市民のための名古屋市会を! Ver.3.0

一人の名古屋市民が「地域委員会制度」「減税日本」に対する疑問をまとめるサイトです。(since 2011/3/3)

守山区浸水被害説明会

 守山区で行われた台風15号被害の説明会に参加してきました。


 本日は19時から守山区の志段味支所で行われており、志段味地区の方々向けの説明会であることは重々承知ですが、元々行政当局というのは「無謬性」から離れられません。


 ほんとうに呆れるほど「間違い」を認めません。

 特に河村市長になってから、このトップのチェック機能が完全に機能不全に陥っていますので、当局の好きなように情報を捻じ曲げる傾向があるように思えます。
 本日もそんな事例でしたので、ご紹介してみましょう。

 左にずらりと並べたのは、本日の説明会で使われた資料です。


 この文章に「嘘」はありません。

 「嘘」はありませんが、

 実は今回の浸水被害の大きな要因

 もっと、はっきり言うと、「本当の原因」は記載されていません。
 どういうことか、ご説明しましょう。


 (それぞれのイメージはクリックすると拡大されます)


 本文の1ページ目、


 今回の台風15号の進路であるとか、


 当時の天気図、前線の配置であるとかが

 平成12年の東海豪雨の事例と並べて紹介されています。

 つまり、今回の台風15号が先の東海豪雨と同等の

 雨型台風であり、浸水の主要な要因は

 この台風の性質によるものであるという

 「言い訳」が延々と続きます。




 2ページ目に入ると、東海豪雨時の庄内川流域の雨量と、

 今回の雨量が比較されて、


 特に、多治見(脇の島等)の雨量が500mmを超えている箇所もあることが示されます。


 これを見た素直な人なら

 (たとえば、会場に居た減税日本ナゴヤの富口市議なら

 「ああ、こんなに酷い雨だったら、浸水するのも仕方がないか」ぐらいに受け取るのではないでしょうかね?
 あくまで推測ですけどね)

 3ページ目は更にこの雨量と、志段味における庄内川の水位を

 東海豪雨と比較して、ピーク水位において東海豪雨をオーバーしたり、

 東海豪雨よりも急速に水位が上がってきた事が示されます。


 この水位上昇によって下志段味地区で堤防を越水し、
 (堤防は破壊されていません。これ重要です)
 それに対応する土嚢(1トン)を640個


 延長480mに渡って緊急設置されたとされます。


 この努力には頭が下がります。


 大変でしたでしょう。事故がなく何よりでした。


 4ページ目

志段味地区においては、下志段味地区(庄内川からの越水)と

 中志段味地区(野添川からの越水)が浸水被害を受けました。

 ここでも、今回の雨量と東海豪雨の雨量が比較されています。

 続く5ページ目で下志段味地区の詳細な状況報告が記載されています。

 この地区では排水路が長戸川に接続し、長戸川が庄内川に繋がるという構造になっており、
 排水路から長戸川へはポンプによる排水がなされ、そのポンプの稼働状況、


 排水路と長戸川を繋ぐ樋門の開閉状況、更に長戸川の水位(=庄内川の水位)と


 当時の雨量が提示されています。


 ここでも、浸水と降雨量の関係が強調されています。



 次の6ページ目で中志段味地区の浸水の状況と


 そもそもの名古屋市の雨水対応の基準が示され、



 全体でも50mm/h が基準であり、浸水被害が発生した地域においても 60mm/h までしか対応できないという基準が示されます。つまり、今回の降雨量は志段味地区においても72.5mm/h 東谷山においては 79.5mm/h を記録するという、基準以上の降雨による災害であったというような結論に持っていこうとしているのが伺えます。

 7ページ目は各区の被害状況集計(北区においても守山区ほどではないにしてもこれらの被害があったことは覚えておいていただきたいと思います)


 8ページ目は各現場の写真

 9ページ目は当時の避難勧告、避難指示の時系列的な流れです。避難指示解除が20日の22時30分であったことは、重要です。




 10ページ目が今回の災害に対する課題と主な対策が並べられています。これも大きな問題をはらんでいますが、稿を改める事として今回は触れません。


 そして、11ページ目で各関係機関の連絡先が記載されています。(電話番号、FAX番号は処理しておきました。必要であれば名古屋市の公式HPをご覧ください)




 さあ、以上が配られた資料で、説明もこの資料に準じてなされました。

 今回、扱われた問題は下志段味地区(庄内川からの越水)と中志段味地区(野添川からの越水)ですが、これらの「問題が発生した原因」がこの資料だけでお分かりになったでしょうか?

 できごとに対応する場合、その原因が判らずに対策をとっても意味がありません。

 多分、市当局は本当の原因は判っています。(後に口頭では説明しましたから)けれども、それを積極的には市民に知らせようとはしません。なぜか、必要な対策であっても、その為には予算が必要となり、すぐに対応できるかどうかが判断できないからです。

 市当局も必要性、重要性は重々承知しています。けれども、こういった現実に突き当たるときに、時として政策的判断によって「後回し」「弥縫策」を強いる必要も出ますし、場合によっては「切捨て」を判断しなければならないときもあります。


 特に、この下志段味地区の事例は、あるいは「切捨て」と判断されても仕方がないのではとも思える事例であり、であれば。これらの資料に「本当の原因」が書けない理由も理解できます。

 では、私が取材した下志段味地区の越水の「本当の原因」は何か。落ち着いて資料をご覧になればお分かりいただけると思います。この資料に示された「事実」に対して、非常に単純な疑問を持てば、この「本当の原因」に行き着きます。

 その単純な疑問とは、「なぜ名古屋市側は越水したのに、春日井市側は越水していないの?」です。

 庄内川の堤防はこの地区、名古屋側が一番低くできています。これは歴史的な経緯があるのだそうですが、ここではおきます。この件を質問したところ、あれこれと長い説明の後に、この堤防の高さの差を認める回答をされました。この事実は資料には盛られていません。この差について対策をしなければ、下志段味地区の越水は本質的には対策できたとは言えないでしょう。

 また、中志段味地区(野添川からの越水)についてもこの資料からは「本当の原因」は判りません。


 右の図は、守山区 洪水・内水ハザードマップから私が独自に作成したものです。(大広見池の着色とか、各池の名称の記入等)

 野添川の越水は降雨とか庄内川からの越水という要因よりも、どうも、野添川の水源である筧池の氾濫が直接の原因のようです。


 では、筧池が何故氾濫したのかというと、その上の蛭池、大村池がそれぞれ氾濫して、そのまた原因は市の境を越えて尾張旭市に位置する大広見池が氾濫したことによる「玉突き」が原因であろうと見られています。

(この大広見池の氾濫によって、東谷山中腹の道で数台の車が出水にまきこまれ、あわや人災の被害を起こすところでした:参照

 これらの池は志段味地区の農家の水源になっており、農家が多かったころは浚渫も行い、台風が接近するような場合は池の水を抜いて対応をしていたそうです。地域の宅地化に伴い、これらの担い手が居なくなり、市としては浚渫の必要性も認識していなかったようですし、水を抜くという対策もしていなかったそうです。

 また、事は市の境も越えた大広見池にも至るわけで、名古屋市守山区だけではなく、尾張旭市も加えた対策の議論が必要な筈です。

 行政当局というのは「嘘」は言いません。けれども、なかなか「本当の事」も言ってくれません。しかし、「本当の事」を引き出さなければ住民は本当の問題意識を把握する事はできませんし、こういった事実を積み重ねなければ本当の住民自治など実現できません。

 行政当局に対して問題意識をもって調査をし、事実を摘出し、更に対策を求めていくリーダーが、本来の市議、県議であり、それが歳費800万円程度の「素人」でできるわけが無い。

 それでも、「素人でいい」「ボランティアでいい」というのなら、いっそ「自治は放棄せよ」といえばいい。そう言っているのに等しいのだから。(私は素人でボランティアでこういった問題を今回たまたま摘出できました。色々な情報を寄せていただけたからです。しかし、素人の私にはここまでが限界です。これ以上行政に対策を求めるとか、対策をチェックする事はできません。これ以上はプロの議員に対応をお願いしたいと思います)

 さきほど、避難指示解除が22時30分であったことを指摘しました。北区においても浸水被害はありましたし、避難において様々な問題が指摘されています。特に、避難指示解除が深夜に至り、特別に仕立てていただいた市バスで帰路に着いたのは良いのですが、実際に自宅付近に着くのが深夜0時を回った頃、さらにそこから自宅までお年寄りを歩かせて良いものかという指摘がありました。

 こういった問題も指摘したいのですが、北区においては説明会がなされないという情勢になっているようです。これは問題です。(これを訴えたくて守山にお邪魔したしだいです)

 なお、出席した河村市長(行政当局、市当局の執行者です)は、またぞろ「地域委員会」を持ち出して会場の人々の失笑を受けていましたが(私の隣の老人は「また、地域委員会か」とおっしゃっていました)

 河川の改修、メンテナンスが地域予算でできますか?これは堤防に隣接する各地域が別々に対応する性質のものではない筈です。さらに、後背地も利益を受けるのなら後背地も地域予算を割くべきでしょう。では、各地域はどのような負担比率にするのが正しいのですか?

 こんな事は考えるだけで「ナンセンス」です。

 「地域の事は地域で」というのは、後退する行政というこの社会状況の中では誤ったドグマですし、完全に2周遅れの政策です。

 もう市民も気が付いています。

 この会合の最後、市長挨拶の終わった後、会場から起こった拍手がまばらだった事がそれを表しています。



追記(10月31日):
情報提供をいただきました。
「国土交通省中部地方整備局 災害情報詳細/本局発表・全体取りまとめ」

平成23年台風15号による被害状況報告(第7報)平成23年9月22日19:00現在
庄内川堤防越水情報 国土交通省中部地方整備局庄内川河川事務所(9月20日16時00分現在)