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河村市長マニフェスト検証

11月20日に名東区において開催された、第12回市民討論会に参加させていただいた。

中心テーマを「河村市長のマニフェスト(公約)等の検証」と据え、来年の春に迎える市長改選を見据え、3期8年の河村市政の検証を行った。

基調討論を仰せつかったので、その時の資料等も含めてここに公開したい。

更にその後、扱った事項について、興味深い動きがあったので合わせてご報告する。
この事項を見れば、河村たかしという政治家が「マニフェスト(公約)」をどう考えているか、その一端が垣間見れる。さらに、その河村氏が代表を務める減税日本という政党の、マニフェスト(公約)に対する態度も明確になる。


河村市長は名古屋市長選挙に3回立候補している。
民主党衆議院議員から名古屋市長に転身した2009年。
リコール運動を受けた議会解散住民投票、愛知県知事選挙と同時に行ったトリプル選挙の2011年。
そして、正常な任期で言えば2期目に当たる2013年の改選である。

その度に「マニフェスト」を公表している。

この内、2011年のトリプル選挙におけるマニフェストは、大村愛知県知事候補との共同マニフェストとなっているため、その実現責任(または、不作為責任)は河村市長一人には求められない。当時騒がれた中京都構想はまったく沙汰止みとなってしまっているが、その責任は大村知事にあるのか、河村市長にあるのかわからない。*1

故に評価は2009年と2013年のマニフェストに絞って考慮対象とする。

2009年マニフェスト
河村たかしの名古屋政策」は河村たかしHP、および減税日本のHPでは見つからなかった。

私がバックアップした電子化ファイルはこちらにある。
https://drive.google.com/file/d/0B2ymo7zTws_oMzBrR2xFeGpNTjQ/view?usp=sharing

2013年マニフェストについてはこちらにある。
河村たかし 名古屋市長選マニフェスト(解説付き) | 減税日本

両者とも読んでみていただくとお分かりいただけるが、非常に判りにくい。
具体的な項目がないものが散見される。
また、本来マニフェストに必須の実現時期の表明がない。

それでも内容を精査してみると
2009年のマニフェストからはおよそ78項目の具体的政策が汲み取れる。
また、2013年のマニフェストには約120項目の具体的政策がある。(約、と表記したのはその具体性が不明瞭なためだ)


河村市長は2013年マニフェストの表紙に「公約守る 庶民の政治」と大書している。


また、その2ページには「マニフェストの9割以上を着手」と明言している。
2013年のマニフェストにおける表明であることから、2009年のマニフェストについて、その「9割以上を着手」したということなのだろう。


では、マニフェストの実現度合いはいかがなものなのだろうか?


プロの職業人は「着手」では代金を請求できない。結果が実現できて初めて責任を持った職業人と言える。*2



2009年のマニフェストについては名古屋市会平成24年9月定例会において取り上げられている。


先に上げた具体的な78項目に関して名古屋市の当局に問い合わせ、その実現可否について回答を得ている。

それがこの表で、78項目に対して担当局が「実施」と回答した項目は59項目(75.6%)となる。

つまり、河村市長は2013年マニフェストに「9割以上を着手」と明言しているが、実施したと当局が回答できるものは8割弱に過ぎないということになる。

さらに、この当局の回答を精査した。

すべてについてはこちらに電子ファイルがある。
https://drive.google.com/file/d/0B2ymo7zTws_oSW1fRU9nMW1hQ00/view?usp=sharing

一例を上げると、


東北の震災を受けて、市の消防局に「防災監」を配置し、警察、自衛隊との人事交流を積極的に行うとしている。

実際に、消防局には「消防監」という役職が設置された。しかし、それは単に名古屋市消防局の内部的なポストの改称に過ぎず、警察や自衛隊との人事交流は実現していない。この政策の主眼は名古屋市の所管する消防局に、警察や自衛隊の人員を受け入れて人事交流を図るというもののはずだ。つまり、このマニフェスト項目は「実施された」とは認めることはできない。*3

このように評価していくと、最終的な実施率は34%程度に留まる。

討論会の参加者からは「34%も実現されていたとは驚きだ」という声も上がったが、2009年の当時、名古屋市当局は、曲がりなりにも新市長となった河村氏を受け入れ、「中期戦略ビジョン」という中期目標を策定し、そこに2009年マニフェストを反映させようとしていた。


さて、2013年マニフェストについてはどうか。

約120項目はこちらにある。
https://drive.google.com/file/d/0B2ymo7zTws_oVGZmaE1VTndQY2c/view?usp=sharing

まだ政策事項を拾い出しただけで、部局分けも評価もしていない。
勿論、その説明責任は河村市長の側にあるのであって、また「9割以上に着手」などという言葉で誤魔化そうとするのだろうか。

一つ、具体的事例を挙げよう。

2013年マニフェストの内、「政策3 福祉に教育に あったきゃあ市民」の中に
「(5)障害を持った方を大切に」「1)障害者差別禁止条例制定」という項目がある。

名古屋が率先して「障害者差別禁止条例」を制定していこうという市長マニフェストだ。

さて、どうなっているか。今(平成28年12月)に至るも、名古屋市には該当する条例は制定されていない。つまり「未達」ということになる。
参考:国内外の障害者差別禁止法・条例

それどころか、本年(平成28年)4月には国において「障害者差別解消法」が制定され、すでに各地方自治体へは国からの「技術的助言」が入っている。

都道府県・政令指定都市におかれましては、法第17条第1項に規定される障害者差別解消支援地域協議会(以下「地域協議会」という。)の設置について積極的に御検討いただくとともに、都道府県におかれましては、貴管内市町村に対して地域協議会の設置に関する情報提供をお願いいたします。地域協議会の詳細については、別紙2「障害者差別解消支援地域協議会について」を御参照ください。

なお、本通知は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項の規定に基づく技術的助言であることを申し添えます。

障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針の策定について(通知) - 内閣府


名古屋市は平成26年3月に「名古屋市障害者基本計画(第3次)(案)」を策定し、市民意見を募っている。



呆れるのはその中の「条例制定の取組み」についてのやり取りだ。
名古屋市:名古屋市障害者基本計画(第3次)(案)について(市政情報)



市民意見 「市長マニフェストにも掲げられた障害者差別禁止条例(仮称)の制定が必要。障害者差別解消法の附帯決議に「上乗せ・横出し条例を含む(中略)条例制定等を妨げ、又は拘束するものではない」と明記されていることから、条例制定に向けた今後の取組みを明記いただきたい。 」

とある、これに対する当局の回答。

市の考え方 「条例の制定については、「障害者差別解消法」により国が定める基本方針や対応指針等を踏まえて検討していきます。また、検討にあたっては、障害当事者や関係団体の意見などをお聞きしながら進めます。 」

市民が市長マニフェストを掲げても、名古屋市はほぼゼロ回答。
国の方針や指針に準ずると回答している。

市長の指導力などないという回答だ。


最近この事柄で一つ動きがあった。


減税日本ゴヤの鈴木孝之市議が、11月25日の本会議で、この「障害者差別解消法」に対する名古屋市の取組について質す質問をしたのだ。

オリジナルはこちら
名古屋市会本会議中継-録画中継


見ていただければ明白なように、市長マニフェストについては何も触れられていない、そして市長マニフェストで約束された独自条例の制定についても触れていない。

ひょっとすると、鈴木市議は、ご自分が所属する政党の代表が掲げられたマニフェストをご覧になっていないのではないのか。
「河村市長を守る男」のはずだが、「河村市長の約束を守る男」ではないようだ。

偽善者は素晴らしい約束をする、約束を守る気がないからである。
それには費用も掛からず、想像力以外の何の苦労も要らない。

エドマンド・バーク

11月20日の基調討論に当たって、こうした原稿を主催者にお見せしたところ「批判ばかりになってもいけないので、良いところも何かありませんか」とのお言葉をいただいた。

それに対して私は。

「河村市長の政策など、どれも実現しないほうが良い政策ばかりです。
特に、減税政策、議員報酬の半減、地域委員会など新自由主義的な弱者切り捨て、公共圏を弱体化させるような政策は実現させてはいけない。そういう意味では、そのような誤った政策を、実現できなかった河村市長の無能と、その怠惰さは肯定的に評価します。馬鹿なことをするぐらいなら市長室でおとなしく焼酎でも飲んで寝ていてくれたほうが良い(大意)」と答えた。



追記:

減税日本の県議であった
半田晃士氏と三宅功氏の
政務調査費による調査報告書についての原資料を box に移転しました。

半田・三宅(元)県議調査書問題(原資料)

https://app.box.com/s/0cz2epsoyvpg71yqfmgpvntjcf8wa9lz


*1:もっとも、こんな話はそもそも馬鹿馬鹿しいものであって、それが実現化されない責任は、大村知事でも河村市長でもなく、そんな馬鹿な政策を選択した名古屋市民や愛知県民が負うのが正当な結論なのかもしれない

*2:「着手」とはなんとも幼稚で無責任な、そして「幸せ」なセリフではないだろうか

*3:といって、こんな政策が軽々しく実現されたほうが良いとも思わないが