昨日のポイントは2点。
1)総生産は総所得と総支出に等しい(三面等価)(総生産をYで表す)
2)ケインジアンモデル
総生産量 = 基礎消費 +限界消費性向×(所得−税) +投資 +政府支出
国や地方の総生産(=総所得=総支出:Y)は、基礎的な消費(C0)に投資金額(I)と政府支出(G)を加えた額。それに市中の可処分所得(総所得Yから税Tを引いたもの)に限界消費性向( c )を掛けたものを加えると得られる。
国や地方に消費を増やしたり、投資を活発にしたり、政府支出を増やしたり(財政出動)すれば、総生産、総所得が増えて、景気は回復する。
特に、今のようにデフレ傾向の時期には投資(I)が振るわないから、政府支出か消費を喚起する政策が必要となる。(※1)
この式の中から、基礎消費部分(C0)と投資(I)については考慮の外においてみる。
つまり、これらの要素は議論しても変更不能なので、論点から抜いて、とりあえず一定であるとみなす事にする。すると、式はもう少し小さくなって論点が絞れる。
この式を使って「河村流減税政策」の意味とその効果を考えてみる。
「河村流減税政策」はこの式の中で言うと、税(T)を減額するという政策であって、つまり式に入れ込んでみるとこういった形になる。
総生産(Y)を構成する可処分所得を減税分(K)だけ増やす政策だからそれだけ総生産(Y)が増えるだろうということになる。これは結構な事だ。そして、河村や彼の支援者もこれを捉えて「減税によって景気回復」という主張をしている。
減税が総生産を拡大するという主張には同意する。確かにここで減税(K)を増やせば、増やすほど総生産(Y)は増えていく。
しかし「河村流減税政策」は非常に特異な性質を持つ。それが「減税財源は全て行政改革で賄う」という性質だ。「河村流減税政策」においては減税される原資(K)は、政府支出(G)の減額で賄われる。これを式に加えるとこういうことになる。
ここまでは良いですよね。「河村流減税政策」は歳出を削減して(G−K)、納税者に減税(T−K)という形でお返しして「民の竈を暖める」政策なんですよね。
では、この式を展開してみます。両辺にYが入っているのでYを寄せてみます。(※2)
・・・・内側のカッコを展開します。
・・・・外側のカッコを展開します。
・・・・Yを寄せます、右辺も順番を変えます。
・・・・YとKをまとめてみます。
・・・・両辺を(1-c)で割ります。
この式を見ると、Yはの値だけ変わることが判ります。
係数の形が独特ですね。ちょっと触ってみると。
・・・・上辺を-1で掛けてみると
・・・・上辺と下辺が同じ形になりました。
・・・・上辺と下辺は?
・・・・つまり?
(※3)
こうやって整理してみると、「河村流減税政策」においては、為される減税政策規模(K)だけ、経済を「縮小する」結果となる。なので、インフレーション等が加熱している、例えばバブル期に、経済を減速させる為に行うとしたら良い政策なのかも知れません。
※1:投資は金利が低いほど活発になる。金利が低いほど「安い経費(=金利)」で資金を調達できる事となるからだ。しかし、デフレ基調の時期には、金利による負担よりも物価安(=貨幣の価値上昇)の方が効果が強く出るために、「今投資するよりも、明日投資した方が得だ」という結論に行き着く。故に金利が低くても金融市場に資金がだぶつく事となる。
※2:この式を見れば、限界消費性向(c)が1よりも大きいか小さいかで、この政策が有効か無効かが判ると思います。限界消費性向は0〜1の間を取りますので、減税政策の「負け」になるのですが、この後の式の変形で、この限界消費性向の如何に係らず減税政策がどのような意味を持つかお分かりいただけると思います。
※3:追記(1月4日午前11時)
この計算結果について確認中。