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平成23年(行ウ)第32号 議決取消請求事件 (原告の主張)

(原告の主張)

(1)地方自治法は、憲法93条が地方自治組織として予定する議事機関としての議会及び首長制を踏まえて、議事機関と執行機関を峻別し、二元的な組織、責任体制を採っており、議会の議決に基づく事務の執行は、執行機関である長の自らの判断と責任(地方自治法138条の2)で行うべきものとしている。これは、長と議会が対等の地位に立ち、相互に独立して権力の均衡を図りながら行政事務を執行することが地方行政の安定を図る上で適当であると考えられるからである。

 このような地方自治法の趣旨に鑑みるならば、長の専属的権限に属する事務執行のについて、議会がその手続・方法等に関して条例により個別具体的に規定し、長の判断に事実上の拘束を及ぼすことは、憲法及び地方自治法が予定する二元的な組織、責任体制の根幹を揺るがすことになるため、議会の権限を超えるものというべきである。

(2)事業審査の実施に係る事務(以下「本件事務」という。)は、地方自治法148条、149条9号において、事務の管理執行が長の権限とされているから、長の専属的権限に属する事項であって、その判断と責任おいて実施すべきものである。

 議会には、検査権(同法98条1項)及び監査請求権(同条2項)があるが、これらは、一般的・事後的・間接的な監視権にすぎず、これをもって、本件事務が長の専属権限に属する事項に該当することを否定することはできない。
 したがって、本件事務について、議会が個別具体的に規定し、長の事務執行を事実上拘束したり、長の柔軟かつ機動的な事務執行の妨げとなるような条例を制定することは、議会の権限を超えるものというべきである。

(3)これを本件条例について見ると、本件条例は、以下のとおり、本件事務について個別具体的に規定するものであるから、本件条例を制定した本件議決は議会の権限を超えるものである。

 ア 本件条例3条2項は、事業審査の対象とする事務事業の選定に当たって、原告に被告の意見を聴取すべき義務を課している。

 本件条例に基づく事業審査の結果を施策に反映するには、予算あるいは条例という形で被告の議決を経る必要があるから、被告の意見を聴取することを条例で義務付ける以上は、原告としては極めて重く受け止めざるを得ず、被告の意見に事実上強く拘束されることになる。

 また、原告が何らかの事務事業について迅速・円滑に処理したいと考えたときであっても、常に被告の意見を聴取しなければならず、議会の閉会時には、時期を逸してしまう可能性も考えられ、同項は、原告独自の柔軟かつ機動的な事務執行の妨げとなる。

 したがって、同項は、原告の執行する事務について個別具体的に規定し、原告の専属的権限に属する事項に介入するものであって、議会の権限を超えているというべきである。


 イ 本件条例3条3項は、被告が事業審査の対象とする事務事業を選定し、事業審査の実施を求めたときは、その趣旨を尊重し、事業審査を実施するものとする旨規定しており、原告が被告とは異なる方針をマニフェストに掲げている場合には、原告の判断を正反対の方向に事実上拘束する可能性がある。

 したがって、同項は、同条2項と同様に、原告の執行する事務について個別具体的に規定し、原告の専属的権限に属する事項に介入するものであって、議会の権限を超えるものというべきである。

 ウ 本件条例3条4項は、事業審査を行う審査人は、学識経験者、議長の推薦による被告の議員及び市民から公募等をした者のうちから、事業審査の実施の都度、原告が委嘱する旨規定しているところ、本件条例に基づく事業審査の結果を施策に反映するには、予算あるいは条例という形で被告の議決を経る必要があることからすると、原告は、議長の推薦による被告の議員を審査人に加えるべき事実上の拘束を受ける。

 また、原告と議長の判断とが著しく相違する場合においては、議長の推薦による議会の議員の参加が事業審査の制約となって、原告独自の柔軟かつ機動的な事務執行の妨げとなり、さらに、同項の存在によって、原告が事業審査を実施しようとする場合に、議長による審査人の推薦を待たなければならず、その推薦を待っている間に時期を逸する可能性や、例えば、専門性の高い事務事業について市民のみの意見を聴取して、迅速・円滑に事業審査を進めるといった原告の事務執行が制約される可能性も否定できない。

 したがって、同項は、原告の執行する事務について個別具体的に規定し、原告の専属的権限に属する事項に介入するものであって、議会の権限を超えるものというべきである。



地方自治法 第98条  普通地方公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の事務(自治事務にあつては労働委員会及び収用委員会の権限に属する事務で政令で定めるものを除き、法定受託事務にあつては国の安全を害するおそれがあることその他の事由により議会の検査の対象とすることが適当でないものとして政令で定めるものを除く。)に関する書類及び計算書を検閲し、当該普通地方公共団体の長、教育委員会選挙管理委員会、人事委員会若しくは公平委員会、公安委員会、労働委員会、農業委員会又は監査委員その他法律に基づく委員会又は委員の報告を請求して、当該事務の管理、議決の執行及び出納を検査することができる。

○2  議会は、監査委員に対し、当該普通地方公共団体の事務(自治事務にあつては労働委員会及び収用委員会の権限に属する事務で政令で定めるものを除き、法定受託事務にあつては国の安全を害するおそれがあることその他の事由により本項の監査の対象とすることが適当でないものとして政令で定めるものを除く。)に関する監査を求め、監査の結果に関する報告を請求することができる。この場合における監査の実施については、第百九十九条第二項後段の規定を準用する。


地方自治法 第138条の二 普通地方公共団体の執行機関は、当該普通地方公共団体の条例、予算その他の議会の議決に基づく事務及び法令、規則その他の規程に基づく当該普通地方公共団体の事務を、自らの判断と責任において、誠実に管理し及び執行する義務を負う。


地方自治法 第148条 普通地方公共団体の長は、当該普通地方公共団体の事務を管理し及びこれを執行する。

地方自治法 第149条 普通地方公共団体の長は、概ね左に掲げる事務を担任する。
       :
 9 前各号に定めるものを除く外、当該普通地方公共団体の事務を執行すること。