市民のための名古屋市会を! Ver.3.0

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隠ぺいバス 名古屋市交通局の「闇」 by CBC

 本日、CBCテレビで「隠ぺいバス 名古屋市交通局の『闇』」というドキュメントが放映された(午前10時25分より)

 昨年12月15日にも放送されていたようで、前回放送以降の事象を加えた再構成だったようである。
 報道の魂


 ドキュメントの骨子となる問題は主に次の3つ

1.平成23年に問題となった約2000件(約10年間)に及ぶ事故隠しの問題
 http://sp.mainichi.jp/opinion/news/20120427k0000m070135000c.html

2.平成25年に問題となった助役選考試験についての不正疑惑
 http://www.city.nagoya.jp/somu/page/0000055113.html
  http://www.city.nagoya.jp/somu/cmsfiles/contents/0000055/55113/20131225website_houkoku.pdf

3.本年に入ってから続発する運行ミスに対する中部運輸局の指導
 http://www.chunichi.co.jp/article/aichi/20140516/CK2014051602000052.html


 色々と話を聞いてみると、一筋縄ではいかない問題のようだ。*1

 私のような者が外野からヤイノヤイノと言ってみて、解決策など提案できるわけはないだろう。そこで、このドキュメントで浮かび上がった河村市長の問題。(つまり、ほとんど当ブログの関心事項部分)を2点と、外野席の独り言を少々述べてみたい。

 このドキュメントで河村市長の出番は3シーンだったと思う。最初は「事故隠し」についておおよそ次のように述べるシーン「無事故表彰制度があるんじゃないのかと指摘した。無事故表彰制度があると事故を隠すようになる」と「事故隠し」の原因が「無事故表彰制度」にあり、自分がそれをズバリと見破ったという様な構成になっていた。


 しかし、平成22年(2010年)にこの「無事故表彰制度」の賞金は2万円から20万円に引き上げられているのだ。

 つまり、河村市長は「無事故表彰制度」が「事故隠し」につながると承知しておきながら、その賞金を2万円から20万円に引き上げた事になるのではないのか?

 河村市長は市長として(交通局の責任者として)「事故隠し」を推奨しようとしたのか?


 次のシーンはCBCの記者が河村市長に対して交通局の問題について直接問いただす形のインタビューとなっていた。
 ここで河村市長は「独占だから」「企業局として守られている」とお得意の市場原理主義新自由主義的競争原理の導入を述べ「第二交通局でもできたらええけどね」と答えていた。

 この問題は根が深い。表面的に分割してみたり(そもそも経済合理性が無いけれど)単純に「第二交通局」を作るだけなら「問題が二倍になるだけ」だろう。
 そこで徒に生産性の追求をしてみれば、赤字路線の切り捨て、弱者切り捨てに繋がるだけだろうし、もっとも重要な安全を担保する事すら危うくなるだろう。

 このように河村市長は自ら金額を引き上げた「無事故表彰制度」の問題に対する自己反省が無く、交通局全般の問題についても問題意識が低いという以外にない。そもそも地元テレビであるCBCからこうした問題についてインタビューを受けているのだから、その責任者として謝罪の言葉があってしかるべきではないのだろうか?

 河村市長にとって市バスの問題は「他人事」のように感じられる。「交通局のえりゃ様がよろしくやってちょう」ぐらいに捉えているのではないのだろうか?


 この問題について色々な方に聞いてみた。
 「組合の存在が問題である」という方もいた。

 働いている人々にとって組合は職場環境の整備や労働条件の獲得として無くてはならないものだと私は思っている。佐高信労働組合を職場の「静脈」と表現したが、労働の現場、その末端からの声を拾い上げ、時には改善を行わなければ企業は疲弊し腐敗する。

 企業に組合は必ず必要な物だと思われる。しかし、この「助役選考試験」のように、その当の組合役員が楽な労働条件(兼任指導運転士)を得るために「助役選考試験」という制度を歪めていたのだとすれば、組合は職場の労働者の為のものではなく組合役員の物となっていたと言われてもしかたないだろう。
 これでは健全な労働環境を構築する事は困難だろう。(却って邪魔をしている)

 しかし、組合専従の制限を受けているために活動時間を得るために制度を利用した。
 というような話も耳にした。
 しかしそうだとするならばいわゆる「ヤミ専従」と同様のものであるのだろうか。

 一般的に「キャリアとノンキャリア」と言われるような職制の違いというものもあるようだ。市バス運転士として採用されると、本庁の業務に就くことは無いし営業所の所長にもならないらしい。( この資料 の5ページに「2 市バス運転士の職階制度」が掲げられており、「本庁助役」の記載があるが、伺った状況とは違うのだろうか?)

 現業職としての運転士とそれを管理する背広組(職制)。この間に決定的な溝ができてしまっているのではないだろうか?
 

 中部運輸局から指導を受ける事態となってしまったが、番組は最後に衝撃的な数字を提示して終わる。

 各地のバス事業者の「2013年度 運行ミス件数」だ。
 高知県交通が11件、川崎市営バスが13件、青森市営バスが18件などとなっている中、名古屋市営バスは659件。文字通りけた違いだ。河村市長はなんでも日本一が好きだからね。

 こういった運行ミスの中には、コースの間違いや時間前に出発してしまうというような緊張感の欠如としか思えない事例が含まれる。新聞などで報道もされたがつい最近では「ガス欠」で止まってしまったという事例もあった。

 安全工学などの領域では「ヒヤリ・ハット」という言葉がある。
 つまり「重大な災害や事故に至らなかったものの、一歩間違えれば重大な結果を招きかねなかった事例であり、現場でヒヤリとしたり、ハッとしたりという事例が幾つも発生していると、その内それが軽微な事故・災害に繋がり、重大な事態にもつながる」という言葉だ。(ハインリッヒの法則

 本庁に勤めている者も、現場でハンドルを握る者、または整備で油にまみれる者も含めて、一つの企業としてこの中部運輸局からの指導を受け止める事はできないものだろうか?*2

 市民は、利用者は、何の疑問も持たず、安心して、信頼しきってバスに乗っているのだろう。名古屋市営バスの職員は、すべての職員がその乗客の命を預かっている。

 どうか、そのプライドを持って指導を受け止めていただきたいものだと思う。



 お話を聞く中でどうしても書いてくれと言われていたことが一つある。
 市バス利用者の方へ。
 市バスは運行時刻に遅れる事はある。それは交通事情にもよるし、乗降客の安全を考えて運行時刻よりも安全運行を優先するように定められているからだ。運転士はなまけて遅れることは無い。(仕事をさっさと終わらせていいのであれば遅らせずに、安全など二の次で定時運行、早回りした方が楽ではないか)
 しかし、時刻を守らないとクレームを付けてくる乗客は多いらしい。
 確かに寒い冬の路上、または炎天下の夏にバスを待つのはご苦労であることは判るが、運行の遅延を運転士に苦情として投げつけるのは間違っている。(そして、運転士は現場ではこんな反論もできない、我慢しなければならない。それが職務だからだ)

 番組中興味深い方も出てきた。
 名東区の冨田かつぞう元市議だ。当ブログでも冨田元市議の活動はご紹介させて頂いており親しくもさせていただいている。名古屋市の企業局である水道局に勤められ、市議も20年にわたって続けられた。
 余計な一言であるが、これほど清廉潔白で真摯なヒトを私は見た事が無い。
 しかしこの冨田元市議も河村市長の主導した「リコール運動」によって失職したのである。「市議失格」と言われたのだ。減税日本ゴヤの市議は一度、己とこの自分たちが「市議失格」と言った冨田市議を比較してみるべきだ。恥ずかしくはないか?

 それでも来年の選挙に出る厚顔を見せるかね。
 あ、余分な事を。

 この冨田元市議は企業局の「一家意識」を指摘されていた。こういった一体感は良い回転をすればチームワークとなって力を発揮するが、いざ問題が起き、それを隠ぺいし始めると歯止めが効かなくなる。
 こういったジレンマに嵌り込んだ時には法に依るのが一番なのだろうが、それには勇気がいる。(個人がこうした蛮行を振るわなくてもすむように存在するのが組合や組織なんだろうけどね)

 最後に、冨田元市議が「これはカットされちゃったんだけどね」と打ち明け話をされたのでそれをリークしてしまう。
 「河村市長がよく『当局がネグレクト(怠業、市長の指示を聞かない)する』と言っているが、市の職員たちは『市長の思い付きに一々付き合っていられない』と言うんですよ。その内、市長そのものもネグレクトされるんじゃないですか。とカメラの前で言ってやった」と笑っておられた。



河村市政の裏表

河村市政の裏表



追記:6月3日

防止月間なのに 名古屋市バス止まらぬミス

 運行ミスや法令違反が相次いでいる名古屋市営バスで、ミス防止強化月間の初日の今月1日以降も行き先間違いなど計5件のミスがあったことがわかった。市交通局は行き先を間違えないようバス停で運転手に呼びかけるなど再発防止に取り組んでいるものの、初日のミスは交通局長の訓示後に発生。交通局は事態を重くみて運転手の研修強化について検討する考えだ。


 「これは危機的な状況だ」。市交通局の三芳研二局長は1日午前5時頃、稲西営業所(中村区)で10人ほどの運行管理者らを前に訓示した。その後、区内のバス停などで「経由確認」などのプレートを掲げ、運転手にミス根絶を訴えた。

 しかしこの日、同営業所と如意営業所(北区)の運転手が本来の行き先とは違う方向幕を表示、計6人が乗り損ねるなどした。中川営業所(中川区)の運転手は朝の勤務を終えた後に仮眠していて寝過ごし、出発が約10分遅れた。「目覚まし時計の音が小さかった」と説明しているという。

 さらに2日には2件のミスが発生。中川営業所の運転手が回送先を間違えたため出発が12分遅れる影響が出たほか、猪高営業所(名東区)で仮眠した運転手が寝坊し、運行に遅れが生じたという。

 市バスでは4月以降、バスレーンの逆走など重大なトラブルが続発したため、国土交通省中部運輸局は5月、安全確保と法令順守の徹底を文書で指導した。これを受け、交通局は6月をミス防止強化月間に設定、三芳局長が11営業所を全て巡視するなどして再発防止を徹底することにした。

 交通局が本格的にミス防止に乗り出したのは2011年の不祥事がきっかけだ。この年、市バスの事故を警察へ届けずに内部処理する「事故隠し」が発覚、翌年には運転手らが道交法違反(事故不申告)容疑などで書類送検された。以降、全車両にドライブレコーダーを搭載し、全てのトラブル件数を公表するようにした。

 しかし、13年度には過失と認められる事故が730件、路線やダイヤを間違えるなどのミスも662件あった。局長へのホットラインには職員から「ダイヤが以前よりきつくなった」などの声も寄せられているというが、交通局幹部は「指導、教育が浸透していない結果」と陳謝した。

 交通局は以前から年2件以上の事故を起こした運転手に対し、市内の研修所で運転技術を指導している。今年度からはこれに加え、重傷事故を起こした運転手らを滋賀県の民間教育機関へ派遣、技術指導を受ける新たな制度も設けた。6、7月に計20人が20日間の研修を受ける予定だ。

 ただ、事故に至らないミスの場合、営業所上司がドライブレコーダーの映像を見せながら指導するにとどまるのが現状だ。同局は再教育の不十分さがミス多発を招いているとみており、秋をめどに再発防止策をまとめるとともに、外部専門家の意見を聞きながら研修制度についても検証する。

 同局の宗田和彦自動車運転課長は「行き先確認など基本的なことをやっていないからミスが起きる。徹底的に改善する」としている。これに対し、河村たかし市長は「外部から監視する仕組みが必要だ。民間ほどの競争意識もなく、緊張感が足りない」と批判している。
(2014年06月03日 YOMIURI ONLINE )

http://www.yomiuri.co.jp/chubu/news/20140603-OYTNT50085.html?from=tw

*1:07年の緑区の事例はとてもではないけれど判断ができない

*2:トップが率先して自分の事として受け止めるべきなんですがね