前回の文書でも述べたように、東京都知事選挙において「第三極」の新たな軸とみられていた「細川・小泉連合」は無残な敗北に終わった。
この結末はある意味当然の帰結であり、これを見てまだ「非自民、反自民の政治的中心軸」を「脱原発」に求めようとする姿は蒙昧に過ぎる。
「既得権益の打破」なるものもまやかしに過ぎない。
真の国民の困窮の元を考察せずに、現在の自民党政権に対して政治的対立軸を模索しようとするのは地図も持たずに戦いの場に赴くに等しい。
なぜ細川は宇都宮に敗れたのか。
そもそも自民党政権というものは55年体制がその性格を形造った。
図(クリックすると拡大表示します)に示したように、政官財の「鉄のトライアングル」と呼ばれていた自民党政権は、官僚優位であるがゆえに「大きな政府」を指向した。法人税率は60%であり、国民皆保険も実現していた。社会党や共産党、また朝日新聞などの大メディアによる批判も、より大きな政府を求めることとなり、官僚機構の肥大化に寄与する事となった。
そこに現れたのが「小泉・竹中改革」である。
大胆な政府の解体、再編を模索し法人税率も大胆に引き下げた。完全に「自由主義」「小さな政府」を目指していた。
また、それに対する民主党も脱官僚を掲げ、「小さな政府(新しい公共)」を掲げた。
小泉・竹中改革の後、自民党政権(麻生政権)によって絞りすぎた財政を拡大させようとする動きがあったが麻生政権の瓦解とともにその動きは封鎖され、民主党政権が悪戯に「小さな政府」財政の圧縮を行ったために、日本の経済は縮小均衡のデフレ不況に陥ってしまったのである。
一昨年の衆議院議員選挙において自民党・安倍政権は積極財政策を含む「三本の矢」を提唱、アベノミクスによるデフレ対策が国民の支持を得る。
しかし、安倍政権の模索する「第三の矢」は「新自由主義」的な政策であり、「小さな政府」指向の復活ともいえる。
そして、民主党は相も変らぬ官僚批判「小さな政府」を訴え、第三極もそのほとんどは「小さな政府」論から出ていない。つまり、国民に圧倒的に支持された「小泉・竹中改革」の呪縛から安倍政権も民主党も、そして第三極も脱しきれていないのである。
そして迎えたのが今回の東京都知事選挙であると言える。
自民党・安倍政権の推す舛添候補と細川候補の間に政策的な差異は無い。その為に持ち出された政策が「脱原発」である。
都知事選挙における有権者のマトリクスを描いてみよう。
左に「持てる者」たちがいる。彼らは「小さな政府」を指向するだろう。
右に「持たざる者」たちがいる。彼らは社会民主主義的な「再配分・分かち合い」の社会を指向している。
このマトリクスから見ると、舛添候補と細川候補の間に差が見えない。
ところがこうした候補の中で「再配分・分かち合い」の社会を訴えたものは、宇都宮候補という事になるだろう。
大阪維新の会や様々な「第三極」「非自民」の政党が新自由主義的な政策を打ち出しても自民党・安倍政権との差異、コントラストは生み出せない。
(逆に、経済状況を見ると自民党・安倍政権の第三の矢による法人税率の引き下げは企業投資を冷え込ませる要因ともなる。この辺りの事情は後日詳細に述べる)
ここで注目すべきは「持たざる者」、現在の政治から圧倒的に取りこぼされている層へのコミットであるべきだ。
実は半世紀も前に今日のこの状況と同じ位置に立ち、一党を樹立した人物がいる。
それが春日一幸だ。春日一幸の1969年の文書「民中連結成の趣意とその組織再建強化のために檄す」から一部を引く。
民中連(民社中小企業政治連合)結成の趣意とその組織再建強化のために檄す
春日一幸(1969年8月)われわれ中小企業者は雇傭、生産、流通、貿易等、国民経済のあらゆる領域にわたって大いなる役割を果たしている。
故に、われわれ中小企業者はわが国を支える主柱であり、わが国民を形成する同体である。
しかるに、われわれの社会的経済的地位は低く、その政治力は全くの弱体である。
これはわれわれ中小企業者が政治の実体について認識を誤ち、自らの尊厳について何ら自覚していないからに外ならない。現に大企業は自民党と結託する事によって、その政治権力をほしいままに活用して大いなる繁栄をつづけ、総評労働者はまた社会党と結盟し、相携えて政治力を潤達に駆使することによって、その生活と権利を高めている。
この時、中小企業者は依然として、愚かなる羊群のごとくに、政治の柵の外でひとり苦渋の鳴き声をあげているだけである。(略)
自民党が大企業の政治力であり、社会党が総評の政治力であることの実体を看破することなくしては、中小企業者の政治力を結集することはできないものと知るべきである。
われわれ三八〇万の中小企業者は、その双肩に二八〇〇万の従業員の生活を担っている。
さらにその家族を加うれば国民過半数の禍福について、その責任を負っているのである。
まことに自民党政権の長年にわたる大企業一辺倒の政策は、企業間階層間に大いなる所得格差の断層をつくり上げた。かくして官公吏や大企業の労働者の給与賃金に比べ中小企業従業員の給与賃金は今や、はなはだしく劣悪である。
これは中小企業の窮乏がやむなくして、そのまま従業員の給与賃金に反映していることに外ならない。このようにして、同じ政府の下に生きる同じ国民が、ある者には繁栄と幸福が与えられ、他の者は渋滞と貧困の中に捨て置かれているのである。
かかる現状に対処して、われ等中小企業者はもはや決然と自ら立ってその解決に挺身すべきである。
すなわち、国の主柱たる矜持と、主権者中の主権者たるの権威を天下に誇示して、不公正はこれを正し、矛盾なるはこれを調整するために堂々とその大業に取り組むべきである。(略)
われわれ中小企業者は多年、企業の経営に辛酸を嘗めることによってその才腕と力量を鍛えてきた。
しこうして、われ等企業者は、その同甘同苦を分つ従業員とその家族を加え、まさに国民主権者中の圧倒的多数者である。
今やわれ等中小企業者はこの卓抜せるわれ等が陣営の戦力を自覚して、その権威にふさわしい地位を自ら打ち立てるべきである。
すなわち、われわれの手に政権を樹立して、われ等の手で財政し、われ等の手で立法し、もって年来の諸懸案の解決を自分で達成するのである。
もとよりわれわれは、大企業に対しても、総評に対しても、さらに他の如何なる集団、階層に対しても、些かも、敵愾心を抱くものではない。
ただ、われわれは不均衡と不平等をなじり、われわれも全国民の等しき幸福を念願して、全国民とともに当然にして公正なる処遇を求めているだけである。
そのためには、われ等中小企業者は団結し、従業員と結束して、強大なる政治勢力を結集しなければならないのである。これが民社中小企業政治連合結成の趣意と目的である。(略)
「既得権益の打破」でも「官僚機構の解体」でもない。
「脱原発」や「反中国・反韓国」「反米」などでもない。
ましてや「減税」やら「大阪都構想」などでもない。それらまやかしの枝葉末節の議論など、数年で化けの皮が剥がれる。
春日は「同じ政府の下に生きる同じ国民が、ある者には繁栄と幸福が与えられ、他の者は渋滞と貧困の中に捨て置かれている」事はあるべきでないと断じている。
この「不公正はこれを正し、矛盾なるはこれを調整するために堂々とその大業に取り組むべき」と訴える。
春日の時代の中小企業者よりも、現在の非正規雇用者、非組合員労働者はもっと悲惨だ。
春日のこの言葉は今日においても支持を集めるに違いない。
今の時代に春日一幸在りせば、如何に訴えていたか。
その時代でもっとも割を食っている者に手を差し伸べてこその政治だ。
いまこそ「分かち合いの政治」を訴えるものが新たな政治勢力の軸となるだろう。
追記:
2027年に名古屋−東京間が開業予定のリニア中央新幹線で、岐阜県は17日、中津川市に設けられるリニア中間駅と近くの明知鉄道を結んで観光客用の蒸気機関車(SL)を走らせる構想を明らかにした。
県のリニア活用戦略によると、中間駅と隣接する美乃坂本駅からJR中央線で5キロ西の恵那駅までSLを運行。さらに恵那駅で明知鉄道に乗り入れ、終点の明智駅まで25キロのSLの旅を楽しめる。
SLはまだ明知鉄道でも走っていないが、明知鉄道を運営する第三セクターと沿線住民らが運行を目指して募金活動の開始を決めている。車両は、旧国鉄明知線で使われ、現在は恵那市内で保存されているC12形を使う予定。
県は今後、明知鉄道やJR東海と協議する。リニア開業までにSLの運行にこぎ着け、観光の目玉にしたい考えだ。
(中日新聞2014年2月18日 08時57分)
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2014021890085743.html
名古屋市内にSLを走らせる? 関西線で?
それともこれ?
あおなみ線の利用者増を模索して、JR東海は金城ふ頭に「リニア・鉄道館」を作ったのだろう。それをその始発駅である笹島に別の博物館を作れと言う人が居る。商売というものが判っていない。
名古屋は大阪、東京にも「勝てる都市」に成るべきだという幼稚な競争論を振り回す人が居る。名古屋がその周辺都市である中津川や恵那の売り物を奪う事が良い事なのだろうか?
明智鉄道一帯は良いところですよ。
昨今は自転車が大流行ですが、恵那まで輪行袋で自転車を運んで、明智までサイクリング。
Yahoo! JAPAN
または、鉄道で明智まで行って、恵那を目指してサイクリングとか。
(こちらのルートの方が若干くだりが多い)