市民のための名古屋市会を! Ver.3.0

一人の名古屋市民が「地域委員会制度」「減税日本」に対する疑問をまとめるサイトです。(since 2011/3/3)

そろそろ潮時ですよ

いくつかのお知らせッポイもの

 以前ご紹介した東郷市議(守山区自民党)の書かれた「市長の品格」が本当に(?)絶賛発売中になったようで、Amazon で政治家カテゴリで19位までセールスランクが上がりました。

市長の品格

市長の品格

 また、新しい本が出ます!
 自治体研究社という会社から「自治ポピュリズムを問う―大阪維新改革・河村流減税の投げかけるもの」という本です。

自治体ポピュリズムを問う―大阪維新改革・河村流減税の投げかけるもの

自治体ポピュリズムを問う―大阪維新改革・河村流減税の投げかけるもの

 主には、大阪維新の会の問題にフォーカスされていますが、総論としての橋下市長、河村市長の問題点。また、各論として「河村流減税の検証」が1章を割いて掲載されています。

大阪教育改革について

 大阪の教育改革についての問題で、大きくは二つのポイントがあると思います。
 1)教育への政治的介入の問題
 2)教育に対する競争原理の導入

 この内(1)に関しては、先ず、地方自治体と教育委員会の関係が現状の制度のままでよいのかという問題提起で、これについては議論の余地もあるでしょう。また、一気に「国旗・国歌」の問題に絡めて現場教師を拘束するような問題も起こり、ちょうど、1月にこの件についての最高裁判決が出された事によって、こちらの問題は一歩後退しているように見えます。

 もう一つの教育に対する競争原理の導入という話題については、一定の評価で教師を選別したり、学校まで整理しようというような施策が進められようとしているようです。

 こういった教育に対する競争原理の導入は、実は英国のサッチャー政権が導入して失敗。米国でもブッシュ政権が導入して、現在、その失敗が反省されているそうです。
 その模様が大阪の放送局で紹介されたようなのでこちらでも紹介しておきます。


 如何でしょうか。
 この名古屋においても、大阪の教育改革に呼応しようという方がおみえのようですが、乱雑で性急な競争原理の導入は公教育を破壊するだけです。*1

システム論の限界

 橋下氏の直接の発言ではありませんが、橋下市長は次のような発言をされているようです。

朝日新聞・橋下番(@asahi_hb)

橋下氏の続き。「僕はまず仕組み論、システム論、道州制にしても、首相公選制にしても、参議院の廃止にしてもね、まず廃止決定が出来る、決定できる民主主義の枠組みを作って、それが出来れば、実態論を次のリーダーにやってもらえばいいと」。

https://twitter.com/#!/asahi_hb/status/169781786161848320

 つまり橋下氏は、政治的イデオロギーであるとか方向性については、漠然としか表現していない。例えば「価値観」についても本人のツイッターで次のようなコメントがある。

橋下徹(@t_ishin)

維新八策は価値観を表すモノ。

https://twitter.com/#!/t_ishin/status/170265428713680897

 「維新八策」は政策各論で「価値観」を示すような物ではないと思うんですよね。様々な周辺事情などを勘案して「新自由主義」が彼の「価値観」であろうとは思うんですけど。いままで橋下氏自身からは「新自由主義」という言葉は出ていないように思います。*2

 なんとなくシステム作りに興味がある。または、現在の仕組みに問題や非効率なところが目に付いて、こういったところを作り直せば、行政や政治がもっと効率よく動くのだろうに。というような意見があるのは理解できます。

 しかし、こういった意見を言う人は2種類に分かれるのですがどちらなんでしょうか?
 「ちゃんと設計すれば完全なシステムができるのに、現在の社会は既得権やしがらみから、歪んだ制度のまま運営されている」という意見に同意される方。

 残念でした!

 確かに、現行システムには既得権やらしがらみも絡んでいますが、そういった物を一切排除して、そして怜悧な英知で社会制度を再設計しても、絶対に! 完璧な社会制度を作ることはできません。

 所謂「設計主義」といわれる過ちです。*3

 人間は、どのようにがんばってみても「選択肢が3つ以上ある時の最も好ましい結論を導くルール(社会構成関数)を設定することはできない」と証明されてしまっているのです(アローの不可能性定理)。ですので、「いいや、そんな事ない、ちゃんと設計できる!」とあなたが言われるのでしたら、あなた「ノーベル経済学賞」受賞できますよ。*4

 ですから、常に社会制度は批判され、修正を受けなければならないのです。

 つまり、社会システムや仕組みに着目するのであれば、「完璧な社会システムが設計できるはずだ」というのは、残念ながら幼稚で前近代的な過ちで、現代の知見では、そのような設計は不可能であるから、設計するシステム自身に、自身を再チェックさせる。批判に開かれたシステムを設計する、という態度が必要な筈です。*5

まっとうなシステム論とは

 では、このように不完全で取りこぼしを発生させる「システム」について、橋下氏はどのような思想で設計をしようというのでしょうか?

 ここでも考えられるのは二つの方針なんでしょう。

 1)全体の利益が最大となるように設計する
 2)不利益を蒙る人々の不利益が最小となるように設計する

 なんとなく、(1)が積極的で(2)が消極的に感じます。そして、橋下氏やら新自由主義者などは、所謂「トリクルダウン」を持ち出して(1)を求めるんだ!「前え進め!」とレミングの行進みたいな事を言いかねませんね。

 どのような制度、システムを作っても、この中から排除され「割を食う」人は出るのだから、そこにフォーカスして制度は作らなければなりません。制度を設計する時に「最悪の事態」を想定して、その事態が決定的にならないように、そしてそういった事態が発生しないような策を講じ、更に発生した場合にはすぐにリカバリーできるようにすべきです。こういった発想が「物造り」における「フォールト・トレーラント」というものなのですが、こういった物を作ったことがない人には、ブツブツブツ。

 大阪においても大阪都が独立するという発想があるようです。この名古屋でも尾張名古屋共和国でもなんでもいいですが、独立しようと息巻いているひとがいます。
 こういった発想は国と地方の税源委譲の問題、所謂「三割自治の解消」という問題なのでしょうが。豊かな地域が自分たちの地域で発生した税を、自分たちの地域のために使いたい。というのはなんとなく真っ当な話の様に聞こえます。

 そして、都市部において豊かな税で減税でも、96億円のWTCビルを立替でも、名古屋城を木造化でも、道頓堀川を全長2kmのプールにでもなんでもすればいいのでしょうか?

 しかし、実はこんな事は都市部のエゴに過ぎません。

 そもそも都市部の経済を成立させているのは地方で育成、教育された若者なのではないでしょうか?これら地方が育成した人々が、都市部において働いて、所得を得、そこから税が徴収されているとしたら、これは都市の物と言いきってしまって良いのでしょうか?
 この人々を育てた周辺地域は、こういった働き手、若者ごと、育成の費用、教育経費を都市に奪われてしまっているのではないでしょうか。

 都市部で豊かな生活ができるのも、周辺地域が水や農産品、そして時に自然というリソースを守っているからこそ、その富が守られているのです。それを省みずに都市部だけの豊かさを追求するというのは身勝手が過ぎます。

 つまり、誰がどれほどの負担を負うかを討論し、議論する場が必要ですし、執行者にはこういった意見を聞く態度が必要です。*6

 このような議論は一切なされていないし、なされないどころか橋下氏にも河村氏にも、このような議論の場を設けようという態度は微塵も感じられません。

 つまり、この様に「開かれていない人」にシステムの設計は不可能です。

中日さん、そろそろ潮時ですよ。

 さて、新自由主義を政策に入れ込んで教育であるとか地方自治を弄り回そうというのは、その先進国である英国やら米国に失敗事例が幾つもあります。

 この日本をそんな失敗事例の輸入で無茶苦茶にしないでください。
 そして、そういった事情も住民は薄々判ってきているでしょう。

 名古屋の河村氏については完全に大阪の橋下市長と東京の石原都知事閣下の間に埋没してしまいました。いまや、河村氏の存在は、大阪の人々が、橋下氏の「失敗の先例として参照」するぐらいの位置付けになっているのではないでしょうか。

 橋下氏や大阪維新の会もこういった河村氏とは微妙な距離をとっているようです。

 しかし、この期に及んでもま〜だ河村氏を助けようというのが中日新聞であるようで、なんとも健気な態度には心打たれます。(嘘です)

 左は2月15日の中日新聞朝刊に掲載された「維新八策」の骨格です。8つある基本政策の内の6番目に位置する「経済政策と税制」の内、「税制」について記載がありません。(逆にざっと見ると「教育改革について3行要るだろうかと疑問です)
 これでは、大阪維新の会の政策について名古屋市民は「経済政策」だけ目にして「税制」については知らないままになりませんか?特に「資産課税」については、これだけ全国的に話題になっているのに、中日新聞の紙面には一言も触れられていません。(なので、殆どの名古屋市民も頭に「?」でしょう)

 もっと異様なのは17日朝刊の1面です(もう一度言います、一面です!)。左がそのイメージですが、ここで取り上げられた項目にもやはり税制についての議論がない。「主要8項目で差異も」なんて言っている場合ではなくて、河村氏の場合、党名の「減税」に対する差異をちゃんと書くべきなんじゃないんですか?

 というか、中日新聞の紙面には維新の会が提唱する「資産課税」も「消費税の増税」も書かれていないのですが、こういった行為は名古屋市民の「民意」形成を捻じ曲げるものだと感じるのですが如何思われますか?

 ここまで筆を曲げて、市民の信頼を捨ててまで、なぜそれほど河村市長を庇うのですか?
 中日新聞の記者さん。あなたが大切なのは市民ですか?市長ですか?

(このブログのタイトルを「市長のための新聞ではなく、市民のための中日新聞を!」に替えましょうかね?)

 そろそろ潮時ですよ。


*1:公教育を破壊して、教育を市場原理主義に任せよ、という意見の人も居るかも知れません。そのような意見は「切り捨てられる子どもたち」を見捨てる意見であると申し述べておきます。

*2:逆に、この言葉を慎重に避けているように見える。このことについては、稿を改めましょう。

*3:共産主義の原初形態であるマルクス主義プロレタリア独裁もこういった「設計主義」です。

*4:ケネス・アローは受賞していますから。

*5:誰か「河村政治塾」で河村市長にこれを聞いて欲しいね。彼なんかは「減税やって、地域委員会やって、地域の事は地域が決めれば完璧なシステムだがや」ぐらい言いそうだけどね。

*6:例えば、大阪は堺市や周辺都市、周辺自治体の意見を充分取り入れているでしょうか。また、名古屋は尾張名古屋共和国の建国に当たって、どのような地域に同意を求める必要がありますか?