市民のための名古屋市会を! Ver.3.0

一人の名古屋市民が「地域委員会制度」「減税日本」に対する疑問をまとめるサイトです。(since 2011/3/3)

平成24年度地域委員会実施

 本日、6月29日午後5時をもって地域委員会の平成24年度モデル実施の募集が締め切られた。本日はこの結果を受けて(このブログの本業ともいえる)地域委員会について現在の問題と、残された課題をまとめる。

 その前に、次のようなチラシが送られてきたのでご紹介する。(電話番号とメールアドレスは判読不可能なようにしました。詳細が知りたい方は当該HPにでも行ってみてください)

 なんでも河村市長の「南京虐殺はなかった」発言を支持する人々が7月1日に恣意行動を起すようです。中日新聞に意見広告の掲載をしようとしたところ、拒否された事を受けての行動のようです。

 このチラシにもあるように、「南京虐殺はなかった」というのが、河村発言の実態であり、政府見解のように「非戦闘員の殺害又は略奪行為等があったことは否定できない」からは明白に踏み込んだ発言になっている。

 時宜によって、南京まぼろし派等に阿った、このような踏み込んだ発言と、一定の「殺害又は略奪行為等があった」とする政府見解の間で、自分の発言をぼかしているのが河村市長の現在のスタンスである。(本当に、どっちのつもりなのだろうか?)

 この河村氏の「二枚舌」に気付いてか気付かないままか、支持ができる人々の論理構成が理解できない(まあ理解もしたくないが)。また、この問題が自力で解決できなければ(できる可能性もないし、する気もないようだが)河村たかしという政治家は、衆議院に戻っても、総理はおろか入閣すらできないだろう。それが政治の常識である。*1

減税政策街頭アンケート

 もう一つ、これは本日の毎日新聞に掲載された減税についての街頭アンケートの結果である。伏見のオフィス街と栄の繁華街、男女計30人に街頭インタビューをしたらしい。減税が実施された事を知っている人は7割で、3割は減税が実施されたこと自体を知らなかった。また、自身の減税額を把握している人は2割にとどまった。

 減税を地域自治の寄附に回して「市民市役所」を作りたいというのが河村市長の自論かもしれないが、その寄附の仕組みはつくられていない。つまり、受け皿が無い。

 そして、そもそも減税自体、実施された事を自覚できない。(「市民税10%減税」という言葉のマジックが切れたと言う事です。本当は「市民税0.6%減税」であったのであって、それが「0.3%減税」になったのですから、自覚できなくて当然です)

 こんな状態で「市民市役所」など、空理空論にすぎないでしょう。(最近は、減税額があまりに小さいので「学区で4千万」という表現を使っていますが、これも「嘘」です。単純に割ればその通りですが、減税は法人にも適応されます。法人の分布は「学区」など考慮されていません。ですので、最も好意的に解釈すると、半分の「学区で2千万」がまだ実態に近い。勿論、学区毎に減税額は違い、減税額が少ない地域こそ、こういった補助が必要とされるだろう事は想像に難く有りません。つまり、一律減税は単に所得再配分機能を縮減しただけです)

地域委員会応募地区

 本日の締め切りまでに平成24年度の地域委員会モデル実施に応募した地域は7地域になったそうだ。
 矢田学区(東区)
 高見学区(千種区
 上名古屋学区(西区)
 西味鋺学区(北区)
 当知学区(港区)
 鳴子学区(緑区
 平針南学区(天白)

 前回の8地区のモデル実施を受けて、制度を練り直して募集した結果が7地区というのは非常に象徴的だ。これがゼロ地区という事になれば、既存議会や陰謀を巡らす某ブログ*2や、そこの優秀な工作員が「妨害工作をして地域委員会の実施を邪魔した。」とでも言われかねない。
 それが7地区という事になれば、やはりこの地域委員会制度は地域のニーズに適合していない、的外れな制度であるという事ができるだろう。(名古屋市には266の学区があり、前回実施の8学区を抜いて258学区、その内の7学区となると2.7%になるそうで。約3%なら見事に統計的には「ゆらぎ」と捉えられます。的外れな制度でもこの程度はたまたま適合する事もあるでしょう)

 この中のある地域では、本日応募の申し込みをしたわけですが、明日になって地域に市の職員を呼んで、地域委員会制度について説明を受けるそうです。つまり、主導的に応募した人は居るわけですが、実質的な地域の合意はまだ形成されておらず、今後の動向では中止になる事もあるでしょう。(前回のモデル実施でもそういった事例はありました)


 めでたく実施地域となってもまだ超えるべきハードルが幾つかあります。

 その内の2つを予め申し上げておきましょう。

 河村流地域委員会の特徴は「地域委員を選挙で選ぶ」ということで、今の制度では地域の市民で構成する準備委員会がこの選挙を実施する事になります。候補者の受入れや広報、及び選挙の実施をどのように行うか。投票率はどの程度になるか。非常に心配です。

 次に、多分、準備委員会として30人の参加があったのでしょうが、それらの方々は、既にある程度地域予算の使途について心当たりがあるのではないかと思います。
 逆に、地域予算について明白に要望があるから応募されたのでしょう。

 とすると、逆に「地域委員会」なんて必要なんでしょうか?

 実際の「地域委員会」による議論なんて二回か三回で合意に達するのではないでしょうかね?果たしてそのように「議論が盛り上がらない」状態で、住民参加の「地域委員会議論」が維持できるのでしょうかね?
 前回の様に、二回目以降の傍聴者は激減するのではないでしょうか。

 この辺りの議論が、この「河村流地域委員会制度」の根本的な問題です。

 その根本的な話の前に「ノルマンディー上陸作戦」の話をしましょう。

地域委員会制度説明会参加者

 地域委員会制度説明会参加者をまとめた資料を作った。

 この図がそれにあたる。5月12日から30日まで22会場で制度説明会は開かれた。参加者はそれぞれ低調で、全会場を合わせても91人に過ぎない。(この数字の内、数人分ほどは「私」という事になる)

 そして、図にも示してあるように、
 園田(北区)
 鹿島(西区)
 済藤(中区)
 冨口(守山区
 河合(緑区
 余語(緑区
 荒川(瑞穂区
 金城(瑞穂区

 の8議員は22会場の内、一会場も参加していない。
 地域委員会制度の全市拡大は彼等の「三大公約」だった筈ではないのか?( 参照

書き漏らしました。余語議員は今年、減税日本の幹事長で地域委員会制度を所管する総務環境委員会の委員です。
 他会派の議員であれば、同委員会の委員であっても、地域委員会については距離をおいている委員がいても良いでしょう。しかし、彼らは全員「地域委員会制度の全市拡大」を公約に掲げていたのです。

 そうであるならば、この制度説明会に自身が参加するのは当たり前だが、地域の人々を誘って、こぞって参加してこそ公約も実現できるのではないだろうか。

 こういった実態を見てみると、6月に入ってから「地域委員会の募集チラシ」を配るとした彼等の「ノルマンディー上陸作戦」なるものの本気が怪しくなってくる。

 地域委員会制度などどうでも良くて、ただ、衆議院解散が近づいている為に党首である河村市長の存在をアピールする為の選挙活動としか捉えられないのだ。

 (ここで減税日本ゴヤの作成した「ノルマンディー上陸作戦」のチラシをイメージとして差し込んで、あるセンテンスをバッサリ切ると、次のセンテンスで語られている「地域委員会の制度説明会パンフレット」とごっちゃになるといけないので、敢えてこの部分に注意書きを書いておきます。この次のセンテンスで語られているパンフレットは名古屋市製作の物の事です)

 この地域委員会の制度説明会には、パンフレット18万5千部が作られたと言う。会場で市民に配られたパンフレットの数は91部になる。その他に1万6千部はどこかで配布したらしいが、単純に17万部ほどは無駄になりそうだ。(K村商事が儲かるのかな?)

そもそもの誤り

 地域自治の問題は、その担い手、執行者の問題に尽きる。名古屋においては、区政協力委員制度や各地の学区連絡協議会などが有効に機能しているが、それでも担い手不足、担い手の高齢化は問題となっていた。
 そのような地域の担い手問題の一つの回答がNPOなどの参画であり、「新しい公共」であるとか「サードセクター」という形で、地域課題を担う社会起業が問題を解決し、同時に雇用問題(や地域経済の活性化)も解決したかもしれない。
 後教授の構想した「地域委員会制度」は、こういったNPOなどの参画を促す為の制度と理解できる。担い手はNPO、地域予算がその活動を担保する。その地域予算の配分、管理の為に、選挙によって選ばれた議決機関としての「地域委員会」が必要となる。

 後教授と河村市長が決裂し、この地域委員会制度にNPOが参画するルートが一つ途切れた。

 この時、河村市長がやるべきことは、後教授の替わりにNPOの参画を促してくれる仕組みを作るか、名古屋市が独自に何等かの仕組みを制度設計する事だったろう。しかし、河村市長は何もしなかった。見事に何も!

 その結果、河村流地域委員会制度というのは執行者がいないまま、地域予算と議決機関である地域委員会だけが残るという、こうやって書いてみると本当に馬鹿げた構造だけが残った事になる。

 河村市長は壊れたレコードプレイヤーよろしく「地域委員会で児童虐待や高齢者の孤立死対策を」と言うが、議決機関である地域委員会にできることは何もない。(地域委員会が同時に執行するということはできない。地域委員会委員は「市長の付属機関」という法的位置付けになる。勿論、その地域委員が委員として執行した行為は市長の付属機関としての行為となってしまうわけで、そこで発生した責任は市長が担保しなくてはならない。地域委員がどうしても実施したいのであれば、その場合は一旦委員を辞職してボランティアとして参画する必要がある。実際に前回のモデル実施でこの議論が交わされている)

 河村市長が児童・高齢者対策を問題として挙げるということは、その「執行」を論点としているという事である。ところが、執行主体は既に「地域委員会制度」から消えてなくなっているのであって、議論できるのは「議決機関としての地域委員会の意義」だけなのである。
 ここのところが理解できないままなので議論もかみ合わないし、制度改正も進まなかった。多分、名古屋市で一番地域委員会制度を理解していないのが河村市長本人であろうと思われる。(市の職員は、現実に立脚した施策を行う必要があるので、この部分を補完する為に「30人の準備委員」という人的リソースを条件に付与したのである)

 もう一度話を戻す。

 ご町内とか商店街、小・中学区などの地域自治で問題となっているのは「担い手不足」である。また「担い手の高齢化」である。名古屋市においてもこの問題は同様にあった。河村氏が市長になる直前にも区政協力委員の制度については見直しが要望されていたのであって、入れ替えの方法(若返りの方法)などが模索されていた。

 地域委員会と地域予算によって、これらの制度を消し去り、一気にNPOやサードセクターに移行させようというのはいかにも乱暴な方法である。しかし、こうやって(河村市政になって)何も対策しない間にも、日々地域の担い手の高齢化は深刻化していく。

 地域委員会制度で、新たな人材が地域活動に目覚め、地域自治の担い手になってくれるかもしれないという期待もあった。実際に、前回の8地区のモデル実施で委員となった市民は約40名居り。その内の30名は従来からの地域自治の担い手であった。10名は新たに参画した市民であるが、市としてはこの10名についてその後を把握していない。
 つまり、地域委員会が地域の担い手を発掘するというのも、制度的な裏付けが無い空論に過ぎない。(河村市政には、本当にこういった幼稚な思い込みと、得手勝手な期待による空論が多い。幼稚園児が砂場で遊んでいるのに付き合っている気分になる)

 結果、そういった本当の課題に対しては何も対策を打つことなく、空理空論と制度的には半煮えのままの地域予算と地域委員会を議論してきたのがこの3年間という事になる。

 失われた3年間だ。

 単に、地域自治の担い手の問題を、深刻化しただけの3年間だっただろう。


*1:政令指定都市の市長が他国から外交ルートを通して抗議を受けるような発言をするというのは前代未聞の話だ。そんな危なっかしい政治家を閣内に入れる総理が居るわけが無い。

*2:というか、ココ