市民のための名古屋市会を! Ver.3.0

一人の名古屋市民が「地域委員会制度」「減税日本」に対する疑問をまとめるサイトです。(since 2011/3/3)

名古屋城天守閣木造復元「シンポジウム」

本日、名古屋城天守閣木造復元「シンポジウム」が行われた。

名古屋市:平成29年度開催 名古屋城天守閣木造復元 市民向け説明会・シンポジウム(観光・イベント情報)

2時間30分の内、今回505億円が注ぎ込まれようとしている名古屋城天守木造化事業とは直接関係のない、「名古屋城築城の歴史」という講演が1時間行われ、30分は、やはり木造復元事業と関係のない、竹中工務店の研究発表が行われていた。その他、名古屋市から総合的な案内(保存活用計画案に対するパブリックコメントの募集案内)やバリアフリー対策についての説明があり、市民との質疑応答は30分程度となっていた。当然、質疑応答であり、市当局や竹中工務店からの回答の時間も有るので、市民からの質問時間は実質的に15分となる。

この貴重な時間について、鼻白む事実がわかったのでご報告する。

その前に、上で、「名古屋城築城の歴史」が木造復元と直接関係がないと言った。
この事に触れておきたい。

今回、名古屋市は数年かかりで集約してきた「特別史跡名古屋城跡全体整備計画(以下:全体整備計画)」を破棄して、「特別史跡名古屋城跡保存活用計画(以下:保存活用計画)」を名古屋城整備の計画としてプロポーザルパブリックコメントを募集し、策定につなげたいつもりのようだ。「保存活用計画」には天守木造化が盛り込まれている。こうした全体計画が策定されていないと文化庁特別史跡としての名古屋城に対する整備計画を認めない。

http://www.city.nagoya.jp/kankobunkakoryu/page/0000101416.html
名古屋市:特別史跡名古屋城跡保存活用計画(市政情報)

その為、ろくに議論もないまま「保存活用計画」をしゃにむに策定しようとしているが、ここには幾つもの問題点があり、こんな計画を成立させたら、名古屋市会は見識を疑われる。それについては別に稿を設ける。

こうした築城の歴史は、それ自体は興味深いものであった。幾つかは非常に興味を惹かれ、今日に通じる話題も有ったが、名古屋城の貴重さは今更議論の余地は無いのであって、その築城の歴史を紐解いて、認識を新しくしても、それであるならばいよいよ文化的に「正当な」名古屋城天守を守るべきと思うだけであり、木造復元には繋がらない。

また、竹中工務店の30分の研究発表も、「名古屋城天守閣整備事業にかかる技術提案・交渉方式(設計交渉・施工タイプ)による公募型プロポーザル」からは離れている話題であり、議論すべき問題ではないのだ。

トピックス | 名古屋城公式ウェブサイト


必要なのは、貴重な名古屋市民の財産である、名古屋城天守を破壊して、木造のレプリカを作ることの是非であり、現在の名古屋市民は、昭和34年当時の名古屋市民の天守再建にかけた思いを無碍にして良いのかという極めてクリティカルな文化の問題なのである。

文化とは、地域文化とは、その土地に今住んでいる者だけのものではない。その土地を開拓し、あるいは栄えさせ、あるいは新たに流入してきた、様々な年代の住人が、地層のように累積して成立させるものである。今、住んでいる者は、そうした先人から管理を任され、預かっているだけで、未来の住人により良く引き渡す義務がある。

こうした歴史、時間、先人の労苦に対する真摯な思いこそが、文化を育み、その一握りの土塊、その一片の書画に価値を生み出す。

その昔、日本がバブルで浮かれていた頃、ある大企業のオーナーがゴッホの「ひまわり」を巨額を投じて買い、「自分が死んだら一緒に棺桶に入れて焼いてくれ」と語り批判を浴びた。

文化的遺産は、たとえそれが売買されているものであるといっても、処分権を持っているわけではない。一時、管理する権利をお借りするだけなのだ。それが文化に対する常識であり、この企業オーナーなどのような人物には文化を語る資格はない。


河村市長になってから、確かに「天守木造化」については語られてきただろう。しかし、現天守、戦後、市民の発意と寄付によって鉄筋鉄骨コンクリートで再現された、現在の天守について、十分な議論は為されていない。

それは、登録有形文化財に成り得る文化的価値を持つし、戦災によって失われた遺物に対する再建建造物としての価値も持つ。

2017-08-08 日本イコモス国内委員会よりの回答


「日本イコモス国内委員会」の指摘する「Post-trauma Reconstruction の問題」の事例なのだ。

本日の名古屋市の説明の中でも、「木造復元を進めて世界に誇れる文化財にする」というような発言が有った。まったく根拠のない発言であり、世界的な文化財に対する態度とは異なる。ユネスコなどの勧める「ヴェニス憲章」では「修復工事はいっさい理屈抜きに排除しておくべきである」とされているのが、世界的な常識なのだ。


私は5回の説明会(の内、参加できた3会場で)質問の機会があれば、この問題ついて質問してきた。


「勝手に名古屋城天守を木造復元すると言っているが、そもそも誰が決めたのか?」

名古屋市当局の回答は、ある時は「市民アンケートによって決めた」であったり、「議会が決めた」であったり明確な回答がなかった。

この「市民アンケート」では、その選択肢が、「優秀提案による木造復元」と「優秀提案によらない木造復元」「耐震改修工事」「その他」であった。その設問には前提として「耐震改修した場合でもコンクリートの寿命が40年という調査結果が出ています」と前書きしている。説明会の会場で指摘が有ったが、こんなものは誘導であって、正当なアンケートとはいえない。

さらに、この説明は子ども騙しだ。

「耐震改修は、コンクリートを長寿命化させるものではない」

大阪城天守は、耐震改修と長寿命化工事を行っている。

長寿命化工事を行えば、コンクリートの寿命が40年とは限らない事は常識である。

すると、当局は「長寿命化しても、何年保つか判らないので考慮しなかった」と回答した。これも子ども騙しだ。「では、木造復元天守は何年保つといえるのだ?」

回答できないだろう。

オリジナルの名古屋城天守も、慶長に建てられ、宝暦に大改修を受けている。150年で改修工事が必要となるのだ。それまでも小さな普請は繰り返し行われている。建築物等というものは、木造であれ、鉄骨鉄筋コンクリートであれ、メンテナンスを続けて大切に使っていくものではないのか?

なぜ、壊す必要があるのか。

本日も、会場からの質問に市当局は「長寿命化も検討した」というような発言を行っている。これは虚偽発言だ。名古屋城天守に対する耐震改修の検討は、おおよその予算を含めて検討されている。しかし、長寿命化工事ついては検討は為されていない。

実は文化庁は「史跡等における歴史的建造物の復元に関する基準」を定めている。
この基準を私が知ったのは、他でもない「名古屋城天守閣整備事業にかかる技術提案・交渉方式(設計交渉・施工タイプ)による公募型プロポーザル 業務要求水準書 平成27 年12 月(平成27 年12 月10 日更新)」に記載されていたからだ。名古屋市の作成した文章に、引用されているのだ。

トピックス | 名古屋城公式ウェブサイト

そこにこうある。

史跡等における歴史的建造物の復元に関する基準

歴史的建造物の復元が適当であるか否かは、具体的な復元の計画・設計の内容が次の各項目に合致するか否かにより、総合的に判断することとする。

(略)
ウ.復元以外の整備手法との比較衡量の結果、国民の当該史跡等への理解・活用にとって適切かつ積極的意味をもつと考えられること。
(略)

天守の耐震改修+長寿命化が「比較衡量」されていないとすれば、現在の名古屋市の計画、及び「保存活用計画」はこの基準を満たしていない。



さて、名古屋市の計画はずさんであり、非文化的だ。
文化破壊である。(新たに改組された「観光文化交流局」を市職員の一部は、「観光のために文化を破壊する局」と読んでいるらしい)

その他の問題や、保存活用計画の問題点については稿を改めよう。
しかし、この説明会や、本日のシンポジウムは無茶苦茶だった。

その中でも愁眉は質問者の中に「減税日本」関係者が紛れ込んでいたことだ。


https://www.facebook.com/photo.php?fbid=1377721192340913&set=a.137027539743624.26336.100003091371441&type=3&theater

この写真は余語元市議が衆議院選挙に出馬した際の facebook の写真だ、河村市長、余語元市議、その後ろはネットワーク河村市長の代表として、名古屋市会において「署名簿流出問題」で質問を受けた平野代表だ。(彼の発言に反して、その後中村孝道前市議の事務所から、再度署名簿が流出した)

2012-07-24 人間として疑う

その後ろに写っている人物、これが本日のシンポジウムで発言をしている。

この人物は、この余語衆議院議員候補の選挙や、その他の減税日本の選挙でも顔を出しているらしく、それを見咎めた出席者から指摘をされた。

大薮 豊数 | Facebook

[mixi]おやぶん・・・ - 愛知北エフエム放送 FM84.2 | mixiコミュニティ

地域委員会についての市民意見交換でもこうしたことは繰り返された。地域委員会説明会と言いながら、河村市長の支援者が発言を繰り返し、結果として「減税日本」の政治宣伝の場となっていた。こうした「減税日本」の政治宣伝を、名古屋市の公金で行っているのだとするならば、それは不当な行為だ。現在、名古屋城木造化に対する寄付金募集のための広告費、2億円が予算要求されるようだが、この2億円の広告費で「減税日本」の政治宣伝を繰り返すのではないのか。

私も繰り返し発言を求めたが許されなかった。私のように明白な反対意見を採用したならば、市長の手前、司会者の立場はなくなるだろうからそれは理解する。しかし、こうした市長の支援者(政党関係者?)に発言機会を与えることは、ただでさえ少ない時間を無駄にし、他にも聞くべき市民意見を取り入れないということなのではないのか。

この人物は、司会者の面前、最前列に座っていた。そこは「関係者席」では無かったのか?

・・・しかし、こうしたセコイ不正行為、稚拙なプロパガンダは、もはやどうでもいいようにも思える。

河村市長はバカ殿よろしく、自分に不都合な事には耳を貸さず、自分に都合の良い、耳障りの良い話にだけ興味を示すようだ。

本日も、「市長総括発言」の中で、昨年の市長選挙を取り上げ、「自分は木造化賛成を訴えて市長選挙を戦った。木造化に反対していた市長候補に選挙で勝った、名古屋市民の民意は名古屋城木造化なのではないのか」「名古屋城木造化は民意を得ている。自分が思うに、おおよそ6割の市民は名古屋城木造化に賛成なのではないのか」と語っていた。


最後に2017年4月17日(市長選挙渦中)の中日新聞紙面を引用しておこう。


投票にあたって63%の人が「木造復元を投票の判断材料にしない」と回答しており(略)河村さんは、今回の選挙戦を「木造復元への最終関門」と位置付けているが、「投票の判断材料にする」と答えた人は29%にとどまっている。


ヒトを騙すものは、自分すら騙すようになる。こうやって、どんどん事実から目を逸して、社会を歪んで捉え続けていく。
せっかく、一回しかない人生なのに、こうやって社会を歪んだまま捉えて死んでいく。
憐れな事です。