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「嘱託員不正採用問題に係る最終報告書」の2つの欠落

 7月22日に「嘱託員不正採用問題に係る最終報告書」なるものが、河村市長が依頼した専門調査委員から提出された。その報道関係資料を名古屋市オンブズマンが公表してくれている。
 "「嘱託員不正採用問題に係る最終報告書」@名古屋市民オンブズマン"
 (その後、市当局の公式ページにも掲載された)
 http://www.city.nagoya.jp/somu/page/0000049722.html

 この報告書には重要な欠落が2点ある。

 その一点目。

 この問題は去年の12月に表ざたになり、年明けから専門調査委員会が組織され、4月初旬には中間報告が提示されている。

 その後、5月に入り交通局の助役選考試験で「異常な傾向」があることが判明し、市議会でも議題となった。

 名古屋市バスの営業所で運行管理などを担当する助役の選考試験を巡り、労働組合役員の運転手の合格率が一般の運転手より突出して高いことが27日、市交通局への取材で分かった。

http://mainichi.jp/select/news/20130528k0000m040052000c.html

 名古屋市会本会議中継

 これらを受けて河村市長はこの専門調査委員会にこの問題についての調査も依頼した。

(略)
 このことにつきましては、嘱託職員の不正採用問題を調べている弁護士チームに資料を提供し、調査を依頼したところです。
(略)
 最終報告というと、やっぱり再発防止策も出てきますので、それですけれどね。
(略)

名古屋市:平成25年6月27日 市長定例記者会見(市長の部屋)

 「嘱託員不正採用問題」についての専門調査委員に対して、問題の事実、そしてその発生原因、ならびに再発防止策の提案を依頼していたはずだ。
 そこに「交通局助役選考試験」における「異常な傾向」を受けて、こちらに関しても「再発防止策」までの依頼をした事になっている。

 この最終報告書は58ページ(および、資料10ページ)にわたる本編と、6ページの要約版がある。
 この中に「交通局助役選考試験」に対する「再発防止策」はない。
 私は最初、読み落としていて、「交通局助役選考試験」に対する記述が何もないと思っていた。
 
 本編の39、40ページにわたってこの問題が取り上げられているが、その内容は報道されたもの、さらに本会議で浅井市議(自民党)が質問した内容を出ていない。
 さらに結語は。

 特定の者が有利に取り扱われているのではないかとの疑念を抱かせる。

 という、まことに当事者性に欠ける言葉で、この程度のことであれば新聞を読んだ社会人なら誰だって言える。

 結果としてこの「交通局助役選考試験」においては不正が行われたのか?はたまた、労働組合関係者が「面接についての講習会」でも開催し「受験前徹底学習」でも行った結果面接試験の結果に差がついたのか。または、そのような場合でも、面接とペーパーテストの得点配分は適正であるのか。
 更に、面接における恣意性が疑われるのであれば、それに代わる論述審査を導入するなどの対応を取ることができないのか?

 少なくとも「不正の事実」も摘出してなど居ないし、問題点の原因も突き止められていない。そしてそれに対する再発防止策も何も盛り込まれていない。

 専門調査委員が依頼事項を遂行していないのであれば、その謝礼は払われるべきではない。名古屋市議会は、この専門調査委員に対する支出を承認できるのだろうか。

 当たり前ですけれど、市民に信頼される市役所って、口先ではいかんのですわ。ということを徹底的にやりたいと思っとるところです。

名古屋市:平成25年6月27日 市長定例記者会見(市長の部屋)

 河村市長の6月27日市長会見におけるこの発言は何であったのか。
 今更ながら、口先だけ。格好だけの河村市長の怠惰な姿勢には呆れ返る。

追記:
 追加事例として情報提供をいただいた。
 この問題が発生してから、河村市長が交通局の営業所等に出向いて、この問題やその他の問題(地下鉄駅では多額盗難事件も起きている)について、綱紀粛正等の指導や現場視察を行ったか確認したところ、その事実は把握できなかった。
 これは完全な情報とは言いがたいが、今のところ裏をとった範囲では河村市長は一切、現場に足を踏み入れていない。

 もう一度言おう。
 今更ながら、口先だけ。格好だけの河村市長の怠惰な姿勢には呆れ返る。


 さて、「最終報告書」のもう一点の欠落。そして最大の問題を指摘させていただく。

 この「最終報告書」の37ページに次のような記載がある。

 当該職員3名は最終的には刑事法違反については不起訴となったものの,平成25年6月18日付で,懲戒処分(懲戒解雇2名,停職6ヶ月1名)を受けることとなった。

http://www.city.nagoya.jp/somu/cmsfiles/contents/0000049/49722/saisyuhoukoku.pdf

 ちなみにこの「最終報告書」の発行日付は7月22日となっている。
 7月22日まで「最終報告書」は存在せず、当該職員3名の不正事実は最終的に確定していなかったのではないのか?
 もちろん、この「最終報告書」は法的な拘束力を持つものではない。職員の人事権は市長にあるのであって、その判断は市長に委ねられているのは間違いがない。

 しかし、では、6月18日に、当該職員3名を処分した「懲戒処分」の事実関係は如何な物だったのか?

 この最終報告書を読んでも甲、乙の両名に関しては関係者間の証言だけしか事実を構成できる「証拠」が無い。更に、違法行為の起点とも目されているA議員に関しては証言も得られておらず、甲の証言も直接的な指示とは言いがたい。

 (もう一つ推理小説的に論理的齟齬を指摘するならば、A議員はBとCの「口利き」を依頼したとされる。BもCも結果として職を得られたわけだが、BはA議員に献金の事実が有るが、Cについては献金の事実は無い。これは献金と「口利き」の不可分性を棄却させる事実ではないのか?

 つまり、BからA議員への献金が、「口利き」の不正を立証するのではなく、CからA議員への献金が無いことが、「口利き」の不正立件に対して信憑性を失わせる。
 A議員はB,Cが顔見知りであることから、軽く甲に対して「(もし採用されたら)仲良くしてやってくれ」程度の挨拶をしたとは解せ無いか?

 これはA議員の弁護ではない。この「最終報告書」がA議員と甲の間のやり取りについて、「口利き」であるとあまりに決め付けているので、その予見の脆弱性を指摘したいのである。)

 私としてこの事案で一番知りたいのは次の点である。
 検察は当該職員3名を不起訴にした。しかし名古屋市は甲、乙に関して「懲戒解雇」という結論を出すに至った。丙については改ざんした書類が物証として残っている。しかし、甲と乙の違法事実を構成するのは、証言、それも当事者の一方だけの証言だけなのである。

 更に伺いたい。

 この専門調査委員会の方々は弁護士であると聞いているが。

 この「最終報告書」は言うなれば、名古屋市当局内における最終判断と考えていいだろう。(専門調査委員の性格からそういうのではなく、最終権限者の市長がこの「最終報告」の記載事実を事実と認定しているという事からこう主張する)

 言うなれば、判決の理由のようなものだ。
 判決における事実認定が7月22日に提示されていて、主文である判断が、その以前の6月18日に言い渡されるというような事があるのだろうか?

 6月18日の判断に至る事実関係はいったいどこに記載されているのか?

 当該職員3名はどのような違法事実が認定されたから、6月18日の懲戒処分に付されたのか。

 それが記載されていない。


 このままでは名古屋市は理由も無く、または曖昧なまま職員を懲戒解雇したことになるのではないのか?

 こんな無茶苦茶が許されていいのか?

 世に言う「冤罪は証言だけを証拠とした裁判において顕著に発生する」
 自白証言だけを証拠として判断を下しても良かったのか?
 さらに、その判断を下したタイミングは適正だったのか?

 この内容とタイミングは名古屋の行政としてあまりに曖昧に過ぎなくは無いだろうか?


追記:
 名古屋市オンブズマン連絡会事務局(というか、中の人)の意見として。

①どうしてH16委員会提言が骨抜き制度になったのかの反省と追及
②1件も記録がなかった事に対し前現市長の政治的責任追及

特に、現市長河村たかし氏は2009年のマニフェストで次のように主張している。

企業からの依頼、議員の口利きなど外部から市職員への働きかけ行為について、議会外での行為も含め、厳格に文書化したうえで個人情報に留意して情報公開し、市長の責任において対応する。

https://twitter.com/ombudsman_jp/status/360034103678099456/photo/1

「と明記したにも関わらず、具体的な対策を取らずに市幹部を懲戒免職にしてしまった河村市長の責任は重大」としている。

というか、河村市長は2009年の自分のマニフェストを覚えているのだろうか?何パーセント実現したと言いましたっけ?