3月18日、金曜日の名古屋市会本会議を傍聴した。
市会議員報酬についての適正化改正に対して河村市長が再議をかけたことに対する市会としての議決を得る会議だ。
再議に対する本会議採決は午後6時以降になるだろうという事で、今の仕事場からなら定時後に駆けつけることができるために傍聴することができた。
議事は淡々と進み、減税日本ナゴヤの大村光子団長。共産党の山口清明議員の賛成討論の後、2/3の議員によって否決され議員報酬の適正化が確定した。
議場には10名ほど河村市長を支援する市民が傍聴をしていた。
(大村議員の演説の際、拍手をしていたのですぐにわかる。本会議傍聴席で拍手やヤジは本来禁止されている。支援する市民集団の中に、河村事務所のH氏の姿も見えたが、そういった規則については指導もしないのだろうか?)
採決の後に幾人かがヤジを飛ばしていた。
一人の女性(70歳は超えておられるような方)が「よく見ておいてくださいよ、これが名古屋市議会の姿です。民主主義はどうなるの」というようなヤジを飛ばして職員に制止されていた。
・・・今の社会には大きな欠落があるように思える。
それは今の社会の成り立ちについて、その歴史的経緯を無視するという傾向だ。
過去の経緯があって現在の姿、制度や決まりがある。
名古屋市会でも、ヤジだの拍手だの、傍聴席で不規則な騒音を立てることが許されるのであれば、集団動員をかけられる政党が好き勝手な議事運営ができるかもしれない。民主的で正常な運営を妨げる恐れがある。その為の規則、措置として傍聴席や説明員は不規則発言をすべきではないししてはいけない。議事を進めるのは議員の職責なのだ。
こうした歴史的背景を無視したアンフェアな言論が生んだのがあのヘイトクライムを繰り返す「在特会」だ。
彼らは「在日韓国、朝鮮人には特権がある」という。しかしそれは歴史的経緯の中で、本来日本人(大日本帝国の臣民)として扱われていたものが、戦後の日本国籍を得られなかった、また朝鮮半島の動乱によって故国に帰国する機会を失い、日本での生活基盤を築いてしまったという経緯によって維持されてきた、一時的で特殊な措置も多い。
三重県の一部の自治体で課税を減免していたという例があったそうだが(すでに今は適正に徴収されている)ここにも歴史的経緯があったようだ。
こうした歴史的経緯を切り離して、一瞬だけを切り取り、物事を評価することは全く正しい行為ではない。アンフェアであり不公正な行為だ。
これは3月18日の中日新聞の社説だ。
報酬半減、800万円の維持、恒久化を求める市長と、適正化、制度値の1600万円に15%の減額を考慮した1455万円を求める議会。この両者に対し「適正な報酬とは何かという議論を欠けば、どちらも市民の理解は得られまい」と、両論に対して批判し、公平な立場を取っているように見える。
しかし、この一瞬だけを切り取り、そこでバランスをとる姿は実は公正を欠いている。
こういった視野狭窄の言論が、一般市民をミスリードして名古屋市会に民主的な議論が失われたというような誤解を生み出す。
あの議場でヤジを飛ばした女性は、そういった事情を把握していないわけであり、それは誰の責任だろうか。市民に正しい情報を伝えるべきマスコミにも大きな責任があるのではないだろうか。
今回、議会が定めた事は特殊な事ではない。
先のリコール選挙後に制定された「名古屋市議会の議員の議員報酬の特例に関する条例」を廃止したに過ぎない。
そして、この条例は「特例」であり、その内容は「当分の間」と定めているように、議員報酬について幾らが適当なのか、それが見極められまでの間、とりあえず河村市長の訴える半減に致しましょうという条例だった。
しかし、この条例が定められてから、河村市長は議員報酬について800万円である理由を説明できていない。また、当初主張していた「報酬が半減、800万円になれば市民がこぞって市議会に参画する」といったような事象も、昨年春に市議会改選されたが起きなかった。(報酬を下げておいて、そこに参加者が増える通りが無い)
報酬審議会は800万円の額について、3回諮問を受けているが一度も回答を寄せていない。逆に800万円の根拠を示すように河村市長に求めているが、河村市長は応えようとしない。
つまり、800万円、半減を訴える側には、その根拠も理由も無いのだ。
無ければいつまでも続けておく必要はない。
逆に今回、議会が戻した「制度値」には根拠がある。
制定は昭和31年だ。
ちょうど制定60年になる。
半世紀を超える間、制定されていた議員報酬について、それが異常な事なのだろうか?
と、するのであれば、今まで60年間、この議員報酬を続けていた先人たちは皆、異常なのだろうか?
60年間、営々と続けられてきた事と、 せいぜいこの5,6年で訴えられた事のどちらに「挙証責任」があるだろうか。(河村市長は当初のマニフェストでは、議員報酬について10%削減と明記されている。半減800万に主張がブレたのはつい最近だ)
当然、60年も続けられた制度を替えようという側に、その挙証責任があるのは当然ではないか。
これは「既得権」というものではない。
制度とは様々な関係性の束を構築する。一つに修正を加えれば必ずどこかにひずみが起きる。時としてそういった社会のひずみは惨事をもたらしかねない。(「規制緩和」という美名によって行われた高速バス事業の門戸開放と過当競争が、いったい何人の命を奪っただろうか)
これ以上、理も利も無い*1ような事を続けている必要ない。
社説の筆者は「なぜ1455万円とするのかの説明はできていない」と主張するが、できている。昭和31年にその議論は終了しているのだ。(そして、60年大きな問題も無く続けられてきた)
この筆者が60年前のその議論を参照しなかっただけではないか。
減税日本ナゴヤの大村団長の演説はエモーショナルに過ぎて、河村市長に賛成できる人々(つまり、歴史的経緯など無視して語ることができる人々)には訴えることができるだろうが、まったく視点を異なる私などには何も響いてこなかった。(相変わらず、会派内での議論ができていない事が判る。説得力がない)
しかし、共産党の山口議員の反対演説には少々驚かされた。
確かに、議員報酬を再改変するには「市民による成案を得る事」という条件があった。
議会基本条例には次のようにある。
第16条 議員定数及び議員報酬に関しては、別に条例で定める。これらの条例について、これを制定し、又は改廃するときは、議会基本条例の趣旨を踏まえ、これを提出する。この場合、民意を聴取するため、参考人制度、公聴会制度等を活用することができる。
名古屋市議会基本条例
こういった趣旨も踏まえ、本来であれば報酬審議会に諮問し、参考人を呼ぶなり、公聴会を開けば良いのだろう。
しかし、それをしないのは誰か?
今回、議会の一部からは、河村市長が報酬審議会に(800万円に固執しない)諮問をするのであれば、その成案を得るまで改正分を受け取らずに供託するという意見もある。
議会はお手盛り、私利私欲によって動いている訳ではない。(内部的にはどうあれ、外形的な手続きは踏もうとしている)
議論を避け、説明責任も果たしていないのは、議会ではなく河村市長ではないか。
また、同基本条例には次のような条項もある。
第16条 3 議員報酬については、地方自治法の趣旨を踏まえ、本市の財政規模、事務の範囲、議員活動に専念できる制度的な保障、公選としての職務や責任等を考慮し、別に条例で定める。
名古屋市議会基本条例
財政規模や事務の範囲等考慮した場合、800万円が適正だとは思えない。
さらに。
社説はタイトルとして「適正額の議論を尽くせ」というが、議会が自分で議員報酬を議論することは好ましい事ではない。なんでもかんでも議論をすれば民主的と言う訳ではあるまい。議員報酬の審議は議会からも、行政からも距離をとった第三者がまず行うべきだ。
地方議会で議論されるテーマは、行政事務の適正であり、議員や議会の在り方などは本論ではない。
また、議会の在り方について、本来、その議会によって審査される対象者であるべき首長が、云々するなどという事は、地方自治の、二元代表制の在り方そのものを揺るがす行為であり、民主主義の破壊だ。
もう一度言う。
首長が、自身の行政事務を審査する議会について、その報酬などを取り上げて、弱体化を企図するなどという行為は民主主義の破壊だ。
中日新聞は、リコール署名簿収集の際に、その先兵となって地方自治を破壊して回った。
今に至るもその反省は見られない。
残念な事だ。
http://livedoor.blogimg.jp/minami758/imgs/d/c/dc6c7a06.jpg
これは先のリコール署名の際、議会側が用意したチラシだ。
議会が気に入らないから解散?
今回の市長主導によるリコール運動ですが、河村市長の発言は「市長の公約を否決したから解散させる。自分を支持する議員で議会の過半数を占める」というものです。
市長には予算提案権、予算執行権、人事権、組織決定権など、大統領と総理大臣を合わせたぐらいの強大な権限があります。自分のいうことを聞かない議会はクビ、思い通りになる議員で過半数を占め議会を思い通りにするということは、地方自治法でいう市長と議会の独立対等の関係に反しているばかりでなく、強大な権限を持った市長が議会まで思い通りになれば、それこそ独裁といわれるような市政になる可能性があります。あくまでも、市長と議会は切磋琢磨し、議論を重ねながら市民のためによりよい結論を導き出すことが求められているのです。
まったく議員報酬など、名古屋市民に何も利益をもたらしはしない。(2兆円の予算の中で6億円が浮くことが利益と言えるのだろうか?それならば名古屋城の木造化で不明確なままの建造費、280億円から400億円の差額、120億円はいったい何だろうか?)
そして、バカバカしいリコール署名が行われ、その署名簿は不正流用され、流出した。
河村市長、河村事務所、そしてその運動を主導した市民団体と呼ばれる者たちも、名古屋市民に注意喚起も対策も行っていない。河村事務所の経緯説明の後、その説明に反して中村孝道元市議の事務所から、リコール署名簿が見つかっている。つまり、満足な調査もしていない。
そうした無責任な人々が、再度名古屋市民の署名を集める?
その署名がまたまた不正利用され、流出したら、河村事務所はどう責任を取るのだろうか?この署名を煽ったマスコミは、どう責任を取るのか?
あのリコール署名簿流出という事実を取り除いて、今の一瞬だけを取り上げる報道はアンフェアであり、不正だ。名古屋市民にちゃんとした事実を知らせる義務が、今度こそマスコミにはあるのではないだろうか。
・・・・ところで、リコールまでした「市長の公約」である「地域委員会」はどこへ行ってしまったのか?「高速道路の無料化」はどうなったのだろう?
いい加減、目を覚ますべきだ。
市民よりも先に*2まず、マスコミ従事者が。
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