元旦の中日新聞に「戦後70年のルネサンス」という社説が載った。
最後の締めに「世におもねらず所信を貫いた言論人」を称揚し、「権力を監視する義務と『言わねばならぬこと』を主張する責務」をもつと語っているが、本当に中日新聞は権力の監視と言わねばならぬことを伝えていたのか。それを胸を張って言い切る事ができるのか、ちょっと問い質したいような事例もあります。
それも気にはなりますが、最も気になるのは次の一節です。
資本から人間中心の社会を取り戻さなければなりません。経済学者や物理学者からは定常型社会が提唱されています。無理な成長を求めないゼロ成長の社会です。人口減と高齢化、エネルギー資源や環境の制約の中ではゼロ成長も容易ではないようですが、成長より社会の安定の価値転換が肝心。成長を超える人間中心の新しい社会への兆しもあるようです。
こういう言葉を「おためごかし」という。
「人間中心の社会」とは何か?
そして、それが実現されれば人間は排除されないのだろうか?
「人間中心の社会」なるものが実現できて、それがゼロ成長で実現できるのであれば、その社会は格差を拡大してしまうのではないのだろうか?
そして、その格差が拡大した社会で実現される「人間中心の社会」とは、映画「エリジウム」が描いたような富裕層にだけ恵まれた社会で、貧困層に対しては顧みない社会なのではないのだろうか。
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大晦日ですね。よいお年を。2011-12-31
無知のヴェール 2011-11-03
「定常型福祉社会」の曲解 2011-10-28
昨年*1、フランスのトマ・ピケティが「21世紀の資本」を著し。彼の作業から次のような見解が導き出された。
「資本収益率が産出と所得の成長率を上回るとき、資本主義は自動的に、恣意的で持続不可能な格差を生み出す」
結果として、今の日本の格差を生み出したのもデフレ不況と言われた「マイナス成長時代」であり、今後も経済の成長率が資本の収益率を下回れば資本の蓄積が進み「自動的に」格差社会が深刻化する。
広井良典氏も「持続可能な福祉社会」の条件として「個人の生活保障や分配の公正が十分実現され」ることを挙げている。
「ゼロ成長」ではそれらは実現できない。「ゼロ成長」では格差の拡大は止められない。
映画「インターステラ―」を作成した監督クリストファー・ノーランは宇宙開発などを否定する「反文明論」「反知性主義」に対するアンチ・テーゼとしてこの映画を作成したと語っているそうだ。
人口減少が起きようと、経済成長をマイナスにする必要はない。
現に、一人当たりの富を拡大させてきたのが人間であって、人間は昨日よりも暗い明日には生きられない。
それが「人間」であって、それを否定して「人間中心の社会」など有り得ない。
そもそも「人間中心の社会」なるものを「提唱」している物理学者って誰なんだろうか?
化石燃料や内燃機関の発明は人間の活動空間を驚くほど広げた。
それに引き続く電気の利用は、すでに人間の能力を拡張させたと言っても過言ではない。(テレビは千里眼を与え、携帯電話などの無線技術はヒトにテレパシーを与えたに等しい)
技術の進歩は人間を拡大させる。
確かに、その姿は非自然であり、すでに人類は地球を破壊するほどの力すら手にしている。しかし、これを制御して生きていかなければ人類は存続しえない。
ローマクラブよろしく「成長の限界」と勝手に宣言し、この成長を止める者は、未だその恩恵にあずかれていない後進国の人々を切り捨てるに等しい。
人類は成長できる、成長してその富を分配する事ができる。
しなければならない。
そしてすべての人々が(一部の人々ではない!)豊かに暮らすことが出来る筈だ。
先進国である日本で「ゼロ成長」を称揚する者はこの可能性を奪う者である。
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人類をもう一段拡大させると考えられる可能性の種子。
http://www.lockheedmartin.com/us/products/compact-fusion.html
追記:
私は反・反原発です。
巷には「昨年(2014年)は一年間、日本に原発が無い期間でした」という意見もあるようですが、現在、日本で進められている反原発運動は、単なる火力発電回帰、化石燃料依存回帰でしかありません。
化石燃料への依存は石油の採掘コストを引き上げ、それまではコスト的に引き合わなかったオイルサンドによる採掘を可能にしました。
そのオイルサンド/タールサンド採掘による影響がカナダから報告されています。
「タールサンド開発」がもたらす深刻で大規模な環境破壊 – @動画
日本語TED新着: ガース・レンツ: オイルの本当のコスト
プレゼンターのガース・レンツ氏のサイトです。
Garth Lenz
プレゼンテーションでも触れていた活動のサイト
http://www.blueearth.org/projects/index.cfm?projectID=115
日本における大部分の反原発運動と呼ばれるものは、
単に自分の目の前の「放射性物質と思わしきもの」を「隠ぺい」しようとしているだけで、バランスに欠けています。空間的、時間的視野が狭く、却って地球全体にとっては悪影響を及ぼしていると思われてなりません。
確かに、原発再稼働を勧めようとしている安倍政権の審議について、その隠ぺい体質も問題ですが、様々な要因について聞き入れる事をしない反原発運動(と、その余波で「何の関係も無い核融合」にまで反対する運動)は、隠ぺい体質の安倍政権以上に視野狭窄に陥っていると思われます。
追記の追記:
インドネシア、ラピンド事件
特集:泥火山の噴出は天災?それとも人災? 泥に埋もれた村 2008年1月号 ナショナルジオグラフィック NATIONAL GEOGRAPHIC.JP
*1:原著はフランス語で2013年でした。その後英語版は出たのが2014年ですね