市民のための名古屋市会を! Ver.3.0

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住田副市長辞任の意味するもの

 名古屋市の住田副市長が辞意を表明した。中日新聞は一面のトップにこの記事を据えた。

 7日(木曜日)の午後3時ごろ、市政記者クラブに各紙の夕刊早刷りが上がってきた。その前日、市議会の主だったメンバーはインド等の視察に出かけ、他の議員も東北などの県外視察に出ている。また、来年度予算案については算定作業が遅れていることは規定の事実なので新たなネタが出ることは無い。連休を前にしてブースを空にしている社もあったようだ。そんな中、中日の夕刊に「住田市長辞職」の一報が打たれ、市政記者クラブは一気に騒がしくなった。

 ぶら下がりの記者会見を求める各社に、しかし住田副市長は「もともと河村市長とは一年のお約束でしたから」「このような時期に5年も副市長を務めるのは長すぎる、職員も育ってきている」などと、冷静に答えるのみで、「自民党などの推薦を受けて次期市長として立候補の意向は?」との問いには「今は副市長の職務を果たすのみ」と否定も肯定も明言を避けた。

 http://www.yomiuri.co.jp/election/local/news/20130208-OYT1T00279.htm
 http://mainichi.jp/select/news/20130208k0000m010189000c.html
 http://www.chunichi.co.jp/article/aichi/20130208/CK2013020802000039.html

 各紙が本日(8日)の朝刊で後追いをする中で、中日新聞はこの記事を一面トップに据えた。副市長とはいえ、市当局の叩き上げの職員の辞任を一面トップとすることはなかなか無いのではないか?

 当然、その裏には、注目を集める河村市長の去就を含めた次期市長選挙の動向という興味が含まれていることは間違いない。

 しかし7日の夕刊、8日の朝刊トップ記事との異例の扱いに中日新聞の「前のめり」の姿勢が垣間見える。

 さらに様々な人から中日新聞のここ最近の市政へのアプローチについて、指摘を受けたことを3点ほど述べる。

 1.この直前、名古屋土地開発公社の塩漬け土地、志段味Bゾーンの売却(買取)が決着した。これも中日新聞の一面トップを飾った。これも市当局からのリークとも見える。

 2.そのまた少し前。中日新聞の市政担当記者の小さな囲み記事が紙面に載った。そこでは緩やかではあったがしかし明確に、河村市政への批判が書かれていた。
 内容は緩やかだったが方向性が明白な事と、署名記事として掲載された事で注目されていた。

 3.今朝の各紙は次期市長選候補の含みでこの住田副市長の辞任を取上げていたが、その場合推薦に回るであろう自民党市議団の市長選候補選定の責任者は堀場市議である。その堀場市議のコメントを掲載できていたのは中日新聞だけだ。


 これらの事から、中日新聞の姿勢が垣間見える。
 (気がする)

 中日新聞河村たかし次期市長の誕生を望んでいないようだ。
 (やっと、目が覚めた?)

 
 この住田副市長と河村市長の関係では様々な「伝説」がある。


 伝説:レジェンドその1「涙」
 財政論的にはまったくムチャクチャな「河村流減税政策」を市当局として条例というカタチにしなければならない。このジレンマにはさまれ、市議会の答弁で涙を流した。
 横井利明オフィシャルブログ:住田副市長の涙の理由(わけ)

 この時も、別に住田副市長自身が辛くて泣いたわけでは勿論無い。ムチャクチャな要求を出す市長と、それを支持する市民、その没論理と、条例という理論的構成の間に落ち込んだ部下たちの苦労を見るに見かねて泣いたわけだ。

 伝説:レジェンドその2「傘」
 河村市長は市長になると他のポピュリスト首長と同様、市当局の職員、つまりは「公務員」を批判の対象にして「市職員給与の10%カット」を訴えた。

 それを受けて住田副市長は先手を打つかのように幹部職員の給与を10%カットして見せた。

 「この幹部職員の給与10%カットで、市長として、職員給与の10%カットを実現したと広言できるでしょう。なので、職員給与についての話はこれで終わりにしましょう。他の職員給与については10%カットなど要求しないでください」

 自分たち幹部職員の給与を差し出して「傘」となり、部下の給与、生活を守ったとして市当局の全職員が一斉に住田副市長への信頼と感謝を抱いたという。

 伝説:レジェンドその3「辞表」

 この職員給与の際、さらに先の減税問題の第二ラウンドとも言うべき5%縮減修正案の提出の際など、住田副市長は「辞表」を常に持って居たという。

 己を捨て、部下を守る姿勢を貫いたから、部下から絶大の信頼を得て、2万人という組織と、ポピュリズム政治家河村市長の調整を続けてこられたのである。こんな人物はなかなか居ない。

 その他にも次のような話も聞いた。

 河村市長は自ら生んだ減税市議たちを禄に教育していない。何も知らないに等しい。その教育を市当局に丸投げしたわけだが、そういった指示を受けた減税市議の中には、担当となった市職員に「俺にも自民党議員みたいな格好良い質問を書いてくれ」と質問項目のレクチャーどころか、その質問自体を書かせたバカも居る。

 さらに、こういうように河村市長は市当局を公私混同して使っていたわけだが、ある減税議員が市長に質問をした際、河村市長は「市会事務局に聞きながら進めてくれ」と丸投げをした。すると、その減税議員は事務局職員や住田副市長の前で「市会事務局など自民党のポチだ!」と口走ったそうだ。

 さらに、河村市長は児童虐待問題においてロサンゼルスの事例を研究せよと指示を出した。その一環が現地視察であって、その話題は当ブログでもこちらで取上げた。
 ロサンゼルス市視察報告会 - 市長のための市会ではなく、市民のための名古屋市会を! Ver.2.0

 ロサンゼルスの事例を研究してみれば、彼の地においては児童虐待に対応するDCFS(Department of Child and Family Service)のソーシャルワーカーがおよそ4000人であるのに対して、名古屋のそれは49人だ。圧倒的に人的資源が足らないのは目に見えている。

 その為に市当局は増員を計画しようとした。勿論、一気に4000人にせまるような増員ではなく、常識的な増員をだ。そうしたところ河村市長は「役人の焼け太りだ」と批判したそうだ。
 それで、いったいどうやって児童虐待の対策を講じるというのか?
 毎日、「児童虐待無くなれ、児童虐待無くなれ」と唱えれば無くなるとでも思っているのか?

 結局、河村市長というのは口先だけで実が無い、問題解決力の無い、まったくの無能であることは疑いない。

 本当に酷い、次のような事例もある。

 現在、小中学校に導入しようとしている冷房設備の見積もり金額が問題となっている。

 中学校93校に冷房設備を導入する予算が約70億円計上されており、その金額が一教室当たり370万円ほどになるのは高いと言っているようだ。しかしこの議論は幾重にもおかしい。
 名古屋市 市民税5%減税か小中学校エアコンか : 市民オンブズマン 事務局日誌

 結局、河村市長としては、このまま「見積もり金額が高すぎる」「小中学校にクーラーが導入できないのは、高額な見積もりを出させている行政の責任だ」と、責任を市当局に押しつけて「減税か小中学校のエアコンか」という政治的判断をごまかそうとしているように見える。

 減税が本当に必要であるのであれば、きっぱりと「小中学校にクーラーは必要ない」と言えばいい。または、小中学校にクーラーが必要であれば、減税なんぞ止めれば良い。

 これを判断するのが「政治的判断」であって、その為に政治家が居るのだろうに。
 論点をずらして判断をごまかす、先送りする姿勢はズルい。

 それどころか、名古屋は起債ができない状態なので、いよいよ財政的には硬直化が激しい。国が「国土強靭化計画」といって、様々な防災予算を被災地だけではなく、日本全国の各地方自治体に振りまこうとしてる。

 こういった公共事業を批判する人々がいるが、経済はトレードオフの関係には無い「コンクリートからひとへ」といったようなトレードオフの発想が間違っている。

 コンクリートの消費も拡大すれば、ひとへの投資も拡大でき、コンクリートの消費を縮小すれば、ひとへの予算も縮小せざるを得なくなる。

 また、笹子トンネルの事例で明白なように、社会インフラというのは一定程度予算をかけ続けなければ維持できない。

 当ブログでも触れたように、名古屋市の港湾、河川についても整備すべき社会的インフラは幾らでもある。こういったインフラについて、国からの予算を獲得するのも大事な市当局の仕事の筈だ。

 しかし、河村市長はできない、やらない。そもそもそういった事業を始める際に必要な市の起債ができない。なぜか。河村流減税政策を取る限り、名古屋市は新たな起債ができない。

 つまり、財政のプロとして、この状態は住田副市長の目には我慢できないほどの不条理だろう。

 経済政策として何の裏付けもない、●チガイじみた河村流減税政策の為に、いったい何百億、何千億円の社会整備費が名古屋を通り過ぎて行ってしまうのだろう。それらの整備費で得られるはずの、名古屋市民の安心安全、快適な市民生活はどれほど毀損されるのだろう。そして、その何百億、何千億という社会整備費を賄うのは名古屋市内やその周辺の事業者だ。それらの事業者の売り上げがみすみす消えていくのだ。

 減税政策の経済効果がどのようなものか、簡単にわかるじゃないか。

 (最近、火事を出してしまった土建屋も、この社会整備予算があと3年早く出ていたら、事業も立て直せたし、火事も出さずに済んだかもしれない)


 現実と遊離した市長、そして市政の事実を見ようともしないその支援者。こういった者たちの筋違いで、勘違いの(●チガイじみた)要求を受入れて、なんとか市政運営を行ってきたのが、住田副市長です。住田副市長が居なければ河村市政など成り立ちません。

 つまりこういうことです。

 河村市長が二期目を狙って市長に立ったとする。相も変わらず「芸人人気」と「政治家への信任」を勘違いしたような投票行為*1によって、河村市長が二期目の当選を果たしたとします。

 しかし、その時には住田副市長は居ません。

 またまた減税政策や様々な予算で市議会との深刻な対立が生まれる事でしょう。

 河村市政の二期目は成立しません。

 河村市政は、残り3年の任期を残して、住田副市長が辞めた事を以って終了です。

 河村市政の二期目は「無理」です。

 そして、中日新聞のこの「前のめり」の姿勢は、この事実をより強く裏付けます。


*1:悲しいかな、日本の投票制度はこの両者を分別できるようにはできていない