市民のための名古屋市会を! Ver.3.0

一人の名古屋市民が「地域委員会制度」「減税日本」に対する疑問をまとめるサイトです。(since 2011/3/3)

名古屋市に生まれかけている断層

 前回のエントリーで書き漏らしたことがある。というか「このうすらトンカチの〜」が面白くなっちゃって、論点がずれてしまった。

 名古屋市南海トラフ地震に対する全市的な取り組みを行っていない。
 名古屋市は2月に、南海トラフ地震の被害想定を出したにも関わらず、その全市的な対策、方針を打ち出していない。
 http://www.city.nagoya.jp/kurashi/category/20-2-5-0-0-0-0-0-0-0.html


 もちろん、河村市長が市長選挙マニフェストとして掲げた「市長直属の南海トラフ地震防災チーム」なるものも、すでに市長就任以来一年を過ぎ、副市長にお気に入りの民間人を登用し、「名古屋の独立」という方針は横に打っちゃって条例まで改正して名古屋市に初めて国交省から交流人事*1を受け入れ*2。これも条例をわざわざ作って政務秘書まで設置した。
 それでも「南海トラフ地震防災チーム」は存在しない。
 河村市長にとっては、「南海トラフ地震防災チーム」よりも、ご自分の身の回りをみてくれる「秘書」の方が優先順位が高いようだ。

 そりゃあ、無能なのに市長をやろうというのだから、人手も居る事でしょう。あ、いかん、今回の文章はもう少し表現を抑え気味にして「読みやすい文章」にするつもりだったけど、どうにもこういった市民を蔑ろにして、自分の事ばかり先にするという私利私欲の姿を見ると、思わず力が入ってしまう。

 閑話休題

 名古屋市には全市的な南海トラフ地震対策の方針、グランドデザインが無い。その為に名古屋市において、「東高西低」という現象が起きているらしい。

 どういうことかというと、名古屋市の東部丘陵地に人口が集中する傾向があるらしいというのだ。
 名古屋市が公表している各区別人口動態のデータを元に、主な区別の人口動態を表にしてみた。(クリックすると拡大して表示されます)

 名古屋市:毎月1日現在の世帯数と人口(全市・区別)(市政情報)

 データは平成10年4月から平成26年5月まで。全区の動向を入れ込むと表がゴチャゴチャと判りにくくなるので、人口が増加しているとみられる東部地区(守山、名東、天白、緑)と中心地である中と東。
 減少を懸念されている西部、湾岸地区(南、港、中川)などに限定してみた。

 また表の中で赤い縦線は平成23年3月を表す。
 つまり、この縦線の前と後で動態に変化があれば、それは東北の震災を受けた結果かもしれないからだ。

 全市的に増加傾向にある中で、やはり南区、港区の減少傾向が目を引く。この減少傾向が震災を受けて加速しているように見える。
 中川区においても暫増傾向にあったものが震災を期に減少傾向に転じたように見える。
 
 名古屋市の市域の中で人口の増加する、安心して住みやすいと判断される土地と、人口が減少する、住みにくい、または住むことに危惧を感じる地域が出来上がる。こういった二層構造は危険な兆候だ。最近、デトロイトの経営破たんが話題になったが、この破綻にも産業の衰退とともに旧市街と新市街という都市の二層化が生む歪が指摘されている。

 本来、海浜地区というものは都市の中でも価値が高い場所である筈だ。けれどもこのように名古屋では人口の流出が見られる。行政のとる防災対策がなくても安心な高台に人々が流れ込んでいるという事は、行政の無策、敗北ではないだろうか。
 そしてその無策は、次に都市の中の断層という次の課題を生み出そうとしているのかもしれない。




 最近、河村市長は自身の減税政策を語る機会が多くなったように思われる。

 金シャチ横丁やSLの走行、名古屋城天守閣木造化や1000mタワーと次々に花火を打ち上げてみても市民の反応が芳しくない。

 維新の会と連携を模索していた時には、石原慎太郎共同代表から減税政策を否定され、場合によっては減税の旗を降ろさなければならないかもと、次なる「主要政策」を模索していたのだろうけれども、それら「主要政策」がパッとしないまま、維新との連携も無理そうに見える情勢となっては、もう一度減税政策に回帰するしかないと判断したのだろうか。

 河村市長は「減税政策は名古屋だけ」「なぜこの減税政策が日本全国に広がらないのか不思議でならない」と言っているが、実際に「河村流減税政策」が日本全国に広がらない現状が、この「河村流減税政策」が論理的に間違っているという事を実証している。

 選挙を前に、候補者が有権者に「減税をしますよ」と言うという事は、納税者≒有権者に「お金をばらまきますよ」と言うに等しい。究極のポピュリズム、形を変えた「買収」そのものだ。確かに、政治というのは人々の間の社会的リソースの争奪戦ならば、河村市長が納税者の代表として、納税者の利益を代弁し、減税を勝ち取って納税者の利益をはかるのは結構だ。しかし、なら何故10%なのだろうか?市民税自体が、課税対象所得の6%なので、河村氏の公約である減税は課税対象所得から見るとたったの0.6%の減税だ。それが半減した現在では0.3%の減税でしかない。

 本来は0.6%減税であるとか、0.3%減税と表記すべきところを、10%減税、5%減税と表記していた事にも誤魔化しと嘘がある。(河村市長は自著で、「消費税1%減税」を謳っているが、これは「20%減税(消費税5%として)」とは言わない。ばれるからだ。課税対象に対する1%の減税を1%減税というのであれば、課税対象所得に対する0.6%減税を10%減税と強弁するのは詭弁、嘘、ごまかし、紛らわしい表現ではないのだろうか?公共広告機構に訴えたいぐらいだ

 かの、ナントカいった湯川市議が呼ばれたせんせ〜、のように「税金が略奪である」というのであれば、この6%の市民税、すべてを「減税」しても良かったのではないのだろうか?

 なぜ、中途半端に0.6%や0.3%の減税を約束するのだろうか?残り、5.4%や5.7%の課税は「略奪」ではないという事なのだろうか?


 「河村流減税」には本質的な誤魔化しと、決定的な間違いがある。

 通常、古今東西のポピュリスト政治家がぶち上げた「減税政策」には様々あれど、それを歳出の削減で賄ったためしはない。なぜなら、通常こうした歴史に残るようなポピュリスト政治家の打ち出した「減税政策」というものはもっと大規模なモノであって、こんなチマチマした歳出削減などでは財源を賄えないからだ。*3
 今回名古屋で行われている「減税政策」は課税対象所得の0.3%分、名古屋市全体としても減税財源に掛けられている予算は100億円程度で、これは通常、市長の政策的予算として配分されている額に等しい。河村市長は政策として何らかの施策を打つ代わりに、その予算をすべて減税でばらまいているに過ぎない。

 こういうと「均衡財政論者」のあのナントカせんせ〜、は「河村市長は子どもにツケを回さずご立派」というかもしれないが、これは名古屋市だけが他の地方自治体と不均衡に課税率を替えているために、総務省から課せられた条件に準じているに過ぎない。

 さて、「河村流減税」は歳出(政府支出)を削減し、その分減税を行う。

 つまり、

 Y  = \frac{1}{(1-c)}( C0 + I + G ) - \frac{c}{(1-c)} T 

 の数式で示される部分の「Gを削減して(その同額を)Tとして支出した」という事になる。
 「正しい経済学」が導く減税の意味(後編) - 市長のための市会ではなく、市民のための名古屋市会を! Ver.2.0

この2011年12月20日のエントリー「『正しい経済学』が導く減税の意味(後編)」では少々遠慮気味にこのGとTの効果の差を検証してみたが、

  \frac{1}{(1-c)}G  \approx  \frac{c}{(1-c)} T

 であることが判る。つまり、片方に減税で可処分所得が増えた市民や法人が居て、そういった人々が河村市長の言うように「ラーメンの一杯も食べて」消費するのであれば、名古屋の市中経済は活性化されたとみなしてよい。*4

 しかし、その減税財源は歳出の削減*5で賄われているのだ。

 上の式を (1-c) について整理してみると。

  G  \approx  c{\cdot}T

 となる。
 そして、このCは常に1よりも小さい。(消費性向が1を超えることは無い)
 つまり

  G  >  c{\cdot}T

 となる。
 リチャード・クー氏など、常識的な経済評論家、経済学者が言うように「『減税』に比べ『公共事業』は全額が需要創出につながるので単位当たりの財政赤字に対して景気浮揚効果が最も大きいのである。(リチャード・クー著「日本経済を襲う二つの波―サブプライム危機とグローバリゼーションの行方」p.122)」ということだ。

 ここで実は名古屋市が行おうとしている「市民税減税5%の効果検証プロジェクト」に若干の疑義が生じる。
 http://www.city.nagoya.jp/zaisei/page/0000059765.html

 どういうことか。

 つまり、「減税の効果」を求める事と同時に、減税財源として歳出削減された政策の、「歳出削減の効果」を検証する必要があるのではないだろうか。
 名古屋市:緑政土木局からのお願い(市政情報)




 さて、当ブログは減税日本に「教えてあげた」*6

 減税日本がこの時期に党の総会を開かない事には、代表の任期が切れたままになる事も教えてあげた。市長が第2期のマニフェストに明記した「南海トラフ地震防災チーム」が実在していない事もこうやって教えてあげている。

 河村市長は名古屋市当局の中に、早急に「南海トラフ地震防災チーム」を作るべきだろう。



河村市政の裏表

河村市政の裏表


福岡市「法人税率15%に」 特区で引き下げ案
 地域を絞って規制を緩める「国家戦略特区」に指定された福岡市は、法人税の実効税率を15%程度に引き下げる規制緩和策を、国に追加で求める方針を固めた。対象は創業から5年以内の企業に限るものの、国内外から投資を呼び込んで新しいビジネスを起こしてもらい、地域経済の底上げにつなげる狙いがある。
(略)

http://www.asahi.com/articles/ASG5Z3HX2G5ZTIPE00V.html

 これが「政策減税」だろう。実効税率30%半ばの法人税を半分以下の15%にするというのだから「インパクト」がある。

 法人税率の引き下げには反対だが、こうした政策目標が明確な減税政策は政策として理解できる。福岡市の高島市長が「世界でも最も優れた市長」に選ばれるだけの事はあるのだろう。
 World Mayor: The 2014 longlist of candidates

 政策には必ずメリットとデメリットがある。この福岡市の政策のメリットとデメリットは容易に推測が付く。
 さて、河村流減税政策について、河村氏はメリットは語ったが、デメリットを語った事があっただろうか?
 政策のメリットとデメリットを明示して市民に選択の根拠を与えない行為はアンフェアだ。



*1:俗にいう「天下り

*2:それも、高校、大学の後輩

*3:その為に財政赤字に陥るか、対外戦争に走る。

*4:Tの側が大きければ、だ

*5:Gの減少

*6:「教」という字がムチを表すとは確かにその通りだろう。