市民のための名古屋市会を! Ver.3.0

一人の名古屋市民が「地域委員会制度」「減税日本」に対する疑問をまとめるサイトです。(since 2011/3/3)

東区補選ーある視点

東区補選において、立憲民主党から立候補した国政直記氏が当選を果たした。
国政候補得票数: 6,641 票
則竹候補得票数: 3,149 票


http://www.nagoya-senkyosokuho.jp/index.html

この数字を受けて、一部報道などでは「大差での勝利」と表現されている。

河村市長の退潮傾向を強調したい当ブログなら歓迎したい表現だが、本音のところでは違和感がある。
或いは、国政陣営はこの結果を受けて喜んでいるかもしれないけれど、けして喜べるような数字ではない。その理由を書く。

更に、そうした数字を弄ってみると、なかなか面白い推測も成立する。

当ブログでは、今回の補欠選挙の構図をすでにマトリクスにして示してみた。
有権者の河村市長に対する距離感と、共産党に対する距離感を2つの軸に分類してみると、今回の補欠選挙の構図が良く判るのではないかと考えられる。(あくまで推測だが)

中川/熊田票: 10,000 票
河村票: 7,000 票
その他表: 5,000 票

と推測を置いた。
この総計は 22,000 票になる。

今回の有効投票数は 9,790 票 なので、
この推計総数 22,000 票の 44.5% となる。

この比率で各ポジションの票数を出し直してみると

中川/熊田票: 4,450 票
河村票: 3,115 票
その他票: 2,225 票

という事になる。

ちょっと、面白いのは、この投票実数で調整した河村票の 3,115 票は則竹候補の得票数 3,149 票に近く、その他表 2,225 票と 中川/熊田票の 4,450 票を足した 6,675 票は国政候補の得票数  6,641 票 に近い。

つまり単純な分析を行うと、則竹候補には河村票が流れ、国政候補にはその他票と自民党票が流れたという分析も成り立つかもしれない。

しかし、当ブログはそのような観測には立たない。
そもそも則竹候補には河村票は流れていない、河村支援者から見れば則竹候補は「裏切り者」らしく、河村陣営からの支援は受けていない。当ブログでも「減税日本鎌倉市議が則竹候補を推した」という噂を取り上げたが、その噂が正しいとした時に鎌倉市議の目的が見当たらないと指摘しておいた。その後、則竹候補本人へのインタビューを行った際に、本人の口から立候補への経緯に鎌倉市議の関与が無い事は聞けたし、河村陣営からの支援が得られていない事も聞いた。

今回の選挙結果、実態は次のようなものだったのではないかと推測する。
まず、国政候補には上記に上げた「その他票」が固定票としてついた。
ここには共産党の票と、反河村、非自民の票が含まれる。
これが 2,225 票

自民党票と河村票は浮動票と化した。
これらは国政、則竹両候補を選択する決定的な理由を持たない票だ。
これは合計で 7,565 票にのぼる。

この票が、選挙期間中の情勢を受けて、
則竹 41.6%
国政 58.4%
に分配された。

分配数としては
則竹 3,149 票
国政 4,416 票

となる。(則竹候補の得票数と、分配数が同数なのは、得票数から分配数を推測したからだ)

つまり、多くの人が首をかしげた則竹候補の立候補だが、41.6% の有権者には支持されたと考えても良いのではないのか?そもそも地盤も持っていない則竹候補が 3,149 票の得票を得ている。

果たして自民党票と河村票のどちらがどのような比率で則竹候補に流れたかは不明だ。
出口調査をしているようなマスコミであればこの辺りのデータも持っているだろう。

河村票に含まれる人々の中にも、則竹候補に投票した人も一定程度いるだろう。
また、逆に則竹候補を河村市長に対する裏切り者とみなして、対立候補である国政候補に投票した人々も居るかもしれない。

市民の中には、則竹候補の立候補が河村市長の意向であると受け止めている人々も居て、自民党支持者の中にも、そうした見たてから対立候補である国政候補に投票した人もいるようだし、立憲民主党への対立の構図から自民党支持者として則竹候補に投票した人もいるようだ。

つまり、この層はそれぞれの有権者の「見たて」によって投票行動が決まったのだろうから、どっちがどうと言えるような状態であるとは思えない。結果として、両者に、 7,565 票が上記のような比率で分配されたのではないかと(結果として)考えられるだけだ。


こうやって見ると、大差と見られた国政候補の勝利も、そんなに悠長に構えていられるものではない事が判る。そもそも 6,641 票を構成した大部分は、自民票と河村票が浮動票として配分されたものであるし、その分配率も思うほど大きくは無い。全国レベルのニュースにもなった枝野代表の名古屋入りが形成した差かもしれない。(そもそも、これがなければ投票率自体落ちていただろう)

基礎票と考えられる、 2,225 票にしても、その中には共産党票が含まれている。
共産党は今回の補欠選挙に候補者を擁立しなかったが、次の統一地方選挙においては独自候補を擁立する方針であるとしている。そうなると、国政新市議の持っている基礎票と言うのは、700〜1,500 票程度という事になってしまう。実際、吉田恒彦衆議院議員の東区における後援会というものには「足」がない。この基礎票は実態から離れていないだろう。国政新市議は、しっかりとした活動を行わなければ、市議のバッチは1年半天下となってしまう。

さて、数字を弄っていると面白い推測も成立すると書いた。これをご紹介してみたい。

さきほど、私の推測構図中の河村票を実投票率に調整すると、則竹候補の得票数に近くなる事を述べた。則竹候補のポジショニングが河村票を丸々取り込む位置ではない為、この数字の一致は単なる偶然としか考えられないが、しかし、ここに佐藤三冠王(元県議、元衆議院議員、前市会議員、減税日本副代表)が立候補していたらどうだったのだろう。

そして、自民党票の内、 4,450 票が今回投票していると推測すると、それが国政、佐藤候補で分配される事になる。そのシミュレーションを行ってみる。

すると、
佐藤候補、基礎票: 3,115 票 + 1,780 票(自民党票の 4割) と
国政候補、基礎票: 2,225 票 + 2,670 票(自民党票の 6割) で 4,895 票の同数となる。

自民党票が6割佐藤候補に流れ、4割が国政候補に流れていたら

佐藤候補推定得票数: 5,785 票
国政候補推定得票数: 4,005 票

と、佐藤候補が出戻り当選していた事になる。

これを「甘い推定」と思われるだろうか?
確かに、佐藤候補には「出戻り立候補」というデメリットと、立憲民主党という逆風が吹いていたかもしれない。しかし、立憲民主党インパクトが大きければ大きいほど、自民党票の佐藤候補への流入率は高くなる。また、河村市長の市長選挙における得票率を考えると、4:6で同数なのだから佐藤候補の方が断然有利だった事が判る。

則竹候補であったから、構図がハッキリしなかった。
しかし、佐藤候補であれば構図はハッキリしてきただろう。

また、基礎的な河村支持層は明白に佐藤候補を支持しただろう。

そうなると、自民党票の4割が佐藤候補に流れただけで同数となっていたのだ。
減税日本が佐藤前市議(三冠王)を候補に擁立していたのであれば、結果は異なっていたのではと思える。