市民のための名古屋市会を! Ver.3.0

一人の名古屋市民が「地域委員会制度」「減税日本」に対する疑問をまとめるサイトです。(since 2011/3/3)

現在の計画のどこが問題なのか

 小牧市で行われた「現在の新図書館建設計画に関する住民投票」は、「反対」多数となり、山下市長は計画の見直しを迫られる事となった。


 図は、その開票結果。賛成、24,981票に対して反対、32,352票となっている。得票比率で言うと賛成:反対=43.57:56.43。
 あるいは、6:4程度で反対票が多くても山下市長は計画を進めてしまうのではないかという観測もある中、微妙な結果となっている。

 投票率は、市議会議員選挙と同時という事もあって 50.38%を維持している。

 その為、反対を表明したヒトは、全有権者の27.74%に達している事になる。

 つまり、小牧市民(有権者)のほぼ、3〜4人に1人が、この計画に反対していたと言えるわけで、これでは無理に計画を推進することはできないと考えるが、どうなんだろうか。

 この選挙結果を受けて、山下市長が記者会見を開いた。その際のコメントを中日新聞は次のように伝えている。

 山下史守朗市長は五日未明の会見で「現在の計画のどこが問題なのかを市民と丁寧に検証し、よりよい計画となるよう必要に応じて見直しをする」と話した。

(10月5日 中日新聞 朝刊 1面)


 実はこの記者会見には私も潜り込ませていただいて、質問までさせていただいてしまった。私のヘロヘロの質問は次の動画に残っている。

Recorded Live #206120901 - Akira @理解できない一般国民 (@akira_mori0120) - TwitCasting

 この小牧市においては、平成21年に「新小牧市立図書館建設基本計画」(以下、基本計画)というものが策定されており、小牧市も現計画はこれを「踏まえて」いると説明している。

 この基本計画が策定された経緯はこちらにまとめてある。

 密室の中で進む建設計画

 市民との意見交換会や各種団体へのヒアリング、さらにパブリックコメントなどを経て策定されている。

 この基本計画には「第9章 管理・運営/第1節 市直営の原則による市民ニーズへの対応」として、市の直営事業であることが明確に謳われている。

 この「原則」を無視して、昨年山下市長が、「官民パートナーシップ」による図書館建設を進めるとされ、その内容について市民に説明もなく、意見交換する場も設けなかったことが、最初のボタンの掛け違えで、今回、小牧市民の反発を招いたのだろうと考える。


 そうした中、私がヘロヘロになって、山下市長に聞いたのは、今回の住民投票に当たって、小牧市が全戸配布した「お知らせ」の内容についてだ。

 住民投票のお知らせ、小牧駅前の新図書館建設計画に関する概要(PDF)


 この「お知らせ」の6ページに、「現図書館」と「新図書館」の比較が載っている。
 しかし、「新図書館」と比較をするのであれば基本計画に謳われた図書館と比較すべきではないのかと質問した。


 小牧市にもともとあった図書館建設計画、その基本計画では、蔵書数は70万冊を予定していたのであって、今回の新図書館が蔵書数を50万冊とするのであれば、それは規模の縮小ではないのかということだ。

 「住民投票のお知らせ」徹底批判(その1)


 そうしたところ、小牧市の事務方のサジェッションも受けて山下市長が回答した内容は、基本計画の35ページに記載されていた次の文言だった。文言を根拠としたものだった。

(表の数値は、個別機能としての参考数値であり、利用形態や連携を考慮しながらスペースの共用を図る等、設計段階で改めて検討します)

追記:ここに「設計段階で改めて検討します」とあるので、建設費の高騰を受け、蔵書数も70万冊から50万冊に縮小されたと説明している。

 この解釈は誤りだ。

 山下市長や現在の小牧市職員が、この基本計画をよく理解していない。または、誤読している事が理解できる。

この文言を受けて蔵書数を「設計段階で改めて検討」する事はできない。


 なぜなら、蔵書数については25ページ。
 「第6章 新図書館の資料収集目標/第1節 サービス目標基準/1 蔵書計画」で明示してあるからだ。

 確かに、70万冊は目標数字として掲げられているが、けれどもどこにもこの数字を下方修正してよいとする手続きも、状況も書かれてはいない。

 図書館として、この「第6章」に謳った「資料収集目標」つまり、蔵書数に対して、次の第7章でその機能(蔵書及び、その管理・閲覧)を満たすための面積と配置を描いているに過ぎない。

 また、何もこんな表に付してある注意書きではなく、本文に次のように書かれている。

 ここに示す合計面積は各機能に必要な面積の積み上げによるもので、基本設計段階で、より具体的で効果的な配置等を十分検討することとします。

(31ページ 第7章 新図書館の建設計画/第2節 昨日の配置計画に関する考え方/3 各機能の面積と配置計画)

 さて、そうした上でもう一度山下市長の回答を検討してみよう。

 ここで「設計段階で改めて検討」されようとしているのは何か?
 それは「スペースの共用を図る等」出来るものだ。


 つまり「表の数値」として「参考数値」とされるものは、各機能の面積や座席数に他ならない*1。この注意書きを捉えて蔵書数を変更することは、全くの本末転倒の論理となる。


 基本設計において、図書館としてまず70万冊の蔵書目標があるのであり、よしんば、建設費の高騰によって、70万冊収容できる図書館の建設が不可能であるのなら、それで建設計画の縮小を図らなければならないのであるなら、その事実を市民に知らせるべきではないだろうか。

 基本計画で約束していた仕様について、それを満たせられないからと勝手に50万冊に蔵書目標を下方修正し、あまつさえ、現図書館と比較することで、あたかも蔵書数が増加するかのように市民に誤解を与えるような「お知らせ」は、誠実ではない。適正な情報開示の姿勢とは言えない。

 山下市長は今回の住民投票について、すでに議会で議決いただいている図書館建設について、議会が突然、住民投票を求める条例を提出して実現したことに戸惑っていると言われるが、市民にとっては、ここまで手間暇をかけて策定したこの基本計画に反する現在の山下市長の図書館計画にこそ戸惑いを禁じ得ない。

 もし、山下市長や小牧市当局が、基本計画は「踏まえる」もので、墨守するものではない。その内容について市長や当局や、連携民間業者が好き勝手に修正しても良いと考えているのであれば、この基本計画を策定した際に支出された予算は無駄ということになるのではないのだろうか。この基本計画策定に対して、市民や各種団体、市当局が費やした時間や手間は、全くの無駄になるという事ではないのか?

 山下市長は、ご自分の都合について戸惑われる前に、小牧市民がこうした事に、どれほど戸惑ったか、それを今一度考えていただきたいと思う。


「現在の計画のどこが問題なのか」

 それは、市民の声を聴いていなかった(基本計画を無視した)から。

 70万冊の蔵書を、断りもなく、50万冊に減らす。
 市の直轄事業としていた方針を、市民に説明も、意見聴収もなく官民連携に切り替える。

 基本計画は、小牧市が、新設する図書館について、小牧市民とした約束ではないのだろうか。その約束の中身を換えるのであれば、小牧市民に説明するのが当然の義務であり、手続きではないのだろうか。

(平成27年10月5日 公開)


小牧市立図書館問題インデックスに戻る

*1:そもそも表の題目は「機能別面積一覧表」なのだ