市民のための名古屋市会を! Ver.3.0

一人の名古屋市民が「地域委員会制度」「減税日本」に対する疑問をまとめるサイトです。(since 2011/3/3)

閉塞感の正体

「正しい経済学」が導く減税の意味(補足2)

「正しい経済学」が導く減税の意味(後編) - 市長のための市会ではなく、市民のための名古屋市会を! Ver.2.0の結論、「河村流減税政策」(減税財源を歳出の削減で賄う)は、その減税規模だけ経済を減速させる。と言う結論に対しては色々と反論をいただいた。中には数式を出してくださった方も居たが、その人も途中で計算式を間違えていらっしゃった。
 「正しい経済学」が導く減税の意味(補足:後編)の補足 - 市長のための市会ではなく、市民のための名古屋市会を! Ver.2.0の条件について、c≠0 ではなくて、c≠1 ではないかという指摘は正しいです。間違えていました、訂正します。

 私自身もすぐに腑に落ちなかった「補足:後編」における「K」の喪失について、メールではお返事を書き切れそうもないのでこちらでお答えします。(TeXを使った方が判り易いと思います)

 問題は、
 式A) Y=c(Y-(T-K))+(G-K)  式が

 式B) Y=-\frac{c}{(1-c)}T+\frac{1}{(1-c)}G-K となるのでは、

 (式A)の c(Y-(T-K)) の部分の「K」(「cK」)が消えてしまっているように見えるということだろうと思う。
 これは、実は消えていない。上と下では左辺のYが同じに見えて実は違う。(※1)(式B)においては、左辺の項は全て、係数「\frac{1}{(1-c)}」がついているのです。つまり。

 式B’)Y=-\frac{1}{(1-c)}cT+\frac{1}{(1-c)}G-\frac{1}{(1-c)}(1-c)K

 式B’)Y=-\frac{1}{(1-c)}cT+\frac{1}{(1-c)}G-(\frac{1}{(1-c)}K-\frac{1}{(1-c)}cK)

 式B’)Y=-\frac{1}{(1-c)}cT+\frac{1}{(1-c)}G-\frac{1}{(1-c)}K+\frac{1}{(1-c)}cK

 こうやって全ての項に係数「\frac{1}{(1-c)}」を付けてやるとカッコの中の「cK」が残っていることが判ります。(※2)

 こういった計算式に「係数」は重要な意味を持つのですよね。
 「係数」と言えば。

 河村市長は自らの「減税政策」を野田政権の「消費税増税」に対抗させて、「減税対増税」と対立軸にしたいようですが。もうよしてください。今まで名古屋の市民は「市民税10%減税」と言う言葉に踊らされすぎました。実際は、「0.6%減税」だったのですから。これが2009年の当初から、「市民税10%減税」と呼ばれずに、実体どおり「市民税0.6%減税」であったなら、あの騒ぎと22年実施時の落胆は無かったと思います。―22年に実際に実施されて、別に何も変わりませんでしたよね。
 世の中は「係数」が重要なのです。実態からかけ離れた騒ぎにならないように。

 河村の主張と、野田総理の主張を比べてみると、単なる「減税対増税」ではありません。
それは「0.3%減税対5%増税」なのです。このインパクトの違いは大きい。文字通り「桁外れ」ですから。(※3)

公共経済学 (Y21)

公共経済学 (Y21)

「だら流しするのは危険だ」

 昨日も市長会見を見て感想を述べたわけです。住基ネットについて、そうですね、ざっと4〜5年ほどは認識がズレています。この認識のズレのまま名古屋でも住基ネットから離脱すると騒いだんですよね。けれど、ご覧ください。あれ以降何か動きがありましたでしょうか?確か、検証する筈ではありませんでしたか?その結果報告は?

 結果報告と言えば「リコール署名簿流出事件」の調査報告はまだ正式に出ていませんよね。河村事務所にも電子ファイルが有ったというコメントも出ていますが、それは誰が作ったどのような性質のファイルで、なぜ河村事務所にあったのか。更に、春の報告ではそのようなものはないという事でしたのに、9月になって出てきた理由は?
 この報告書出ていませんよね。
 それより何より、警察に被害届を出すんじゃなかったのでしたか?それどうなりました?私がブログで( リコール署名簿流出問題における三宅県議の判断 - 市長のための市会ではなく、市民のための名古屋市会を! Ver.2.0) 「減税日本はリコール署名簿流出事件で、警察にちゃんとした届出もしていない」と書いたら、「嘘つき」呼ばわりされましたが、本当に何もしていないのではないですか?

 河村と彼の周辺者は「75日メソッド」(※4)がお好きな人が多いようだ。

 話がずれましたが。
 メディア関係者が言うところには、河村市長の会見を「だら流しするのは危険だ」と言うことだそうです。最近の河村市長は、記者会見など、カメラが回っているところで平気でつじつまの合わないことを言う。嘘を付く。減税条例の成立でテレビの生番組にも出演させていましたが、現場の記者から見るとドキドキものだったようです。

 減税条例の成立(0.3%ですが)で中央のメディア(テレビキー局や雑誌等の東京発信のメディア)がこれを取り上げないのがご不満のようです。これも、国政への色気としか理解できませんよね。名古屋市長をちゃんと勤め上げる気なら、東京のメディアの反応なんぞ関係ないじゃないですか。ただ、記者会見やら在名古屋のメディアでの発言を見ていると、キー局の生放送で使おうって人は減るでしょうね。

 「ほかの議員に嫌われ、無視された議員時代のむなしさ」(2009年6月24日発言)というのは、他の人々が意地悪でそうしたわけではなくて、ちゃんと理由があったんでしょうね。そして、名古屋でも皆さん気が付いたと。

 最近、そういう理由か富に元気が無いようです。市長を投げ出したくて仕方がないし、名古屋の市政に対しても、何も情熱を持てずに居るようですね。通常、首長というのはこういう年頭にあれこれ新しい構想を思い描いて、年頭所感でそれをぶち上げるわけです。
 大村知事もやっていましたね。
 それが河村市長はまたぞろ名古屋城本丸の木造再建ですからね。

閉塞感の正体

 河村市長と違って、大阪の橋下市長は元気ですね。私にも「大阪に来て橋下批判を一緒にしませんか」と言う人が居ます。「もう、河村市長は終わったでしょ」との事でした。
 そもそも「地域政党」というのは、自民党民主党という、本来政権を担うために集まった政党が、交代で政権を担ってもマジックの様には社会が良くならない。そのうち、衆参でねじれ現象が発生してしまって、自民党でも民主党でも政権運営が不安定になってしまった。
 左の写真はネットに転がっていたものですが、米国とエジプト(ムバラク政権は20年続きましたからね)それと日本の政権交代の様子を図示したもののようです。
 ここまで政権基盤が脆弱では思い切った政策も打てませんよね。

 こういった閉塞感が、既存政党否定や官僚批判となって「地域政党」への期待へと繋がっているのだろうと思います。この年末もまたぞろ新しい政党ができてきましたが(※5)
 既存政党がダメだから「地域政党」に期待って。「地域政党」ならできると言う期待は、いったいどのような根拠から来るのでしょうかね?
 こういった根拠のない期待を煽っているのはまたメディアなんでしょうが、メディアが報道を歪めている間に国民の失望はまた深まるのでしょうね。

 こういった人々が提示する公約らしき主張は。
 増税反対」
 「議員定数の削減」
 「公務員の給与削減」

 の3点セットでしょうね。この3点だけ言う人が居たらその人は単なる「ポピュリスト」ですから、離れた方がよろしい。そして碌な政策も構想も持っていない。

 結局、この閉塞感は経済が回復しないというところに原因がある。日本経済は外需頼みでした。いま騒がしいTPPもこの外需頼みの政策ですよね。ところがその肝心な外需である米国の消費も、サブプライムローン以降落ち込みが酷いわけです。第二次世界大戦の復興からこっち、米国の消費が世界経済を支えてきたわけですよね。日本も朝鮮特需からこのサイクルに組み込まれて、バブル期などは経常黒字がどんどん積み上がった。やがて、電子機器の(イノベーションによる)価格下落や、東南アジアの安い人件費の発掘が進んで、どんどん物価の下落が起きた。この物価の下落傾向が2つの幻想を生み出します。
 1つ目が「生産性幻想」2つ目が「プライス・レース」です。

 私は河村市政が低劣だと思うのは、彼は結局行政にもこの「プライス・レース」を持ち込んでいるだけだからです。市長給与を安売り、税金も安売り、議員報酬も半額!
 プライス・レースには「適正価格」はありません。まるで喉の渇きを潤すのに、塩水を飲んでしまったかのように飲めば飲むほど乾きは酷くなります。どんどんこの欲求が大きくなるだけです。最初電子機器に起きた機材の低価格化はちゃんと根拠がありました。それまでの電子機器の製造コストが、市場の拡大(各機器への小型マイコンの導入)と生産技術の向上(電子チップの集積化)で低価格化したのです。そしてそれと軌を一にして、東南アジアなど、人件費の安い生産拠点が開発され、電子機器だけでなく様々な工業製品が低価格化して行きました。
 しかし、このプライス・レースはついにコスト削減、人件費の抑制に至ります。
 これが間違いの元です。
 人件費が抑制されたが為に内需が落ち込みます。内需の落ち込みとは売上げの減少です、つまりまた、売り上げが下がり、各メーカーは販売価格を下げて売上げを増やそうとコストを絞り、人件費を下げます。
 完全なる合成の誤謬デフレーションの地獄のサイクルが回ってしまいました。

 公務員給与というのは「国民の総生産の一部」です。(私だって、公務員セクタではないので悔しいですが)この給与を下げてしまうのは、デフレのサイクルを回すだけなのです。
 ですので、公務員給与を下げるよりも、いっそワークシェアリングなどで雇用を確保しつつ、歳出は現状維持か若干増やして、同じ歳出で雇用をより多く吸収できるようにするなどした方が良いということになります。

 先ほどの1つ目の「生産性幻想」も酷い話です。

 生産性も絞り上げれば絞り上げるだけ際限はありません。愛知県には生産性については、某トップ企業が居ますが。ここでも生産性の競争で絞り上げられるのは弱者からです。(上級の社員にはまた別の試練があるようですけどね)

 例えば農業。段々畑ばかりあるような日本の地方と、オーストラリアやら米国の大地で展開される農業が公正な競争ができるわけが無い。

 某T社の生産性追及理論は、全ての局面で正しくは作用しません!

 企業の生産性の追及は、例えば年始休暇で販売拠点を遊ばせるのはもったいない。ショッピング・モールを元旦も営業させよう。というような結論に至るでしょう。こういった競争がショッピング・モールと地元商店街で起これば、地元商店街が「勝てる」わけがない。というよりも、そもそもショッピング・モールというのは資本の論理で「勝ち負け」を問題視する存在ですが、ヒトが生まれて育ち、生きていくという商店街と言うコミュニティには「勝ち負け」は関係ないはずです。(※7)

 TPPに代表されるようなグローバル経済は間違っています。グローバル経済に期待すると言うのは、米国の消費に期待するとほとんど同義だと思いますが、それは無理です。米国においても消費は毀損しています。そもそもそのようなアンバランスな経済がいつまでも続く方がおかしい。
 また、TPPは経済政策でもないでしょう。政治的闘争です。しかし、米国債すら碌に償還できない日本政府が米国政府と政治的闘争をして勝てると思いますか?無理無理。

 公正な競争と言うのは同じ条件の者どおしが闘って初めて公正です。最初から弱い日本が、更に目隠しして手を後ろ手に縛られるようなTPP協議で「公正な競争」になるわけないじゃ無いですか。なので、TPPには反対です。横に宇沢先生の運動へのバナーもつけました。

 また、TPP反対の運動は「O.W.S.(ウォールストリートを占拠せよ!)」とも連動しています。TPPが無くそうとしている壁は、日本と米国の壁ではないのかもしれないのです。よくよく見ると、日本の金融資産と米国の金融資本の壁を取り払うのがTPPではないのでしょうか?

 この「O.W.S.」で批判されているウォールストリートに集まった米国の金融資本というのは、ヒトに幸せをもたらしません。―陰謀論とかではなく―個人や製造業と言うのは安定的な経済を望みます。生産物を作ったり生活するのに、明日や一ヶ月先の物価変動が大きければ生産や生活に支障が生じます。
 しかし、金融資本にとっては「変動こそ飯の種」なんです。ですから、彼等は本質的に変動を求めます、混乱を生じさせます。一国の経済が破綻しようと、その騒ぎに乗じて利益を上げるのが金融資本ですから。

 今の世界経済は実体経済が相対的に小さくなり、金融取引で生じる仮想の経済取引が大きくなっています。今、日本を苦しめる円高もそういった動きの一つでしょう(※6)
 この金融資本の動きを緩やかに「適正レベル」にまで下げる必要があるでしょう。(実体経済を邪魔しない程度に)金融資本が実体経済よりもプレゼンスを持つのはそもそも資本主義の精神、米国の建国の精神とも反する筈です。(ピューリタニズムやら、日本の商道徳とも外れている)

 米国の金融資本の「粗野な新自由主義」に日本が蹂躙されないために、TPPに反対し、「O.W.S.」運動にリンクすべきです。

 私たちが必要なのは、生産性ではなくて、生産であり。
 競争ではなくて共存である筈です。



※1:(式A)のカッコの中の「Y」も消えていますよね。これを消すために式を展開したから当たり前ですが。

※2:「c」は限界消費性向ですから、1とcの差は貯蓄性向ということにでもなりますね。貯蓄性向の逆数。つまり、単位貯蓄性向比率(?自分で勝手に名前を付けていますが、なんとなく判っていただけませんかね?または、プロの方のツッコミをお待ちしています)の中では減税政策で歳出抑制した分だけ、総生産が縮小されると言うことなんでしょうかね。

追記(2月8日):1月の末に指摘をいただきましたが、当該箇所を見落としておりました。

\frac{1}{(1-c)} は「乗数」ですね。

※3:だからと言って私は「消費税増税」に賛成しているわけではありません。

※4:つまり、他人(ひと)の噂も七十五日と言うことだ。これはメディアもいけない。すぐに忘れる。健忘症はメディアが最も酷い。当ブログは忘れませんよ!

※5:残念ながら「減税日本」に合流しようという国会議員は出ませんでしたね。このまま1月10日までに政党要件(5人以上の国会議員)を満たせないと、佐藤夕子氏は懐に響く話に成りますね。
 政党要件を満たす政党を、元旦までに作らないと(届出はぎりぎり10日まで)政党助成金が下りない。
 年末に新党ができる理由はこの為。

※6:この作為的な円高の背景に、日本政府が償還したくてもできない米国債の積み残しがあるとすれば、日本は自分で自分の首を絞め続けていることになります。

※7:商店街というのは皆でグランドに集まってフォークダンスでも踊りましょうという集団かな?と思いましたが、今、集団でフォークダンスを踊るような文化はありませんよね。まあ、何でもいいです。集団でリクリエーションを楽しもうというのが商店街だとしましょう。ショッピング・モールはその集団に突然乱入してきて柔道を仕掛けているようなものです。それも身長2m、体重100kgオーバーで。
 商業と言うのは競争であると言うのは、市場原理主義でしょう、しかし、資本主義とは異なりますし、市場原理主義でも寡占化、独占化はさせないようにという注意書きはあったはずです。

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