子宮頸がんワクチンの予防接種について、国は助成などを行い推奨してきたが、副作用の問題を受けて「積極的な推奨を差し控える」ようにしている。
厚労省健康局長から各都道府県知事に対して「勧告」が出されたのが6月14日である。
これを受けて各市町村では「積極的な推奨を控える」というアナウンスと、中止ではないなどの情報提供を様々な方法で行っている。
各政令指定都市のHPにもこの情報は掲載されている。
横浜:http://www.city.yokohama.lg.jp/kenko/hokenjo/genre/kansensyo/vaccination/20130331144253.html
神戸: http://www.city.kobe.lg.jp/life/health/infection/vaccination/hpv.html
千葉:千葉市:HPV(ヒトパピローマウイルス感染症)予防接種
当然、名古屋市にもある。
http://www.city.nagoya.jp/kenkofukushi/page/0000015317.html
ただ、問題なのは、名古屋市の場合このページに行き着けないのだ。
先に提示した各指定都市の場合、トップページで「子宮頸がん予防ワクチン」という文字で検索をかければ当該ページがトップに掲載される。
そして、名古屋の例
追記:
確認のため「子宮頸がん」というワードで検索してみると、これならヒットした。
「子宮頸がん」の場合
しかし、推奨されるページが「検診」についてのページであって、問題の「子宮頸がん予防ワクチン」についての情報に行き着けるかは不明だ。
予防接種の総合的な「Q&A」をまとめているページは、この問題に対応していないようだ。(最終更新日もない)
http://www.city.nagoya.jp/kurashi/category/8-4-3-7-3-0-0-0-0-0.html
予防接種に関するトピックス一覧(「新着・更新情報」に当たるのだろうか?)にも掲載されていない。(ここも最終更新日がない)
http://www.city.nagoya.jp/kurashi/category/8-4-3-7-2-0-0-0-0-0.html
3点の改善提案:
1)トップページから検索で引き当てられるようにすべきだろう。
2)少なくとも予防接種関連のセグメントに移った際の「新着・更新情報」としてリンクが紹介されるべきではないだろうか。
3)総合的な「Q&A」を設置するのであれば、新規情報に連動して「Q&A」も更新されるべきではないだろうか?
(この3点の要望事項については「健康福祉局 健康部 保健医療課内 予防接種電話相談窓口」にメールしてみました:2013年7月31日)
6月17日の市長定例記者会見には次のようなやり取りが記録されている。
◎厚生労働省が子宮頸がんワクチンの接種推奨を一時中止する方針を決めたことについて(その1)
(記者) 国の方の子宮頸がんワクチンの推奨の、呼び掛けの停止についてなのですが、名古屋市は国に先駆けて3年前から無料で予防接種を行っていて、今後、名古屋市としてはどのように注意喚起を行っていくのかというようなことを教えていただければと思うのですが。
(市長) 昨日か、おとといか、新聞を見まして、名古屋もワクチン大先進都市というふうにやりかけておりまして、今もまた新しいので取り組もうと思っていますので。特に子宮頸がんについては、前から副作用についてはいろいろうんぬんがあったことは事実ですので、きちっとその問題については。
ご不安な方、たまにおるんですわ。いろんなところへ行きますと、若いお母ちゃんから、「子宮頸がん(ワクチン)って、あれは本当に打ってええの?」とかいって。「僕の今の知識だとええで」といって。
だけど、100万人に何人という統計上の数値がゼロというふうにはなかなかなりません。しかし、市民の皆さんのご不安にはちゃんと。ワクチン・ナンバーワン都市を目指して、実際そうだと思いますけれど、その副作用について、またきちっと皆さんに報告できるように。これはプロがやらないといかんものですから。ちゃんと仕組みを整えます。
(記者) 名古屋市としては、国からのああいった報道なり投げ掛けなりを受けて、副作用の周知徹底が今までできていなかったというようなことで、今後の対策をしていきたいと。
(市長) まあ、そうですね。お母さん方の方が知っているけれどね。知っていますけれど、勧めると同時に、副作用の面も何かきちっとした仕組みというか、を整えないといかんなというふうに思ったところです。今日、これが終わったら早速指示しまして、やります。
名古屋市:平成25年6月17日 市長定例記者会見(市長の部屋)
厚労省健康局長の「勧告」が通達されたのは6月14日である。
6月17日の記者会見で「昨日か、おとといか、新聞を見まして」とか「今日、これが終わったら早速指示しまして、やります」という発言が出るということはどういうことだろうか?(14日は金曜日で、この17日が月曜日である。週末に「勧告」が出たので土日の休みに入ったということは理解できるにしても、奇異な発言だ。当局は「勧告」に準じた通知を行っていると信じたいものだ)
また、「勧告」には次のような記述がある。
市町村長は、接種の積極的な勧奨とならないよう留意すること。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/pdf/kankoku_h25_6_01.pdf
市長に対して「あれは本当に打ってええの?」といわれた場合、それまでは各自の判断で回答していても良かったのだろうけれども、「勧告」以降は市長の発言として「僕の今の知識だとええで」というのは誤りとなるだろう。
というか、それ以前に「僕の今の知識」というのは何なのだろうか?
この問題に関しては以前から指摘があり、結果として「ワクチンとの因果関係を否定できない」と「勧告」に至ったわけで、それを乗り越える「知識」があるとは知らなかった。
そして河村市長は間違えている。
この人物は文章が書けないだけでなく、読めないのだろうか?
(まあ、面倒な文章は適当に読み流しているだけなんだろう)
「勧告」はこのページに示された「題名」が端的に示すとおり、「積極的な勧奨の差し控え」をするとしているだけである。
希望者に対しては今まで通りの助成も行う。予防接種としての扱いについては訂正していない。ただ、「国民に適切な情報提供ができるまでの間、定期接種を積極的に勧奨すべきではない」と判断したといっているのである。
ところが河村市長は次のように発言している。
「勧めると同時に、副作用の面も何かきちっとした仕組みというか、を整えないといかんなというふうに思ったところです」
名古屋市は子宮頸がんワクチンの予防接種で副作用が出た場合、何か仕組み(補償)でもしてくれようというのだろうか?というか、そんなことを厚労省は言っているのか?
そして、そもそも大切な「積極的に推奨すべきでない」という「勧告」には反して「勧める」と言明している。
トップがここまでトンチンカンな事を言っていれば、それに引き摺られる行政もトンチンカンにならざるを得ない。