国土地理院が航空レーザー測量によって各地の標高データを詳細に出している。
1:25,000デジタル標高地形図「名古屋」なるデータも公開されている。
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これを見ると、名古屋の街の半分は元々海の底であったことが良く判る。熱田神宮の「七里の渡し」以南は海であったことなど、名古屋市民であれば小学校で習う事だが、こういう地図を見せられ、東日本大震災による津波被害を思い起こすと、同様の災害がこの大都市を襲った場合、いったい何が起こるのか。まったく想像を超える恐怖に身震いする。
新川、庄内川以西は全体的に低く、さらに日光川、木曽三川流域と続く。
東にひときわ色の青い地域がある。山崎川の右岸。南区の道徳地区である。
こちらは「名古屋都市計画基本図」のNo.105「道徳」の部分である。
この地図は名古屋市の住宅都市局都市計画課(西庁舎4F)に行けば購入できる。
所々に標高が表記してある。
今回この地図を参考に「道徳」地区を歩いてみた。
地図上に「DSC_0178」と表記してあるのは私の覚えで、この写真を表している。
DSC_0178
山崎川堤防から道徳橋方面を眺める。
この写真で一目瞭然だろう。
山崎川の水位よりも住宅が建っている土地のほうが低く見える。
「都市計画基本図」で示された「標高」はTP(東京湾平均海面)からの標高であって、名古屋港の基準面(NP)は東京湾のそれより約1.412m低いそうである。
この写真の左側の土地は「都市計画基本図」では「−1.0」程度の場所になるが、このTPとNPの差を勘案すると基準海面より0.4m高い事になる。
ただ、海は干満を繰り返す。名古屋港も満潮時には2m程度海面が上がるのでその場合には1.6m程度沈んでいる事になる。
この道徳地区はこの堤防周辺から、さらに地域が低くなっている。
国道247号線を越えて隣町の豊田四丁目にある「アピタ名古屋南店」に行ってみよう。
カラフルな店舗にあわせるようになにやら電信柱にも黄色のラインが入っている。
拡大するとこのように「NP(+)2メートル」と書かれている。
この高さが先ほどいった「名古屋港基準面(NP)」から2m高い位置という事になる。
写真左の信号機が設置されている電信柱にも黄色いラインがある。
手許に「ツバメ社製のA4ノート(長辺約30cm)」があったので並べてみた。ざっと1.5mほどの高さとなる。「都市計画基本図」ではこの地点の標高は−0.9(対TP)となる。TPとNPの差は約1.4mなので対NPでは海面上+0.5と言う事になる。そこにNP+2.0のラインを引けば、地面から1.5mの位置になる。
しばらく歩いた道徳小学校の門の近くにもあった。
小学校の壁よりも高い位置になっている。
こうやって見ると道徳地区というのは全体が満潮時には名古屋港に沈む地区ということがわかる。この地区を支えているのは周囲の堤防であって、文字通り地域住民の生命線ということができる。
その山崎川の堤防にもう一度戻ろう。
これは堤防に備えられた碑である。
昭和35年のに伊勢湾台風被害を受けて、高潮対策工事として堤防が築かれたことがわかる。伊勢湾台風の直後に、大急ぎで改修を行ったそうだ。*1当時のこと、この堤防はわずか8mの松杭で支えられているそうだ。
コンクリートの表面は、長年の風雪にさらされて非常に心もとない。
早急に各河川の堤防の調査と対策。さらに国が財政出動をして「国土強靭化計画」をすすめるのであれば、名古屋市もその流れにそって港湾周辺の防災強化をはかる絶好の好機でもある。
さて、そんな中名古屋市の河村市長は平成25年度予算案を策定している。
「おもしれえナゴヤ」の為の「SLの聖地」構想に50億円からのお金が必要になるようである。
さらに「茶釜を溶かして金シャチを復元」
「大津通りの分離帯を廃止」
「本丸御殿に襖絵を展示」
「金シャチ横丁」
そして「名古屋城天守閣の木造化」・・・・これは本当にやろうとすれば、その予算は300億円とも500億円とも言われている。
それとは別に「平成25年度当初予算財政局案」というのがある。
ここには「山崎川の堤防」に対する予算は付けられていない。
「課題への対応」とうたい「平成25年度予算は、東日本大震災の発生を受けての震災対策」と防災対策を真っ先に掲げた予算案であるはずが、こういった港湾整備の予算が禄に計上されていない。
果たして、SLを走らせたり名古屋城を整備して「おもしれえナゴヤ」を作ることと、市民の安心安全の為の地道な予算を計上する事。これのどちらが優先順位が高いのだろうか?
あなたならどちらを選びますか?
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