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「住民投票のお知らせ」徹底批判(その2)

 前回に続いて、小牧市の配布した「住民投票のお知らせ」について検討していきたい。

 http://www.city.komaki.aichi.jp/shogaigakushu/library/010859.html
 住民投票のお知らせ、小牧駅前の新図書館建設計画に関する概要(PDF)


 その前に、小牧市内の賛成派の方々がチラシを作られているようなのでこれについて若干申し述べたい。

 このチラシにあるように「15万都市にふさわしい新図書館が必要です!」という意見には異論は無い。

 イラストに添えられた「何と比べて言っているの?」という疑問には、前回も述べたように小牧市民の民意の結晶である、基本計画に描かれた図書館と比べているのですよ」とお答えしたい。

 小牧駅前が再開発されて、商店街が無くなり、現在のような形になって、活性化が必要な事は議論の余地もないだろう。

 しかし!

 その再開発を放置していたのはそもそも誰であったのかという議論もあるようだ。

 様々な経緯もあったのだろうが、平成21年に策定された基本計画に準じて、粛々と図書館建設を進めていれば、議論の余地もなく、すでに図書館はあったのではないだろうか?

 また、今、こうして小牧市民を真っ二つに分断して議論しなければならないのは、山下市長が市民に十分な説明もなく、基本計画を無視して、官民連携を進めようとしているからではないのか?

 市長は、市の最終責任者として、市民に説明の義務を負うものだ。
 また、この問題に関しては、発議者としての説明責任も負う。

 そうした疑問に「対案を出せ」という反論はあり得ない。「対案は、そもそも、小牧市民の民意の結晶として策定された基本計画である」とお答えしよう。


 「民間連携によりサービス充実」と訴えられていますが、そもそもこのチラシを書かれた方は、基本計画をご存知ないように見受けられる。

 「蔵書数・座席数の増加」と書かれていますが、これは前回書いたように、市の説明を鵜呑みにした数字で、本来比較すべき基本計画と今の建設計画では、蔵書数も70万冊が50万冊に減っていますし、座席数も増加とは言えません。(今の計画におけるカフェの座席数が判らないために比較ができない。)

 開館時間に関しては、午前9時から午後9時となっていますが、そもそも現在の本館開館時間は午前9時半から午後8時半までです。前後30分、時間を延長するのであれば、運営経費を増やすなどの措置をとれば可能でしょう。そして基本計画でも開館時間の延長は謳われています。

 また、開館日についてですが、これも武雄市図書館で散々議論されました。
 CCCは当時「ド素人*1」だったそうですが、「図書館運営において、閉館した上で資料整理の時間を設けない事は、資料収集の上で支障を及ぼす」というような忠告を無視して実施したもので、まだ運営2年程度の状態では、「年中無休」の方針が正しいとは言えません。(武雄市では運営経費の増大が言われているようです)

 図書館が定期的に閉館するのは、何も職員が休みたいからばかりではなく、資料の整理が必要なためで、整理されていない図書館(情報)は有意に利用することはできません。

 しかしこれとても、充分な人員を掛ければ可能は可能でしょう。要は、費用と便益のバランスです。民間業者がこういったノウハウを持っている訳ではありません。(特に、CCCは書店運営のノウハウは持っていますが、図書館の運営についてはご自身がいわれるように「ド素人」です)単に、人件費を削減して(非正規雇用などを利用して)コストカットをしているだけで、いわゆる「官製ワーキングプア」を作っているだけに見えるのですが、小牧市においてもこういった働く人たちの負担を求めますか?


 「居心地のよい空間演出」についても一言。

 この画像は10月1日にオープンした海老名市図書館の模様だそうです。
 海老名市立図書館がオープン 画像120枚で館内を速報 | ハフポスト

 大変「居心地」がよさそうですね。居眠りするには最適に思えます。
 しかし、書物の閲覧には少々光量が足らないのではないでしょうか?

 JIS規格では図書閲覧室の維持照度は500Emであるとされています。
 JIS照度基準

 ・・・多分、写真の写り方で暗く見えているだけなのでしょう。


 私は「設計主義」に懐疑的です。人間の社会において、何か一つの事が出来上がれば、または何か一つの問題さえ解決すれば「バラ色の未来が訪れる」などという言葉には信頼を置くことができない。(社会学的、科学的にも否定されている)

 大阪の「都構想」名古屋の「減税政策」や「地域委員会」すべて結果が出なかった。

 民間連携で図書館ができれば、小牧市の懸案である、中心市街地の活性化が解決するなんてなぜ言えるのか、不思議でなりません。論点のすり替えでしかない。

 それでも早急な駅前開発が必要であると思われるなら、議論もあり、様々な懸念もある連携業者との関係を断ち切り、小牧市民の民意の結晶である基本計画に立ち返った建設を、早急に進めていただいた方が良いのではないでしょうか。ぜひ、住民投票では「反対」に○を打っていただきたいものです。

 http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151001-00010003-bjournal-soci&p=1

 さて、では小牧市の配布した「住民投票のお知らせ」について検討していきましょう。

 7ページ目。

 DVDの鑑賞について武雄市の事例を見てみましょう。

 武雄市でも図書館でDVDの鑑賞ができるようです。

 しかし、武雄市ではツタヤ図書館化に当たって、それまで所蔵していたビデオ、1468点、CD、1322点、DVD、464点を除籍(廃棄)しました。

 この廃棄したDVDの中には「ロード・オブ・ザ・リング」や「パイレーツ・オブ・カリビアン」などの人気コンテンツも含まれていたそうです。

 その代わり、図書館に併設されたツタヤのレンタルコンテンツが、音楽関係では3万点、映画は4万タイトル用意されているようです。

 良かったですね。もちろんこれらは有料です

 なんともケジメの無い事に、武雄市図書館では、併設されたツタヤで借りた(有料)これらコンテンツを、図書館の設備(再生機器)で見たり、聞いたりできるそうです。(個人が勝手にCDやDVDを武雄市図書館に持ち込んで、それを図書館の機器で視聴することはできないそうです)

 これ、異常な事と思われませんか?
 なぜ、武雄市は特定の企業にだけ、市所有の機器の使用を許しているのか?

 参考→ なぜ武雄市図書館にはCD、DVDなどが300枚程度しかないのか

 現在、小牧市の図書館にはDVDが約2000点あるそうです。
 ツタヤに破棄されないように、注目する必要があるのでは?

 自由な、そして無料の鑑賞(市民が文化と触れる機会)を縮小し、豊富な、それでいて当然有料のDVD鑑賞(消費者の享受する娯楽)を推奨するのが「ツタヤ図書館」です。

 「市民が文化と触れる機会」と「消費者が享受する娯楽」は、行為としては全く同じものです。しかし、その意味は全然異なりますし、提供する「図書館」と「レンタル業者」の社会的意義*2も違います。この相違を理解していないのがCCCです。

 図書館総合展「"武雄市図書館"を検証する」テキスト+録音
 カルチュア・コンビニエンス・クラブ増田宗昭社長「企画という生き方」 | GLOBIS 知見録 *3

 この相違を理解しない事は、文化の破壊でしかありません。



 さて、最後。
 建設費です。

 「華美な仕様を採用したということではなく」と小牧市は申し開きますが、
 「吹き抜け」であるとか「本の山(ブックマウンテン)」は「華美」なのではないのでしょうか?

 それらが必要な理由が判りません。

 「吹き抜け」や「本の山(ブックマウンテン)」を実現するために、各階高も大きなものになっているようです。(1階が6m、2,3階が5m)

 こうしたものは、基本計画には当然ありませんでした。
 いったい誰の発案で、何を目的として設計に盛り込まれたものなのか。
 そして、これらが建設費用に占める割合は。

 こうした「(私からみたら)華美な」設計によって、建設費が高騰したのではないのですか?


 そうした疑念を払う情報を小牧市は示せていませんし、こうした疑念を放置したまま、主観的に「華美ではない」と主張することは「中立性」を失っていると思えますが。


(平成27年10月1日 公開)



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*1:9月30日 海老名市図書館におけるCCC高橋聡館長の発言

*2:上下とか貴賤を言っている訳ではありません。どちらも社会的意義は尊いものです

*3:『実際には本のレンタル屋だ。要するに「図書館なんてものはない」』というのが、カルチュアコンビニエンスクラブ代表の増田宗昭氏の言葉です。