品を国外から調達する話やらナウル共和国の話。松下型「無税国家論」についても書きたかったが、ちょっと長くなりすぎた。またの機会に回す。

追記:



headlines.yahoo.co.jp


camp-fire.jp



http://bit.do/Ncastlebit.do

http://bit.do/Ncastle

名古屋市北区黒川の「北生涯学習センター」で行っております。
月例会ですが。

当該施設の使用制限が 4月12日まで延びたという事で、
4月11日開催予定の 月例会は行なえません

なお、次回開催予定は

5月11日(月) 18:30~

第一集会室 となります。


また、次回、

第七回公判は

5月13日(水)15:00~

名古屋地方裁判所 

第1102法廷です。



山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信

COVID-19情報共有 — COVID19-Information sharing – By Prof. Dr. Aki-Hiro Sato


*1:核融合」というと、アレルギーを起こす方は、特に「核融合」についてもっと知るべきだ。未熟な知識や、誤ったデマで「核融合」を必要以上に恐れるのは、火を恐れる(自粛)に見える