一昨日、10月23日に河村たかし名古屋市長から、藤田和秀名古屋市会議長に向けて、「政務活動費の使途の透明化及び運用の厳格化に関する申し入れ」という文章が提出された。
減税日本ナゴヤから、政務調査費にまつわる問題が続発した事を受けて、名古屋市長として、河村たかし市長が対応するとした「政務調査費の人件費受取人公開に向けた、議長への申し入れ」を文書化したものとされる。
この「申し入れ」に対しては「減税日本の政務調査費の問題の原因を追及することがスタート」と議長は反論している。(中日新聞24日県内版)
自ら主催する政党が起こした問題を解決しないまま、説明責任を十分に果たしていない状態で、後に述べるように、法的にも問題がある「申し入れ」を行うということは、単なる議論のすり替えでしかない。
一般論を語るのであれば、先ず自らの襟を正してから後にするべきだろう。それもしないというのは、社会通念で考えてもおかしい。
これが一般的な法律論以前の社会常識としてのレイア1の問題点だ。
この度、例によって例の如く、当ブログはこの文書を入手したので、全文を掲載する。
(開かれた名古屋市会バンザイ!)
この文書を読むと、河村市長、またはこの文章の筆者は、当ブログが今までに指摘したような名古屋市の定めた条例、または法律というものをよく理解していないという事が理解できる。
文章では。
しかし、同条*1第3項で、議長は、名古屋市情報公開条例に規定する非公開情報が記録されている部分を除き、閲覧に供されるとされており、一定の情報は公開されておりません。
と主張している。
議長は条例に公開して良いと定められている部分については公開できるのであり、条例に非公開と定められている部分については公開できない。この公開できる部分と、公開できない部分の峻別は、議長の権限ではできないのだ。(議長は条例の定めに従って執行するだけなのだ)
逆に、名古屋市情報公開条例の第7条1項の(イ)には次のような定めがある。
当該情報がこの条例の目的に即し公にすることが特に必要であるものとして市長が定める情報に該当するときは
名古屋市情報公開条例
非公開情報から除くとされている。
つまり、市長には公開できる部分と公開できない部分の峻別ができるように定められているのだ。
逆に言うのであれば、現在、政務調査費(政務活動費)の公開を市民が求めた際、その一部を黒塗りにして非公開にしているのは市長なのである。
その条理はすでに詳細に述べている。
政務調査費の人件費受取人公開について - 市長のための市会ではなく、市民のための名古屋市会を! Ver.2.0
にも関わらず
収支報告書及び領収書の写しに関し、人件費受領者氏名、事務所家賃の支払先名等そのすべてを閲覧に供し、使途の透明性を確保すること。
と要求する事は「言い掛かり」と言っても良いだろう。
また、議長に対して、上記のような条例があるにも関わらず、その条例に則した手続きを取らないまま、条例の定めた非公開情報について「公開をせよ」と言う事は、議長に条例違法を行えと指示しているに等しい。
いやしくも政令指定都市の市長たるものが、このような違法な指示を文書として残すとは、いかにも異常だ。市の法制課はこの文書を確認したのだろうか?
この文書の起草者はよくもこんな無茶苦茶な文書を書けたものだ。
これが条理。レイア2の問題点である。
また、この文章では。
収支報告書及び領収書の写しについて、条例改正で公開された以後の過去分及び今後について、予算の適正な執行の観点から、市長によるその真実性の調査を認めること。
と申し入れている。
本論の前に2点ほど文章上の問題を指摘しよう。
一点はこのセンテンスではないが「公費性」という言葉が使われている。しかし「公費性」という言葉は一般的な言葉では無い、その為に解釈が曖昧となる。
こういった曖昧な語句を使い、それを筆者の主観的解釈で強弁するとすれば、非常に幼稚だ。
このセンテンスの中で「条例改正で公開された以後の過去分」という表現は、誰がどう見ても冗長だろう。さらに厳密にいえば誤りでもある。(「以降の過去分」とは、「以降」も重複して含まれる。それは冗長であるだけではなく、未執行の「以降」についても、その過去分を対象とすると言っている事になる。つまり誰が考えても調査対象とできない「未来の出来事」をも対象とせよと「論理的には」言っているのだ)
単に「条例改正前」で良いのではないか。
論理的思考を行う訓練に欠けている。
こういった主観的な解釈による理解、論理的に穴の開いた思考に留まっているから真実が見えてこないのだ。
さて、本論に戻ろう。
「市長によるその真実性の調査を認めること」などという「申し入れ」が行われていれば、あたかも人々は「議長が市長の調査を妨げているのか」と思うだろう。
しかし、現実は全く違う。
勿論、市の予算について、執行者、責任者として市長は すでに!
もう一度言う、すでに、今、現在、この時、この瞬間、たった今、現下、即刻、目下、本日、今日唯今からでも、政務調査費の調査は可能なのである。
それは当然のことながら、まったく黒塗りなどされていない収支報告書、領収書を使って行うことができる。当たり前だ。
ちなみに、議会各会派は政務調査費の支出に当たって収支報告書、並びに領収書について、黒塗りなどしていない。黒塗りをしているのは議会事務局である。
そして、市長はこの黒塗り前の情報を見ることができる。
今、すぐにでも。
これには判例もある。
裁判所判例Watch - アーカイブ(平成19年4月 - 仙台高等裁判所)
議員が政務調査費として支出したものが本件使途基準等に照らして適正なものであるか否かについては,(略)公金たる政務調査費を交付する者の審査を受けることが予定されているものといわざるを得ない。なるほど,本件条例や本件規則には,市長の調査権限を定めた規定がないことは控訴人の主張するとおりであるが,公金を管理する者として,その公金の支出が適正であったか否かを審査し得ることは当然である。
裁判所判例Watch - アーカイブ(平成19年4月 - 仙台高等裁判所)
天白区説明会 - 市長のための市会ではなく、市民のための名古屋市会を! Ver.2.0
こんな判例に頼るまでもない。
市長が市の支出について調査権を持っているのは当たり前ではないか。
こんな能書きを言っていないで、とっとと調査でもなんでも行えばいい。
なんなら、今回の外遊日程を全部止めにしてじっと議会事務局にこもって調査しろよ。
そういった事をやりもせずに、あたかも議長(や、議会)が調査を阻んでいるかのような発言や「申し入れ」は、やはり「言い掛かり」だろう。
これが判例が示す社会常識というレイア3における問題点である。
この文章は河村市長の起草には拠らないようだ。誰か別の人物が書いたと言われている。
その人物はしかし、以上の様に法制度や判例に暗いようだ。
そもそも社会常識として、異常性に気が付かないところが悲しい。
それでいてくだらない修辞に溺れている。
イッタイ誰ガ 書イタノダロウカ
本当に、減税日本、河村氏の周辺には戦力になりうる人間が居なくなったんだね。
カワイソウナモンダ チーン