市民のための名古屋市会を! Ver.3.0

一人の名古屋市民が「地域委員会制度」「減税日本」に対する疑問をまとめるサイトです。(since 2011/3/3)

■■のジレンマ

 6月23日午後8時23分、倉木主任刑事は部下たちの報告書を流し読みしながら時間を潰していた。内線電話が鳴り山本巡査がパソコンを見ながら受話器を取った。一言二言やり取りすると電話を切り、椅子から腰を上げた。何気なくその様子を眺めていた倉木に意味ありげに目で合図を送り、廊下に出ていった。
 やがて本部の柴田警部が山本を引き連れて倉木の元にやってきた。
 「倉木さん、Tさんが来ました、お願いします」
 階級は柴田の方が上だが年かさの倉木には敬語を使う。警察官というよりはどこかの一流商社マンといった風だ。
 「承知しました」報告書のつづりを書棚に戻して、湯飲みに少々残ったお茶で口を湿らすと倉木は上着を羽織った。ありがたい事にサマービズが定着してネクタイはしていない。

 G県のM市に全国でも最年少のF市長が誕生したのは昨年の事だ。
 先代の市長が病気により引退したことを受けて市議から転身して市長となった。若く見栄えも良いため「イケメン市長」などと全国的な話題にもなった。

 それとは別に今年の春になって、経営コンサルタントのNが「詐欺罪」で捕まった。公的な信用保証制度を利用して銀行などから数億円の融資を受けていたのだが、その際地方自治体などから仕事を受注したと嘘の書類などを作って騙していた。わざわざ団体の印鑑まで作っていた。

 このN社長を取り調べるうちにこの人物があちこちの地方自治体、特に地方議員との親交がある事が判ってきた。そして、その中の何人かに「現金を渡した」と供述し始めたのである。

 倉木からしてみればこのN社長は「嘘つき」だから「詐欺師」になってしまったのであって、その「嘘つき」の供述を鵜呑みにするような捜査は時間の無駄だとも思った。けれども、なんと驚く事にお隣のG県と倉木の所属するA県の両県警が「合同捜査本部」を立てると言いだしてしまった。

 大丈夫だろうかと危惧していたところ、「合同捜査本部」の悪い面が早速出た。

 このN社長が金を渡したと供述している政治家の中でも最もマスコミ受けしそうなこの「最年少F市長」「イケメン市長」への贈賄がネタ割れした。

 一報が出て以来、「イケメン市長」はマスコミに囲まれ、本人もインターネットで反論をするなどちょっとした騒ぎが起きてしまった。しかしちょうど同じ時期に、東京都議会で「ヤジ事件」というネタが起きて、雑誌の記者などが乗り込んでこなかっただけでも幸運だった。


 「サンズイ」と呼ばれる「汚職事件」には構成要件が二つある。

 一つは金銭授受などの利益供与が明白である事。
 もう一つは対象者が職務権限を持っている事だ。

 職務権限については「隠然たる実力者」というケースもあり、現在では比較的緩く適応できる。

 何よりこの「最年少F市長」については若いだけあって「敵」も多い。M市の中からどんどん情報が出てくる。

 起訴後のM市の対応を見ても、内心喜んでいるのではないか?
 倉木はそう思えた。

 最年少市長の「職務権限」については問題は無い。
 確かにこのN社長の要求するような設備を、不要不急であるにも関わらず市の施設に設置している。

 しかし倉木はここでも少々疑問に思う。確かにこの設備は必須ではない。また急ぐ必要もない。けれども設置する事によってM市の市民にとってはメリットがあるかもしれない。

 また、設置費用もタダなのだ。この設備をM市が設置したという事実を持って、このN社長は各地の地方自治体に営業をかけるつもりだったのだろう。M市に対する設置費用はタダであった。
 となると、いよいよこの「最年少市長」の行動は問題が無いようにも思えてくる。

 問題は「金銭授受などの事実」が明白であるかだ。

 この授受について、警察には今のところこのN社長の供述しか頼るものがない。

 「直接紙袋に入れて渡した」「一回目が10万円、二回目は20万円だった」

 都合30万円で二つの県警にまたがる「合同捜査本部」が設置されたのだ。
 倉木の足取りが重くなる。


 経営コンサルタントの供述が頼り、詐欺師の供述、つまり嘘つきの供述が頼りなのだ。
 思わず笑いそうになる。


 取調室に入るとT氏、その男は椅子に腰かけたまま軽く会釈を返した。
 「お忙しいところをどうも申し訳ありません」倉木は慇懃に頭を下げて席に着いた。

 取調室といっても特別なものではない。窓に鉄格子が嵌っている事を除けば、たぶんどこの建物にもあるような部屋だ。ただ若干狭い、どういう都合かこの取調室は壁が斜めに仕切られて奥にいくにしたがって少々広くなっている。
 T氏と倉木は、どこにでもあるような事務机に対面して座る形になる。T氏が奥で倉木がドアのある側だ。机の引き出しなどは倉木の側に向いているが開けても中には何も入っていない。灰皿も置かれていないし電気スタンドもない。
 入口の横に小さな机が置かれ、山本巡査が二人に背を向け、入口を向く形で書記を務める。

 さて「彼」の様子。

 ひげを蓄えて、身なりは会社役員か経営者。
 押し出しも効きそうだ。

 しかしメガネの奥の視線は落ち着きがない。

 倉木は思った「類は友を呼ぶ」


 「色々とご活躍のようですね」倉木がゆっくりと口火を切ると。
 T氏は「今日はどのようなご用件で呼ばれたのでしょうね」と油断なく探りを入れてきた。

 倉木はF市長の汚職事件について、すでに新聞に載った程度の事を述べて、このN社長やF市長との親交の具合や、ご両人についてどういった印象をお持ちか、参考にお伺いしたいと水を向けた。

 最初は緊張し、口も重かったT氏だが、だんだんと一方的に話し始めた。

 T氏は今、名古屋市の市会議員のスタッフとして働いている。来年に選挙を控えて、後援会にチラシなどを配布して忙しい。このチラシの文面なども自分が書いている。自分は政治家のスタッフと言ってもこういった政策立案や提案をする立場で、いわゆる使い走りの秘書ではない。日本も地方議員のスタッフに公費を当てないと、議員の政策立案能力は育たない。
 このN社長は自分が知り合って議員に紹介したのではない、議員が元々住んでいた街で市議会議員に立候補して落選した頃からの知り合いだそうで、その伝手で知り合った。今回、詐欺という事で捕まってしまったが、扱っていた設備そのものはとても良いものだと思っている。
 N社長とF市長の仲を取り持ったのは確かに私だ。この市長が、まだ市議の時代、名古屋で行われた政策勉強会に参加して居てそこでN社長を紹介した。それ以来勉強会の後の食事会や懇親会で幾度か食事を共にした。当然、そういった代金は割り勘だった。

 N社長はこうした会合に参加して来る地方議員誰にでも設備の紹介をし、パンフレットを配り売り込みに励んでいた。
 この市長、当時は市議だったが、も「大変良い設備ですよね」と興味を示していた。


 倉木はさも興味を持っているように時折大きく相槌を打ってほめたたえた「そうなんですか、そりゃTさんが居なければ議員活動も成立しません」「そうですよね、確かに私もこの設備は良いものだと思うんですよ。何も焦ってヒトを騙すような事しなくても良かったでしょうにね」

 やがてこのF市長が市長選に出ようかと相談を持ち掛けたという話題になった。

 倉木は「その時、このN社長はF候補に何かお渡しになりませんでしたか」

 Tは最初、特に気が付かなかった、覚えていないと語っていたが、倉木は執拗に繰り返しこの時の模様を聞き続けた・・・・。




 「では読み上げますのでご確認ください。『自分は昭和○○年◇月■日生まれのTである。自分は平成25年○月×日に居酒屋△△においてN社長さんとF市長さんと三人で会食を行いました。この席でF市長さんが市長選挙に出馬する旨を告げると、N社長さんはそれでは何かと物要りでしょうと封筒を渡しました。食事の後にN社長さんにあの封筒の中身は何だったのかと尋ねると、現金20万円だったと伝えられました。』以上相違ありませんね」書記を務める山本巡査がゆっくり読み上げ、Tにペンを渡した。Tは調書の末尾に名前を書き、拇印を押すと紙で指についたインクをぬぐった。

 額には油が浮き上がり、鈍く光っている。

 目は心なしか焦点が合っていない。

 倉木は表情のない顔でTを見ると、机に広げた「資料」を書類挟みに戻した。

 「では、ご苦労様でした。本日はお引き取り頂いて結構ですから」山本巡査が告げると、Tはゆっくりと立ち上がりかけた。足の筋に痛みが走ったのか途中で少しよろめく。

 倉木も立ち上がる。その顔には相変わらず表情がない。

 「その件は絶対、表に出ないんですよね」 Tが独り言のようにつぶやくが倉木は答えない。お引き取り下さいと言わんばかりに扉に左手を向ける。右手には書類挟み。

 Tは最後に書類挟みに視線を落として諦めるかのように取調室から出て行った。



 ◆◆ このドラマはフィクションであり、実在する人物、団体、事件等と一切の関係がございません。 ◆◆
 
追記(6月27日 午前10時):
 朝日新聞は中村孝道市議に直接インタビューをぶつけている。
 読売新聞の報道によるとN社長からT氏に400万円ほどの「工作資金」が渡っているようで。これでは主役はF市長ではなくてT氏ではないかという様相。

 いやはや、事実は小説よりも奇なり。



 さて、7月11日に名東区の元市議、冨田勝三さんが続けられている「市政シンポジウム」が開かれる。
 名東区、及び名古屋市会に議席を持っている各会派に声をかけて、自民党から共産党まで市議が一堂に会して対論を交わす見応え、聞きごたえのある会になっている。

 これも第8回という事で、各区で広く行われればとも思える。

 今回は中日新聞の市政記者クラブキャップである内田康記者も加わって、「河村市政の功罪」という題目で講演があるようだ。
 果たして「中日新聞記者」の目から見た「河村市政」は是なのでしょうか?非なのでしょうか?

   日付 : 7月11日(金曜日)
   時間 : 18:30(午後6時半)〜20:30(午後8時半)
   場所 : 名東区役所講堂

 参加費:100円 (どなたでも参加可能)



追記:
 先ほど市会本会議中継が見られる環境(パソコン)に戻ってきましたので、中継を見ようと思いましたら、 Google Chrome では中継の模様が再生できません。

 このページに飛ばされて
 http://www.interoperabilitybridges.com/wmp-extension-for-chrome

 それっきりという人も多いのではと思います。
 Chrome によって無効にされた拡張機能 - Chrome ウェブストア ヘルプ

 Google Chrome の ツール → 拡張機能 を確認すると
 いくつかの拡張機能が無効になっていました。

 なんと、私の場合カスペルスキーの保護機能まで無効にされていた。
 却って危険なんじゃないのか??

 今回必要なのは
 Windows Media Player Extension for HTML5 の筈です。
 これがグレーアウトして無効になっているのではと思います。

 そこで
 http://www.interoperabilitybridges.com/wmp-extension-for-chrome
 に飛んでもインストール/アップデートがかからない為に閲覧ができません。

 無理やりの対象法をメモ代わりに。
 ただ、この方法を試すのでしたら、あくまで自己責任で行ってください。

 まず、この「INTEROPERABILITY BRIDGES AND LABS CENTER」のガイドに沿ってファイルをダウンロードします。図の ”here” にリンクがあります。

 ”wmpChrome.crx” というファイルがダウンロードされます。この拡張子を .zip に変更して解凍します。(この意味が分からない人は止めておいた方が良いでしょう)


追記:解凍先のディレクトリ(フォルダ)は chrome が「握ったまま」になりますので、「拡張機能の読み込み」の前に邪魔にならない場所に展開するか、移動させてください。



 解凍先の “manifest.json” をエディターで開きます。


次のような記述があると思います。

―― 修正前 ――――――――――
"name" : "Windows Media Player Extension for HTML5",
"version" : "1.0",
"description" : "Enables video playback for MP4 and Media Player formats",
――――――――――――――――

 ここに  manifest_version の記載を加えます。

―― 修正後 ――――――――――
"name" : "Windows Media Player Extension for HTML5",
"version" : "1.0",
"manifest_version": 2,
"description" : "Enables video playback for MP4 and Media Player formats",
――――――――――――――――


 Google Chrome の ツール → 拡張機能 の画面で

 グレーアウトしている
 Windows Media Player Extension for HTML5 を削除します。


次に、
「パッケージ化されていない拡張機能を読み込む」をクリックして
解凍先のフォルダーを指定してみてください。

 これでとりあえず拡張機能としては無理やり登録できたようです。
 この  “manifest.json” の記載に気が付くまで時間がかかりました。

 インストールに失敗したのはこの記載のミス(というか、バージョンの違い)ではなく、 Google Chrome拡張機能に対する政策的変更のようです。



河村市政の裏表

河村市政の裏表