市民のための名古屋市会を! Ver.3.0

一人の名古屋市民が「地域委員会制度」「減税日本」に対する疑問をまとめるサイトです。(since 2011/3/3)

決定できる民主主義を求めて独裁に走る橋下と、何も決定しようとしない河村

 「問題は過去を克服することではありません。さようなことができるわけはありません。後になって過去を変えたり、起こらなかったことにするわけにはまいりません。しかし過去に目を閉ざす者は結局のところ現在にも盲目となります。非人間的な行為を心に刻もうとしない者は、またそうした危険に陥りやすいのです。」
     ―― ヴァイツゼッカー大統領演説「荒れ野の40年」より。

言うだけ首長

 橋下大阪市長は「決定できる民主主義」を訴えている。選挙で選ばれた自分は白紙委任状を貰ったように勘違いして、違法行為*1であろうとかまわずにガンガン先に進めようとする。非常に荒っぽい。
 それに引き換え、この名古屋市の河村市長は「何も決定できていない」
 色々と調査してみると、河村市長の市政におけるテーマは「言ってみるだけで、何もしない」事であるかのようだ。*2

 様々な事柄について河村市長は「〜をします」「〜を調査します」と言っているが、行動を起した形跡もなければ調査をした、または調査結果について公表も無いことがいかに多いか。
 結果「どうせ市民はしばらくすれば忘れてしまうだろう」とでも思っているのか、沙汰止みになってしまう。
 ここで一番の問題はマスコミだ。せっかく週一の記者会見があるのだから、こういった問題を追及しないのはどういうわけだろう。確かに一般市民は忘れ易い。「人の噂も七十五日」というのが人の世の常であることは否定しない。けれども、「社会の木鐸」までがそういった人情に流されてしまっては、いよいよ政治は無責任に流れていく。
 こうやって、決定されない、実行されない。そして市民に報告されない市政上の問題点はどんどんと積み上がって腐っていく。

 そうして、それらの問題がついに如何ともしがたい状態に立ち至ると、河村市長はどうするか?

 「別のもっとマスコミ受けする問題」を起すのだ。

行動が伴わない者ほど、声が大きい?

 中期戦略ビジョン(と、それに含まれる地域委員会などの施策)や減税が、議会との調整が上手くいかなくなるとみるや「議会改革」を持ち出して、それまでは10%削減だった議員報酬を(この比率までは既に議会は実施していた)報酬半減というセンセーショナルな数字を繰り出してリコール運動を煽り立てた。
 そもそもの争点だった中期戦略ビジョンの結果は、裁判所によって河村市長の法律解釈の誤りが指摘されているのだし、減税についても勝手に施行幅を0.6%から0.3%に下げて、それでいてあたかも公約を達成したかのように満足そうである。

 橋下氏も、府知事の頃の財政再建がいささか怪しい物であった事がばれているし、WTCの買取も先走った失敗だったことは明白だ。市長に移ってからも、上に述べたような違法行為や、折悪しく最高裁で判断が出された教育条例の問題など、独善的で我儘な法律解釈で市政を混乱させているように見える。(普通の地方自治体は今、予算審議の時期で忙しいんじゃないんでしょうかね?)


 名古屋において、中国領事館問題*3が課題として浮上してきた。

 この問題は、財務省所管の国有地を8000平米も必要なのか、過大ではないのかという問題である。これは、ここにショッピングモールであるとか住宅ができれば、周辺地域を形成する商店街などにも波及効果が期待できるが、総領事館という事になるとそれが期待できないという問題なのだろう。

 今の所、所管する財務省(中部財務局)は、地域住民の同意がない限り、中国政府への国有地売却を進める事はないという回答をしている。

 今年の1月31日にTBSが「外務省口上書問題」*4を報じた。
 この報道をうけて河村市長も「聞いてみます」と取材に答えていたが、実は「名古屋市長として誰かに聞いた」という事実は無いようである。
 そもそも名古屋市当局の認識としては、「名古屋市長がこの問題について調査をすると言明した事もない」という事だそうだ。先の報道は、「政治家、河村たかしが個人的に『聞いてみます』と言ったに過ぎない」との認識だそうな。

 河村市長は、誰に何を聞いたのか?

 この報道以降の市長会見でも、この問題についての説明も報告も無い。

 先の「名城住宅跡地利用を考える地元集会」などは、この問題を市民に説明、報告するのに最もふさわしい場であると思うのだが、一言の言及もなかった。

 そりゃ、できないだろう。何もしていないのだから。


 そしてこの騒ぎである。

見失っているもの

 これで中国政府が「あきれて」「名古屋に領事館は必要ない!」とでも思ってくれればこの問題は解決なのだろうか?*5

 そんな訳にはいかないだろう。中国が今の様に国有地の払い下げを受けて領事館を建てるという方針であれば、その規模について政治的交渉も可能だろう。*6

 実際に、払い下げにあたって地元住民の意向を汲むと財務省は表明しているのだから、政治マターとして扱うことができる。

 しかし、中国が方針を変更して、私有地を買い取ってそこに領事館を建てようとするとしたら。実際に新潟ではそのような事が進んでいるのではと言われているが。
 もはや、政治的な介入はできない。

 私的売買という、―河村市長をはじめ―市場原理主義者の方々にとっては、神のご託宣よりも貴重で尊重すべき行為により、中国領事館建設を指をくわえてみているしかない。
 我々は戦略目標を何処に置くべきだろうか。

 名古屋市民にとって中国領事館問題について、移転を断念いただくか、適正な規模で妥協してもらう事が、戦略目標であったとしたならば、この状況*7はどうなんだろうか?

 そして、外務省の口上書問題一つ、まともに報告できない事が真っ当な事だろうか?
 (これは、中日新聞にも問い質したい事だ)

 しかし「石原−大村会談」も「橋下大阪市長の沖縄訪問」もぶっ飛ばして、日本記者クラブで一時間以上にわたり独演会をやらせてもらい、事の是非は置くにしても、これだけニュース等で取り上げられている。河村市長の戦略目標はどこにあるのだろうか?

 或いは、この状況そのものが、実は河村市長の戦略目標であって、それが達成されているのだとしたら、つまり、騒ぐだけ騒いで、世間から注目を集める事だけが目的だとしたら。そんなもの深夜の国道を、爆音をあげて走り回る洟垂れ小僧の暴走族と何もかわらない。

 私は先の大戦は「負け戦」だと思っている。
 どんな立派な事を言ったところで、戦略的目標が得られない限り、戦は負けなのだ。

 そして、河村市長は戦略的目標物を得ているのだろうか。
 
 名古屋市民のそれはどうだろうか。

 「人間は何をしかねないのか ―これをわれわれは自らの歴史から学びます。でありますから、われわれは今や別種の、よりよい人間になったなどと思い上がってはなりません。
 道徳に究極の完成はありえません ―いかなる人間にとっても、また、いかなる土地においてもそうであります。われわれは人間として学んでまいりました。これからも人間として危険に曝されつづけるでありましょう。しかし、われわれにはこうした危険を繰り返し乗り越えていくだけの力がそなわっております。

 ヒトラーはいつも、偏見と敵意と憎悪とをかきたてつづけることに腐心しておりました。

 若い人たちにお願いしたい。
 他の人びとに対する敵意や憎悪に駆り立てられることのないようにしていただきたい。
 ロシア人やアメリカ人、
 ユダヤ人やトルコ人
 改革を唱える人びとや保守主義者、
 黒人や白人、
 これらの人たちに対する敵意や憎悪に駆り立てられることのないようにしていただきたい。
 若い人たちは、たがいに敵対するのではなく、たがいに手をとり合って生きていくことを学んでいただきたい。

 民主的に選ばれたわれわれ政治家にもこのことを肝に銘じさせてくれる諸君であってほしい。そして範を示してほしい。

 自由を尊重しよう。
 平和のために尽力しよう。
 公正をよりどころにしよう。
 正義については内面の規範に従おう。

 今日五月八日にさいし、能うかぎり真実を直視しようではありませんか。」
     ―― ヴァイツゼッカー大統領演説「荒れ野の40年」より。


*1:「思想調査」といわれるようなアンケートや、予めの警告も無い、更に一般人も巻き込んでのメール検閲など

*2:産経新聞が前原氏に「言うだけ番長」という表現を使って波紋を投げかけているが、そのひそみに倣えば、河村氏は「言うだけ首長」ということか。

*3:名古屋市役所の北、名古屋城の東側という名古屋の中心地に公務員宿舎が建っていた。これらの宿舎が取り壊されて、跡地(国有地)を処分する事となった。ここに買取を申し出たのが中国政府であり、この土地の一部、8000平米(約2500坪)を現在ある総領事館の移転先として取得する意向を表明した。周辺地域には、いままで公務員宿舎の住人が買い物をしていた商店街があり、総領事館となると、人口の流入が期待できないためにこの移転には反対した。別の跡地を取得した大学に対しては、学生人口の流入が期待できるために歓迎の意向を表明しているようである。

*4:この名古屋の移転問題が起きているさなか。在北京日本大使館が移転しようとしていた。この際に、中国政府が「設計図と違う」として移転を認めなかった。外務省はこの日本大使館移転を進めるために、交換条件として東京の大使館と名古屋と新潟の総領事館の移転を円滑に進めるという約束を「口上書」として中国政府に提出したのではないかと報じられた。この文書は2月2日に自民党外交部会の質問に外務省は存在を認めたが、内容については「国内法令の範囲内で協力する」「やましい約束ではないので、中国側がそれで気が済むのなら、と口上書を出した」と説明している。

*5:在名古屋の中国国民やその家族、または中国関連の貿易に携わっていたり、関連企業を持っている企業、観光や運輸関連の企業は気が気ではないだろうけれど。

*6:総領事館としての土地は一部で、周辺に商業地区や居住地域も併設してくれれば、周辺地域も活性化するだろう。また、領事館としては固定資産税が減免されるらしいので、税制上その土地は「無くなって」しまうそうだ。しかし、こういった別の用途であれば固定資産税は確保できる。

*7:名古屋と中国の間の外交チャンネルが全く無くなりそうな状態。