本日、9月24日は、小牧市東部市民センターにおいて行われた、小牧市主催の図書館説明会に参加しました。開始前から色々とありましたが、終了間際の市の回答について、少々怒り心頭です。
もう、正直言って「なら、武雄モデルの図書館を小牧に作ってみれば良いじゃないか」といった心境になってきました。もちろん、本気ではありません。理由は後に述べます。
終了間際の質疑応答でブックマウンテンについて、車いすの人は利用しにくいのではないかという指摘があった。
市の回答はブックマウンテンの各階層にエレベーターでアクセスできる。というものだった。また、設計コンセプトに「ユニバーサルデザインやバリアフリー化」が挙げられており、これらに留意して設計する。との回答だった。
これ自体は正しい。確かに各階にエレベーターが繋がっているので「場所へのアクセス」まではバリアフリーになっていると言えるのかもしれない。(それでも、オランダ、スパイケニッセのブックマウンテンの場合、各階層を繋げる階段のサイドに書架が設けられているため、バリアフリーが成立しているとは言い難いだろう)
小牧市の提示している基本設計ではその他にも問題が有り、果たしてバリアフリーと言えるのだろうか。
1階平面図の説明に(本の山)ブックマウンテンと壁状の書架のイメージがある。
両者とも数段の高い書架となっている。(本の山の場合9段。壁状の書架の場合7段程度に見える)
ちなみにこの壁状の書架(高さが2mは超えるだろう高層書架)は「児童スペース」に据えられることになっている。
まさかとお思いかもしれないが、武雄市図書館をご存知の方なら「またやったか」という事例でしかない。
喪くしたものは・・・図書館児童サービスの視点から(訂正有) : みどりの緑陰日記
とても子どもたちだけでは手も届かない、それどころか、子どもの視点からは表紙を見ることも困難そうな配架、何のために、誰のためにあるのか判らない設計となっている。
本の山、ブックマウンテンにおける9段という高さはどのようなものだろうか。武雄市の事例を検証したログが有る。
【新武雄市図書館】高層/巨大書架の考察 - Togetter
立ってアクセスできる書架の高さは6〜7段
車いすで利用するなら4〜5段というところが常識的な書架高というものだろう。
「新小牧市立図書館建設基本計画」は第7章・第5節の1に「書架」の項目を設けて次のように指針を述べている。
1 書架
配架する資料に適した、寸法(幅・高さ・奥行き)に配慮したデザインとします。
使いやすく、かつ長期間の使用と重量のある書籍に対応できる耐久性と堅牢性のある、安定性の高いものを採用します。
書架高を低くすることによって、利用者や職員が探しやすく、取り出しやすくします。特に児童コーナーは、子どもが本に興味をもてるように、おもて表紙が見える置き方が可能な書架にします。
地震時に書架が転倒しないように、形状や固定化等に配慮します。(強調、下線は引用者が付した)
確かに武雄市の場合も、「おもて表紙が見える置き方」なのかもしれないが、子どもたちが見ることができなかったり、手で触れることができないような高さなら意味がない。
小牧市は今回の図書館計画がこの基本計画に準じたものであると強弁しているが、ここでも基本計画と基本設計の間で食い違いが起きている。
また、基本計画では書籍ごとに書架の仕様もきめ細かに定められている。
一般図書開架:5段(書架列間隔 約3,000mm)
専門図書開架:5段、壁面は高書架(間隔 2,250mm)
地域・行政資料:4段、壁面は高書架(間隔 2,250mm)
また、基本計画では第7章・第1節の1でユニバーサルデザインについて次のように定めている。
障がい者、高齢者、妊婦、子ども等を含む全ての人が、親しみを持って接しやすい図書館づくりを目指します。(略)閲覧室をはじめ出入り口、書架やサインのデザイン、扉や把手や内装材の選定等利用者に分かりやすくストレスや心理的な圧迫感を与えないように配慮した空間構成、家具デザイン、インテリアデザインとします。
(強調、下線は引用者が付した)
児童スペースに壁状の高層書架を設けたり、わざわざ3階まで吹き抜けをつくって、本の山(ブックマウンテン)を見せたり。基本計画が留意するとした「圧迫感を与えないように」という方針と180度方向性が異なるように思える。
これでも基本計画に準じていると強弁できるのだろうか。
私は今の政治家、特に行政に乱暴に市場原理を持ち込んで、生産性を押し付ける政治家は「社会的共通資本」の破壊者だと思っている。行政や公共圏に生産性やら効率化、市場原理主義を持ち込めば、困惑するのは弱者だ。
行政がこの弱者切り捨ての社会的風潮に立ち向かわなくて、誰が社会的弱者を助けることができるのだろうか。
確かに、行政マン自身は現在の日本社会においては、学歴も、社会的信用性も、雇用の安定性も抜群の「勝ち組」「社会的強者」なのかもしれない。しかし、だからといって、行政マンが社会的弱者の困惑、困難に無理解で他人事と思うのなら、行政マンたる資格は無い。
乱雑な理論や、乱暴な主張をする政治家に立ち向かうタフさと、
ロン・メイスの7原則にも通じる弱者への公平性、やさしさを兼ね備えなければ行政マンたる資格は無い。
「タフでなければ生きていけない、やさしくなければ生きている資格が無い」
それが判らず、このブックマウンテンが「ユニバーサルデザインに準じている」なんて本気で説明するのであれば、もう対話の可能性を疑う。もうどうぞ、好きなように説明してください。強弁を続けてください。
そして、そうやってごまかして、住民投票を建設推進で進めれば良いじゃないですか。
その結果どうなります?
なんでも、山下市長は住民投票の結果が五分五分なら、民意を得たと建設を進めるそうですね。反対が6割程度でも強行するのではという人もいる。強弁し、ごまかし、そして民意を無視して建設すれば良いじゃないですか。
その結果、車いすの市民が、ブックマウンテンにやってきて、高層の書籍は取れないと困惑するでしょう。その時「この図書館の基本設計の設計コンセプトに、ユニバーサルデザインやバリアフリー化はうたわれています」なんて説明が通用しますか?
現実の図書館ができてしまったら、今までしてきた説明が「全部嘘だったじゃないか」と明白になるんですよ。
私はその場所に「基本計画書」を持って立っていたいぐらいだ。
現在の図書館建設計画は、平成21年3月に策定された、小牧市民の民意の結晶である「新小牧市立図書館建設基本計画」に準じてなどいない。そんな小牧市民の民意を無視して、CCC・TRC共同事業体が自分たちの好き勝手な仕様を小牧市に押し付けているに過ぎない。
建設されようとしている図書館と、基本計画は全く異なるものだ。
それを同じだと強弁する小牧市当局は「嘘」をついている事になる。
そんなに嘘をついて、それでもツタヤ提案の図書館を作りたいのであれば、どうぞ、作ってくださればいい。それこそが、現在の小牧市当局が嘘をついていた何よりの証拠となる。
小牧市に武雄モデル図書館ができれば、
それが基本計画とは全く異なるものだという事は、誰の目にも明らかになる。
なら、武雄モデルの図書館を小牧に作ってみれば良いじゃないか。
そうすれば、小牧市当局の欺瞞が白日の下に晒されるだろう。
追伸:
私に対した小牧市の職員は「基本計画に附則があるでしょ」と主張した。
附則に、基本計画の実現を弾力的に行えるような規定があるような事を言っていた。
ない!
間違えている。
更に、良い事を教えてあげよう。
基本計画では第10章に「開館までの準備」が明記されている。そこには次のように書かれている。
開館まで、下記の項目について、それぞれ日程に基づき計画し、実行していきます。設計事務所の選定から、基本設計、実施設計の間に、市民からの意見を聞く会を開きます。
これは、それぞれのポイントで、計画が具体化し、形になるごとに市民に説明をし、意見を聞くという意味だ。設計事務所の選定、基本設計。ここまで2ステップ進んでいるが、この間、「市民から意見を聞く会」というものは開かれているのか。
これでもまだ、小牧市は「現行建設計画は基本計画通りです」というのか。
(平成27年9月25日 公開)