以前、同じタイトルで文章を書いた。今日はその2回目となる。前回「税」の必要性というか、河村たかしが否定する「税」について、そもそも彼が言うほど否定されるものなのか、それならば無い方が良いんじゃないの? さらに、市債やら国債が借金じゃないのなら、そんなに「悪い」税で国民を苦しめずに、市債や国債をバンバン発行して「減税自治体」なんてケチ臭いこと言わずに「無税国家」でもなんでも作れば歴史に名前が残るよ!
ってな感じで話が展開したわけですが、いまひとつ上滑りしている感がありました。
実は、先方の文章でも
「またレーガン減税が減税幅約30%で経済浮揚と貯蓄=投資の増大が主目的だったのに対し、河村減税は10%で行政スリム化が主目的です」というような文章があり、頭に疑問符が生えてきた。
ここではレーガノミックスを否定して、つまり、減税による景気浮揚を主目的ではないとしている。これは、勿論他の発言とは矛盾する。というか、明白におかしい誤魔化しを感じるが、ひとまず。
なぜ、河村たかし流「減税」がレーガノミックス程の副作用も起こさなければ、効果も得られないか。あからさまに言うと。せっかく一年は減税政策を実現化させたのに、問題も効果も何故こんなに薄いか、市民の意識にピンと来ないか。
理由がわからなかった。
自分は、馬鹿だった。
その理由がこのグラフで一発でわかった。
(図をクリックしていただくと大きな図が表示されます)
このグラフはこちらのブログで作成されたものにちょこっと細工をした図です。
そちらのブログの議論も示唆に富む課題を扱ってみえますが、今はこの税率の表をご覧戴きたい。
この表は、左から右に所得税の税負担比率の変遷を描いたもの。一番左の上がいわゆる「抜本的税制改正」前の税制。所得税と個人住民税を合わせると最高税率が88%になる。つまり、お金持ちには重い税制となっていた(なので、お金持ちはどんどん、消費や投資に注ぎ込んだために経済が活性化していたんですけどね)平成6年にはこの最高税率が65%に落ち込む。更に平成10年には所得税の累進性が緩やかになる。つまり、お金持ちでも課税比率が低いまま。そして、現在の制度が一番右。最高税率は50%
平成9年には消費税が5%に引き上げられ、平成10年には法人税率も引き下げられていきます。
また、個人住民税については、一番下に左から右に向かって同様に変遷が描かれていて、課税最低限は270万円に落とされ、所得による累進性は無く、まったく平行な税率となっている。
個人で考えてみると、これは所得に掛かる税率であって、人間は当然その所得から食費や衣服などを賄うわけですから消費をします、その消費には一律で5%の課税が掛かっているわけです。
(所得を全て消費する、私のような火の車の家計の場合、課税比率はほぼ+5%と言う事になりますかね)
さて、去年あれほど大騒ぎして実現させた「市民税減税」ですが、この図でいうとどういうことになるか。一番右の下に現行の住民税の図があります。所得によらず一律10%です。
ここに青い線が引かれていますが、このラインがだいたい6%をあらわしています。
これが名古屋市における市民税です。残余の4%は県民税という事になります。
この6%の更に10%減税なわけですから、全体における比率は 0.6%です。
つまり、この図の赤い線が河村たかしが訴え、暑い中署名活動をして得たと言われる「市民税減税」のラインです。
一番左の上の図をご覧ください。
この住民税のグラフと所得税(国税)を加えたものです。
そして、この上に更に支出の際には消費税が5%掛かってきます。
…ほとんど誤差の範囲ですよね。
如何でしょうか。こんな減税を実施して、それで消費が喚起されたり、この減税を求めて住民が引っ越したり企業が移転したりすると思えますか?
税のこの部分が地域委員会に寄付されて、それで地域自治が成り立つと思えますか?
追記(8月21日):読者の方からメールをいただきました。
「これでは10%減税ではなく0.6%減税と言うべきですね」
もっともです、このアイディアいただきましょう。
今後、このブログにおいては、河村たかし、並びに減税日本の提唱する
「市民税10%減税」をより実態を表した
「河村たかしによる0.6%減税政策」と呼称統一することとします。
もっと申しましょう。
もし、あなたが年金を貰っておみえなら、市民税は払っておられませんよね、では、市民税減税は0%です。払っていないものを減額できるわけはありませんから。
これは、昨年からずっとぶつかってきた矛盾です。
年金生活をしている人が寒い中減税日本の選挙を手伝っていた。減税でお金は帰ってこないですよと言っても聞き入れてもらえなかった。いったい減税日本ナゴヤや河村市長は年金受給者に対する減税の効果は説明しているのだろうか。彼らは漠然と、年金受給額の10%が増額されるかのような誤解をしていた。
もしも、そのような誤解を、敢えて解かずに「利用」しているのだとすれば、そんなものは詐欺ではないですか。それも年金受給者という老人を狙った卑劣な詐欺だ。
と、私が言っても聞き入れてはもらえなかった。
河村たかしはこの9月にまた、この減税を市長提案として市会に提出し、市会ともめる気らしい。市の幹部もさすがに今の状態での減税には反対の意向といわれる(ここで、市長と市の幹部職員に亀裂が生じると、いまでも機能不全を起こしつつある名古屋の市政が本格的に機能不全に陥る)
河村市長は「減税」の実施理由を「行政のスリム化」「行政改革」と言っているが、丸っきりの「嘘」と断じて良い。確かに市の当局は「行政のスリム化」はしているかもしれないが、上に述べたような規模の話であり(河村市長も言っているように、総事業に対するに減税の効果はおよそ1%程度)なので、単に先送り、予算比率を縮小しているに過ぎない。※1
なので「行政のスリム化」といっても、お腹の贅肉が気になるオヂサンが、息を詰めてお腹を引っ込めているような「スリム化」でしかなく、本質的な行政改革には程遠い。
必要なのは明確なリーダーシップによる方向性と、そこに向けた行政リソースの再構築なんですが、そんな話を河村市長の口から聞いたことがない。
このページをご覧いただこう。
「これまでの行政評価の取組み@名古屋市公式HP」
この「行政評価の取り組み」とは、河村氏が市長になる以前に、名古屋市がこつこつと続けていた行政のチェックと再構築の模様です。平成14年度予算からおよそ平成20年度予算まで、最大で59億円の行政事業を削減・再編してきたわけです。
さあ、如何でしょうか。この平成21年度と平成22年度の数字。
これが、河村市政の行政改革の一端で事実です! ※2
※1 なんでも、現在街路清掃の予算は相当絞られており、この事業を請け負っている業者は困惑していると言う。
このまま秋がやってくると、若宮大通など銀杏並木の地域では落ち葉の処理が例年以下に抑えられるために、落ち葉による交通事故が増加しないかと心配されている。
つまり、単に「行政サービス」が低下しているに過ぎません。
話が脱線しますが。なんでも済藤実咲市議は「市民サービス」と言う言葉がお嫌いだそうです。高邁な論理が私には理解できませんが。なら、この銀杏の葉っぱの清掃はお任せしましょう。
ちょうど中区の問題ですし。 (済藤実咲市議スタッフ「市会議員を是非ともこき使っていただきたい」発言 )
※2 「全て」とは敢えて言いますまい、けれど、ほとんど全てで、結局「過去の遺産を食い潰す」か「先人の知恵をどぶに捨てている」ようにしか私には見えません。