市民のための名古屋市会を! Ver.3.0

一人の名古屋市民が「地域委員会制度」「減税日本」に対する疑問をまとめるサイトです。(since 2011/3/3)

リチャード・クーさんの本を読んでみた(中編)

( アメブロ オリジナル )
$市長のための市会ではなく、市民のための名古屋市会を!-市政会2回チラシ2 リチャード・クー「日本経済を襲う二つの波―サブプライム危機とグローバリゼーションの行方」(以下、「二つの波」と表現)を読んでみた。

 前編では、河村市長の主張とは異なり、リチャード・クー氏は「減税政策」の効果を高くは評価しておらず、「減税」より「公共事業」の方が景気浮揚効果が高いと語っている。

 これは、ほとんどの経済学者がうなずく発言でしょう。景気浮揚効果を求めてなんらかの施策をするのであれば、「減税」より「公共事業」の方が効果は高い。

 たとえば、これも河村市長がよく語られることですが「なぜ金利がこんなに低いんですか」という話です。これについて同書でクー氏は次のように語っています。

 問題の原因が資金の借り手不足というマクロ経済にあるとしたら、政府としてできる解決策は、①投資減税等で民間企業がお金を借りてでも投資をしたくなる環境をつくるか、②政府が自ら民間の過剰貯蓄を借りて使うかのどちらかとなろう。(同書p.207)

 ここで、不思議なのは。河村市長は当然、この本は読んでいるんですよね。「市債は借金じゃない」「銀行に滞留している資金を使って経済を刺激するために、市債を発行したほうがいい」というような主張は、この②に当たりますよね。けれど①についてはあまり語られていない。投資を誘発させる限定は付いているけれども、「減税」を語っているのにね。続きを見てみましょうか。
 このなかでは②は即効性はあるが、政府はいつまでも財政赤字を出し続けるわけにはいかないので、中長期的には民間の資金需要の回復に資する①が不可欠だろう。(同書p.207)

 河村市長が言うように、金利が低く(資金需要が低く)、金融機関に資金が滞留しているような場合、政府や地方公共団体がその資金を自ら借りて(国債や公債を発行して)滞留資金を回すのには限界がある。それよりも、減税、投資減税が有効であると語っている。

 なんとなく、不思議な気分ですね。なぜ、「減税」を勧めている部分を無視して、②の話ばかりするんでしょうか?

 それは、ここでクー氏の言っている「減税」が河村流の定率減税ではなく、企業の投資を誘発するような減税策を指しているからです。その様態は、たとえば時限的に企業の設備投資の償還期間を短くするというような政策なのです。(なぜ、償還期間を短くすることが、「減税」に繋がるのかは、お近くの減税日本ゴヤの議員さんに聞いてください。減税日本ゴヤの市議でこの質問に答えられないなら、臍でも噛んで●んだ方が良いです)

 同書の第4章に「設備投資を促すような減税こそ最優先課題」というセンテンスがあります。気になりますね、見ていきましょう。
 バランスシート不況下で政府が果たさなければならない役割は、家計が貯金して、企業が借りない民間の過剰貯蓄を借りて使うことにある。では、具体的にはどういう方法で政府はお金を使うべきなのか。(略)「何でもいい。空港でも防空壕でもいいし、必要ならば穴を掘ってそれを埋めてもいい」と答えてきた。(略)政府がお金を使わなければ、日本経済は民間の過剰貯蓄というマクロの要因で崩壊する危険性に直面していたのである。
 また、この時期に私が減税よりも公共事業を押したのは、第二章でも説明したように同じ財政赤字を出すのであれば、前者よりも後者の方が景気浮揚効果が大きいからである。(略)
 まず、企業がまだお金を借りに来ない現状では、政府は財政出動で足元の景気を下支えしなければいけない。マクロ経済がガタガタになれば、どんなに投資環境の改善を目指した減税や規制緩和をやっても、企業がお金まで借りて設備投資をする可能性は激減してしまうからだ。(略)
 私は前述のようにバブル崩壊以降ずっと、「減税より公共事業」を提唱してきた。というのも、企業が過剰債務の圧縮のため借金返済に邁進している時はすさまじいデフレ・ギャップが発生しているから、それを最小限の財政赤字で抑えようとしたら、全額が間違いなく需要創出に回る公共事業のほうが減税よりもはるかに効率的だからである。(略)真の問題は企業の借金拒絶症なのである(略)企業家に設備投資などの支出を促すには、投資減税は極めて効果的だと思われるのである。
(同書p.249)

 経済が収縮している時には、それを浮揚させるために公共事業が有効であるというのは、原始的なケインズの提唱した原理である。ケインズは「ピラミッドでも作れ」と言ったそうだが、ここでも「穴を掘ってそれを埋めてもいい」と言っている。
 経済効果として見た場合、こんなくだらないことでも「減税」よりは公共事業のほうが  ましかもしれない。逆に言えばそれほど「減税政策」は馬鹿げているのである。

 まず、政府が「財政出動で足元の景気を下支えしなければ」「投資環境の改善を目指した減税や規制緩和をやっても」ムダなのだ。

 デフレ・ギャップ、デフレ・スパイラル。経済が収縮するのは、単純に、簡単に言ってみるとこういうことになる。企業の売上げが落ちたために、販売価格を下げる(これをプライス・レースといって、こんなことに足を突っ込む経営者は無能だけど)販売価格の廉化を人件費の削減で賄おうとする、すると、働いていた人々は給料が削減されると言うことになる(ワーキング・プアの発生)。するとこれらの人々は消費を手控えて商品を買わない。企業から見ると商品が売れないという事になるので販売価格を更に下げる。
 こうやって値下げと所得の下落競争が起こりデフレ発生ということになる。

 河村市長は「ラーメン屋でもスーパーでも、売り上げが減れば値段を下げて客を増やすとか人員を整理するとか、厳しい中でみんなやっとる」(「減税論」p.62)

 プライス・レースに参加されるんですね。それにレイオフ?経営者としての手腕も知れたものですが。

 こんな理屈を総人員およそ3万人、総歳出2兆円になろうという名古屋市政に当てはめて、無闇に歳出削減の「プライス・キャップ」を被せているわけです。

 お分かりですよね。一所懸命デフレ・スパイラルを回しているのは河村市長なんですよ。名古屋の経済を、名古屋の市当局の歳出を削減することで収縮させようとしているのが河村市政の「減税論」です。経営者としての手腕もさることながら、経済人、政治家としても完全に「はずれ」、落第でしょう。

 ただ、歳出に関しては。河村市長がいくら力んでも、現実的な行政手腕が無かったために削減できなかったようで(2ページ目に歳出の推移が表示されています)、松原市政よりも膨らんでいるようですね。ただ、ここに市長としての政策的判断がないので歳出の方向性が有効か、効率的かは不明です。

 バカが間違った方向に歩こうとしても、バカな上に怠惰であったがために歩き出さなかったから、間違った方向にあまり動かずに済んだという事でしょうか。メデタシメデタシ。


本日のおまけ:
(お待たせしました、済藤実咲市議(さいとうみさきしぎ)の話題です)

 ・8月23日から25日まで都市消防委員会の委員は北海道−千葉−東京というルートで国内視察旅行を挙行いたしました。これに帯同した済藤市議、2日目に北海道から羽田に帰ってくると、このまま名古屋に戻ってしまったそうです。
 なんでも「減税日本ゴヤ」の団会議があるから戻ったらしいのですが。
 「二日酔い?」と感じた人も居たようです。


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