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大村知事リコール運動について

 昨年のあいちトリエンナーレ騒動に対して、名古屋市河村たかし市長や高須クリニックの院長であり、テレビタレントでもある高須克弥氏が大村愛知県知事に対するリコールを行うそうである。

 河村市長や高須氏の主張は全くのデタラメであり、まさに「亡国の暴論」でしかない。

 河村市長の主張の欺瞞と幼稚な誤りについては、河村市長が大村知事に宛てた「公開質問状」におけるやり取りで十分立証されている。

ichi-nagoyajin.hatenablog.com

 この中で河村市長は大村知事への「公開質問状」であるにも関わらず、津田監督の意見を求めるなど、おおよそ正常な社会人としての常識すらわきまえていない悩乱を見せている上に、自身が主張の根拠として引いた一橋大学の阪口教授に「河村市長の行為は公権力の行為として誤っている」と明確に否定されている。

gendai.ismedia.jp


 自身が主張の根拠とした有識者から明確な否定をされたのであれば、それは論駁であり、つまり河村たかしは大村愛知県知事からの反論を待たずに、みずから論争において敗北を喫している。にも関わらず、そうした「事実」を見ようともせず、大村知事の正当な反論に対し、一方的な主張を重ね、恥の上塗りをしているのであり、河村たかしの主張に論理的正当性がないことは明白であり、大村愛知県知事には瑕疵は認められない。

 それでいてこの度、大村愛知県知事に対してリコールを求めるならば、それは大義名分も無い行為であり、河村、高須というテレビタレントの集客力を政治的利用する劣悪なポピュリズムでしか無い。

 しかしそれでも「直接請求」という行為はすべての有権者に認められた権利であり、いかに歪んだ主張であろうと、それが特定の個人への誹謗や、民族、宗教に対する憎悪表現(いわゆる、ヘイトクライム)でない限りは、自由に表現する権利は認められるべきだろうと思われる。

 しかし、そういった主張に対して、また反論する表現の自由も認められるべきであるし、彼らが事実と異なる主張をしているのであれば、それを指摘し、正す行為は有権者、県民、市民が民主主義を守るための義務でも有るだろう。

 そうした「中身」についての議論は別稿に移し、本稿ではリコールと呼ばれる、いわゆる「直接請求」の為の手続きについて確認をしておきたい。

 そして、こうした手続を確認していくと、実はとても楽しい結論が導き出せる。まったく、保守リベラルを自認する私にとっては、この結論は素晴らしく、河村たかしや高須某には足を向けて眠れなくなるかも知れない。

 最初にお礼を申し述べておくべきだろう。

 いや、河村たかし高須克弥、本当にありがとう。

 まず、本稿の元ネタを紹介しよう。


横浜市会 議会局政策調査課(法制等担当)平成26年12月編集・発行
「市会ジャーナル 平成26年度 Vol.11  (通算138号)」
「直接請求について」

https://www.city.yokohama.lg.jp/shikai/gikaikyoku/journal.files/0081_20180809.pdf


が情報源となる。

 有権者の署名によって知事リコールを求めるためには、解職の権限を持つ「条例の制定」を求めなければならない。署名が一定数集まれば、条例が制定され、その条例に基づいて住民投票が行われる、この住民投票において解職を求める有権者過半数を超えれば知事は解職となり、すなわち、知事を決める知事選挙が行われることとなる。(愛知県知事選挙の選挙費用(県が用意している予算)は4億5,635万円(2010年実績)であり、住民投票と2回で9億円程度の経費がかかる)

 署名収集(2ヶ月間)
 ↓
 住民投票
 ↓
 知事改選

という流れになる。

 この直接請求の署名を集めるのは「請求代表者」と「受任者」という人しか集めることはできない。誰でも彼でも好き勝手に集めるというわけにはいかない。(特に県外のものにはその権限はない)

 図は、上記横浜市会のまとめた文書から引いたものであるが。
 こうした手続を踏まえなければ署名は無効となる。

追記(7月27日):
この「図」を入れ忘れてました。申し訳有りません。

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請求の流れ


 特に重要なのが「地方自治法施行令」の第91条と92条である。

第91条 地方自治法第74条第1項の規定により普通地方公共団体の条例の制定又は改廃の請求をしようとする代表者(以下「条例制定又は改廃請求代表者」という)は、その請求の趣旨(1,000字以内)その他必要な事項を記載した条例制定又は改廃請求書を添え、当該普通地方公共団体の長に対し、文書をもって条例制定又は改廃請求代表者証明書の交付を申請しなければならない。
2 前項の規定による申請があったときは、当該普通地方公共団体の長は、直ちに市町村の選挙管理委員会に対し、条例制定又は改廃請求代表者が選挙人名簿に登録された者であるかどうかの確認を求め、その確認があったときは、これに同項の証明書を交付し、かつ、その旨を告示しなければならない。

第92条 条例制定又は改廃請求代表者は、条例制定又は改廃請求署名簿に条例制定若しくは改廃請求書又はその写し及び条例制定又は改廃請求代表者証明書又はその写しを付して地方自治法第74条第5項に規定する選挙権を有する者(以下「選挙権を有する者」という)に対して、署名(盲人が公職選挙法施行令(昭和25年政令第89号)別表第1に定める点字で自己の氏名を記載することを含む。以下同じ)をし印を押すことを求めなければならない。

2 条例制定又は改廃請求代表者は、選挙権を有する者に委任して、その者の属する市町村の選挙権を有する者について前項の規定により署名し印を押すことを求めることができる。この場合においては、委任を受けた者は、条例制定又は改廃請求書またはその写し及び条例制定又は改廃請求代表証明書又はその写し並びに署名し印を押すことを求めるための条例制定又は改廃請求代表の委任状を付した条例制定又は改廃請求者署名簿を用いなければならない。
(以下略)



つまり、

 ・署名収集は請求代表者か受任者(92条2における「委任」を受けるもの)しかできない。

 ・署名簿には受任者の氏名、住所の明記が必要となる。

 ・受任者は自身の選挙区(愛知県は69の選挙区に別れている)以外では署名の収集はできない。

 ・受任者が収集できるのは、自身の選挙区内の住民に限られる。

 92条の2の次の文書「条例制定又は改廃請求代表者は、選挙権を有する者に委任して、その者の属する市町村の選挙権を有する者について前項の規定により署名し印を押すことを求めることができる」


 ・署名収集には請求代表者か受任者しかできないのだから、そうした者が立ち会わない「回覧」や「郵送」及び「配置」しての収集は違法となる。


 ・署名簿には請求代表者や請求の趣旨等の表示が必要であり、署名簿をバラバラにして署名収集するような行為や、署名収集後に合本するような行為も違法です。

 ・代筆は認められません。


 すでにこうした動きもあるようだ。

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 この「真日本有志の会」(旧姓「真日本ネット連合」?)の長谷川正という人物は、ネット上のコンテンツについて他者の著作権侵害に無自覚なようで、そうした指摘を受けている。遵法精神に満ちているようには見えないが、愛知県外から来たものが「署名募集」を行う行為は上に述べたように違法である。

 上記のような違法行為を認めたら市区町村の選挙管理委員会か、愛知県選挙管理委員会(電話番号:052-954-6069)に通報をお願いしたい。

 即座に是正されることはないかもしれないが、終了後こうした違法行為の通報数は公表され、その数字が多ければ如何に大村知事リコールを求める者たちが良識から外れているかを示す事ができる。

 そうした啓発チラシも作ってみた。

f:id:ichi-nagoyajin:20200724211152j:plain
その署名は違法です


お近くのコンビニでネットプリントすることもできます。
ユーザー番号は TRMXBC5A6E 

やり方は、
networkprint.ne.jp

署名簿には、署名、印のほか、署名年月日等を記載しなければならないが、署名簿の様式が署名年月日、住所、生年月日欄を全く欠く署名簿 →

法定の様式に違背しているのは明らかであり、署名簿全体が無効。
(昭25.12.1行政実例、昭28.6福島地裁判決)


審査の段階において、原型を留めない程度に改ざんされた署名簿 →

全体の署名を無効。

従前の署名簿と認められるものに他の署名簿の要旨を添付または挿入したことが提出された署名簿の状況から明らかであるとき →

当該添付又は挿入にかかる部分の署名は無効。

請求書又はその写し、直接請求者証明書又はその写しの付していない署名簿、署名収集の委任が行われた場合に委任状を付していない署名簿 →

無効。(昭23.12行政実例、昭25.11.1仙台高裁判決)

請求書又はその写しと称するものが付してあったとしても、その内容が直接請求代表者証明書交付申請書に添付されていた請求書の内容と異なる時 →

無効。(昭25.12.1行政実例)


直接請求者代表者の印のない委任状を添付した署名簿により収集された署名 →

無効。(昭30.12行政実例)

数名の受任者が一冊の適法な署名簿で署名を収集した場合、その中の一人の人物が無資格者であったばあい →

その無資格者が収集したと認められる署名は無効。(昭33.1行政実例)

同一家族、同一地域の者の署名が、同一筆勢で明らかに代筆と認められるもの →

無効。(昭23.6、昭23.8、昭23.12行政実例)

郵便で求めた署名 →

無効。(昭26.9.10行政実例)

回覧で求めた署名 →

無効。(昭28.8.25、昭33.1 行政実例)

http://kenmintohyo.com/record/rec/1/10000.pdf


さて、3000文字を超えました。
そろそろネトウヨ君たちは脱落したかな?

 わざわざ条文まで引用したのは、できるだけネトウヨ君たちを脱落させたかったからなのですが、ここから私が河村たかし高須克弥にお礼を言いたくなる理由を書きます。


 実は、この大村知事リコール運動は、愛知県内におけるヘイトスピーチを振りまく、ネトウヨを撲滅する機会になりそうなんだ。

 すでにお気づきのように、リコール署名を募集するためには、募集者は(それが請求代表者であれ、受任者であれ)氏名や住所を公表しなければならない。

 ヘイトスピーチを繰り返す者たちは「桜井誠」を始めとして本名を隠そうとする。(桜井の本名は高田誠)また、住所や職業も隠そうとする者が多い。

 つまり、本心ではやましいことをしている自覚があるんだろう。

 しかし、この大村知事リコール運動で署名を収集しようとすれば、氏名(本名)と住所(選挙人名簿記載の住居地)を公表しなければならない。(今から変更しても無駄です。今住所地を変えれば選挙権を失いますからね)

 つまり、署名簿収集期間中、その署名活動を観察すればネトウヨ君の個人情報を収集し放題ということになる。

更に、9月末には収集期日が訪れる。

 10日以内に各地(愛知県内69の市区町村)の選挙管理委員会に署名簿は届けられる。その後、選挙人名簿と照らし合わされて、署名簿は「縦覧」に伏せられる。


 つまり、誰でもこの署名簿の請求代表者、受任者、署名者の氏名、住所を自由に確認することができる。

 今後、愛知県内において、ヘイトスピーチを行うような者は、氏名も住所も明示されることとなる。

 私が、河村たかし高須克弥にお礼を言いたくなる理由がおわかりいただけるでしょう。


ただし、縦覧は規定数に近い数が集まらないと行われそうもない。
今の所、とても無理のようです。

署名収集を8月1日より開始すると言っていますが、署名簿の書式について、まだ県の選挙管理委員会に提出されておらず、印刷等のスケジュールを逆算すると、8月1日にはとうてい間に合わない。

更に、ここには書きませんがこの事務局は未だ幾つか忘れていることが有るようで、そうした手続きをクリアして署名収集(ネトウヨ個人情報開示大会)がはじまるのは、8月の中旬頃からということになるかもしれません。

追記:
困ったもんだよね。

https://pbs.twimg.com/media/EdvolC6U0AA-PbZ?format=jpg&name=medium


やっぱり「隠したい」んだね。
しかし、「縦覧」があることを知らないのだろうか?

知らないとすれば、直接請求のための署名を求める中心人物としては不用意だし、
知っていてこんな 嘘 を言うなら、本当の嘘つきということになる。