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平成24年6月定例会 市長提案理由説明(6月19日)

 本日のエントリーは、以降の議論の為の資料として、平成24年6月19日に名古屋市会6月定例会の幕開けとして行われた「市長提案理由説明」の聞き起しを掲載する。
 勿論、これらの著作物はこのような形での公表を許されている。


 聞き起しにあたっては細心の注意を払ったつもりですが、間違いがあるようでしたらコメント欄などでご指摘いただけると助かります。

 各センテンスに通し番号を打ち、色を変えました。
 赤い文字の部分は特に注目していただきたいところ。
 オレンジ色の文字は提案説明で何かを「したい」と表明している部分です。

 また、緑色の部分は後の議論の材料とするつもりですが、そんなたいした話ではありません。(河村氏の情報源の品質を計測する意味で注目してみました)

 なお、「折角全文書き起こしたのだから読んでやろう」という奇特な方がいらしたら、この文章の第3センテンスにあるように『市民の皆様は大きな不安を感じておられると思います』という当事者であると想定して、ご自分が名古屋の海抜ゼロメートル地帯に住んでいるというつもりで読んでみてください。
 この一文の異常性が良くわかると思います。

平成24年6月定例会 市長提案理由説明(6月19日)



<1>
  本日、6月定例会が開催されるにあたり、ただいま議題に供せられました諸案件の説明に先立ちまして、市政をとりまく状況や、市政運営に関し、若干私の思うところを申し述べさせていただきたいと存じます。

<2> 東日本を襲った未曾有の大地震及びこれに伴う津波は、これまでの想定をはるかに上回り、その被害も甚大かつ広範囲に及び、人々の幸せも、喜びも、すべてをあっという間にさらい、目を覆うばかりの惨状と多くの悲劇をもたらしました。

<3> さかのぼること約50年前、伊勢湾台風で大きな被害を受け、また、いつ起きても不思議ではない東海地震東南海地震、あるいはこれらの地震と南海地震を合わせた3連動地震が想定されている当地域において、市民の皆様は大きな不安を感じておられると思います。


<4>
 防災・減災は、まちづくりを進める上で普遍的なテーマであり、市民の皆様の命を守ることは、市長である私の最大の使命でございます。そして、そのための災害対策は市政において最も優先すべき施策の一つでございます。

<5> 名古屋市は、東日本大震災で壊滅的な被害を受けた岩手県陸前高田市に対して、行政機能の回復に向けた日本初の”丸ごと支援”に取り組んでおり、多くの職員が現地に派遣され、被災地の支援という困難な職務を遂行しております。1つの街の復興を担うということは、大きな責任が伴う一方で、このことを通じて得られた経験は、名古屋で大きな災害が起こった際、必ず活かすことができる貴重な財産となると確信しております。

<6> いつ起きても不思議でない大震災に備えるためには、東日本大震災や過去の災害から多くを学び、十分検証することにより、都市の防災機能の強化を総合的に進めていかなければなりません。東海・東南海・南海の3連動地震による被害想定は、現在、中央防災会議で検討されているところですが、国の取り組みを待つのではなく、市独自で見直すことができるものについては果敢に見直し、できることは直ちに着手する、という姿勢で臨んでまいります。・・・(1)

<7> また、東日本大震災は、自然災害の恐ろしさだけでなく、原子力発電の安全性が自然の脅威に対してどれほどもろいものであり、一旦、重大事故が起こった際には、いかに取り返しのつかない結果を生み出すかを全国民に知らしめたものとなりました。そのような中、国は安全性への十分な検証や議論を置き去りにしたまま、関西電力大飯原子力発電所3,4号機の再稼動を決定しました。このままでは、安全神話に基づいた原子力発電所の維持・推進の方向へ逆走しかねない状況でございます。私は国会議員時代から「原発は危険」と主張し続けてきました。いかに安全確保に万全を尽くしても、100%、絶対に安全だということを言い切れるものではなく、ひとたび事故が起こった場合の被害の甚大さを鑑みると、原子力発電は非常にリスクの高いものであると考えるからでございます。過去に震度6以上の地震の影響を受けた原子力発電所は福島を含めて7つあり、7つともダメージを受けていると聞いております。そのうちの4つで原子炉停止、さらにそのうちの1つで全電源を喪失して爆発という状況であり、これが東京電力福島第一原子力発電所でございます。このケースでは津波による被害ばかりが強調されておりますが、地震そのものでどこまでダメージを受けているのかは明らかでなく、地震に対する安全性は極めて不透明なものであると考えられています。

<8> 再生可能エネルギーの活用、火力発電などの発電技術についてイノベーションを起こし、原発リスクのない産業立地を目指すということは、将来、環境面だけでなく経済面からも必ず強みになります。また、原子力発電のような安全性が確立されていない技術に電力を依存することは、産業面からも極めて危険であり、今こそ、「脱原発」に向けた力強い歩みを始めるべきであると考えております。

<9> 原子力発電の危険性を前提として、わが国全体、あるいは、本市域で必要とされるエネルギー需要をどのような体制で、どうやって賄っていくのかについて幅広く議論してまいります。・・・(2)本市におきましては、昨年に引き続き、電力需要のピークカットの取り組みといたしまして「名古屋市節電対策プログラム」をとりまとめたところでございますが、一過性の対策で終わることなく、今後は、原子力発電なしでも成長を続けることができる社会システムの構築についても検討を深めてまいりたいと考えています。・・・(3)

<10> 一方、未曾有の大災害により、国民生活が疲弊している中で、国においては、消費税増税一色で議論が行われております。3党合意がされているとのことですが、私から見れば、両者とも増税をするという前提での話し合いであり、いわば「増税日本」という同じ党内で派閥抗争をしているかのように映ります。過去の歴史を紐解けば、大災害により民が疲弊しているときは、年貢を下げることが政治をつかさどる者の常識であったと思うのですが、これだけの大災害があった時に、一国の総理大臣が、増税に政治生命をかけるという現在の状況には、私は恐怖すら感じるのでございます。

<11> 何度も繰り返し申し上げておりますが、増税をしてGDPが上がることなどありえません。消費マインドが冷え込み、個人消費が減ることによりGDPは下がるといわれております。消費税が1%上がると実質GDPが0.4%下がるという民間シンクタンクによる試算もあり、過去を振り返ってみますと、平成9年に消費税率を3%から5%に引き上げたことにより、当年度は国の一般会計において確かに税収が上がりましたが、その翌年度からは、景気の低迷により減収となり、今日に至るまで平成9年度の税収を上回った事がないという事実が全てを物語っております。税率を上げれば、それに応じて税収も上がるという誤った認識は、増税により減った税収が新たな増税を生むといった最悪のシナリオしかもたらさないでしょう。GDPを高めるためには、民間の可処分所得を増やすなど、消費マインドや企業の設備投資を促すことが必要であり、現在の消費税増税路線は完全に逆行しております。

<12> このような「増税やむなし」とする風潮は、国債は悪であり、日本は借金漬けであるという、誤った認識によるもので、残念ながら大半の政治家や、多くの経済学者、テレビキャスター、コメンテーターが口をそろえてそう主張しております。

<13> ここに大いなる誤解があります。日本の国債は95%が国内で消費されており、庶民の預金の投資先、すなわち資産と言い換えることができるのです。しかもその国債は、震災後もなお、きわめて低金利で推移しております。日本が本当に借金漬けで潰れそうな国であるならば、国債がこれほどの低金利であるはずがないのです。そもそも海外の引き受け先が7割を超え、金利が20%を超えているギリシャ国債と比べること自体が間違っているのです。

<14> 誤った経済理論を背景に、国は増税路線を一直線に進む一方、行政改革で無駄な経費を削減するという話がまことしやかに聞こえてまいりますが、これは実効性の伴わない空約束のようなものでございます。金が足りないから経費削減せざるを得ないのであって、歳入の上限を決めないまま、行政改革をするから無駄な経費を削減できるというのは机上の空論であると断ぜざるを得ません。

<15> 私は、減税は日本の財政を立て直すために極めて有効な政策の一つだと信じております。無論、減税がすべてとは申しませんが、家庭や企業における可処分所得を増やし、経済を活性化することにより、結果的に税収も増え、財政規律の確保にもつながる有力な施策の一つであるとともに、初めに歳入の上限を決め、コスト削減をせざるをえない状況を作り出すためにも極めて有効な手段であることは間違いありません。

<16> 減税をすると、福祉が後退するという話もありますが、本市は、子ども医療費助成や、ワンコインがん検診、任意予防接種の費用助成など、市民サービス・福祉施策の充実を進めているところであり、その指摘は適切ではないと考えております。名古屋市は減税を実施したからこそ、行財政改革が進んだのであり、人件費10%削減や、外郭団体との随意契約の抜本的見直しなどの構造改革も可能となったのでございます。

<17> 増税こそが財政再建のための唯一の道だとする論調には、到底与することはできません。今必要なのは、増税ではなく、企業の投資マインドを盛り上げるため、投資と融資のインセンティブになる税制措置をとり、企業の投資マインドを盛り上げ、個人と企業の所得を上げることでございます。


<18>
 経済状況が依然として厳しい中にあり、日本全体がなかなか明るい展望を見出しがたい状況にありますが、このような時だからこそ、まちに活気を取り戻せるよう、盛り上げていくことが大切であります。本市においては、都市の魅力に磨きをかけるため、名古屋城本丸御殿の復元、世界の金シャチ横丁や金城ふ頭開発の推進などにより、「どえらげにゃあおもしれぇまちナゴヤ」として、全国にその魅力を発信し、日本全体を盛り上げるとともに、市民の皆様が住んでいることを自慢できるようなまちづくりを進めてまいります。また、名古屋城天守閣につきましても、焼失前の実測図が先人により残されておりますので、これを基に、本物の木造復元を実施することは、必ずや名古屋の子孫のためのかけがいのない財産になると考えております。・・・(4)

<19> また、今年度より、個人・法人市民税では日本初の恒久減税である市民税5%減税が開始されたことは、私が目指す、真の住民自治への挑戦の一歩であると考えております。もともと税金として納められるはずであった額の一部を市民の皆様にお返しし、その使い道の決定を市民の皆様一人一人に委ねたことにより、「税金を払って役所に何でも任せる」という社会ではなく、市民一人一人が使い道を考え、地域活動を進めていく新たな社会の仕組みが作られることを期待しております。

<20> 日本には寄附文化が根付きにくいとの声もありますが、それは誤りで、江戸・明治以前の時代にも、住民がお金を出し合って、地域の公共事業を実施するなど、寄附の文化はあったのでございます。市民の皆様のお手元に戻った減税の一部でも、地域活動や公共事業などへの寄附に回していただければ、児童虐待、いじめ、不登校、高齢者の孤独死、防災、文化などにおいて、従来の役所の縦割りを超えた対応が可能になるのではないかと考えております。

<21> また、私も63歳となり、自ら「老人会青年部」と名乗っております。世の中には勤め先を退職し、自由な時間を持つことができるようになったシニア世代が多くおみえになります。その中には、何らかの形で社会参画・地域貢献をしたいと考えている方々が大勢いらっしゃいます。しかしながら、一口に社会参画・地域貢献といっても、その手段が分からず、なかなか実行に移せない方々もおみえになるのではないでしょうか。このような地域のシニア世代のマンパワーを社会の財産と捉え、その方々が、生きがいを持って地域で活躍することが、地域の活性化、ひいては真の住民自治の実現に必要不可欠であると考えており、ボランティア活動のきっかけづくりや、市民活動をサポートしてまいりたいと考えております。・・・(5)

<22> 行政が担うべき役割は当然でありますが、行政の仕事はどうしても縦割りになりがちであります。そのような中、地域住民の皆様の取り組みで解決できる課題はたくさんございます。地方自治の二つの要素は、団体自治と住民自治でございます。行政は行政でやるべきことをきちんとやり、その一方で、縦割りに縛られない住民自治、これを私は「市民市役所」と表現しておりますが、この「市民市役所」が地域の課題を解決できる仕組みをつくることは非常に重要だと考えております。

<23> 児童虐待や高齢者の孤立死など、都会に埋もれがちな子どもやお年寄りの悲鳴、そして防犯や、例えば、過去の古文書などを皆で紐解き、今自分自身が現に住んでいる地域の歴史がどうであったかを知ることにより、地域の特性に応じたきめ細かい防災に取り組むなど、身近な課題を地域ぐるみで助け合い、対応していく仕組みができれば、素晴らしいことだと考えております。

<24> 自立した市民による住民自治の時代へ大きく踏み出す時が間違いなくきております。今まで成果をあげてきた取り組みに加え、新たな挑戦である地域委員会と公益寄附、すなわち「市民市役所」により、本物の住民自治がここ名古屋に生まれ、日本を牽引する力となります。・・・(6)

<25> 現在の社会情勢は大変厳しく、本市におきましても課題は山積しておりますが、それらの課題に対して果敢に取り組み、私が皆様と同じく愛してやまない名古屋の未来を切り開いてまいりたいと考えております。そして誰もが安全で安心して暮らせるとともに、世界中の人々を惹きつけるまちナゴヤの実現に向けて引き続き全力で取り組んでまいります。


 それでは、このたびの定例会でご審議をお願いいたします案件につきまして、その概要をご説明申し上げます。

 今回提出いたしました案件は、条例案5件、補正予算3件、一般案件1件の合計9件でございます。

(条例:1) まず、第95号議案「名古屋市情報あんしん条例の一部改正について」でございます。これは、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の一部改正に伴い、規程を整理するものでございます。

(条例:2) 次に、第96号議案「名古屋市市税条例等の一部改正について」でございます。これは、地方税法等の一部改正に伴い、年金所得者の申告手続等に係る規定を整備するものでございます。

(条例:3) 次に、第97号議案「名古屋市個人情報保護条例の一部改正について」でございます。これは労働者派遣事業の適切な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の一部改正に伴い、規程を整理するものでございます。

(条例:4) 次に、第98号議案「名古屋市揚輝荘条例の制定について」でございます。これは、建築遺産の保存及び活用についての市民意識の高揚を図るとともに、城山・覚王山界わいに関する資料等の保管及び展示並びに文化活動の促進により市民文化の振興に寄与するため、名古屋市揚輝荘を設置するものでございます。

(条例:5) 次に、第103号議案「名古屋市下水道条例の一部改正について」でございます。これは、下水道法施行令の一部改正に伴い、規定を整理するものでございます。

 続きまして、第99号議案「平成24年度名古屋市一般会計補正予算」から第101号議案「平成24年度名古屋市公債特別会計補正予算」までの補正予算3件につきまして、ご説明申し上げます。

 はじめに一般会計についてでございます。

補正予算:1) 災害対策として、港区及び南区の小・中学校において、津波避難ビルの指定に向けた屋上フェンスの整備や避難階段の設計等を実施いたします。

補正予算:2) また、これに対応する財源といたしまして、特定財源として国庫支出金及び市債を、一般財源として財政調整基金からの繰入を予定しております。

 続いて、特別会計でございます。

補正予算:3) 基金会計におきまして財源繰出しに伴う所要額を、公債会計におきまして所要の起債額を計上しております。

 以上の結果、今回の補正予算は、

 一般会計 1億8千余万円

 特別会計 1億5千5百余万円

 総計   3億3千5百余万円

 と、相成った次第でございます。

(一般案件:1) 続きまして、第102号議案「訴えの提起について」でございます。これは、本市が所有している建物をなんら権原なく占有し、本市の明渡し請求に応じない者に対して、当該建物の明渡し等を求める訴えを提起するものでございます。

 以上、今回提出いたしました案件につきまして、その概要をご説明申し上げました。

 よろしくご審議のうえ、適切なご決議を賜りますようお願い申し上げます。