住民票や印鑑証明などの取得は面倒で大変だった。
特に、独身で朝から帰社まで、定時の間、オフィスから出られないというような仕事をしていた頃は、わざわざ有給を取らなければ取得できないというような事もあった。
瀬戸線栄町駅の近くに名古屋市の栄サービスセンターができ、定時の間でも時間に融通を利かせられるような立場になった頃は、「ちょっと客先に打ち合わせに行って来る」ついでに窓口に寄って交付を受けたりしていた。
現在、名古屋では区役所・支所の窓口を日曜日に開いたり、地下鉄の駅などで証明書の取次ぎをするなど、市民の利便を図ろうという取り組みがなされている。
http://www.city.nagoya.jp/kurashi/category/24-3-15-0-0-0-0-0-0-0.html
http://www.city.nagoya.jp/shiminkeizai/page/0000011342.html
予算措置も無い中で、こういった施策を実施するのは大変だろうと思う。
現場では手書きの案内など、 学生の文化祭じみた対応をしている場面も見受ける。
こうした中、全国では「コンビニ交付」という方法が模索されている。
コンビニエンスストア等における証明書等の自動交付【コンビニ交付】 | ホーム
特に名古屋市内など、都市部においてはどこの街角にもあるコンビニエンス・ストアの店頭で、住民票や印鑑証明の交付を受けることができれば、こんなに便利な事は無く、これらの証明書に関連するビジネスも加速することができる。(それまで「正式手続きは住民票を頂いてから」「印鑑証明を準備していただいてから」と言っていたような事も、コンビニで交付を受けられるのなら、その日の内に進めてしまう事もできるだろう)
これの利用には「住基カードの取得」が必要となる。
つまり、この制度、システムを支えるのは、住基ネット、住民基本台帳システムなのだ。
実は、この「住基ネット」2009年の河村マニフェストでは二丁目一番地の3の政策である。(ちなみに「一丁目一番地の政策」は議員報酬ではなく減税である)
"河村たかしの名古屋政策 庶民革命・脱官僚”
https://drive.google.com/file/d/1GDwKAcj1ozVW-ZZbrcznUtL_SNG72IPf/view?usp=sharing
マニフェストにはこうある。
「3.プライバシーの保護
プライバシーを守る条例を作る。また、住基ネットについて有用性調査を実施する」
河村氏が市長になったばかりの頃、住基ネットを切断して調査すると騒いでいた事を思い出す方もいるかもしれない。
この調査、進捗しているのでしょうかね?*1
今回の市長改選における「新しい」マニフェストで、河村氏は「マニフェストの9割以上を*2着手」と豪語していました。
http://genzeinippon.com/manifesto201304explain.pdf
彼の基準でいうと、この二丁目一番地の3の政策である「住基ネット有用性調査」も「着手」されたと言う事なんだろうか?
私には「やりっぱなし」「言いっ放し」にしか見えない。
結果として名古屋市、または河村市長は「住基ネット」についてどのような結論を出しているのか。そして、現にこうやって有用性が目前に迫っている中で、まだ馬鹿な妄言に固執しようというのか。
河村氏は、「住基ネット」に対して、いわゆる「国民総背番号制」の頃のキャンペーンであった、「牛は10桁、人は11桁」という言葉を引いている。
当時の論争は良く心得ているつもりだし、今ここでそれを蒸し返すつもりは無い。(このブログで再録すれば、とても一ヶ月やそこらでは収まらないほどの内容になるだろう)
この問題や「街角における監視カメラ設置」は、社会的統制と個人の自由と言う文脈で重要な問題であるとは理解している。
しかし、「街角における監視カメラ」も統制への反発よりも、防犯に対する要請の方が高く、結果として各地においても住民自身の希望で設置される事例が多い。(今回実施されている矢田の地域委員会においても監視カメラが設置された)
現在取りざたされている「ビッグデータの活用」に関しても、どのように活用されるべきかの議論が進んでいる。*3
しかし、その議論は、すでに「国民総背番号制」の頃の「牛は10桁、人は11桁」というようなレベルをとうに超え、二周も三周も先に行っているのだ。河村氏の議論は低いレベルで足踏みしていると断じる以外にない。
それは揶揄でもなんでもない。こういった問題における現在のおおよその結論は、個人情報保護における「OECDの8原則」と、そこから導き出された「個人情報保護の5原則」といったものに集約されているだろう。
OECD8原則
1.収集制限の原則
2.データの正確性の原則
3.目的明確化の原則
4.利用制限の原則
5.安全保護の原則
6.公開の原則
7.個人参加の原則
8.責任の原則
個人情報保護の5原則
1.利用目的による制限
2.適正な方法による取得
3.内容の正確性の確保
4.安全保護措置の実施
5.透明性の確保
実は、河村氏、そして彼の政党である減税日本。または、河村事務所はこの原則に反している。そう、言うまでも無い「リコール署名簿流用、流出問題」である。
そして、つい最近でも天白の会合における受任者名簿の利用も、この原則から逸脱している。(というよりも、彼らの行動はこの5原則の<全て>を踏み外しているのだから凄い)
それで居て、名古屋市における「住基ネット有用性調査」だの「安全性」だのとは、いったいどの口が言うのか。
それでもまじめに取り組んでいるのならいい。「着手」したのだ、「着手」しただけなのだ。何も進んでいない。日本全国で進んでいる事柄が、名古屋の河村市政でだけ停滞しているのだ。
この「コンビニ交付」については、12月にファミリーマートが各店舗で展開するようだ。
そうすると、一宮市であるとか大垣市の住人が、名古屋内で働いている際に、お昼休みにコンビニの店頭で、ランチを買うついでに住民票の取得をすることができる。
そうすると同僚は聞くだろう「何をしているの?」すると答える
「住民票を取っているの」
「え?そんな事できるの?」
「住基カードが必要だけどね」
「いいなぁ、私も取っておこう」
そして、区役所の窓口で「住基カード」の交付を受けるだろう。
「これでコンビニの店頭で住民票の交付が受けられるんですよね」
聞かれれば、区役所の窓口職員は答える以外ない。
「名古屋市民はまだできません」
「え?なぜですか」あなたは戸惑うだろう。
さあ、なぜでしょう。
ちなみに2009年マニフェストには、二丁目8番地の政策として「8.365日住民サービス」という項目がある。内容は「市内の消防署・出張所等(65箇所)を窓口とし、住民票の写し・印鑑証明書の交付を24時間、365日行い、市民サービスの向上を図る」とある。
これは「着手」した?(しなくて良いんですけどね。実施していたら防災の軽視も甚だしい)
交通局がかぶった、駅における取次ぎは「取次ぎ」ですからね。
ちなみに、2013年マニフェストでは、この政策についてはノータッチ。「住民票」や「印鑑証明」といった文言すら含まれて居ない。
逆に「政策9 マイナンバー反対」と「国民総背番号制で税収増強は誤解。かえって途方もない、なりすまし被害、税金無駄遣いとなる」と書かれている。
「マイナンバー」に「国民総背番号制」
二周、三周遅れた議論は、居酒屋で適当にやっていただく分にはかまわない。
しかし、こうやって生活に密着し、現実の経済にかかわることに付いては、判らないのであれば、せめて口を噤んでおいていただきたい。
酔っ払いのたわごとは、
まじめに仕事をし、生活している人のじゃまになる。