市民のための名古屋市会を! Ver.3.0

一人の名古屋市民が「地域委員会制度」「減税日本」に対する疑問をまとめるサイトです。(since 2011/3/3)

市民の会なごやが本来リコールする相手は

4月10日の記事に対してご指摘をいただきました。
それに再反論いたしましょう。


ご投稿いただいた反論には大きく4つの論点があるようです。


1.「市民の会なごや」が何を問題としているか、当ブログは勘違いをしている。

 「即ち金額云々よりも今回の名古屋市会のやり方が民主主義のルールを無視した暴挙であることが問題」であり「市民に公聴会等の手段による説明もなく、いきなり約650万円も報酬を上
げることに対し疑問を感じた」ということですね。

つまり、政策の変更については、市民に対する説明責任が果たされるべきで、
それがなされていないのであれば選良として義務を果たしていない。そのような市議会は失職して解散すべきというご主張だと理解いたしました。


では、議会は説明責任を果たしていないか。
これについては議論があると思います。

確かに外形的には議会は説明責任を果たしておりません。

しかし、それは「議会はそうした機会を奪われている」ともいえる次第です。

議会が市民に、この報酬の議論について説明を果たせる機会は2つございます。

ひとつは「議会報告会」
もう一つは報酬審議会の諮問を受けた市民意見の公聴会などの機会です。

この両者について別項で検討を加えてみますが、私が解釈するに議会は市民に対して説明する機会を奪われておりますし、その機会を奪っている者は フェアな議論を進めているとは言えません。

また「選良は有権者に対して説明を果たす責任を持つ」という考え方については、当ブログも異論はございません。
これについては最後にまた述べてみようと思います。



2.「議会改革推進会議」と「議会改革推進協議会」の相違についてはご理解いただけましたでしょうか。

名古屋市:議会改革推進協議会(平成27年度設置)(市会情報)

名古屋市:議会改革推進会議について(市会情報)


(1)のもう一つの論点である「800万円は5年前に議会が全員一致で決めた金額である」との事ですが。

議会は自らの報酬について「幾らである」という主張はしておりません。

今回の「正常化」についても、議事録にも「幾ら」という金額を主張されている方はいません。


単に昭和31年に民主的で適正な手続きで定められた条例に準じた報酬額に戻すとしただけです。

また、5年前に全会一致で報酬を800万円にしたとの事ですが、

その際にも「なぜ報酬を半減するのか」「なぜ800万円なのか」について理解していた市議はいません。
減税日本の市議も含めて、800万円である理由を説明できるという人がいるのであれば、連れてきていただきたい)

 http://d.hatena.ne.jp/ichi-nagoyajin/20150320

ただ、5年前は「3大公約の実現」と言われて議会解散リコールが成立する中で、その3大公約の一つである「議員報酬半減 800万円」を求める 市民の声、マスコミの意見が大きかった。それを受けて「市民の方々がそこまでおっしゃるなら、一度800万円にしてみましょう。おっしゃるように 何か良いことがあるのかもしれない。自分たちは理解できませんが、市民のおっしゃることに従います」という意味で、全会一致で800万円になった わけです。

議員の中には「自分は報酬の為に議員をやっているのではない、故郷である名古屋のためを思って議員をやっているのだ、これ以上お金目当てで議員 を続けているなどと思われたくない、報酬の議論などしたくない」という方もいらっしゃいました。


しかし、先にも述べたように800万円にはなんら根拠はありません。(報酬審議会も根拠がないと意見を述べておられます)その為に、「報酬半減 800万円」を定めた条例には「当分の間」という文言が加えられています。
(それも2か所も)

また「市民による成案を得るまでの当分の間」という付帯決議も付けられているのです。

さて、その「市民による成案」ですが、市民に漠然と「市会議員の報酬は幾らが良いですか」という聞き方は現実的ではありません。そのため、一般 的な地方自治の仕組みでは、議会と行政、それぞれから距離をもった第三者委員会である「特別職報酬等審議会」が設置され、その審議会で報酬額を答 申します。その答申について、市民の意見を募るという順序となっています。



前回の条例改正で、議会は全会一致で報酬を半減、800万円に定めましたが、成案を求める議論が始まると思っていました。ところが、河村市長は 報酬審議会に諮問を行いませんでした。河村市長は自身の主張である、800万円での諮問を3回行っていますが、報酬審議会によるフリーな審議は実 施していません。

報酬審議会におけるフェアな議論を怠っているのは河村市長です。

また、議会内で議員報酬(と、議席配分)について議論する場を設けて、議員間で議論を行う予定でした。

それが「議会改革推進会議」ですが、そこでは実りある議論が行われないまま4年の任期が過ぎてしまったのです。

議員報酬半減800万円については誰もその論理的根拠を提示できていません。


諸外国や他の自治体との比較においても、逆に名古屋の半減が異様に映るだけで、納得のいくデータは提示されていません。(パリ市の市会議員の例 やロサンゼルスの例が引かれますが、そうした発言は事実を一部切り取っただけの詭弁でしかありませんでした、パリ市の議員には厚い厚生費が別途支 給されておりますし、そもそも議会日数が少ない(地方自治の制度が日本とフランスの間で異なっているだけ)ですし、ロサンゼルスの例では、議員報 酬よりも、議員の事務所を含めた活動費についてはロサンゼルスのほうが過大です。つまり、制度の相違という以外にない)

もしも、議員報酬を半減することによる6億円が貴重ではないかというのであるなら、その議論をもう一歩進めて議員などゼロにしてもう6億円浮か せばいいではないかと反論いたしましょう。

名古屋の市会議員は無報酬で適当な誰か、どこかの町内会長が務めることにでもすれば良いのではないですか?

しかし、それが如何に非現実的か分る筈です。

とすると、こうした全廃は非現実的で、半減は非現実的ではないのでしょうか?

やはりどこまでいっても、「適正な市議報酬」など、論理的に導けるものではありません。

では、どうすべきか。

三者委員会など、公平公正な立場で値を求め、それに対して民主的に市民に諮って定められるべきではないでしょうか。

昭和31年に定められた現在の条例(議員報酬)は、そのように定められていました。

半減、800万円はこのような民主的なルールを踏んでいません。(報酬審議会は3回の諮問で否定しています)

どちらが、より民主的な仕組みの中で定められたか、明白ではないのでしょうか。


河村市長は800万円の市議報酬について、「市議報酬が市民並の800万円になれば、市民がこぞって市議会に参画する」と主張していましたが、 昨年の市議会選挙において、候補者が増えたという傾向はみられませんでした。

このように河村市長が主張した効果も見られなかったことから、半減を止めようとするのは、私は理解できます。

そして、議論を怠ってきたのは河村市長であり、減税日本であることは厳然たる事実です。


3.「市民に対する議会報告会を議員が開催し、費用は出席される議員各自の政務活動費から支出すれば、何の問題もないと思いますが。市長が予算を 認めない云々は少々お門違いに思いますが、いかがでしょうか。」

議会報告会を、市が、市長が予算付けしないのであれば、議会や議員が政務活動費や私費を持ち寄って議会報告会を開催すればよいのではないか。と いう議論は、この議員報酬と同様に、5年の間続いている議論です。

今に至るもこの主張をされる方がいますが、そうした主張は違法行為を行えと言っているに等しい。

いかに日本の立憲主義法治主義が毀損しているのかという一例でしょう。
(まるで、県が設置した市民活動の為の無料会議室を、政治利用するようなけじめのない態度です)

理由はこうです。

 3−1.名古屋市議会基本条例に定められた議会報告会は、議会が開くこととなっている。(基本条例4条4項)
 3−2.では、議会とは誰が設置するのか。
 「地方公共団体には、法律に定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。」となっている。
 これは憲法93条の規定です。

つまり、憲法と基本条例を続けて読むと「地方公共団体名古屋市)は議会を設置し、その議会が議会報告会を開催する」となっています。

また、市が本来開催すべき議会報告会の費用を議員が負担すると、それは議員による寄付行為にあたり、公職選挙法に抵触する恐れがあります。(法 199条)

さらに、市が主催する議会報告会であれば、市職員の臨席を求め、説明を受けることもできますが、議員主催の会合に市の職員が参加するには制約が あります。

そもそも、名古屋市議会基本条例というのは、河村市長の時に発布され、その主体は市長である河村市長なのです。なぜ、河村市長がこれほど議会報告会を開催したがらないのか、議会の現状を市民に説明する機会を嫌がるのか、私には理解できません。

 http://d.hatena.ne.jp/ichi-nagoyajin/20110514/1324887348

4.「私の理解では、市長が諮問しても審議会の方が結論を出せず、政治信条とかなんとか何か訳の分からない理由で、回答を断っていると聞いていま すが、いかがでしょう。貴方が追求すべきは「報酬審議会」のメンバーたちではないでしょうか?」

審議会は行政と議会からお互いに距離をとることとなっていますが、委員の任命権は市長にあります。

また、審議会はそれほど訳の分からないことを言ってはいません。

訳の分からないことを言っているのは、フリーハンドで議員報酬を審議させず、800万円という市長案だけを諮問する河村市長です。河村市長の諮問の仕方が「訳が分からない」ので、答申も「政治信条」という訳の分からないものになっているのではないですか。


「私の考えでは、市会と国会のシステムの違いから、議院の役割を明確にし、諸外国の例も参考に、報酬審議会の見解を出すべきと考えますが、いか がでしょうか」

諸外国の例は有効ではありません。
諸外国とは文化や政治、制度的な相違も大きいことから、有効な比較は困難です。

それでも梅村麻美子さんが詳細な検討をされていますのでそちらをご参照ください。

 政令指定都市 名古屋市における 市議会ボランティア化がもたらすもの 名古屋大学法学部 研究生 梅村麻美子

結果として、諸外国など参考にしなくても、同じような人口、同じような事務量である日本国内の、政令指定都市の例が最も比較しやすいと思われます。

そうすると、半減、800万円であった名古屋が如何に異常か再認識できると思います。


河村市長は自身の800万円という額にこだわらずに、報酬審議会に正常な諮問を指示して、市民による成案を得る努力をすべきだと思うのですが、 いかがでしょうか。

今回、正常化に反対している共産党も、一刻も早く市民による成案を得るべきと主張していますし、
正常化(引き上げ)に賛成した公明党は、成案を得るまでは報酬の増額分は受け取らないとしています。

河村市長は自身の主張に自信があるのであれば、姑息なことをせずに堂々と報酬審議会の議論に委ねればよいではないですか。



さて、最初に戻りましょう。
今回、「市民の会なごや」の方々は「政策の変更については、市民に対する説明責任が果たされるべきで、それがなされていないのであれば選良とし て義務を果たしていない。そのような市議会は失職して解散すべき」として、議会リコールを行おうとされているのですね。

リコールと言えば、6年前のリコールを思い出します。


あのリコールで訴えられたのは、いわゆる河村市長の3大公約であり、この3大公約の実現を阻む議会は解散せよとしうものであった筈です。

この3大公約とはなんでしたかね?

 1.市民税減税10%
 2.地域委員会
 3.議員報酬

でした。

この内、市民税減税は10%に至らず、5%のままです。

いつの間にか河村市長は市民税減税5%が公約であるかのように、宣伝車の看板も張り替えています。

この10%から5%への変更は、重大な政策の転換ではないかと思うのですが、この転換について、河村市長が市民に意見を求めたという事実はあり ません。河村市長は市民に説明責任を果たさないまま、減税政策を中途半端なまま5%で留めております。こうした態度には「市民の会なごや」の皆様 はどのように思われますでしょうか?

また、地域委員会については、名古屋市当局内の「地域委員会準備室」はすでに解散しています。

 http://www.city.nagoya.jp/somu/cmsfiles/contents/0000010/10035/27soshikikaisei.pdf

河村市長が「民主主義のつくしん坊」とまでいった地域委員会は市民も知らぬまま、方向転換がなされているようです。(私も、明確な説明を聞いて おりませんので、どうなっているのかわかりません)

この政策転換についても河村市長は市民意見を募ろうとはしていないのではないでしょうか?

地域員会については全部、減税について半分、公約を転換しているとすると、あのリコールまで行って求めた3大公約は半分、方向転換しているようですが、河村市長は市民に説明責任を果たしているのでしょうか?

もし、「政策の変更については、市民に対する説明責任が果たされるべきで、それがなされていないのであれば選良として義務を果たしていない」と してリコールを行うべきであるとしたなら、

その対象は議会なのでしょうか?

市長なのでしょうか?


追記:議院内閣制で、首相自らの地位は、議会を構成する議員にあるという前提に立つ、日本の首相に議会解散権があるのは、すでに指摘されているように、首相の権限が思うより小さいからです。

元代表制をとる日本の地方自治体における首長の権限は驚くほど強大です。(阿久根市における竹原市長の例が好例でしょう)
地方議会に強大な権限があり、首長にも地方議会に対する解散権が必要となるなどとは、非常に特殊な意見であると言わざるを得ません。