市民のための名古屋市会を! Ver.3.0

一人の名古屋市民が「地域委員会制度」「減税日本」に対する疑問をまとめるサイトです。(since 2011/3/3)

減税政策、再論

名古屋市河村たかしは嘘つきだ。
いやしくも数十万人の名古屋市民が選んだ市長に対して「嘘つき」という言葉を投げつけるのが失礼であるというのなら、「発言に真実味がない」または「自身の発言を理性的に再評価する知的誠実性に欠ける」と表現してもいい。どちらも大差ない。この人物の言っていることを真に受けるのは止した方がいい。


最近「ファクトチェック」という言葉がつかわれる。

http://gohoo.org/

www.factcheck.org

政治家や行政機構、各種メディアの発言、発表が真実であるかを確認する作業のことだ。日本のマスコミはこの「ファクトチェック」に腰が重い。

国際的な「ファクトチェック」の進化に対して、日本がガラパゴス化する理由の一つに日本のマスコミならではの「ファクト=報道の真実性」の定義があるといわれる。

日本のマスコミにおいては「報道の内容が、政治家や行政機構の発言、発表の通りにされているかが重要で、その内容について自己検証はしない(つまり、「お上の言うことを下知するのが報道である」とでも理解している)らしい」
その為に、為政者の発言が誤っていても、その虚偽発言を伝えた報道機関は免罪されるらしい。特に昨今。当ブログのように何の肩書もない一介の市民までが、多くの人々に主張を伝えられるメディアが生まれると、各言論はハレーションを引き起こして、あれも正しい、これも考え方。とでもいうような「価値相対化」の襞に隠れるかのように、緊張感の欠けた「誤報」がまかり通ってしまう。そうした言論空間やメディアの緊張感のなさが、また緊張感のない政治を生み出し、無責任なメディアと、無責任な政治が人々の生活を圧殺していくのだろう。

私のようにしがない一市民でも、仕様の取り違えや設計ミスを行えばとんでもない責任を追及される。民間企業において例えばアパート建築で違法なことを行えば、その責任は当然ながらとことん追求される。およそ大人の行う仕事において、ミスなど許されない。(ミスれば、その損害は賠償しなければならない)
しかし、政治やマスコミにおいては、こうした違法性や、明らかな「設計ミス」は日常茶飯事に許される行為なのだろうか。

名古屋市長であり、地方政党減税日本の代表、河村たかしは嘘つきだ。
その傍証がある。
迫る参議院選挙において減税日本も候補者を擁立しているようだ。
私は奇異に感じる。なぜ、減税日本は選挙の度に立候補者が異なるのだろうか?
人材が豊富なのだろうか?(ここ笑うところです)
人材が豊富で候補者を次々変えていくのであれば、それでも過去の候補者は支援を続けてもよさそうなものなのに、前々回の参議院選挙に立候補した若い男性弁護士も、前回の参議院選挙に立候補した女性候補も、ここのところ、減税日本の活動ではトンと顔を見ない。(この女性候補は落選直後、私に「絶対に諦めませんから」と噛みつきそうな勢いで食って掛かったというのに)

それどころか、いわゆる議会リコール運動をピークに、減税日本周辺からは人がどんどん居なくなっている。

そりゃ当然だ。

漠然と過ごして居れば分からないが、減税日本河村たかしに深くコミットしていれば、その発言に嘘が多い「発言に真実味がない」または「自身の発言を理性的に再評価する知的誠実性に欠ける」のでとても付き合いきれないと思えるのだろう。(特に、今、一番貧乏くじを引いているのは幹事長の田山市議だと思うのだが、ご愁傷さまと言う以外にない)

河村たかしに深くコミットしつつ、その虚偽性に気が付かない、または、気が付いても抜き差しならなくなっているというのは、前者であれば同様に「理性的に再評価する知的誠実性に欠ける」のであろうし、後者であれば単に「誠実性に欠ける」のだろう。愚行権というものだ、好きにすればいい。

こういった周辺住民が自己責任で何をやっても、どのような苦境に陥ろうとも知ったことではないが、いやしくも社会の木鐸たろうとするマスコミまで上記の「後者」の列に加わっているとするならば、それは社会正義に悖る行為だろう。

さて、前置きが長くなったが。名古屋市長であり、地域政党減税日本の代表でもある河村たかしの発言に真実味がない、または「自身の発言を理性的に再評価する知的誠実性に欠ける」証拠をご提示しよう。

この人物が「地域経済に決定的な影響を及ぼし、名古屋の経済を日本一早く回復させる」と喧伝している「市民税減税」など、河村たかしの言うような効果は持っておらず、標準的な経済学では完全に否定されているということをお示しする。

しかし、名古屋市民の中には、いまだにこの「河村流減税政策」に経済効果があると勘違いしている人々がいる。これは、地元紙中日新聞の巧みな言論誘導によるものだろう。

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2011年2月2日 中日新聞夕刊 神野直彦氏インタビュー

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2011年2月28日 中日新聞夕刊 竹中平蔵氏インタビュー

図は2011年2月の中日新聞「地域のかたちを問う」というシリーズの中で、名古屋市長選挙(トリプル選挙)に寄せて、この「河村流減税政策」について、竹中平蔵氏と神野直彦氏の「両論」を併記することで、この政策について議論があるかのように「見せている」が、実は竹中平蔵氏<ですら>「河村流減税政策」については肯定的な発言はしていない。神野直彦氏に至っては触れてもいない。

つまり、2011年の名古屋市長選挙における大きな論点であったはずの「市民税10%減税政策」の是非について何も議論などされていない。

続いて中日新聞は、2014に「減税5%効果 市が試算」として
「市内総生産 年1128億円増」とあたかも経済効果があるかのような報道を行った。

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これは、名古屋市の財政局自体が「差額を単純に積み上げた金額には意味はない」と伝えたにも関わらず、減税政策の効果を大きく見せようとした過剰な表現だった。(もし、中日新聞の記者の中で「自身の発言を理性的に再評価する知的誠実性」のある方がいるのであれば、この報道についてのご意見を伺いたいものだ。上に述べたように行政機構が発表したものであれば、自身の報道の在り方はイノセントなものだろうか)

そして、2017年に市の試算は「減税しない方が経済効果増」であると示した。
この場合でも、「条件次第で逆の結果もある」と内側をほじくって自己の正当性を保つかのような報道となっている。
霞と消えた1128億円 - 市民のための名古屋市会を! Ver.3.0

内容について検証する気であるのであれば、自らが1128億円とぶちあげたシミュレーション自身の信ぴょう性や、そもそものシミュレータの設計における「社会的人口増」の影響などについては考慮しないのだろうか。こういった態度が「知的誠実性」に欠けるというのだ。

d.hatena.ne.jp

さて、こうやって市民、有権者を「ミスリード」してきた報道は、実はその最初から「誤っている」ともいえる。

そもそも名古屋市における「河村流減税政策」は「市民税10%減税」ではなく「市民税0.6%減税」ではないのか?

まじかに迫った消費税増税。これを消費税8%から10%への「25%増税」ととらえる人はいない8%から10%への消費税率の増加は、「2%増税」と表現される。(これを25%増税と表現するならば、確かに嘘ではないが過大な表現と退けられるだろう)

ならば、「課税対象収入に対して6%課せられる市民税を、5.4%に減税すること」はなんと表現されるべきだろうか。「市民税0.6%減税」ではないのか?

「市民税0.6%減税」を「市民税10%減税」と伝え続けてきた態度には「知的誠実性」があるだろうか。・・・・第1の嘘


さて、「市民税0.6%減税」を「市民税10%減税」と喧伝してきたことには相当の面の皮の厚さを感じずにはおられないが、それだけではなくその減税率が「5%」で落ち着いていることは、これは「公約違反」なのではないのだろうか?これは「嘘」ではないのか?

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「減税ナゴヤ街宣車

減税日本街宣車を見ると、「市民税10%減税」の「10」の上にシールが貼られて「5」に修正されている。夕方のスーパーでもあるまいに「値札」を重ねて貼るように、自身の公約であった「10%減税」を、あたかも当初から「5%減税」であったかのように装う姿には「誠実性」などという言葉が顔を赤らめて逃げ出してしまう。・・・・第2の嘘

しかし話はさらに続く。(もう、お腹いっぱいで、こんな嘘とは関わりたくないと思うのが当然の常識というものだと私も思う)しかし、話は続くのだ。

そもそも上でも述べたように名古屋市の住民税(課税率)は6%であった。
これは、住民税負担率10%を、名古屋市6%、愛知県4%と分割した結果だ。

名古屋市長、河村たかしはこのうち、6%を5.4%に減税するとした。

やがて減税日本代表の河村たかし自民党の大村氏を愛知県知事に迎えた。この際の公約は、名古屋市同様、愛知県においても「住民税10%減税」だった。つまり、名古屋市の住民税を [6% → 5.4%]に、愛知県民税 [4% → 3.6%]に、足して、住民税 [10% → 9%]にと、「一割削減」(10%減税)を主張したわけだ。

しかし、大村愛知県知事は愛知県民税の減税には二の足を踏む。減税日本代表の河村たかしの再三の減税実施要請に対して大村知事は要請を拒否した。河村たかしは、愛知県民税についても、自ら主張する「10%減税政策」を実施せよと、再三にわたって要請した。

結果として、大村知事の拒否は、「ムラムラコンビ」と呼ばれた両者を仲たがいさせて、共通の公約であった「中京都構想」もどこかへ消えてなくなってしまった。(名古屋市において、公約がどこかへ消えてなくなるのは日常茶飯事だ)

さて時は移り、平成30年に「県費負担教職員制度の見直し」を行った、これに伴って、名古屋市と愛知県の住民税割合が改正された。愛知県から名古屋市へ税源移譲のために2%が移管されたのだ。

つまり、上で言う名古屋市の住民税は[6% → 8%] に、愛知県の住民税は [4% → 2%] に変更された。

さて、名古屋市の住民税は、[6%]であったものが、「5%減税」によって[5.7%]になっていた。ここで県から[2%]の税源移譲が起こったのだから、[8%]の課税率が「5%減税」されるのであれば[7.6%]になっている筈だ。しかし名古屋市の課税比率は「7.7%」である。

名古屋市:個人の市民税の減税について(暮らしの情報)

これはどうしたことか、なぜこんな中途半端なことが起きているか。

[2%]の税源移譲分については「減税政策の範囲外」としているのだ。

なぜ?

大村知事にあれほど強硬に「10%減税」実施を求めていた河村たかしが、その課税比率について権限移管された途端、「減税対象外」としたのだ。結果として名古屋市の市民税減税は「5%減税」ではなく「3.75%減税」になっている。・・・・第3 の嘘

そしてこうした経緯についても理解している市民はどの程度いるのだろうか?

相変わらず、減税日本街宣車には「市民税5%減税」の文字が掲載されているし、河村たかし自身、「減税5%実現」と主張しているが、減税率は正しくは「5%」ではなく「3.75%」である。そして、そもそも彼の公約は「10%減税」だった筈だ。

整理しよう。
1. そもそも「市民税10%減税」という表現がおかしい。「市民税0.6%減税」が正しい。
2. しかし、公約の「0.6%減税」は守られず、知らない間に「0.3%減税」に値切られてしまっている。そして公約実現のための「減税PT」などは開店休業?状態だ。

名古屋市:市民税5%減税検証プロジェクトチームについて(暮らしの情報)

3. その上に、県より税源移譲された住民税2%分に関しては減税対象としていない。全体が8%であるものが7.7%減税になっているだけなので「0.3%減税」のままであり、減税日本的な表現で言えば「3.75%減税」でしかない「5%減税」という言葉は嘘だ。

名古屋市民は3段階にもわたって嘘をつかれているにも関わらず、これを容認している。なんとも鷹揚な住民だろうか。

この上に怪しい怪しい平成26年のシミュレータという事例まである。

名古屋市:市民税5%減税の検証について(平成26年度)(暮らしの情報)

減税検証シミュレーションに対する疑惑 - 市民のための名古屋市会を! Ver.3.0

さて、「河村流減税政策」がインチキである決定的な事実の提示の前に、一つ理性的な検討を加えてみよう。

地方財政論」という本がある。書かれたのは「持田信樹東京大学大学院経済学研究科教授(2019年3月11日退官)」財政学、地方財政論の泰斗である。

地方財政論

地方財政論

2013年に上梓された地方財政論の今日的な決定論、スタンダードな教科書だ。

さて、ここに「名古屋市の経済に決定的な効果をもたらす」とされた「市民税10%減税」「河村流減税政策」はどのように扱われているだろうか。

それが皆さん。大笑いです。

全く無視。

一行も言及はありません。

平成16年の税制改正を皮切りにして、個人住民税の超過課税を実施している地方自治体が増えていることについては論考がある。(p.166など)が、「河村流減税論」には一言も言及はない。


そもそも持田氏の整理されている「地方財政論」から見ると、
一地方が減税を行って「経済効果を期待する」などという主張は全くの空論なのだろう。

次のような記述がある。
第7章 地方税の体系 2.地方税原則 「税収の安定性」(p.140)

 地方税の第2の原則は、税収の安定性である。ビルトイン・スタビライザーと呼ばれる自動安定化機能を用いた経済安定化機能については、それを実施すべき代表的な租税として、個人所得税及び法人税が挙げられる。それらの税目は税収の所得弾力性が高く、景気対抗的に税収が増減することが必要であった。
 (略)
 経済安定化機能を担う中央政府と異なって、地方公共団体の行政サービスは、住民の日常生活を支えているものが多いので、毎年一定の水準で提供される必要がある。地方公共団体の収入の都合によって、行政サービスが影響を受けることは望ましくない。したがって、地方行政サービスをまかなうための税収は、景気変動等によってあまり変動しないことが望ましい。これを税収の安定性の原則といい、税収の所得弾力性が高くない税目が、地方税として望ましいとされている。わが国の地方税のうちでは、地方消費税、固定資産税の税収は、安定性が高いとされている。

つまり、もともと日本における地方税の制度設計は「経済安定化機能」に向いていないのであって、これを10%減らすとか5%減らすとかを議論して、経済効果が「1128億円」などとはしゃぐこと自体が誤りなのである。

同書では「経済安定化機能」を次のように定義している。(p.9)

 経済は、しばしば不況やインフレーションの状態に陥るが、経済を安定的に保つために政府がなすべき機能を、経済安定化機能と呼んでいる。標準的な考えによれば、このうち(「政府の役割」としての資源配分機能、所得再分配機能、経済安定化機能:引用者補足) 所得再分配機能、安定化機能は中央政府に割り当てられるべきであり、地方政府はある種の公共財を供給する資源配分機能に特化すべきであるとされる。(Oataes[1972])

www.kinokuniya.co.jp


政策Q&A | 減税日本genzeinippon.com

ここに書かれていることは、まるきりのインチキである。

「経済学的にも、デフレ不況下においては増税財政再建ではなく、減税や財政出動などの景気刺激策が必要です」とされる「減税」は通貨発行権を持つ中央政府が行う「減税政策」であり、通貨発行権を持たない地方自治体が減税を行っても流動性は増えない。

日本の地方財政制度から言うと、地方が減税を行って債券発行を控えれば、流動性は抑制され、却ってデフレ不況を悪化させる。幸いなことに、名古屋市市域の経済力は底堅く、減税なるものもたったの「0.3%」(比率表現で言えば「3.75%」金額でいうと、約100億円程度)であったので、この低減効果が出なかったというだけだ。

ichi-nagoyajin.hatenablog.com

さて、では「河村流減税政策」が決定的にインチキであり、即刻停止すべき失政である事実の提示を行おう。

事実。河村たかしが「減税を行えば、名古屋市の経済は日本一早く景気回復する」といったような効果は見えない。また、それが彼の言うように「10%減税」ではなく「5%減税」であるから効果が弱いのだ。と言うのであっても、効果の兆しは見られるだろう。しかし、それもない。

そのため、日本全国。地方税の税率を「減税」している自治体は、すでに「名古屋だけ」になっている。

http://www.soumu.go.jp/main_content/000174389.pdf
金武町議会 会議録検索システム

平成26年第4回金武町議会定例会会議録 第5号 招集月日 平成26年9月9日
「議案第58号 金武町町民税減税条例を廃止する条例」

なぜか。
デフレ時に、流動性を抑制するような馬鹿な経済政策を取る自治体が名古屋以外にいないからだ。

では、名古屋でだけ、なぜこんな政策が延々と続いているのか。

それは市長が河村たかしであり、その地域に強固なブロック紙中日新聞」があるからだ。

河村たかし、が居り、「中日新聞」が市民、有権者の目となり、耳となっている限り、こうした名古屋だけの「特殊な状態」は続くことだろう。

「地方議会の議員報酬を半減する」などという乱暴な主張も、名古屋だけのものだ。*1

そして、減税政策も、議員報酬の半減も、理論的根拠は構築されていない。単に「市長の信念だから」と主張される。しかし、理性的な理路とも、常識的な判断とも整合できない「信念」を頑迷に主張する行為は、なんと呼ぶべきだろうか。

それは、嘘ではない。虚言でもない。知的誠実性の欠如でもない。

理性も常識もかなぐり捨てて<誤った信念に固執する姿>を、ヒトは何と呼ぶべきだろう。



追記:

名古屋市H23予算案発表 浮いた減税分112億を予算化 : 市民オンブズマン 事務局日誌
減税政策についての再整理 - 市民のための名古屋市会を! Ver.3.0


「減税なくして行政改革は進まない」 | 2011年 | 話題の人 | 財界さっぽろ


ameblo.jp



追記:

笑えない。

toyokeizai.net




名古屋城木造天守復元事業ここが問題!(案)

主催:名古屋城木造天守にエレベーター設置を実現する実行委員会
日時:2019年6月22日(土) 13:00~16:00
会場:名古屋市 北区役所2階 講堂

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6月22日 講演会


○「名古屋城天守閣整備事業」違法支出訴訟 第二回公判

7月3日(水)午前11時
名古屋地方裁判所 第1102法廷

○月例勉強会
7月8日(月)18:30~20:30
「北生涯学習センター」(北区)第1集会室

名古屋城天守有形文化財登録を求める会
https://bit.do/Ncastle


*1:こっちは、アチコチで捨て鉢になったようなインチキ候補者が散発的に主張しているが、その大部分は冷笑をもって迎えられている