市民のための名古屋市会を! Ver.3.0

一人の名古屋市民が「地域委員会制度」「減税日本」に対する疑問をまとめるサイトです。(since 2011/3/3)

真・庶民革命(7)代表の真意

(この文章は創作です。創作ですが出来うる限り事実に即して描いております)

 前回までのあらすじ:
 名古屋市会に生まれた素人集団の第一会派、減税日本ゴヤ。彼等の課題は公約であった議員報酬半減、800万円の実現。条例案を上程するも、論戦の結果その成立は危ういものとなった。幹事長である舟橋は議案を取下げ、全会派による裁定案の再提出という、名を捨てて実を取る決断をし、団に党議拘束をかける。そこに代表から電話が入る。


 真・庶民革命(1)革命の鳴動
 真・庶民革命(2)幹事長、辞表提出!
 真・庶民革命(3)議会は酷薄な戦場
 真・庶民革命(4)5分間の休憩
 真・庶民革命(5)3号議案取下げ
 真・庶民革命(6)党議拘束


 別室に移り、河村代表からの電話に出た。
「おお、でゃー(大)幹事長様、やっと出てもらえた。お忙しそうで」
「代表、申し訳ありません。意向表明に向けての調整が迫っておりますので」舟橋はごまかした。
「なんでも報酬条例を取下げるなんて話が出回っとるようだけど、そんな事ありゃせんわな」白々しいにもほどがある。
「単に取下げるわけではありません。全会一致で報酬半減を実現させるための条例案を上程いたします」
「そりゃいかん、そりゃいかんて」
「代表、これ以外に報酬半減を実現させる方法は今のところありません。しかし、これで3大公約が実現いたします。ご理解ください」
「いや、ダメだって。全会一致はダメだから、そんなの取下げたらダメだよ」駄々っ子のような言い草に舟橋は少々イラついてきた。
「すいません、代表、私たちの公約は議員報酬半減の実現であって、それが成立できるめどが立ったのですが、どこがダメなのでしょうか」
「全会一致なんてダメだよ、ダメなんだって」
「・・・すいません、代表。調整をしなければなりませんのでこれで失礼します」
「おい・・・」舟橋は会話不能と判断し電話を切った。

 舟橋は河村代表の真意をはかりかねた。代表が全会一致に反対する理由は何か。もう一度時系列で整理してみた。最初に自分が共産党へ説明に赴く段階で、すでに河村は自分の携帯電話に電話をかけてきている。これはどこかの会派の根回しから情報が漏れて、河村のもとに全会一致方針が伝わったのだろう。それが伝わると同時にそれではダメだという結論を出したということだ。そこで自分に電話を掛けてきた。ひょっとすると先ほどの記者も河村から情報を得て、自分の意向を探りに来たのかもしれない。それは記事を書くためだけではなく、舟橋の意向を聞き出すことによって、それを河村に伝え、恩を売り、また次の機会にネタを得るためだろう。そして団の中、則竹、いや田山に電話を入れて議案出し直しに反対するように指示をしたのかもしれない。

 それほど明確に、代表はこの全会一致による議案出し直しに反対をしている。考えれば考えるほど舟橋は河村の真意が判らなくなった。

 河村が反対しているのは何にだ?この新たな条例案には何か「罠」が仕掛けられていて、自分が気付いていないだけなのだろうか?条文をもう一度、頭の中で噛み砕くように読んでみたがそのような問題があるとは思えなかった。そもそも自分たちの条文と骨格は替わっていない。ややこしい激変緩和措置が無いだけシンプルで判りやすく、単に議員報酬を定めているだけの条文だ。議員報酬を定めただけの条文が条文として違法性があるとでもいうのだろうか。それとも全会一致による議案提出が何か問題なのだろうか。公明党の議員も言っていたように、議員全員の活動に関わる事柄なのだから、本来は全会一致による提出、採択が良いに決まっている。もう一つは、条例案の可決自体が問題なのだろうか。これで議員報酬は半減となる。確かに団の中にも、本音では報酬半減に反対する者も居る。河村も本音では議員報酬を半減化するつもりなど無いのだろうか。


 それ以降、舟橋は別室にこもっていたが、その間にも数回、河村代表から電話が入った。しかし全て無視を決め込んだ。何度目かの着信の後、玉置から電話が入った「幹事長、今どこにいらっしゃいます?」「別室だよ」「今、団長や田山さんたちが議案取り下げはダメだ、党議拘束は無効だって、騒ぎ始めています。多数決を取るべきだって、どうしましょう」「なんだと?則竹と田山を連れて来い」やがて玉置が則竹と田山を連れてきた。ドアの外に数人の団員と記者が居るようだったが3人以外には入室させなかった。
「団長、どういうつもりですか」舟橋が則竹に厳しく詰め寄る。
「代表が全会一致による議案の出し直しはダメだって言われるから」
「理由は何なんですか」則竹は答えられない「代表はダメな理由を何か言っているんですか?」田山も答えられない。
「お二人は、代表の意向と、選挙で有権者に訴えた公約とどちらが大切なんですか。私たちの任務は、議員報酬の半減、年間800万円を実現する事じゃないんですか。それが実現されようという直前になって、なぜ団の足並みを乱すような事をしなければならないんですか」段々と話しているうちに、舟橋の頭に血が上って来た。

弱々しく則竹が言う「でも、代表が・・・」
「代表がどうした」この則竹の一言でついに舟橋の堪忍袋が切れた「この期に及んで全会派合意の方針をひっくり返すというのであれば、則竹さん。あんたが自民党に行って団長の立場で断って来い!」この剣幕に則竹はじっと黙ったままだった。舟橋はヒートした頭で、代表の意向だろうと、理由が不明じゃないか。なぜ全会一致じゃいけないんだ?お二人はその理由が判りますか。と、まくしたてた。舟橋も我ながら言い過ぎとも思ったが、今まで溜めに溜めてきた不満や不信感も含めて二人にぶつけた。その内、田山が携帯電話を弄りだした、舟橋にはそれも不愉快だったが敢えてほかって置いた。やがて田山が電話で相手と話し始めた。河村代表である事は明白だった。舟橋は田山と河村の会話も無視してまくしたて続けた。

 すると、田山が携帯電話を舟橋に差し出した、手が震えている。河村が出ている電話口に出ろという事らしかった「全会一致ではダメな理由・・・」と田山が震え声で言い訳のようにつぶやいて携帯電話を渡す。
「電話替わりました、舟橋です」憮然とした表情のまま電話に出る。
「舟橋さん、どうしたんだ。なんで全会一致にそんなにこだわるんだ」河村代表の言葉から名古屋弁がすっかり消えていた。
「全会一致にこだわっている訳ではありません。公約の実現を目指しているだけです」
「それは結構なことだけど、慌てて全会一致に合意して、暫定で手を打つことは無いじゃないか」微妙に話がずれていると舟橋は思った。
「提出される条例案には期限の定めは有りません。実質的に恒久案と同等です」
「しかし全会一致はダメだ」
「代表、なぜ全会一致ではダメなのですか、その理由をおっしゃっていただけませんか」
「ダメなものはダメなんだ」この水掛け論で舟橋は、河村に対して則竹や田山に語ったように、公約が大切ではないのかと迫ったが、河村の意向は覆らなかった。舟橋は理解した、河村にとってはこの状況こそが必要なんだ。減税政策や中期戦略ビジョンという基本構想の採択など、河村が市長として実現しようとしたものは議会の激しい抵抗に遭っていた。その議会に対する、いわば脅しの材料が議員報酬議論であった。当初の河村マニフェストに謳われていたのは議員報酬の10%削減だった。ところが議会との衝突が激しくなるに及んで、どんどんそのトーンが高まっていく。結果として議員報酬半減、年間800万円にまで行き着いてしまったのだ。
 河村市長にとっては、議員報酬半減など、単なる議会対策、議会いじめでしかなかったのだ。しかし、議員報酬半減を謳い、政務調査費と含めて「議会は年間、80日しか働かず、2400万円ももらっとる」と煽ればマスコミは書き立て、市民は喜んだ。「既得権益にまみれた議会を解散し、市民参加の議会を作らなければならない」と、リコールを行えば36万人もの署名が集まった。河村市長にとっては対立軸が必要だったんだ。今、全会一致で議員報酬の半減を受け入れ、既得権もかなぐり捨てた議会が生まれれば、河村市長は対立する対象を失う。高い政治的理想や理念、志ではない。深い制度論や経済理論に裏打ちされている訳でもない。ましてや市民の為でもない。単なる自身の人気の浮揚の為に、議会を悪者にして、対立の構図を作り、在りもしない既得権を打破する改革者の振りをしているだけだ。
 
 今まさに、その改革が行われようとしている時に、一番頑なにその改革を邪魔しようとしているのは河村代表自身ではないか。

「舟橋幹事長、全会一致で暫定の議案を提出なんて、ダメだから。認められないから」
「代表、すでに全会派その方向で動いておりますので、ご理解ください」
「次の6月議会に恒久案を出す・・・」舟橋は最後まで聞かずに田山に携帯電話を返した。



 ついに代表の声を無視し、民意の実現にまい進する舟橋幹事長。
 これこそ権力者の意向を打ち砕く「真の庶民革命」

 果たして、この決断はどのような結末を迎えるのか。
 そして、舟橋にとって本当に守りたかったものとは。

 さて、いよいよ次回「真・庶民革命」 は最終回です。
 最終回「午前0時の裁定」
 ご期待ください。




 さてさて。本日の中日新聞に懐かしい方が載っている。
 当ブログにも度々ご参加いただいた、減税日本幹事長の広沢一郎氏だ。

 市議団における幹事長は舟橋市議から、色々な方が替わられたが、
 地域政党としての減税日本の幹事長は広沢県議がずっと続けていた。

 ふと、この広沢さんと舟橋さんの、市議と県議、市議団幹事長と党幹事長の立場が入れ替わっていたらと想定すると、面白いですね。

 広沢県議は、昨年の総選挙に、愛知一区から出馬してあえなく落選。立候補により県議も失職して、その後、愛知一区の北区で県議に出るのではと見られていたが、結局、出馬断念。東京で事業を続けている。(んですよね?/そういえば、昨日の山田さんにしても、この広沢さんにしても東京に帰っちゃうんですね「減税で人や企業を名古屋に呼ぶ」んじゃなかったの?)

 まあ、良いですが。

 広沢さんのコメントにこんなのがありますね「市民にとって、地方政治は議員と役所、特定の有権者に独占されていると映る」

 これが「既得権」なんでしょうかね。こういったアクセスの道筋が阻まれている訳ではないのでしょうけど。逆に地方議員を通じて得られる行政のリソース(特権/既得権?)なんて、今、有りませんよね。

 それと、このセリフと。山田さんから私が言われたセリフ「自分たちを支援してくれない人の話を聞く気はない」をつなげると、彼等はこういった構造を壊すのではなく、他の既得権を自分たちの既得権にしようとしていたのかと思える。

 署名集めのモチベーションや議員特権に対する態度。議員報酬半減を嫌がる人が居たなど、当ブログの主張を裏打ちしていただける貴重な発言も多々ありますね。有難い事です。

 最後のセリフ「選挙後は他会派から議員報酬を引き上げようとする動きが出るはず。年八百万円は堅持しなければならない」というのは、例えば当ブログの今の連載や、ご自分で経験された議員報酬の実態を踏まえてどうなのか、是非お伺いしたいものですね。

追記:
あ!そうか、広沢さんが東京に帰っちゃったので
所属名古屋市議の政務調査費使用状況について(10/26更新) | 減税日本

は、こんな状態なのね。


ご依頼がありましたので掲載いたします。
(このイベントについて、当ブログは一切関与しておりません)

瑞穂区において
「市会議員(県会)立候補予定者公開討論会」が行われます。
主催:市政を考える瑞穂区民有志の会。

3月29日(日) 午前10:00〜
於:瑞穂区弥富コミュニティセンター会議室

出席予定者:
高木浩司<県・民主党
かのう拓人<市・共産党
塚本剛志<市・維新の党>
川崎つとむ<元みんなの党、無所属>

お問い合わせ:五十嵐( メールアドレス:ig1220@rf.so-net.ne.jp )